ようやく春が実感できるようになってきた3月16日の日曜日。私はこの時期が一番好きです。
そこかしこに春の予兆があふれていて、たとえ一時的に寒い風が吹くことがあっても、もう間違いなく春が来ている!と確信できるのがうれしいですね。
そんなわくわくした春の風に誘われて、今年2回目の万葉文化館に出かけることにしました。
公式HPで開催案内を見ていた三瀬夏之介の個展「風土の記 −かぜつちのき−」を観るためです。
画家・三瀬夏之介という名前は初めて聞きます。まるで藤沢周平の時代小説に出てくる剣豪みたいな名前ですが(笑)、資料では1973年奈良生まれとありますからかなり若い画家ですね。
京都市立芸大大学院を終了後、1999年から奈良の高校で教鞭をとりながら個展やグループ展の開催を重ね、2012年には「東山魁夷記念日経日本画大賞」の選考委員特別賞を受賞するなど、近年注目を集めている気鋭の画家と紹介されています。
で、上記HPの「本展の見どころ」では↓
和紙に墨という日本古来の素材を使用し、意欲的に制作をつづける三瀬夏之介。
そんな三瀬氏の個展である本展のみどころは、本展開催のために制作された、旗のような形状をした新作「日本の絵〜小盆地宇宙〜」と、全長約17mにもなる巨大なスケールで三瀬の故郷である「奈良」が表現される、本展注目の新作「風土の記」が、今回初公開の作品となります。
また、今までの三瀬の代表作の中からは、2009年VOCA賞受賞作品である「J」(第一生命保険株式会社所蔵)や、巨大な和紙に墨といったデリケートな素材や、表面に施されたコラージュの数々を見ることのできる「君主論- Il Principe-」、「ぼくの神さま」(大原美術館所蔵)の他にも、当館の展示室を縦横いっぱいに埋め尽くす大型の三瀬作品も、迫力満点のみどころです!
と紹介されています。ただ、私は「和紙に墨」とはまた若いのに渋いというか地味というか、まあ現代風水墨画みたいだろうなと勝手に思って、正直あまりピンとこない印象でしたね。
でもなかなか力が入った展覧会のようなので、二人で出かけることにしました。
ただこの日はスペシャルミッションが課せられていて(笑)、午前10時までに万葉文化館前に着くことが必須条件でした。
なので早めに出かけましたが、なぜかこの日はどの高速道路も一般道もガラガラの特異日。9時40分には文化館前の石ベンチでノートパソコンを開いてスタンバっていました。
いい天気で、何人か先客がすでに開館を待っていました。
何をするのかというと、この日の10時開始の宝塚歌劇オンラインチケットでチケットを確保するのです!(殴)
公演は宙組の『ベルサイユのばら―オスカル編―』。もう見飽きたも通り越した、シーラカンス芝居そのものですが、やはり宙組とあってはパスもできないだろうと、万葉文化館前で、春風に吹かれながらキーボード連打と相成ったわけです。
事前に調べたauの受信エリアマップで明日香村はOKだったので、Wifi Walkerを持参してチケットを確保しようということになりました。
でも知らない人が見たら、もう開館時間が過ぎているのに、なんで入らずにパソコン画面を覗いているのだろうと思ったでしょうね。でも私たちは必死でした。(笑)
で結果ですが、10時受付開始から10分間ぐらいはアクセス殺到でサイトに入れず焦りまくりましたが、第二希望日でなんとか席をゲットできました。
気をよくして、パソコンを片付けて展覧会場へ(笑)。
この日は館内でいろいろイベントも用意されていて、結構賑わっていましたが、まずは目当ての個展会場へ。
入り口で展示作品をチラッと見ただけで、すごいと思いました。とにかく作品がドでかい!それで度肝を抜かれ、次に驚いたのがディテールの緻密なこと。広大な画面の隅々まで覆い尽くされている細密描写に圧倒されます。
作品から放射される画力はちょっと比較するものが思い浮かばないほどの強さがあります。その執念というか、画家の創作力のタフなことは全体としてちょっと淡白な傾向のある日本の画家にはない異質さを感じるほどです。肉食系の画家です(笑)。
↓パンフレット裏面
↓万葉文化館HPから。制作風景です。
入り口にある「J」という作品でも250×400cmもあって大きいなと思いますが、その次の「君主論-?Principe-」では245×737cm、6番目の作品「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」は272×1,456cm、最後の展示でこの展覧会の主題となっている「風土の記」では272×1,710cmもあって、圧倒的なスケールです。
↓これも万葉文化館HPから。作品「J」です。
普通の展覧会では、大きな作品は3mぐらい下がって鑑賞することにしていますが、今回の作品ではその程度では全体の構図はわかりませんね。それでもっと下がって作品を眺めましたが、実は今回の作品はそんな鑑賞方法だけでは価値がわからないと思いました。
というのは、至近距離でないと見えない、びっしりと画面に描きこまれた細密描写も重要な要素になっているからです。描かれているのは旅客機であったり仏頭であったり、風景や動物、古今東西・新旧織り交ぜた建築物など。
それにさまざまなコラージュも加わって、まさに現代版「風土記」です。混沌としながら、それ自体が一つのダイナミックなうねりとして私たちの前に提示されていて、ただただ茫然として見上げるばかりです。画面から離れて見えてくるものと、接近しないと見えてこないもの。画面全体から受ける印象と、細密描写されたモチーフの対比が面白いです。思わず神は細部に宿るという言葉が浮かびました。
こういうパワフルな作品群に出会うのは久しぶりでした。
展示会場の片隅には、作家のアトリエを模した展示があって、そこだけは撮影フリーでした。
そこに展示されたものも面白いものばかり。そこにも絵が何点か展示されていて、それもなかなかのものばかりでした。このくらいだと家に飾れそうなので欲しいと思いました。(笑)
展示会場は、いままでの展示と違って仕切りを使わず、すべて壁に展示されていますが、2連の「日本の絵〜小盆地宇宙〜」だけは天井から吊り下げられています。この絵が一部透かしになっていて、それにあてられた照明で作られた木洩れ日のような影が面白かったです。
作品は16点ですが、どれも超大作ばかりなので見ごたえ十分。そのすべてに表現された巨大曼荼羅のような世界に浸るには、到底1日では足りないほど。本当にインパクトのある展覧会でした。ただ、この日も観客は少なく残念でした。
もっと観ていたかったのですが、ヨメさんの体調不良もあって正午前に会場を出ました。それから最初に見ていた庭園めぐりのクイズなどを楽しんで、ちょっとうれしい景品などをもらってから帰途に。出足の遅かったお客さんも増えてきて、駐車場も埋まって来ていました。よかったです。
すっかり気温も上がって、周辺の明日香の里の満開の梅などを楽しみながら帰宅しました。
久しぶりに以前のような万葉文化館らしい新鮮で意欲的な企画を満喫できて良かったです。
まだ観ておられない方には絶対おすすめの展覧会です。
平成26年3月9日(日)〜平成26年5月11日(日)まで開かれています。ぜひお出かけください。
そこかしこに春の予兆があふれていて、たとえ一時的に寒い風が吹くことがあっても、もう間違いなく春が来ている!と確信できるのがうれしいですね。
そんなわくわくした春の風に誘われて、今年2回目の万葉文化館に出かけることにしました。
公式HPで開催案内を見ていた三瀬夏之介の個展「風土の記 −かぜつちのき−」を観るためです。
画家・三瀬夏之介という名前は初めて聞きます。まるで藤沢周平の時代小説に出てくる剣豪みたいな名前ですが(笑)、資料では1973年奈良生まれとありますからかなり若い画家ですね。
京都市立芸大大学院を終了後、1999年から奈良の高校で教鞭をとりながら個展やグループ展の開催を重ね、2012年には「東山魁夷記念日経日本画大賞」の選考委員特別賞を受賞するなど、近年注目を集めている気鋭の画家と紹介されています。
で、上記HPの「本展の見どころ」では↓
和紙に墨という日本古来の素材を使用し、意欲的に制作をつづける三瀬夏之介。
そんな三瀬氏の個展である本展のみどころは、本展開催のために制作された、旗のような形状をした新作「日本の絵〜小盆地宇宙〜」と、全長約17mにもなる巨大なスケールで三瀬の故郷である「奈良」が表現される、本展注目の新作「風土の記」が、今回初公開の作品となります。
また、今までの三瀬の代表作の中からは、2009年VOCA賞受賞作品である「J」(第一生命保険株式会社所蔵)や、巨大な和紙に墨といったデリケートな素材や、表面に施されたコラージュの数々を見ることのできる「君主論- Il Principe-」、「ぼくの神さま」(大原美術館所蔵)の他にも、当館の展示室を縦横いっぱいに埋め尽くす大型の三瀬作品も、迫力満点のみどころです!
と紹介されています。ただ、私は「和紙に墨」とはまた若いのに渋いというか地味というか、まあ現代風水墨画みたいだろうなと勝手に思って、正直あまりピンとこない印象でしたね。
でもなかなか力が入った展覧会のようなので、二人で出かけることにしました。
ただこの日はスペシャルミッションが課せられていて(笑)、午前10時までに万葉文化館前に着くことが必須条件でした。
なので早めに出かけましたが、なぜかこの日はどの高速道路も一般道もガラガラの特異日。9時40分には文化館前の石ベンチでノートパソコンを開いてスタンバっていました。
いい天気で、何人か先客がすでに開館を待っていました。
何をするのかというと、この日の10時開始の宝塚歌劇オンラインチケットでチケットを確保するのです!(殴)
公演は宙組の『ベルサイユのばら―オスカル編―』。もう見飽きたも通り越した、シーラカンス芝居そのものですが、やはり宙組とあってはパスもできないだろうと、万葉文化館前で、春風に吹かれながらキーボード連打と相成ったわけです。
事前に調べたauの受信エリアマップで明日香村はOKだったので、Wifi Walkerを持参してチケットを確保しようということになりました。
でも知らない人が見たら、もう開館時間が過ぎているのに、なんで入らずにパソコン画面を覗いているのだろうと思ったでしょうね。でも私たちは必死でした。(笑)
で結果ですが、10時受付開始から10分間ぐらいはアクセス殺到でサイトに入れず焦りまくりましたが、第二希望日でなんとか席をゲットできました。
気をよくして、パソコンを片付けて展覧会場へ(笑)。
この日は館内でいろいろイベントも用意されていて、結構賑わっていましたが、まずは目当ての個展会場へ。
入り口で展示作品をチラッと見ただけで、すごいと思いました。とにかく作品がドでかい!それで度肝を抜かれ、次に驚いたのがディテールの緻密なこと。広大な画面の隅々まで覆い尽くされている細密描写に圧倒されます。
作品から放射される画力はちょっと比較するものが思い浮かばないほどの強さがあります。その執念というか、画家の創作力のタフなことは全体としてちょっと淡白な傾向のある日本の画家にはない異質さを感じるほどです。肉食系の画家です(笑)。
↓パンフレット裏面
↓万葉文化館HPから。制作風景です。
入り口にある「J」という作品でも250×400cmもあって大きいなと思いますが、その次の「君主論-?Principe-」では245×737cm、6番目の作品「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」は272×1,456cm、最後の展示でこの展覧会の主題となっている「風土の記」では272×1,710cmもあって、圧倒的なスケールです。
↓これも万葉文化館HPから。作品「J」です。
普通の展覧会では、大きな作品は3mぐらい下がって鑑賞することにしていますが、今回の作品ではその程度では全体の構図はわかりませんね。それでもっと下がって作品を眺めましたが、実は今回の作品はそんな鑑賞方法だけでは価値がわからないと思いました。
というのは、至近距離でないと見えない、びっしりと画面に描きこまれた細密描写も重要な要素になっているからです。描かれているのは旅客機であったり仏頭であったり、風景や動物、古今東西・新旧織り交ぜた建築物など。
それにさまざまなコラージュも加わって、まさに現代版「風土記」です。混沌としながら、それ自体が一つのダイナミックなうねりとして私たちの前に提示されていて、ただただ茫然として見上げるばかりです。画面から離れて見えてくるものと、接近しないと見えてこないもの。画面全体から受ける印象と、細密描写されたモチーフの対比が面白いです。思わず神は細部に宿るという言葉が浮かびました。
こういうパワフルな作品群に出会うのは久しぶりでした。
展示会場の片隅には、作家のアトリエを模した展示があって、そこだけは撮影フリーでした。
そこに展示されたものも面白いものばかり。そこにも絵が何点か展示されていて、それもなかなかのものばかりでした。このくらいだと家に飾れそうなので欲しいと思いました。(笑)
展示会場は、いままでの展示と違って仕切りを使わず、すべて壁に展示されていますが、2連の「日本の絵〜小盆地宇宙〜」だけは天井から吊り下げられています。この絵が一部透かしになっていて、それにあてられた照明で作られた木洩れ日のような影が面白かったです。
作品は16点ですが、どれも超大作ばかりなので見ごたえ十分。そのすべてに表現された巨大曼荼羅のような世界に浸るには、到底1日では足りないほど。本当にインパクトのある展覧会でした。ただ、この日も観客は少なく残念でした。
もっと観ていたかったのですが、ヨメさんの体調不良もあって正午前に会場を出ました。それから最初に見ていた庭園めぐりのクイズなどを楽しんで、ちょっとうれしい景品などをもらってから帰途に。出足の遅かったお客さんも増えてきて、駐車場も埋まって来ていました。よかったです。
すっかり気温も上がって、周辺の明日香の里の満開の梅などを楽しみながら帰宅しました。
久しぶりに以前のような万葉文化館らしい新鮮で意欲的な企画を満喫できて良かったです。
まだ観ておられない方には絶対おすすめの展覧会です。
平成26年3月9日(日)〜平成26年5月11日(日)まで開かれています。ぜひお出かけください。