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タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #2 ~舞台進行・公演大道具~」 究極のキュー!

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前回は宝塚の大道具製作についての放送をご紹介しましたが、今回の番組テーマは「舞台進行・公演大道具」というものです。

舞台進行と公演大道具という2つのタイトルになっていますが、実際は舞台進行が中心となっています。前回は大道具でも製作の裏話で、今回は出来上がったその大道具をどう使うかも含めた、舞台進行のカギとなる「きっかけ」、つまりキューの作成にまつわるお話です。

いつも観劇していて思っていたのですが、宝塚の舞台は、舞台上の大勢の出演者の演技と、それと一体となった生演奏、そして多彩な照明、スピーディーな場面転換のための大がかりな舞台機構が魅力ですが、それらを誰が、どうやって同期させているのだろうかというのが知りたいところでした。一応その答えとなっているのが今回の番組です。

以下、番組の内容を放映順にキャプチャ画像とあわせて書いていきます。

7月23日、稽古場では花組の「サンテクジュペリ」と「コンガ」の通し稽古が行われています。


稽古の様子を見守るたくさんのスタッフ。数人の黒シャツ軍団にご注意。


彼らの台本には場面ごとの絵コンテ?のようなものが描かれています。この段階ではおおよその流れをチェックしているようです。


こちらは舞台進行担当さん。台本と見比べながら稽古を見守ります。


彼の職名は正式には「劇場部宝塚公園課進行・楽屋担当」


自分の担当する舞台進行とはどういうものかを語っています。

舞台進行とは?と聞かれた阪田さんは、
「進行担当の一番大きな仕事は『きっかけを出す』ということ。
稽古場の時点から演出家と話をさせていただいて、どこでこの道具を動かすのか、どこで吊りものを飛ばしていくのか、しかもそれが安全に、しっかりと舞台を運営できるようにということを考えながら、すべての『きっかけ』を作っていくということが進行の大きな仕事になりますね。」と語っています。

7月25日「サンテクジュペリ」の舞台稽古。演出助手の大野拓史さんと阪田さんがプロローグのけいこを観ながら相談しているところ。


再び阪田さん:
「プロローグの場面ですと、セリをこういう順番で使いたいと、この歌の何小節目でセリを動かしたいとかの話を受けまして、そのほかドライアイスを使いたいとか、煙を出したいとかのお話を事前に演出部の大野さんからいただきまして、それを進行担当としては舞台装置を使うので大道具さんにも話をしに行ったりしまして、で、舞台機構的に床機構などちゃんと動かせるのかということをすべて調整をして、実際の舞台稽古に臨んでいくということをしています。」

宝塚歌劇の魅力のひとつでもある大規模な舞台機構。でもそれを動かしたり止めたりするスタッフに「きっかけ」を出す仕事は大変です。話の中ではコンピュータでタイミング管理をしているとかの話も。

ナレーター
「今回の作品で苦労した点はどこなのでしょうか?」
阪田さん:
「今回の公演では、プロローグが一番きっかけが多いところですが、(演出部から)当初いただいた計画では舞台機構が動かせないということがわかって、どうしたらコンピュータで枠を作って動かせるのかというところで、舞台稽古の段階で大道具さんとか演出部と話をして、それぞれ動かすタイミングを決めていったところが一番苦労したところですね。」
長年やってきているはずなのに、舞台機構が動かせないようなプランが演出部から出たりするというところが面白いです。

さて映像は変わってプロローグでの舞台下の奈落の場面。そこでは複数のスタッフが出番でセリに乗った蘭トムの状態を確認して、口々に「OKです〜」「はい、上がりまーす」とか声をかけています。ただ画像は真っ暗でよく見えず(笑)。


丸い台座の中にはセリが仕込まれています


そしてセリが上がってきて蘭トムが登場。


阪田さん:
「次に苦労したのは、飛行機をセリを使って高いところから下げてくるところ。しかも飛行機を盆を使って2回転させて、さらにそこにはドライアイスを使いたいとか、盆が止まったら吊ものを下したいとか、ま、実際には椰子が降りてくるのですけれど、それらが本当に動くかどうか検証していくところが大変だったところですね」

実際の舞台上ではこんな場面になっていますが、


舞台裏ではすでに飛行機を大道具のスタッフが押していってスタンバイ。まだ翼は畳まれています。


やがて翼も伸ばされて


登場です。盆が回りドライアイスも出ています。


操作しているのはこちら。



まるでSF映画の宇宙船か潜水艦のオペレーションルームです。シーンごとにパソコンのプログラムによって順番に各パートのボタンが光り、それを実際の進行を確認しながらスタッフが押すことで各部署が動いているみたいですが、詳細は不明です。

公演大道具さんの感想
「宝塚は舞台のスケールの大きさがウリの一つでセットが大仕掛けなので一人ではできませんね。なので、みんなで息を合わせて一斉に動かすというのが必要で、でも自分たちがそれを客席から見る機会は基本的にまずありませんから、きれいに息が合っていると見栄えがするやろうなとイメージしながら動かしています」


進行の阪田さんは
「進行係は舞台稽古から初日、千秋楽まで演出部と一番長く話をしていく部署になると思うのですが、初日の幕が上がり、舞台が終わって最後に緞帳が降りたあとのお客さんの拍手や歓声を聞いた瞬間というのが、一番達成感があるといいますか、肩の荷が降りたといいますか、ホッとする瞬間ではありますね」


ショー「コンガ」の方は舞台進行は別の担当になっています。なぜか東京公演課の舞台進行13年のベテラン宮脇さん。


てきぱきと指示を出していますが、演出サイドからの要求通りに進行できない場合もあるようです。

「演出的にはここで動かしたくても、いろいろ安全面での条件とか、そのほか視覚的な条件とか整わない場合はやはりキューは出せなかったり、また無理な条件としては人員的なもの、具体的には大道具は上下(かみしも)7人・7人と、あと舞台機構を動かすオペレータが3人、小道具が大劇場でしたら上手4人・下手3人の7人、あと進行の係が上下に2人ずついますので合計28人。この28人でやっていくしかないので、それで手が回らないときには転換を2段階に分けてもらうとか、そういうやり取りをしながら決めていくことが多いですね。」


↓蘭の花を出すところです




舞台上では


<ナレーション>
舞台転換の速さでは世界一といわれる宝塚歌劇。進行係さんはどう思っているのでしょうか

宮脇さんは語ります
「ぼくは宝塚に入る前も比較的キューを出す仕事が多かったのですが、歌劇の仕事をやらせていただいたときに、はじめは面食らいましたね。こんなにもキューがあるのかと。
入った当時は1000days劇場からのスタートだったので、床機構が全くない状態で、吊もののきっかけを出すのが中心だったのですが、それでもこの仕事をするにあたって、宝塚のテンポ感の速さとかに体が慣れるまでものすごい時間がかかったことを今でも憶えています。
その後も外の現場とかの仕事をやってまた宝塚に戻ったりすると、かなりリハビリをする時間がかかりました。
意識とかをタカラヅカモードに変えていかないととてもやっていけないですし、ここまで忙しく転換をやっているカンパニーは他にはないのではないでしょうか。
まあ今回のコンガは比較的少ない方で、まあキューも数えたら50くらいでしょうが、多いものでは一幕もので120とか150とかのキューになることもありますので、そういう意味では宝塚の舞台進行、要するにキューを出していく仕事というのは気が抜けないですね。」


最後に各担当さんの感想が紹介されていました。

まず大道具の福岡さん:
「速さを求められるという点では新入社員のころから急げ急げというのがあるんですけど、私たちは自分の身も守らないといけないし、出演者を守らなくてはいけないのはもちろんですから、とにかく安全第一を心掛けて、その中で速くということを追求していくことで、ご覧いただいた皆さんに『どうやっているんだろう?』と思っていただければ僕らの仕事としては成功やと思っています。」

進行担当の阪田さん:
「裏方としてはこの転換の速さですとか、それはまあ大道具さんがしっかりとした技術を持ってやってくれているから出来ることなんですが、宝塚の一番の魅力と言いますとやはり華麗な衣装ですとか、裏方としては素早い転換というのが見せ場と言いますか、そういうところも見ていただけれるうれしいですね」

進行担当の宮脇さん:
「ぼく個人としてはまだまだ日々学ぶことが多くて、13年ぐらいですかこの宝塚の仕事を始めて。でもまだまだスキル的に上げていかなくてはいけないなと、自分の中で能力の足りていないなというところを毎回感じることが多いので、ま、それを一つ一つなくしていき、それでお客様が舞台を喜んでいただければいいかなと思っています」

最後に舞台裏もわかる貴重な画像が映されて終わっています。

セットするのに見えているだけでも8人のスタッフが動員されています↓


この吊ものは↓


なんと手動で上下しています↓


フィナーレですが↓


このシーンの後方にご注意


楽しく踊っていますが↓


大道具さんが頑張っています


今回も面白い放送でした。

多くの持ち場の協働で成り立っている舞台の場面転換が、芝居の流れにぴったりシンクロするためには「キュー出し・きっかけ出し」がキーポイントですね。話の中で紹介されていた150ものキューとなるとそのタイミング調整だけでも大変です。
たまに座った席によってはセットの裏に大道具さんが見えたりすることもありますが、この放送を見た後は、その苦労が偲ばれて仕事とはいえ本当によくやっているなあと感心するばかりです。
こういう話、もっと深めてまた放送してほしいですね。

ご覧いただきましてありがとうございました。m(__)m

次回はシリーズ #3 「電飾・照明」です。
できるだけ早くアップするよう心がけますので、ご覧いただければ幸いです。




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