今回は同じ井上でもいのうえひでのり演出の舞台です。初めての観劇となります。
私たちが観たのは10月24日(木)。上演されるのはもう久しく行っていない劇場なので事前に調べたら、直営の駐車場はなし。でも契約パーキングはあるので、そこに停めれば3時間500円の補助券がもらえるとのこと。
ただし結構離れているので、台風接近とあって天候が心配でしたが、当日はまさかの好天。車椅子でも大丈夫でラッキーでした。
正午に劇場前に着いたら、すでに開場を待つ大勢の人が歩道や近くの公園に集まっていました。まもなく劇場内に入れてくれたので、中で開場時間まで待つことができました。このあたり、直前のシアター・ブラバとは大違いです。
待っている間にスタッフの女性が声をかけてくれて、客席の状況などを説明してくれました。その後トイレに行って時間を調整。
その間に気付いたのですが、この劇場、オリックス劇場として2012年に再オープンした際に全面改装して、最新鋭の舞台設備に更新され、同時にエレベーターの新設や女性用トイレの増設、完全バリアフリー化なども実施されたとか。
実際障害者トイレも最新の設備で快適、さらに今回利用した車椅子スペースが、席番号でいうと11列の17・18番相当のものすごく見やすい場所。
そこに行くまでの経路も完全にフラットで感激しました。こんな見やすい車椅子スペースはこれまで経験したことがありません。それだけでもうれしくなりました。障害者の利用しやすさでは関西一(いや日本一かも)。
今回は主人公のファンなのか、若い女性客が目立ちました。
さてようやく感想です。(またまた長い前フリです。m(__)m 文中例によって敬称略です)
開演前にプログラムを買いました。ずっしり重く大部で、値段も2,000円と高価!でも情報豊かな内容で、買う価値はありました。
それを読んでいるうちにオープニングのテーマミュージック?がかかりましたが、映画のテーマのような迫力のある音楽です。それを聞いてさらに期待が高まりました。ちなみに劇中の音楽は生演奏で(録音も併用)、キーボードとパーカッション、篳篥でいい効果を上げていました。
舞台には幕がなく、代わりに竹藪の植わった木製のセットが全体を覆っています。この出し入れで場面転換されるのですが、舞台の一か所になにか突起でもあるのか、毎回左右に分かれて動かすたびにゴトンと音がするのが気になりました(笑)。
1時にスタート。
最初の立ち回りの場面、舞台上方からミストのような水が降ってきて、そのカーテンで雨を表現しています。
立ち回りのシーンはさすがにタカラヅカのスローモーションなゆるい斬り合い(笑)と違って、迫力があります。
そして森田 剛扮する主人公・鉈切り丸こと源範頼が登場。
生まれつき背中に大きな瘤を背負い、片足を引きずり、顔には醜い傷があるという設定。鉈でへその緒を切ったから「鉈切り丸」の幼名となった源範頼が、シェイクスピアの「リチャード3世」という想定でした。
森田 剛、この鉈切り丸を渾身の演技で頑張っていました。観ているうちにようやく「祈りと怪物 〜ウィルヴィルの三姉妹〜」のトビーアスを思い出しました。(そういえば、あの感想では一切森田剛について触れていませんでしたね。申し訳ない。(殴))
ただ、後半では見た目の老け具合と、若い声がますます合わなくなる感じがやや惜しいかな。でも、前回の観劇と違って、今回は建礼門院と共にこの芝居の流れをリードする重要な役割を十分に演じていて印象に残りました。
(↓以下、すべて 当日購入のプログラムより)
史実で伝えられている源範頼と異なり、今回の「鉈切り丸」の範頼は生来の悪役ですが、同じような極悪人として描かれた「藪原検校」ほどドライなワルではありませんね。後者のスコーンと突き抜けたような血も涙もない悪逆非道ぶりの痛快さと比べると、鉈切り丸はセリフも常に同情を誘う詠嘆調(笑)で、シェイクスピア風というより「和」のテイストが強いです。(笑)
続いて他の役者の感想になりますが、まずネガティブなところから行くと、成海璃子の巴御前が最大のミスキャストに感じました。
この役、冒頭から最後まで話に絡む重要な役ですが、この女優にはまだ荷が重すぎ。セリフも演技も水準とはいえず、観初めて即座に「ああ、アカン」と思いました。
義仲に逃げろと言われたとき、本当にこんな巴御前では足手まといになるだけだと思ってしまいました。
もっと野性的で芯のあるキャラクタのはずなのに、全然表現できていないのが残念でした。
とくに今回、女優陣があまりにも豪華な顔ぶれなので、その差は歴然、彼女の登場する場面は本当に長く感じて辛かったです。
でもこれは本人の責任ではなく、選んだ方の責任だと思いますね。興業的な打算で登用するのではなく、実力本位で選んでほしかったです。
これが例えば最近見た「それからのブンとフン」の新妻聖子とか小池栄子だったらどんなに良かっただろうと、観劇しながら考えていました。
ネガティブな評価としてはこれぐらいにして、良かった順ではなんといっても若村麻由美。
この人が演じる「北条雅子」の前では、頼朝も形無し。演出家の想定では「リチャード3世」でのエリザベスだそうですが、本当に強い女性でした。頼朝をアゴで使っていましたからね(笑)。とにかくセリフの力がすごいし、メリハリの利いた表情でどんな役にもなりきれるダイナミックレンジの広さが強みですね。それでいて、たまに入るコミカルな演技もうまくこなして、大したものでした。
余談ですが、たまたま今テレビを見たら、三宅裕司の「コントの劇場 10月号」が放送されていて、若村麻由美がゲスト出演。途中からでしたが面白く、即興でよくできるものだと感心しました。ちなみに北村有起哉も出ていて思わず黙阿弥オペラの「釣竿の浪人」を思い出したり。
若村麻由美と並ぶのが「建礼門院」の麻実れい。平家の怨念を象徴する生霊役で、これまたすごい存在感。出てくるだけで周囲を圧するのはさすがですが、二人とも低い声も高い声も、大きな声も小さい声もくっきり明瞭でした。
建礼門院は鉈切り丸と並んで狂言回し的な役廻りです。でも同じ狂言回しでも、建礼門院はすでに滅亡してしまった平家の怨霊なので、歴史の進行に影響を及ぼす力はありませんが、鉈切り丸のほうは、傍流とはいえ歴史の勝者・源氏側なので、頼朝を操ってどんどん現実を変えていきます。
そんな怨念の象徴でも、麻実れいがやると凄い迫力で、出番は少ないものの強いインパクトがありました。
頼朝は生瀬勝久。この舞台を観る前はいつものパターンで、狷介で嫉妬心や猜疑心が強いいやな権力者という頼朝像を予測していましたが、現れたのはそれとは正反対。まったく政子のいいなりのままのダメ夫ですが、そんな彼が時折見せるコミカルな演技が、重苦しい話を適度にほぐす役割を果たしていました。この人の眼の演技が印象に残りました。時折かましてくれるギャグが秀逸でした。全く意表を突かれた頼朝像でした。
女優ではイト役の秋山菜津子もベテランらしい安定した演技で、感情の起伏の多い難しい汚れ役を十分に演じ切っていました。
終わりの方で、母として鉈切り丸と対面して激しくやりあう場面でも堂々と伍していて大したもの。この人、「藪原検校」での好演もまだ記憶に新しいところです。
梶原景時の渡辺いっけいも味のある演技で、弁慶の千葉哲也とともに脇を固めていました。この二人が芝居に厚みを出していましたね。全編権謀術数が渦巻くこの芝居で、いつ梶原景時が裏切るのかというのも興味がありましたが、かろうじて踏みとどまっていましたね(笑)。
弁慶の立ち往生もうまくできていました。この芝居、血しぶきを上げて切られるシーンとか、随所に凝った仕掛けも見られます。
義経は須賀健太。頑張っていましたが、まだ発展途上の印象。私としてはビジュアル的に義経のイメージには合わないと思いました。もっと絵にかいたような美青年であってほしかったなあ。
演技では木村了の和田義盛が、真っ直ぐな人柄をよく演じていました。立ち回りはキレがあり、台詞もハッキリスッキリ聞きやすい。男優では一番台詞がよかったと思いました。
逆にやや聞こえにくくで残念だったのは大江広元役の山内圭哉。ふだんの会話をドモらせる演出もどうかと思いますが、吾妻鑑を読むときは明瞭なはずがちょっと聴き取れなかったりしたのが残念でした。この人もコミカルな部類のけっこうおいしい役回りでした。
あと、宮地雅子が被り物で笑わせてくれました。比丘尼役も演じていて、余裕の演技で座を和ませていていい仕事ぶり。初めの被り物は移動とか大変そうです。詳しくは観てのお楽しみ。
全体としては、なんといっても青木豪の脚本が素晴らしい。スケールが大きくて大作の風格たっぷりです。細部も鉈切り丸が頼朝をそそのかし、思うままに操っていく筋書きなども説得力があります。頼朝でなくても納得しますね。観劇しながら、和物の題材でもこれだけの脚本ができるのかと感心しました。宝塚の座付作者も奮起してほしいものです。
宝塚と言えば、今回の演出では随所にタカラヅカ的な要素が見られました。セレモニーの場面での群舞とか、建礼門院の羽根の衣装とか、まんま使えそうです。
それと音楽が効果的でした。篳篥の生演奏で歴史ものらしい雰囲気が強調されていました。
舞台装置では最初に書いたように竹藪の生け垣のセットが場面転換で効果的でした。このセットを見ていて、マクベスの動く森を連想しましたね。そういえば巴御前とイト、そして建礼門院が3人の魔女みたいにも思えたり。後、不気味にリアルな生首とか(笑)。
最後は圧巻の立ち回り。「祈りと怪物‥蜷川バージョン」のラストみたいな演出で、主人公は大変だなあと同情しました。詳細は観てのお楽しみということで触れずにおきます。(笑)
繰り返しますが、本当に見ごたえのある舞台でした。最後に客席は全員感動のスタンディング!!
同じいのうえでも、いのうえひでのりはまた違った味わいのある演出で、楽しい10月の観劇となりました。また同じ劇場で、この脚本家+演出家の作品が上演されればぜひ観てみたいです。
「鉈ぎり丸」、おすすめです!
私たちが観たのは10月24日(木)。上演されるのはもう久しく行っていない劇場なので事前に調べたら、直営の駐車場はなし。でも契約パーキングはあるので、そこに停めれば3時間500円の補助券がもらえるとのこと。
ただし結構離れているので、台風接近とあって天候が心配でしたが、当日はまさかの好天。車椅子でも大丈夫でラッキーでした。
正午に劇場前に着いたら、すでに開場を待つ大勢の人が歩道や近くの公園に集まっていました。まもなく劇場内に入れてくれたので、中で開場時間まで待つことができました。このあたり、直前のシアター・ブラバとは大違いです。
待っている間にスタッフの女性が声をかけてくれて、客席の状況などを説明してくれました。その後トイレに行って時間を調整。
その間に気付いたのですが、この劇場、オリックス劇場として2012年に再オープンした際に全面改装して、最新鋭の舞台設備に更新され、同時にエレベーターの新設や女性用トイレの増設、完全バリアフリー化なども実施されたとか。
実際障害者トイレも最新の設備で快適、さらに今回利用した車椅子スペースが、席番号でいうと11列の17・18番相当のものすごく見やすい場所。
そこに行くまでの経路も完全にフラットで感激しました。こんな見やすい車椅子スペースはこれまで経験したことがありません。それだけでもうれしくなりました。障害者の利用しやすさでは関西一(いや日本一かも)。
今回は主人公のファンなのか、若い女性客が目立ちました。
さてようやく感想です。(またまた長い前フリです。m(__)m 文中例によって敬称略です)
開演前にプログラムを買いました。ずっしり重く大部で、値段も2,000円と高価!でも情報豊かな内容で、買う価値はありました。
それを読んでいるうちにオープニングのテーマミュージック?がかかりましたが、映画のテーマのような迫力のある音楽です。それを聞いてさらに期待が高まりました。ちなみに劇中の音楽は生演奏で(録音も併用)、キーボードとパーカッション、篳篥でいい効果を上げていました。
舞台には幕がなく、代わりに竹藪の植わった木製のセットが全体を覆っています。この出し入れで場面転換されるのですが、舞台の一か所になにか突起でもあるのか、毎回左右に分かれて動かすたびにゴトンと音がするのが気になりました(笑)。
1時にスタート。
最初の立ち回りの場面、舞台上方からミストのような水が降ってきて、そのカーテンで雨を表現しています。
立ち回りのシーンはさすがにタカラヅカのスローモーションなゆるい斬り合い(笑)と違って、迫力があります。
そして森田 剛扮する主人公・鉈切り丸こと源範頼が登場。
生まれつき背中に大きな瘤を背負い、片足を引きずり、顔には醜い傷があるという設定。鉈でへその緒を切ったから「鉈切り丸」の幼名となった源範頼が、シェイクスピアの「リチャード3世」という想定でした。
森田 剛、この鉈切り丸を渾身の演技で頑張っていました。観ているうちにようやく「祈りと怪物 〜ウィルヴィルの三姉妹〜」のトビーアスを思い出しました。(そういえば、あの感想では一切森田剛について触れていませんでしたね。申し訳ない。(殴))
ただ、後半では見た目の老け具合と、若い声がますます合わなくなる感じがやや惜しいかな。でも、前回の観劇と違って、今回は建礼門院と共にこの芝居の流れをリードする重要な役割を十分に演じていて印象に残りました。
(↓以下、すべて 当日購入のプログラムより)
史実で伝えられている源範頼と異なり、今回の「鉈切り丸」の範頼は生来の悪役ですが、同じような極悪人として描かれた「藪原検校」ほどドライなワルではありませんね。後者のスコーンと突き抜けたような血も涙もない悪逆非道ぶりの痛快さと比べると、鉈切り丸はセリフも常に同情を誘う詠嘆調(笑)で、シェイクスピア風というより「和」のテイストが強いです。(笑)
続いて他の役者の感想になりますが、まずネガティブなところから行くと、成海璃子の巴御前が最大のミスキャストに感じました。
この役、冒頭から最後まで話に絡む重要な役ですが、この女優にはまだ荷が重すぎ。セリフも演技も水準とはいえず、観初めて即座に「ああ、アカン」と思いました。
義仲に逃げろと言われたとき、本当にこんな巴御前では足手まといになるだけだと思ってしまいました。
もっと野性的で芯のあるキャラクタのはずなのに、全然表現できていないのが残念でした。
とくに今回、女優陣があまりにも豪華な顔ぶれなので、その差は歴然、彼女の登場する場面は本当に長く感じて辛かったです。
でもこれは本人の責任ではなく、選んだ方の責任だと思いますね。興業的な打算で登用するのではなく、実力本位で選んでほしかったです。
これが例えば最近見た「それからのブンとフン」の新妻聖子とか小池栄子だったらどんなに良かっただろうと、観劇しながら考えていました。
ネガティブな評価としてはこれぐらいにして、良かった順ではなんといっても若村麻由美。
この人が演じる「北条雅子」の前では、頼朝も形無し。演出家の想定では「リチャード3世」でのエリザベスだそうですが、本当に強い女性でした。頼朝をアゴで使っていましたからね(笑)。とにかくセリフの力がすごいし、メリハリの利いた表情でどんな役にもなりきれるダイナミックレンジの広さが強みですね。それでいて、たまに入るコミカルな演技もうまくこなして、大したものでした。
余談ですが、たまたま今テレビを見たら、三宅裕司の「コントの劇場 10月号」が放送されていて、若村麻由美がゲスト出演。途中からでしたが面白く、即興でよくできるものだと感心しました。ちなみに北村有起哉も出ていて思わず黙阿弥オペラの「釣竿の浪人」を思い出したり。
若村麻由美と並ぶのが「建礼門院」の麻実れい。平家の怨念を象徴する生霊役で、これまたすごい存在感。出てくるだけで周囲を圧するのはさすがですが、二人とも低い声も高い声も、大きな声も小さい声もくっきり明瞭でした。
建礼門院は鉈切り丸と並んで狂言回し的な役廻りです。でも同じ狂言回しでも、建礼門院はすでに滅亡してしまった平家の怨霊なので、歴史の進行に影響を及ぼす力はありませんが、鉈切り丸のほうは、傍流とはいえ歴史の勝者・源氏側なので、頼朝を操ってどんどん現実を変えていきます。
そんな怨念の象徴でも、麻実れいがやると凄い迫力で、出番は少ないものの強いインパクトがありました。
頼朝は生瀬勝久。この舞台を観る前はいつものパターンで、狷介で嫉妬心や猜疑心が強いいやな権力者という頼朝像を予測していましたが、現れたのはそれとは正反対。まったく政子のいいなりのままのダメ夫ですが、そんな彼が時折見せるコミカルな演技が、重苦しい話を適度にほぐす役割を果たしていました。この人の眼の演技が印象に残りました。時折かましてくれるギャグが秀逸でした。全く意表を突かれた頼朝像でした。
女優ではイト役の秋山菜津子もベテランらしい安定した演技で、感情の起伏の多い難しい汚れ役を十分に演じ切っていました。
終わりの方で、母として鉈切り丸と対面して激しくやりあう場面でも堂々と伍していて大したもの。この人、「藪原検校」での好演もまだ記憶に新しいところです。
梶原景時の渡辺いっけいも味のある演技で、弁慶の千葉哲也とともに脇を固めていました。この二人が芝居に厚みを出していましたね。全編権謀術数が渦巻くこの芝居で、いつ梶原景時が裏切るのかというのも興味がありましたが、かろうじて踏みとどまっていましたね(笑)。
弁慶の立ち往生もうまくできていました。この芝居、血しぶきを上げて切られるシーンとか、随所に凝った仕掛けも見られます。
義経は須賀健太。頑張っていましたが、まだ発展途上の印象。私としてはビジュアル的に義経のイメージには合わないと思いました。もっと絵にかいたような美青年であってほしかったなあ。
演技では木村了の和田義盛が、真っ直ぐな人柄をよく演じていました。立ち回りはキレがあり、台詞もハッキリスッキリ聞きやすい。男優では一番台詞がよかったと思いました。
逆にやや聞こえにくくで残念だったのは大江広元役の山内圭哉。ふだんの会話をドモらせる演出もどうかと思いますが、吾妻鑑を読むときは明瞭なはずがちょっと聴き取れなかったりしたのが残念でした。この人もコミカルな部類のけっこうおいしい役回りでした。
あと、宮地雅子が被り物で笑わせてくれました。比丘尼役も演じていて、余裕の演技で座を和ませていていい仕事ぶり。初めの被り物は移動とか大変そうです。詳しくは観てのお楽しみ。
全体としては、なんといっても青木豪の脚本が素晴らしい。スケールが大きくて大作の風格たっぷりです。細部も鉈切り丸が頼朝をそそのかし、思うままに操っていく筋書きなども説得力があります。頼朝でなくても納得しますね。観劇しながら、和物の題材でもこれだけの脚本ができるのかと感心しました。宝塚の座付作者も奮起してほしいものです。
宝塚と言えば、今回の演出では随所にタカラヅカ的な要素が見られました。セレモニーの場面での群舞とか、建礼門院の羽根の衣装とか、まんま使えそうです。
それと音楽が効果的でした。篳篥の生演奏で歴史ものらしい雰囲気が強調されていました。
舞台装置では最初に書いたように竹藪の生け垣のセットが場面転換で効果的でした。このセットを見ていて、マクベスの動く森を連想しましたね。そういえば巴御前とイト、そして建礼門院が3人の魔女みたいにも思えたり。後、不気味にリアルな生首とか(笑)。
最後は圧巻の立ち回り。「祈りと怪物‥蜷川バージョン」のラストみたいな演出で、主人公は大変だなあと同情しました。詳細は観てのお楽しみということで触れずにおきます。(笑)
繰り返しますが、本当に見ごたえのある舞台でした。最後に客席は全員感動のスタンディング!!
同じいのうえでも、いのうえひでのりはまた違った味わいのある演出で、楽しい10月の観劇となりました。また同じ劇場で、この脚本家+演出家の作品が上演されればぜひ観てみたいです。
「鉈ぎり丸」、おすすめです!