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宝塚宙組公演 『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』観劇メモ

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とっくに大劇場の公演が終わったのに、ようやくエリザベートの感想です。
見に行ったのはお盆の真っ最中。かなり遅すぎ&薄い感想ですが、よろしければどうぞ。

行った日は当然ながら、帰省した車で道は最悪の状態でした。これを予測していつもより一時間早く出たのに、阪神高速池田出口から大渋滞。3時間も車列に閉じ込められて、大慌てで車椅子を押して劇場にたどり着いたのは11時25分を過ぎていて、舞台はすでに第7場になっていました。すべての観劇でこんなに遅刻したのは初めてです。^^;
ようやく客席に着いても、車中でのストレスと、それから解放された安堵感と、通常の料金に上乗せしてまでゲットしたチケットなのに、貴重なプロローグ場面などを観逃した残念感が一度に襲ってきて、しばらく舞台に感情移入できない状態が続きました。(笑)

それはさておき、何度も観たはずのエリザですが、私たちが劇場で直近に観たのは春野寿美礼トート以来。ということで、久し振りのエリザ感想ですが、これが非常に良かった!!
無理してゲットしたチケットの価値(まだいうか!)は十分にありました。(笑)
これを見逃していたら、残り少ない人生に大きな禍根を残すところでした。(ややオーバーかな(殴))
↓久しぶりに買ったプログラムです

とにかくキャストが良かった。主役二人はもちろん、すべての出演者が役にピッタリ嵌っていて大満足。久しぶりにこの作品自体の良さを味わえました。

まず朝夏まなと。




この人は守備範囲が本当に広いですね。
当初はどんなトートになるか予測できず、ちょっと心配でしたが、観ていて初演を何度も思い出してしまう原点回帰のトート。でも一路真輝ともちがうオリジナリティもあって、歌と演技の完成度が高かったです。





観慣れているので次の台詞が予測できるエリザですが、そんな類型的な予想を超えてしまう新鮮な演技が良かったです。例えば「死ねばいい」とか、おおそう来るかと感心しました。20周年の記念公演にふさわしいトートです。





でもやっぱりこの人は目が大きい。朝夏まなこ。(殴)


実咲凜音のエリザベートも良かった。遅刻のせいで少女時代↓は見逃しましたが^^;、

結婚するあたりからでも、

晩年までの各場面に即して、役年齢にふさわしく演じていて、内面までよく伝わってくる自然で丁寧な演技で、見応えがありました。

歌も本領発揮の伸びやかでしかも繊細な情感のこもったもので、聞きながら、この作品の楽曲の完成度を改めて感じました。


観終えて数日後この公演のナウオンを見ていたら、これまでにない柔らかい表情で話していて別人の印象(殴)。男トップに寄り添う姿が新鮮でした。(笑) 前トップとの微妙な距離感はもはや遠い日々。(殴)


真風凉帆のフランツも久し振りに見るいいフランツ。



エリザベートと母親との板挟みになったフランツの苦悩がひしひしと伝わってきました。
当初、今回はルキーニとフランツが逆じゃないかと配役が疑問でしたが、実際に観ればどちらもドンピシャ。

真風フランツは、抑揚の効いた感情表現ながら存在感があって、若い時のシシーへの愛と、長じての国王としての風格と苦悩と寂寥感がよく出ていて、最近では出色の出来でした。



歌も長足の進歩があり、情感タップリで聴かせてくれました。

でも今回特によかったのはルキーニの愛月ひかる。
彼女は私たち夫婦にとって以前から好感度大な生徒さんですが、どちらかというとキャラクタ的には地味な印象でしたね。これまでのナウオンなどの対談番組でも、ニコニコ笑っているけど控えめで、その笑顔のえくぼが印象的な人でした。


大体主役を見守り&忠実に支える友人とか部下とかの役が多かったと思いますが、そんな彼女に、アナーキストでテロリストでハプスブルグ家の滅亡を暗示させる狂言回しの黒い役が似合うのか大疑問でした。なので私たちは、ルキーニが今回の公演の一番の不安材料でした。

ところが、まずスカステのニュースで練習風景の様子を見て「あれっ?」とな。(殴)
ニュースでは短時間の練習場面でしたが、それでもよく演じられているのが見て取れてビックリでした。

そして今回実際に舞台で観て、もうただただ感心するばかり。久し振りに全く違和感のないルキーニに出会えました。

初演の轟悠以来の、完成度の高いルキーニでした。この役は男役トップ候補が必ず経験する通過儀礼みたいな大役ですが、初演以外は大体みんなルキーニ像の解釈を間違えていて、やり過ぎばかりが目立って、変な作り笑いをしながら腰をかがめて舞台をヒョコヒョコ歩き回ったりするなど、興ざめな演技が多かったです。
でも今回の愛月ひかるはよかったですねー。久し振りのイケメン・ルキーニ。(笑)

役柄を正確に把握していて、過不足ない破たんのない演技でただただ感心するばかり。これまで見たことのない愛月ひかるで、縁遠いと思っていた男臭い役柄を自然に演じていて、全く違和感なし。うれしい大誤算でした。

これまでの例では、初めからヤリ過ぎていて、回を重ねるにつれてますますしつこくなって破たんするルキーニが多かったのですが、今回はノビしろを持った演技で安心して観ていられました。次作品が楽しみです。

純矢ちとせのゾフィーもオリジナリティがあって良かったです。

この役もこれまで初演の朱未知留ゾフィーがベストと思っていましたが、今回はそれに負けず劣らずの出来。

「ハプスブルグ家の存亡を考えての、ゾフィーなりの行動や決断ということが出せれば」という純矢ちとせの役作りへの思いがよく伝わってきました。
初演のゾフィーは、冷酷で鬼のように怖い印象が前面に出ていましたが(それもそれまでの宝塚には見られないインパクトがあり新鮮でしたが)、今回の純矢ゾフィーは同じような迫力ながら、演技のディテールには人間らしさも宿っていて、新たなゾフィーになっていました。

板挟みになるフランツの苦悩の理由がわかるゾフィーで、これもアリかなと思っていました。

トリプルキャストのルドルフは役替わりAで澄輝さやと。この人もよく役と合っていて違和感なしに観ていられました。
少年時代のルドルフの星風まどかもかわいらしく、そんな姿につい初演の安蘭けいを思い出したり。


それと、びっくりだったのがマダム・ヴォルフの伶美うらら。
これまで観劇していて、せっかくの美貌が頼りなげな歌で残念感満載だったのに(あくまで個人の感想です(殴))、今回は自信に満ちた歌で、ド迫力な美貌の娼館の主を演じていました。この人、見かけと違って低音域のほうが得意なんですな。






「翼ある人びと」での好演以来久しぶりの演技の伶美うららに出会えて良かったです。しかし、こんな美人オーナーだと娼婦たちも働きづらい(笑)。
実際、せっかくマデレーネががんばっても、つい伶美うららを見てしまったりしていました。(殴)

フィナーレの始まりは真風の「愛と死の輪舞」のソロダンスから。
そして朝夏トートが娘役をひきつれて「最後のダンス」になり、

男役群舞での「闇が広がる」から

実咲凜音とのデュエットへと続いて、

落ち着いた色彩の衣装とも相まって、記念すべき公演にふさわしい完成度の高いフィナーレになっていました。本当に観てよかったです。

というわけで、遅刻の痛手も補ってくれる(笑)いい舞台の余韻に浸りながら、劇場を後にしました。



兵庫芸文センターで、再び「頭痛肩こり樋口一葉」を観てきました。よかったです。

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3年ぶりに、またこまつ座「頭痛肩こり樋口一葉」を観てきました。今回は、前回唯一残念だった樋口一葉がバッチリで申し分なし。
他の配役は前回と同じ豪華メンバーなので非の打ちどころがなく、名実ともにこまつ座の看板芝居といえる見応えたっぷりの舞台でした。

今回も、最前列センターブロックでの観劇でしたが、オープニングでの子供たち!?の提灯踊りなど、こちらが
恥ずかしくなるほどの至近距離でした(笑)。
セットも前回同様、四本の柱と仏壇だけの極めてシンプルなもの。担当は宝塚の舞台もよく手掛けている松井るみさんで、この人の舞台
装置では『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』が記憶に残っています。でも今回はチラシで初めて知りました。(笑)

しかし、我ながらあきれるほど見事に話を忘れていました。
前回の観劇はほんの3年前、なのに筋書きはきれいさっぱり忘れていました(笑)。まあその分、新鮮な観劇となりましたが。(殴)
そして改めて感じたのが、同じ樋口一葉を題材にしていても、2月の二兎社「書く女」とは大違いということ。
「書く女」は、主人公・一葉と、彼女を取り巻く人々との関りが史実に即して丁寧に描かれていて、彼女とその作品の時代背景もよく理解
できました。登場人物も、半井桃水に斉藤緑雨、馬場孤蝶、平田禿木、川上眉山などの文学青年たちや、ライバルの田辺龍子など一葉と深
いかかわりのあった人物が登場して、明治の文壇の一端がよく理解できました。

でも「頭痛肩こり~」は全然違う話。
まず配役はすべて女だけ。
そしてテーマも、一葉が話の中心ではなく、一葉の生きた明治という時代を、一葉を含む6人の女性の生きざまを通して描くといった感じ
でした。
でも私は(ヨメさんも)先に書いたように、話をすっかり忘れていて、ただ若村麻由美の幽霊が本当にキレイとか(殴)、苦界に身を沈めた
熊谷真実がド迫力だったとか、妹の邦子が実に健気だったとか、断片しか覚えていませんでした。

それで今回、全く先が予測できない展開に、よくまあこんな芝居の脚本が書けるものだと改めて感心しながら観ていました。
それと、この「頭痛肩こり~」がユニークなのは、一葉だけに幽霊・花蛍が見えること。
このわけは、脚本家自身が、今回購入したプログラム(中身が濃くて値打ちがあります)中の、架空のインタビュー記事「樋口一葉に聞く」
(初出は「季刊the座」1984年5月創刊号)で解説してくれています。
井上ひさし一流の、非常に面白くかつ深い一葉論が展開されていますので、ぜひプログラム↓をお買いになってご覧ください。

この一葉と花蛍の関係、「エリザベート」に通じるものがありますが、それをずっと以前の1984年に舞台で上演していたのですから、
本当に大したものです。

ということで、出演者ごとに感想です。例によって敬称略です。

まず今回一番気になっていた一葉役の永作博美から。


よかったですね~。滑舌もよく、表情も身のこなしも、メリハリがあって強い。3年前の一葉とは大違いでした。
強くてもヤリ過ぎ感は全くなく、たたずまいもバランスよく周囲に馴染んでいました。でも本当に若見えで、実年齢との乖離がすごい!!(殴)
そのおかげで、24歳で没したまさに夭折作家の典型・樋口一葉に、ぴったりハマっていました。
プログラムで、稽古中は苦労したと語っていますが、周りにはそう見えなかったようで、対談記事では「涼しい顔して稽古していた」
と冷やかされていました。

稽古風景です↓



でも本当に大した演技力でした。つくづく知らないことが多いです。
前回の舞台では、一葉の台詞の場面になると、滑舌とか声量とか果ては演技全般が気になって、舞台にまったく感情移入できなくなって
いました。
でも今回はそんな懸念材料がすべて解消、話に自然に入り込めました。脚本家の言いたかったこと、考えていたことがストレートに
伝わってきた感じです。

他の五人の女たちの配役は前回と同じで、それぞれの役と役者さんの持ち味がうまくマッチしていて申し分なし。

母親・樋口多喜役は三田和代。

3年前が初出演とのことですが、もう円熟の多喜になっていましたね。維新前夜の混乱の中で、故郷を夫則義とともに出奔し、江戸で艱難
辛苦の末に最下級の武士となったのも束の間、明治という生き難い時代に翻弄されながら生活を送る姿がコミカル&リアルでした。
故郷の村人を見返すかのように、貧困の中でも絶えず武士のプライドを強調する多喜ですが、一方では、気前よく他人に物を与えたりする
憎めない人物です。前回と同じく、三田和代は文字通りのハマリ役でした。

家族の役では、一葉の妹・邦子の深谷美歩もよかったですね~。

前回も最後の場面が印象的でしたが(この場面だけははっきり覚えていました(殴))、今回もやられてしまいました。うまいエンディング
でついホロリとな。この場面に作者がすべての思いが凝縮しているようないい場面でした。

邦子が、プライドだけ高く、経済観念は希薄で能天気な母と、いろんな小商いに失敗した後、背水の陣で小説書きに没頭する一葉の間に
立って、生活を切り盛りする健気な姿が瞼に残ります。
演出家は、邦子は「とにかく働き続けている役」だといっているそうですが、その通り、舞台では甲斐甲斐しく働きづめ。(笑)
この人、同じこまつ座の「きらめく星座」で長女「みさを」役を演じていましたが、そこでも同じような、感情を押さえ
た中にも、よく人となりが伝わってくる演技でした。台詞もすっきりさわやか。本当にいい役者さんです。
「きらめく星座」のみさをです↓


樋口家に出入りする女性の一人、中野八重役は熊谷真実。


もともと私たちは、初めてのこまつ座観劇となった「黙阿弥オペラ」での二役をこなす熱演に驚かされましたが、
2013年のこの演目の公演でも、渾身の演技で圧倒されました。
でも今回は、さらに力の入った演技で、とくに後半、苦界に身を落としたあとの場面では、前回以上のド迫力の、
凄みさえ感じる演技でした。
本当にこの人の役への入り込み方は大したものです。

そしてもう一人、樋口家に出入りしていた稲葉鑛役は愛華みれ。

宝塚時代から個人的に好感度極大なトップさんでしたが、前回同じ役で出演し、その元気な姿を観ることができてうれしかったです。
そして今回、体調はさらに良くなっているようで、舞台での表情もスッキリきれい。役の人物像がさらに深まっていて、歌の場面も多く、
よかったです。
稲葉鑛も没落士族の子女で、暮らしの内情は火の車。知り合いを回って、返す当てのない借金を頼みに回りながらも、育ちの良さは
なくしていないお嬢様です。でも彼女も最後はやはり不幸な結末となります。
愛華みれのキャラクタと演技が役柄によくマッチしていて、見ごたえがありました。3年ぶりの歌もさらに磨きがかかっていて、
胸に染み渡りました。
プログラムによれば、彼女は2009年の「きらめく星座」に出演していたとのことですが、それもぜひ再演してほしいですね。

そして花蛍の若村麻由美。

相変わらずというか、ますますきれいな幽霊で、やっぱり一度は憑りつかれてみたい。(殴)
でもこの花蛍は一番運動量の多い役で、大変ですね。舞台狭しと駆け回りながらの長台詞が多くて、それでも息も切らさず
頑張っています。
小松座のサイトに、この公演の制作発表時の画像がありましたが(笑)、生前の花蛍(笑)が美人で売れっ妓だったのがよくわかります。↓

彼女を通して、明治という、とくに女性にとって極めて過酷な時代がくっきりと浮かび上がってきます。
でも花蛍は優しい幽霊です。というか、かなりお人好し(笑)。自分の非運は嘆くけど、決して他を責め続けることができず、
次々に自分を絶望に追い込んだ原因を探っていくうちに、結局女たちの不幸の根源が明治という時代そのものにあるという
ことを私たちにわからせてくれます。

しかし幽霊が出てくると一遍に舞台が華やぐというのもなんともシュールです。(笑)

とまあ、豪華な女優さんと極上の脚本、それを十二分に生かす手練れの演出家の仕事ぶりがあいまって、至福の観劇タイムと
なりました。
小松座の看板公演といわれる理由がよくわかりました。
感動のうちに幕が下りて、さあスタンディング!とタイミングを見計らっているうちに二回でカーテンコールが終わってしまった
のが唯一心残りでしたが(笑)、いい舞台に満足しながら帰途につきました。

今度は筋を忘れないようにしましょう。(殴)

次は星組退団公演の観劇感想です。がんばって書かないと。(^^;

星組公演「SAMURAI THE FINAL 桜華に舞え/ロマンス!」観劇と、大劇場千秋楽のニュースを見て

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北翔海莉さんの退団発表を聞いたときは、本当に残念でした。

誰でもいつかは退団するとわかっていても、実際にそれが現実になると、寂しいものです。
トップ就任時に、いつ退団するか決めていたとのことですが、その潔さもまた彼女らしいと思い
ました。
長い宝塚の歴史でも、彼女のように誰に対しても常に謙虚に接し、どんな逆境にも耐えて、いつ
も圧倒的な歌唱力で私たちを魅了させてくれた存在は、他に名前が浮かんできません。

一時は順調にトップへの道を進んでいたかに見えたのに、なぜかその後失速してしまって、歌劇
団の人事にガッカリ。でも専科入りを聞いたときは、トップへの道は閉ざされても、退団しないので
よかったと一安心していました。

以前は、トップ就任前の通過儀礼みたいに、まず専科に異動し、その後組に復帰してトップになる、
みたいな人事もありましたが、それも今は昔。
いまは専科入りは片道切符で、元の組に戻ることはありません。
ということで北翔海莉の専科入りは残念でしたが、またいろんな組で活躍できるのでいいかと納得
していました。

それがあろうことか、ある日、なんとトップ就任決定のニュース。

うれしい半面、それならなぜもっと早くしなかったのかとか、超遅咲き故に就任期間はどうなるの
かとか、いろいろ複雑な思いもありました。
でも波乱万丈の彼女のたどってきた道自体、タカラヅカの脚本にしてもよさそうな物語ですね。

というどうでもいい前置きはこれくらいにして、まず芝居の感想から。
(以下いつものとおり敬称略です。画像はスカステニュースの画面撮影なので粗いです。)

まず全体の感想です。
二本物で時間に制約があるのに無理に役を増やそうとしたため、どうしても人物の描写が浅くなり、
しかも話があちこちに飛ぶので、ついていくのに一苦労でした。

加えて台詞の大半が、かなりネイティブ(だと思う)な鹿児島弁なので、観劇していても会話がす
ぐに理解できず。

ワンテンポ遅れて、会話中の単語をつなぎ合わせてようやく理解するといった感じで、感情移入が
難しかったですね。

そして終わってみれば、やはり出演者の熱演にもかかわらず、話が深まらないままで、全体に存在
理由がよくわからない中途半端な役も多くて、ストーリーとしてはインパクトがなかった。^^;

でもこれだけではいくらなんでもネガティブすぎるので(笑)、いいところを挙げると、まず場面転
換のテンポがいい。売り物の殺陣はキレがあって(タカラヅカ比(笑))ダイナミック。キャストも
よく考えられていて、とくに美城れんの西郷隆盛など絵に描いたようなハマリ役。
実際の隆盛がどんな風貌だったのかは定かでないそうですが、いかにも私たちの記憶にある「隆盛」
像にピッタリの美城「隆盛」でした。

それと、よくある手法とはいえ、回想シーンから舞台が始まるのも好みでした。
(前にもどこかで書きましたが、私的には回想シーンから始まる映画の傑作がグレゴリー・ペック
「頭上の敵機」です)

あれ?やっぱりこれぐらいの感想しかないか(殴)。

でも、先に書いたように、今回に限ってはこれでいいんです。(殴)

退団する北翔海莉と妃海風、美城れんが出てきただけでもうOK。(笑)

彼女たちが登場して、歌い踊り始めたら大満足!の「見納めモード」全開(笑)で、観劇中も(鹿児
島弁の壁もあって(笑))話はそっちのけで、北翔海莉の過去の公演とか、ミュージックパレット
で見た春風弥里との共演場面とかを脈絡もなく思い出していました。
でもそんな上の空の観劇でも、最後は演出家の狙い通りついホロリとな。これは私だけでなかった
ようで、客席のあちこちでもハンカチを手にする姿が目につきました。(笑)

というわけで個別の感想となります。

まず桐野利秋(中村半次郎)に扮する北翔海莉ですが、情に厚くよく義にも殉ずる熱血漢という
人物をよく演じていました。歌ももちろんですが、彼女らしい頑張りが殺陣にもよく出ていて迫
力がありました。
トップになってからも変わらず努力し続けている様子がよくうかがえる舞台で、感心しました。


西郷に心酔する心情もよく出ていて、最後まで彼に付き従うところも説得力がありました。




しかし私は、観劇前は桐野利秋(中村半次郎)という人物については、どこかで名前を聞いたかな
程度しか知らなかったし、観劇後も、そもそも西郷がどうして挙兵に至ったのかイマイチ理解でき
なかったので、この人物を取り上げることでで作者が何を言おうとしたのか、分からなかったですね。

それと、半次郎がヒサと吹優をどう思っていたのか、どうするつもりだったのかも、話としてそれ
ほど描かれていないので、二人の女性の扱いがよくわかりませんでしたね。とくに出番の少ないヒ
サが気の毒な役でした。

余談ですが、この時代を題材にした芝居や映画でいつも思うのは、西南戦争が起きる11年前にウィ
ンチェスターM1866が販売開始され、5年前にはコルト・ピースメーカーが米陸軍に採用される
など、近代的な銃器が世界中に普及しつつあったのに、まだ日本刀や薙刀での立ち回りがメインと
いうのがなんともはや。

武士道精神を強調したいのでしょうが、重い日本刀を振り回しての立ち合いを見ていると、なんと
長閑なと思ってしまいますね。昔見た剣道の専門家の対談番組では、重い日本刀での斬りあいでは、
せいぜい二・三人倒せば上出来とか言っていました。鍵屋の辻の決闘で36人斬りなど絶対無理とか。(笑)

それはさておき、親友の「隼太郎」に扮する紅ゆずるですが、初めは、ヒサを取り合う、「星逢~」み
たいな設定かと思っていたら、ヒサとの関係はさっさとケリが付いて、隼太郎はアッサリ半次郎と
一緒に上京して新政府の役職にありつくという肩すかしな展開。(笑)



でも、西南戦争では敵味方として対峙することになりますが、後半、薩摩に帰郷した二人の邂逅場
面の演技がよかったです。
このあたりを見ていると、トップ禅譲がうまく行っているようで安心しました。(笑)

妃海風ふんする「大谷吹優」は会津藩の武家娘で、戊辰戦争の時は薙刀をもって奮戦しています。この
薙刀捌きも健気で頑張っています。

その彼女は、父の仇の半次郎に命を助けられたものの、戦火の衝撃で記憶喪失となり、同時に手傷
を負った半次郎とは戦後、偶然に再会します。


妃海風は戊辰戦争では武家の娘として奮戦し、後半は戦場で傷病兵を看護する対照的な役を好演して
いました。武家の娘でも看護婦でも彼女の持ち味の純粋さとさわやかさがいい感じでした。


でもなんといっても今回は美城れんの「西郷隆盛」が超絶品。

こんな男なら、桐野利秋が地位を投げ捨ててついていったのも分かるというもの。舞台で一番説得
力のあった演技でしたが、この公演を限りに観られなくなるというのは本当に残念。専科で長く活躍
してくれることを期待していた私たちにとって、惜しい退団です。最近専科からの人材流出が続いて
残念感が止まらないのですが、退団後の活躍を期待したいです。

専科ではもう一人、「大久保利通」役で夏美ようも安定感のあるいつもの演技でしたが、肝心の見せ場
となる場面が少なくて勿体なかったですね。


あともう一人、例の色紙の一件以来勝手に贔屓にしている(笑)礼真琴が会津藩士・八木永輝役で唯一黒い
役を頑張っていました。いつものことながら、この人の演技は特に眼のチカラがすごいです。



それと身体能力の高さを活かして、殺陣もひときわ目立つキレがあって素晴らしい。
歌も、この人が歌い出すと、北翔海莉とはまた違った味があって、つい聴き惚れてしまいます。
でもやはり出番が‥。

でも、最後はサヨナラ公演らしく涙・涙のフィナーレとなって、客席は作者の意図にまんまと嵌め
られて、あちこちでハンカチで目を拭うお客さんの姿が見受けられました。

あとは薩摩の村で半次郎を待ち続ける妻ヒサ役を演じたのが綺咲愛里。先に書いたように初めは隼
太郎と一緒になるのかと思っていましたが、簡単に家同士で縁談が進められて半次郎と結婚したの
が意外でした。

でも半次郎の上京後は、ほとんど出番がなく、後半ようやく出てきたものの、そ
の間どうやって暮らしていたのか、二人の関係がどうだったのかが分からずで、存在感の希薄なか
わいそうな役でした。

これも最初に書きましたが、回想シーンから始まるところや、ナレーションを多用して話を進める
ところなど、どこか正塚作品を連想させる構成でしたが、肝心の麻央演じる犬養がほとんど話に絡
まないので、最初と最後の回想場面が取って付けたような唐突感がありました。
でも麻央は、記者と首相時代をうまく演じ分けていたので、初めは同一人物とは思えなかったですね。


ロマンチック・レビュー「ロマンス‼」と銘打ったショーの方は、超ベテラン・岡田敬二の作・演出
らしくかなり古典的な作品でした。



きれいな色の衣装で、曲目もまあ60年代ポップスなど、タカラヅカの定番というか、観客のうちリア
ルタイムで聴いていた人がどれだけいるんだろうかと心配になる選曲。(笑)
場面の構成や転換も正統派というか古いというか(殴)、新鮮味に欠けるところが残念でした。

途中の木の下で寝転んで本を読んでいる北翔海莉ニジンスキーと令嬢との場面も何の展開もなく終
わってしまってガッカリ。




「裸足の伯爵夫人のボレロ」もせっかくの夫人役の七海ひろきと礼真琴
が生かし切れていなくて少々物足りない感じでした。でも礼真琴の女装はもっと見たい!!(殴)
でも後半になって、ロケットのあとの「私の世界 イル・モンド」が、8本の大きな柱の装置と大
コーラスでスケール感のある場面となって盛り上がりました。
パレードでは礼真琴が三番手羽根を背負って大階段を下りてきて、うれしかったです。

ショーの場面です。順不同^^;










続いてサヨナラショーもオマケ。やはり順不同です。














というわけで、よかったのか悪かったのか我ながら意味不明な感想となりましたが、なんといっても
北翔海莉と妃海風と美城れんの見納めなので、ぜひ皆さんご覧ください。といってももう東京でも完
売なのであまり意味がないか。(殴)

そうこうしているうちに大劇場の千秋楽の様子もスカステニュースで流れていましたので、これにつ
いても少し感想です。

まず最後の「入り」から。








北翔海莉と妃海風と美城れんがどんな挨拶をするのか期待しながら見ていましたが、みんなよかった
ですね。とくに妃海風が、心情を正直に素朴に表現していてほほえましかったです。

美城れんの挨拶の場面の映像です。






<挨拶です>
憧れだった宝塚音楽学校に入学してから今日まで21年間、私は宝塚歌劇に、宝塚歌劇を愛する皆様に
育てていただきました。感謝の気持ちでいっぱいでございます。
心から幸せだと思える今、笑顔で卒業させていただきます。
美城れんを応援し、ご指導いただいた皆様、ファンの方々、そして私の大好きな宝塚歌劇団に、心か
らの愛と、心からの感謝を込めまして、本当にありがとうございました。


簡潔ですが、心に残るいいあいさつでした。

妃海風の挨拶とその映像です。










<挨拶です>
今、階段の上から、みなさんの顔がやっぱり、大好きになりすぎていて、今、胸が苦しくなるぐらい、
好きになってしまいました。
はい、あの、私、宝塚が大好きで、今、時々、これは夢かなと思うことがたくさんあります。

ファンの方々が、私のことをキラキラした笑顔で見てくださって、本当に信頼できるみなさま、大好
きなみなさま、その方々が近くでいつも笑ってくださって、そしてファン時代男役さんファンだった
私は、今とても素敵な相手役さん・旦那様、と出会えることができまして、私は言葉にしてもやはり
夢なのではないかと思いますが、これは現実です。(客席・笑いと長い励ましの拍手)
 夢のような現実を見させてくださったみなさま、みなさまのおかげで幸せでございます。

本当に本当に心から大好きです。本当にありがとうございました。


ほとんどアドリブ(笑)のいい挨拶でした。良かったです。

北翔海莉の挨拶とその映像です。








<挨拶です>
宝塚音楽学校から21年間を振り返りますと、日々、己の弱さとの闘いだったなと思います。
音楽学校の授業についていけなかったとき、逃げ出したくなるとき、諦めようとするとき、悔しくて泣
いたとき、一番のライバルは楽な方に逃げようとする己自身でした。

宝塚という芸を極める道に入り、清く正しく美しくのモットーを信じて、21年間も修行させていただき
まして、今、己の弱い心に克つ、自分の限界に挑戦する精神を身に付けることができたと胸を張って言
えます。(長い拍手)
わたくしが、これまで邁進することができましたのは、諸先生方、諸先輩方の下で、舞台人としての心
得、芸を学ばせていただいたおかげだと、心より感謝しております。
また、北翔海莉が、舞台人として舞台の上で思いっきりパフォーマンスすることができましたのは、宝
塚の一流のスタッフのみなさまの愛情と支えのおかげでございます。
最後になりましたが、男役・北翔海莉を、全力で本気で応援してくださいましたファンのみなさま、イ
メージキャラクタをさせていただきました加美乃素本舗さま(笑いと拍手)">、みなさまのおかげで、ど
んな逆境にも立ち向かう不撓不屈の精神で私を支え励ましてくださいまして、本当にありがとうござい
ました。

えー、今回ご縁がありました、専科の夏美ようさん、そして同期生の美城れんさん、愛する星組の仲間
とは、まだまだお別れではございません。東京の、11月20日のラストステージまで、出演者一同、義と
真心と勇気をもって、舞台を全うしたいと思います。

約5週間、星組公演を支えて応援してくださいましたみなさま、本当にありがとうございました。



最後に大劇場前の様子も放映されていました。




兵庫芸文センター阪急中ホール『DISGRACED/ディスグレイスト−恥辱』の観劇メモ  感動の舞台でした。

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10月1日に兵庫芸文センターで『DISGRACED/ディスグレイスト−恥辱』を観てきました。
最近はとくに兵庫芸文センターには良く通っていて、9月は「頭痛肩こり樋口一葉」、このあと10月13日に
朝海ひかるの「幽霊」を観て、10月29日は「雪まろげ」、11月5日は「マーダーバラッド」と我ながら感心
するぐらいの精勤ぶり。

で、感想ですが、非常にいい舞台でした。見ごたえたっぷりで、超満足でした。

現在アメリカのみならず、全世界で進行している、宗教・人種・政治が絡んだ深刻な社会対立という重い
テーマを、リアルな会話で見事に演劇化していました。
初めは退屈な話かなと危惧しながら観ていましたが、途中からグイグイと引き込まれて行って、終わってみ
れば感動のスタンディングオベーション。

原作は2013年のピュリツァー賞(戯曲部門)を受賞した、パキスタン出身の脚本家アヤド・アフタル。

それをおなじみ栗山民也さんが演出し、演じるのはベテラン小日向文世・秋山菜津子をはじめ安田顕・小島
聖・平埜生成の5人の役者さんです。
ということで、中身も知らないまま、この顔ぶれだけで先行販売で早々にチケットをゲットしていました。

以下ネタバレありです。いつもの通り敬称略。

ニューヨークの高級アパートに暮らすパキスタン系アメリカ人弁護士アミール(小日向文世)と、その妻で
白人の画家エミリー(秋山菜津子)、アミールの同僚の黒人弁護士ジョリー(小島聖)、エミリーの知人で
ユダヤ人の美術館キュレーター・アイザック(安田顕)がホームパーティで繰り広げる会話劇がメインです。

それにアミールの甥エイブ(平埜生成)が絡んで展開します。
舞台に据えられたセットは高級アパートメントの一室で、セレブな主人公の暮らしぶりがよくわかるリアル
なものでした。

主人公アミールは、企業専門の弁護士事務所に所属する優秀な弁護士。
パキスタン移民としてのハンディを負いながらも、優秀な仕事ぶりで頭角を現したいわば勝ち組。

ある日、甥のエイブが訪ねてきて、逮捕されたイスラム教の指導者の審問に出て助けてほしいとアミールに
頼みます。
最初は拒否したアミールですが、妻のエミリーも助けるべきと口添えしたこともあって、結局、アミールは
審問に立ち合うことに。
しかしそこから彼の人生の歯車が大きく狂い始める‥というストーリーが、前記の4人によるホーム・パーティ
の場面を軸に進行していきます。
はじめはパーティの準備などの夫婦の会話から始まるので、舞台もまったりした雰囲気でしたが、やがてパー
ティとなって会話が進むにつれ、スリリングな展開となっていきます。

まあとにかく、台本がいい。

2013年ピュリッツァー賞受賞・2015年トニー賞ノミネート・ニューヨーク、ロンドン上演の話題作、というのも
納得の脚本でした。

アメリカをはじめ現代世界に蔓延する宗教的・民族的社会排外主義の病巣が、リアルにまた自然なストーリー展開で
私たちの前に示されます。
でもこういう話は、脚本家の体験がベースになっているので書けるのだろうと思います。まず絶対に日本人には書けない
リアリティのある舞台でした。

ちなみに“disgraced”は、辱める、地位や名誉などを失わせる”という意味です。

ということで役者さんごとの感想です。

まずアミール役の小日向文世。


先に書いたようにアミールはパキスタン出身の優秀な弁護士です。

故郷と宗教をすてて、財産と地位を得るために渡米し、血の滲むような努力の末やっと手に入れた敏腕弁護士の地位
と生活。そんな得意満面の成功者が、捨てたはずの宗教が絡むトラブルから破滅していく役を、見事に演じ切ってい
ました。

この人の舞台を見るのは今回が初めてですが、「真田丸」での秀吉の怪演(笑)に驚かされた後なので、今回の観劇を
期待していました。
そしてやはり期待通りで、才色兼備の白人の妻と高級アパートに住む、セレブなパキスタン出身という弁護士ぶりが
まずリアル。でも、その彼が、最後は何もかも失って尾羽打ち枯らして部屋を出ていくという姿が印象的でした。
セリフも膨大なのに、それを苦も無く(本当は大変でしょうが)見事にこなしていて、大した役者さんでした。

画家エミリー役秋山菜津子も、いまさら言うまでもないですが、予想通りの演技。
良かったです。


しかしこの人の演技の幅は本当にすごいですね。

私が見ただけでも、『キネマの天地』・『藪原検校』・『鉈切り丸』・『きらめく星座』・『8月の家族たち』と役柄
が実に多種多様多彩。
もちろん今回の『DISGRACED』も、この人のエミリー以外考えられないと思うほどのはまり役。小日向アミールと
がっぷり組んでのセリフの応酬が見ものでした。

エミリーの知人で、ユダヤ人の美術館キュレーター・アイザック役の安田顕は初めて観た役者さ
んです。


でも小日向アミール・秋山エミリー夫婦の会話バトルに臆せず割り込んで(笑)、いい演技を見せてくれました。台詞も
明瞭、後半エミリーとの微妙な関係もわかりますが、そのあたりもうまく演じていました。

黒人弁護士・ジョリー役の小島聖も今回初めて観た人ですが、長身で黒塗りメークで目立ってい
ました。舞台に出てきたときは初めて観る顔なのでビックリ。

でも、アミールが審問に出てから弁護士事務所での立場が危うくなり、その座をジョリーが奪うという展開でしたが、
そんな訳アリな役どころをうまく演じていました。

初めて観るといえば、アミールの甥のエイブを演じたの平埜生成も同じでした。


イスラム教への純粋な信仰心から、指導者の救済のために奔走する姿をよく演じていました。でも今回はそれほど出番
が多くなかったので、演技についてはまだわからないところもありますが、来年のこまつ座第116回公演
『私はだれでしょう』にも出演決定とのことですから、関西で上演されたらぜひ観たいですね。

というわけで、事前によく調べないまま出かけたのですが、完成度の高い台本と、それを生かす巧みな演出、そして俳優
陣の熱演で思わぬ収穫となった舞台でした。

もし再演されたら、こんな感想など忘れて(殴)、ぜひご覧ください。おすすめです。



さて次は朝海ひかるさんの「幽霊」の感想ですが、別の意味でかなり怖い(殴)観劇でした。

10月から11月はそのほかにも空前の観劇ラッシュだったので、早くアップしないと賞味期限切れ続出となりそうです。(殴)
頑張らないと。^^;




兵庫芸文センターで「幽霊」を観て感じたことなど

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10月某日、兵庫芸文センター・中ホールで、幽霊を見てきました。
いえ、中ホールに幽霊が住み着いていて、それを見てきたとか、そこが心霊スポットだとかという
類の話ではありません。(殴)
シーエイティプロデュース企画・製作、朝海ひかる主演の「幽霊」です。

演出:鵜山仁

出演:朝海ひかる 安西慎太郎 吉原光夫 横田美紀 小山力也


以下、超短い感想(というか感想みたいなもの)です。いつものとおり敬称略です。

原作がイプセンということで、これは睡魔との闘いかも、と覚悟していきましたが、やはり定評ど
おり(でも『海の夫人』は良かったですが)、観劇しながら重い瞼を持ち上げ続けるのに必死でし
た。(殴)
しかし、問題はそれではなかった。^^;
今回も席は最前列だったので、幸せな観劇タイムのはずが、そうではなかったのです。

まあとにかく、入りが悪かった。

これまで数えきれないほど通ったこの劇場で、ほぼ半分が空席というのは初めての体験でした。

大体開場前のロビーがすでに虚ろで、開場時間となっても客が少ない。

客席に行っても、観客はまばら。

開演時間が迫って、ヨメさんが「ちょっと後ろの座席を見てくれない」というので振り返ると、一階
席上半分がほぼ空席という恐怖の現実。

舞台の出し物が怖いというより、空席が怖い。(殴) 見なければよかったです。とくに座席上部の
下手側はゴッソリ空席で、そこに三脚を付けたカメラが入っていて、ずっと撮影していました。

でも舞台が始まって、朝海ひかるが登場したときは、さすがに舞台映えするなーと感心したりして、
しばし舞台に見入っていました。

朝海ひかるのヘレーネ夫人はエリザベートを思わせる衣装に身を包み、存在感のある演技でよかった
です。


「国語元年」では控えめな役でしたが、今回は堂々の主役で、さすがに大劇場を背負っていただけに
見栄えがするなあとか感心しながら観ていたのですが、それも束の間(殴)、やがて、意味がありそう
で頭に入らない台詞の応酬と、起伏の少ない展開で、また空席のことが頭に浮かんできました。(笑)


私たちは後ろを振り返らない限り見なくて済みますが、舞台からは丸見えのはず。「こんな状態で、
よくめげずに芝居できるな」(殴)とか、あらぬことを考えてしまいました。なので、けっこうこちら
も辛い観劇となってしまいました。

でも2幕から3幕に進むにつれ、話の芯が見えてきてようやく面白くなってきました。

最後は満足して、カーテンコールではこちらも懸命に拍手して、逆境の出演者をねぎらったのですが(笑)、
やはり朝海ひかるは2回とも硬い表情のままで応えていました。無理もないですが。

ということで、まことに居心地の悪い観劇でした。こんなこともあるものですね。

ちなみに「海の夫人」も今回の「幽霊」も、主演が宝塚雪組トップというのが面白いです。

ともあれ、朝海ひかるの今後に期待したいです。


シァタードラマシティで「レティスとラベッジ」を観て  傑作コメディに拍手でした

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まだ「幽霊」のショックが残ったまま(笑)、10月23日にドラマシティで「レティスとラベッジ」を観てきま
した。

ちなみに10月は怒涛の観劇月間で、10月27日は宝塚大劇場で「ケイレブハント」、2日後にはまた兵庫芸文
センターで「雪まろげ」、そして11月5日も同センターで「マーダーバラッド」観劇で、本当に疲れました。
家計への負荷も高いです。^^;

それはさておき、前回と打って変わって「レティスとラベッジ」は満員の盛況でした。
おまけに大千穐楽とあって、アドリブの応酬も楽しめ、大いに盛り上がりました。
でも、これは観終えての話で、もともと私にとって全く気の進まない観劇でした。

ヨメさんは麻実れいさん目当てで早くから観る気満々。いつもなら私も、彼女の舞台はアリですが、なにせ今回
は黒柳徹子さんが主演と聞いたので、気持ちが萎えていました。
というのは、3年前の「兵庫県立美術館 奇跡のクラークコレクション」展で借りた音声ガイドの彼女の声が耳
にこびりついていたからです。(笑)
その時は滑舌が気になって絵画鑑賞どころではなかったので、それからも3年もたった今、到底無理だろうと
思っていました。

ともあれ、当日はいつになく交通量の少ない阪神高速を快調に進んで、シアタードラマにたどり着きました。
そしていよいよ開演時間となりました。
以下、感想です。例によって敬称略で、ネタバレありなので未見の方は要注意です。
(稽古の画像はプログラムから)

ミス・レティス・ドウーフェ(黒柳徹子)は、ロンドンの、ナショナルトラストのプロパ
ティによくあるような歴史的建造物の観光ガイドです。

でも、彼女が語る説明内容が退屈で観光客に受けず、自身も飽き飽きしています。

この、ガイドの場面で、私の予感は現実に。^^;
どこか息が漏れているような(殴)滑舌が気になって気になって、「やっぱり無理やな」と舞台に集中できず。
しかしそこはよくできた脚本で、だんだん滑舌の悪さは気にならなくなってきて(笑)、レティスが説明内容を勝
手に変え、面白おかしく解説する場面になって、俄然面白くなってきました。
舞台で破天荒なガイドに大喜びする観光客たちと、そんな大ウケに気をよくして、ますます脱線していくレティス。
客席も笑いの連続で、私も次第にテンションが上がってきました。

でもレティスの暴走を快く思わない客もいて、歴史保存委員会に苦情が寄せられるようになり、委員会のミス・
ロッテ・シェーン(麻実れい)が観光客に紛れて調査に現れ、レティスを詰問します。
この麻実れいの登場シーンがさっそうとしていて、しかもキレのあるさわやかな台詞で、「やっぱり舞台はこう
でなくては」と一人で納得。(笑)

やがてロッテは、レティスを呼び出して、クビを宣告します。でもその後、ロッテは意外にも意気消沈するレティ
スの家を訪れ、話し合ううちにお互いに共通するものを見出して二人は意気投合。

大喜びのレティスは、とっておきのハーブ酒・クワッフを取り出し、二人は乾杯します。





ところが6週間後、レティスはロッテを殺害しようとした容疑で告発されて、話は暗転。
二人の間に何があったのか、弁護士のバードルフ(団時朗)が登場し、やがて真相があきらかに
なっていく‥、という展開でした。


やはりこれまで何度も上演されているだけに、面白さ満載で、よくできた脚本でした。それに加えて、大千穐楽で
黒柳徹子もリラックスしたのか、団時朗に太鼓をたたいて歩かせる特訓場面でアドリブ炸裂。(笑) 

団時朗に「タン、タタタ、タン」と太鼓をたたかせる仕草をしながら歩く練習を何度もやらせてから、「あなた、
京都出身でしょ、京都弁しゃべりなさいよ」とか、自分も関西弁で漫才よろしく突っ込みを入れたりで、さすがの
団時朗もいじられっぱなしでタジタジ。

団時朗が長身をかがめながら黒柳徹子のアドリブに応える姿と、黒柳徹子のコメディエンヌぶり全開で客席はもう
大爆笑。
そして、そんな二人のやり取りを、舞台後方に腰かけて、ほほ笑みながらやさしく見守る麻実れいの姿も、普段の
舞台では見られない光景でした。

そして最後のカーテンコールとなって、客席は全員総立ちの拍手。私ももう滑舌はきれいさっぱり忘れて、それに
加わっていました。

本当に黒柳徹子の演劇センスは大したものでした。初演と前回の舞台が観たかったです。

私が彼女の名前を初めて知ったのは、NHKのラジオ番組「一丁目一番地」の「さえこ」さんから。
毎回さわやかなセリフを聞いて、子供心に淡い憧れのような感情を抱き続けていたのですが、後年テレビで初めて
お顔を拝見して、そんな思いは一瞬で消え去りました。(笑)

でも今回の初めての観劇で、私が知らなかった、役者としての豊かな才能を目の当たりに出来て、本当によかった
です。

というわけで、次は「ケイレブハント」。まだまだ忙しいです。

雪組大劇場公演『私立探偵ケイレブ・ハント』&『Greatest HITS!』の観劇メモ

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私が直近に観た正塚先生の公演といえば『ダンサセレナータ』。
でもこれがかなり期待外れだったので、今回は期待と不安が入り混じった中での観劇でした。

『ダンサ~』は、それまでの『マリポーサの花』とか『ブエノスアイレスの風』、『ラ・エスペランサ』などを適当に
切り貼りしたような(殴)、デジャブ感満載の話だったし、『ホテル・ステラマリス』に至っては大ガッカリな舞台だったので、
さすがの正塚大先生も、もうネタ切れかな(殴)とか、失礼なことを夫婦で話していたのですが、今回はテレビドラマや
映画を思わせるリアルな台詞のキャッチボールと、テンポのいい場面転換で、久しぶりの正統派・正塚ワールドに浸る
ことが出来ました。
(ただ、たまたま先日スカステを観ていたら、バウホール公演の『アンダーライン』が放映されていて、似たような場面が出てきたのはちょっとビックリでしたが)

まず、ハリウッドの撮影所での映画撮影から始まるオープニングがよく出来ていました。

映画監督(奏乃はると)の依頼で探偵事務所の所長のケイレブ(早霧せいな)が訪ねてくるという設定で、ケイレブも同席しての映画撮影中に、エキストラの女性が死亡する事故が発生するというつかみが秀逸。
そこから次々に起こる事件を追う中で、次第に客席の私たちも話に引き込まれて行って、まるでサスペンス映画やドラマ
を観ているような緊張感が心地よかったです。

早霧せいなはやはりこういう都会的な役がよく合いますね。レザースーツと細身のパンツという格好はルパンを思わ
せて、スタイリッシュでぴったりでした。
緊迫した場面が連続する中でも、恋人のイヴォンヌ(咲妃みゆ)とのラブシーンがいいアクセントになっていて、話が単
調にならずよかったです。

同じ事務所の仲間のジム(望海風斗)とカズノ(彩風咲奈)とのチームワークの良さも正塚作品らしく、それにロサンゼ
ルス警察のホレイショー(彩凪翔)と部下のライアン(永久輝せあ)が絡んで事件が展開していきます。

私は最初、望海風斗がケイレブを裏切って敵役になるのだろうと思っていましたが、正真正銘の仲間とわかって一安心(笑)。
なにしろ望海風斗のほうが腕力では圧倒的に強そうなので、相手にするとかなり手を焼く存在になりますからね。

で、彼らと対決するのは、芸能プロ社長のマクシミリアン(月城かなと)で、後半になってやっと舞台に登場します。まさ
に「真打は遅れてやってくる」。(笑)
その月城かなとのマクシミリアンを観て、とっさに『オーシャンズ11』のテリー・ベネディクトを思い出していました。
でもこのマクシミリアン、けっこう押し出しも利いて、しかも美形なので、出番は遅くても存在感はかなりなもの。
おいしい儲け役でした。たった一人で探偵事務所と警察を相手にするのですから、大したものです。(笑)

スタイリストのイヴォンヌ役の咲妃みゆは、これまで舞台では『星逢一夜』や『るろうに~」のような日本物の役しか観
ていなかった私たちには新鮮でした。
ケイレブとも対等に接する自立した女性ですが、彼をを心から愛している気持ちはよく伝わってきました。大人の女
役をよくこなしていて、早霧せいなと似合いのいいカップルです。


探偵事務所の共同出資者ジムの望海とカズノの彩風も、ケイレブと息の合ったいいチームワークでした。
ただジム役は、望海風斗には少々役不足感があって、もう少し濃い味付けにしてほしかったとも思ったり。
あと、経理係ダドリー(真那春人)や、事務員コートニー(早花まこ)、元事務所の秘書グレース(桃花ひな)、雑用係
トレバー(縣千)などの役も、正塚作品らしく役どころがリアル&細部まで丁寧に書き込まれていて楽しかったです。
(コーヒーメーカーのトラブルとか笑わせてくれます)

そして「男の友情」が大好きな正塚先生ゆえにケイレブの戦友ナイジェル(香綾しずる)が登場、でもあまり印象に残ら
ない役だなと思っていたら、これがちゃんとした伏線になっていて、最後に大きな役割を果たすというのも面白かったで
す。
というわけで、最後まで気持ちのいい緊張感が持続する舞台でした。

あと、劇中で使われている曲が耳によく馴染むきれいなメロディラインで、初めに主人公が歌っているときはあまり気に
留まらなかったのですが、望海風斗が歌う場面で俄然「ああいい曲だな」と感心。(殴)

今回の作品は、『二人だけの戦場』級の傑作とはいかなくても、一度は観ておくべき佳作だと思いました。

ショーの方はタイトル通りで、舞台のジュークボックスからヒット曲が次々に流れるという構成です。でも趣味のいい色
彩のいい衣装と、お馴染みの曲目でも陳腐にならず、巧みな曲順で楽しいショーでした。ただ、東京公演に合わせたため
に、10月にクリスマスソングメドレーを聞かされて、かなり場違い感があって残念でした。
それとベートーベンの「運命」を使った場面もちょっと馴染めず。ヨメさんにはかなり不評を買っていました。
でもそのあと、望海と彩風を中心とした大群舞から「オーバー・ザ・レインボウ」のデュエットダンスに続くところは見
どころ満載で満足の出来でした。

というわけで、遅すぎ・薄すぎの感想はおしまいです。m(__)m
ここまでご覧いただきありがとうございました。

10月はあと一作「雪まろげ」の感想が残っていますが、これぞ芝居の醍醐味という作品だったので、何とか近いうちにアップで
きそうです。

でも期待せずに(してないしてない)、またお立ち寄りいただければ幸いです。


花組公演『雪華抄』&『金色の砂漠』の観劇メモ 今年最良の作品でした!

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ブログのエントリーとしては、観劇順に「雪まろげ」→「マーダーバラッド」となるはずですが、花組の「金色の砂漠」があまりにも面白かったので、前二者は紹介できないままとなってしまいました。

でも、「雪まろげ」も面白かったです。(←かなり取って付けた感あり^^;)
とにかく出演者がみんな達者で、中でも榊原郁恵さんが本格派の演技で驚きました。
もちろん、主演の高畑淳子さんも、当たり役だった森光子さんに負けず劣らずの好演。今後、これが彼女の当たり芝居になるだろうと思いました。
でも、チケットを買った後に例の事件が発生して、芝居と関係のないとは頭で分かっていても、観るまでは複雑な思いでした。
そんな邪念も当日、幕が上がると見事にたちまち雲散霧消。すぐに舞台に引き込まれ、芝居巧者ぞろいの出演者と、これぞ大衆演劇の王道といった脚本の良さが相まって、ドップリ舞台で繰り広げられる世界に浸れました。

逆に「マーダーバラッド」の方はちょっと私には合わない舞台でした。
セリフは一切なくて、代わりに大音量の生演奏を背景にロック調の歌が次々に流れるという舞台なので、話のディテールはほとんど聞き取れず。
まあストーリーそのものは単純なので、大まかな流れは観ていたら分かるものの、出演者の細かい感情の襞ややり取りの機微が分からないのは辛かったです。なので、大音量の舞台なのに次第に睡魔が忍び寄ってきて、観劇中はそれとの闘いに苦労しました。(殴)
大音量でも眠くなるというのは、かつての「白昼の稲妻」でも体験しましたが。(殴)
でも隣のヨメさんには気付かれず、「寝てなかった?」という問いには「全然!」とシラッと答えることができたり。(殴)

余談はこれくらいにして、花組公演の感想です。例によって敬称略。
以下、少々ネタバレもあるので、未見の方はここでUターンが吉です。

「雪華抄」は宝塚お得意の、チョンパで始まる日本物レビューです。


観劇当日は、修学旅行生が大勢観劇していましたが、真っ暗な舞台から一転、照明に照らされた舞台狭しと並ぶフルメンバーの豪華な幕開けを見て、それまでのガヤガヤは一瞬で感嘆の声に変わりました。

上演時間は50分と短いのですが、よく作りこまれた斬新な場面が多く、演出家の意欲がよく感じ取れました。舞台装置も今では常連の感がある松井るみによる、和のテイストを盛り込みながらも現代的な感覚が斬新なデザイン。
とくに印象に残った場面は、鷲の群れに鷹が戦いを挑む第3場。荒々しい岩場での熊鷹(明日海)と狗鷲(柚香光)の一騎打ちがみものでした。






続く七夕の幻想的な雰囲気から一転して、第5場の「波の華」では民謡メドレーとなります。瀬戸かずやの「大漁歌い込み」から始まって、




明日海りおや芹香斗亜が「貝殻節」、「尾鷲節」、「佐渡おけさ」、「串本節」などの民謡を歌いつないでいくところでは、客席からも手拍子が起こって盛り上がりました。

そして尾鷲や串本の民謡から紀州熊野につないで、続く「清姫綺譚」は安珍清姫伝説がテーマ。花乃の清姫の早変わりもあって、ドラマチックなクライマックスでした。




そして開の桜の花びらのもとでの群舞でフィナーレ。
まあ題材は宝塚定番のものもありましたが、作・演出の原田諒の若々しい感性が光り、全く陳腐さの感じられないレビューでした。

その後いつもより早い休憩の後、いよいよ期待の「金色の砂漠」です。
久しぶりに買ったプログラムです↓


全体の感想ですが、とにかく脚本がすごい。
私にとっては、今年のタカラヅカでは最良の舞台でした。

話としては「貴種流離譚」の一種とも言えますが、オリジナリティにあふれ、二本物とは思えない緻密な構成で、ストーリーは波乱万丈。

陳腐な例えですが、学生時代に、「赤と黒」とか「パルムの僧院」を手にした時のようなワクワク感を感じました。
スカステで放送された『月雲の皇子』を見て初めてこの新進演出家の名を知り、その後ドラマシティで『翼ある人々』を観劇して、その完成度の高さに驚きましたが、今回は、さらに充実した作品になっていました。

ストーリーがあまりにもよく出来ているので、観劇中なにかベースになった話があるのかなとか邪推していましたが、全くオリジナル作品ということで、感心しました。
話がどんどん広がっていくので、どんな結末になるのか心配になったりしたのですが、これまたうまく話を収めていました。結末までの伏線もちゃんと張られていてまったく破たんなし。
そして主人公のみならず、登場するすべての人物の造形も素晴らしい。なので、出演者みんなが生き生きとしていて、役になり切っていました。こんな脚本、そうそうお目にかかれないです。大したものです。でももう一度観たいと思っても千秋楽間近という日程だったので出来ず残念でした。

それと、セットがまたよかった。力作の脚本にふさわしい出来で、「王家~」よりも豪華に感じたほどです。劇中の歌も耳に残るいい曲で、聞きほれました。

プロローグは、夜の砂漠を全身マントで覆った旅人の列が進んでいくところから。
王国を追われた人々が、葬送の列のように力なく歩いていきます。
その後、主人公ギィが古代ペルシャの楽器バルバトを手に静かに歌い出すというところから、王国イスファンの華麗な舞踊の場面に変わっていく導入部が本当にいい!!これだけでもう大作の予感。(笑)
上田久美子の作品を観ていると、初期の黒澤とかスピルバーグの映画作品のような、作り手自身が、楽しんで作品に挑んでいるような新鮮な意欲が伝わってきます。
それと、今回の作品にも、全編に「翼ある人々」にも通じる哀愁が通底していて、話になんともいえない深みを感じました。ヘッセの「オーレリアン」などの作品をつい思い出したり。

ということで、出演者ごとに。

まずギィ役の明日海りおから。

彼女の演技力を改めて感じました。
でも驚いたのは、主人公ギィが奴隷という設定。

冒頭から、幼少時から仕える王女タルハーミネに踏みつけにされる場面とか、「奴隷は石や砂と同じで感情を持たないのよ」と蔑まれる場面が続いて、ギィに感情移入しているこちらも一緒にいじめられ続ます。(笑)




明日海りおは奴隷生活を送る間の、絶望と諦観に支配された演技から、後半一変して復讐に立ち上がる強い男に変わる対比が見事でした。場面としては弦楽器バルバトを弾いているときのギィの感情を押し殺したような表情が印象的でした。
少年時代を全く違和感なく演じていたのにも感心しました。








王女タルハーミネ役の花乃まりあも、彼女のタカラヅカ生活の集大成といえる演技で、ギィとの波乱に満ちた生涯をよく体現していました。

これまでどちらかといえば庶民的な役が似合う容貌だと思っていましたが、今回は王族の衣装が合っていて、気品も表現できていて、見直しました。

上に書いたように、男トップを踏みつけにするという仰天の演出や、「奴隷なんて感情を持たない砂みたいなもの」と言い放ちながら、実はギィを憎からず思っているという複雑な人物像をよく表現していました。

芹香斗亜は、第二王女ビルマーヤ(桜咲彩花)の奴隷「ジャー」役で、狂言回しの役を兼ねたおいしい役をもらっていました。





ジャーの語りで話が進行し、この物語が、ジャーとともに生きた、すべての人々を弔う叙事詩になっているという心憎い設定です。役柄も優しくて思いやりのある好青年でピッタリ。
与えられた役に十二分に応える歌と演技で、二番手の存在感を示していました。何度も言っていますが、この人は本当に成長しましたね。

ガリア国の王子「テオドロス」役の柚香光ももうけ役でした。

外見に似合わず(殴)、常識をわきまえたいい人で、この人の台詞を聞くとホッとしたり。(笑)

ギィにメンツをつぶされても穏当な対応で、大人です。でも出番も多く、王子にふさわしい品格と爽やかな風貌で目立っていました。

この4人以外も役が多く、しかもみんな適材適所で、役が多いのに個性が際立っていて、それぞれの人物の個性がよくわかりました。
まず奴隷プリーの瀬戸かずやが彼女の持ち味を生かした演技で楽しそうでした。(笑)

ブリーと、その主人である第三王女シャラデハ(音くり寿)の応酬も面白いし、イスファン国王シャハンギールの鳳月杏も威厳と貫禄があり適役。
狩りの場面で

矢に当たった鳥がドサッと落ちてくるのも面白い!


その妻で、王妃アムダリアの仙名彩世も、波乱に満ちた人生を熱演していました。歌が印象的でした。
英真なおきのピピや、高翔みず希のナルギスも安定した演技で、出番は少ないものの、花野じゅりあの女盗賊ラクメも、野性的な魅力たっぷりでよかったです。一本ものだったら、ラクメとギィの場面ももっと膨らませることができて、さらに面白くなったでしょうね。

何度も言いますが、二本物でこれだけ多彩な人物を登場させて、どれもリアルに生き生きと描いている演出家の力量には脱帽です。
フィナーレも見ごたえがあり、今年最後の大劇場公演にふさわしい力作でした。本当にリピートできなかったのが残念です。

これ↓はおまけです










というわけで、今年のタカラヅカ観劇は終わりました。最後に有終の美を飾る秀作を楽しめてよかったです。



今年の美術展は、大谷記念美術館『日本画にみる四季のうつろい』から。

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明けましておめでとうございます。昨年は、中小零細・人跡稀な当ブログをご覧いただき、ありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年初の美術館巡りとして、1月2日に大谷記念美術館に行ってきました。
館蔵品の中から「日本画にみる 四季のうつろい」と題して約50点が展示されています。
(画像は当日購入した絵葉書から)
ちなみに去年の最終は、大阪国立国際美術館の「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」でした。(1月15日まで開催)
宗教画が中心で、ジョヴァンニ・ベッリーニからクリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼまで、ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たちの傑作が展示されていました。とくにティツィアーノの晩年の大作「受胎告知」(サン・サルヴァドール聖堂)は圧巻でした。


それはさておき、大谷美術館の開館は午前10時なので、9時すぎに出発。予定通り10時には駐車場に到着しました。まず庭園のロウバイの開花を確認しましたが、今年はまだ蕾ばかりで、ちょっとガッカリ。

気を取り直して館内に。初日ですが、正月とあって、観客は少なく、ゆったり鑑賞できました。

まず目に入ったのは山下摩起の「雪」。

これまでも何度か観ていますが、いつ観ても新鮮です。
笹に積もった重い湿った雪が、時折葉から落ちて、静かな庭にその音が響くといった感じがよく表現されています。近くで細部を見ると何が描いてあるのかわからないような荒々しい筆致ですが、少し距離を置いて観ると、くっきり笹や雪が見えてくるのが不思議です。

この画家の作品は他にも「椿」・「さざんか」・「女三態之図」が展示されていましたが、とくに後者の「女三態之図」は、古典的な女性を題材にしながら現代的な表現が印象的でした。
          「さざんか」↓


「女三態之図」↓


今回の目玉は河合玉堂と上村松園、伊藤深水の作品群です。いずれも代表作といえる逸品ぞろいで見ごたえ十分。中でも河合玉堂の「乗鞍」をはじめとする8点の作品はどれも詩情があふれ、分かりやすくて(笑)、いい絵ばかり。

「乗鞍」↓


上村松園は3点、伊藤深水も4点並べて展示されているので、両者の作風の違いがよくわかりました。
松園は端正で上品、それに比べると深水は親しみやすい(平たくいうと俗っぽい(殴))し容貌も写実的です。でもどちらもいい傑作ばかりで、しばらく足が止まってしまいました。
松園の「蛍」と

深水の「菊」がとくに良かったです。

単品でも小倉遊亀の「赤鉢絵」や

横山大観、菱田春草に前田青邨、堂本印象、山元春挙など、日本画の大家の名品が展示されていて、お正月にふさわしい豪華な展示でした。

          菱田春草「秋林遊鹿」↓


         山元春挙「雪渓遊鹿図」↓ さて鹿はどこにいるでしょう?


観終えて受付で絵葉書(@50円!!)を買ってから、庭園巡り。
先に書いたようにロウバイはまだでしたが、シコンノボタン(紫紺野牡丹)がたくさん花をつけていました。


この展覧会は2月12日まで開催されています。ぜひご覧ください。おすすめです。

万葉文化館「万葉コレクション展 新しき仲間たち4」、おすすめです!

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大谷記念美術館に続いて、7日に万葉文化館に行き、「万葉コレクション展 新しき仲間たち4」を観てきました。この展覧会は2月26日(日)まで開催されています。

今回も大谷同様に館蔵品展で、絵画は三部構成の展示でした。

第1部は「新しき仲間たち」として2015年度に寄贈された37点の作品を展示、第2部は「万葉コレクション」として歴代の寄贈作品18点が展示され、第3部は「万葉日本画大賞展」で、これまで万葉文化館が主催した「万葉日本画大賞」の受賞作品のうち15点が展示されていました。他に、万葉陶磁器人形10点と、常連の感がある大亦観風の「万葉集画撰」から10点が展示されていました。

絵画はいずれも名品ぞろいで見ごたえタップリ。

第1部は、井上 稔と烏頭尾 精の作品がズラリと並んでいて壮観でしたが、私は中路 融人(なかじ ゆうじん)の『山湖』と、三瀬 夏之介の『風土の記(かぜつちのき)』が良かったです。『山湖』はそれほど大きな作品ではないのに遠目からも目立つインパクトのある絵でした。対照的に『風土の記』はパネル8枚組の大作で、力強い筆致でド迫力。

第2部では、新井 冨美郎の『穂高岳』、久保 嶺爾の『曽爾冬声』、三輪晃久の『万緑』と由里本 出の『激つ瀬(たぎつせ)』が印象に残りました。

三輪晃久の『万緑』です↓


とくに久保 嶺爾の『曽爾冬声』は、学生の時よく通った曽爾高原がリアルに描かれていて、冬の静かな高原のたたずまいや、遠くに描かれた古光山がなつかしく、しばらく画面に見とれていました。

第3部は万葉文化館が主催した「万葉日本画大賞」の第1回から第5回までの受賞作品が展示されていました。いずれもさすがに受賞作品だけあって逸品ぞろい。この展示だけでも見ごたえ十分でした。
中でも第2回の大賞に選ばれた古屋 雅子の『緑薫(りょくぶ)』がよかったです。↓(当日購入した絵葉書から)


次は第1回の準大賞に選ばれた大矢眞弓の『秋色』と、

第2回の準大賞作品の長谷川 喜久の『アサヨヒ』が

甲乙つけがたいいい絵でした。

でも、館蔵品展とはいえ今回も観客は少なくて、その分ゆっくり観られたものの、いささか寂しかったです。おかげで何度も展示会場を往復したりして楽しめましたが、ヨメさんも「せめて大谷ぐらいのお客さんがあればね」と嘆いていました。やはり交通の便が悪いのでしょうか。でも定期バスは通っているので、知名度が低いせいかもと思ったり。

観終えて、館内のカフェで昼食。
私は、サンドイッチ+カレーセット、ヨメさんはスペシャルサンドと水出しコーヒーを注文しました。パンは天然酵母でおいしかったですが、ランチメニューが少し前から無くなってしまったのが残念。
ミュージアムショップで絵葉書や便箋などを買いましたが、会場内に見本があった中路融人展の図録が売り切れでプチがっかり。

というわけで、館蔵品展なのであまり期待せずに出かけたのですが、大谷記念美術館に続いていい絵が観られて、満足でした。

万葉文化館は完全バリアフリーで、車椅子利用者も快適に見られるし、富本銭の出土遺構や、万葉集の時代の生活を紹介する展示も多彩で、本当にいい施設だと思います。

ぜひ皆さんもお出かけになってご覧ください。おすすめです。


宝塚月組公演『『グランドホテル』 『カルーセル輪舞曲(ロンド)』の観劇メモ

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1月12日に月組トップお披露目公演「グランドホテル」と「カル―セル輪舞曲(ロンド)」を観てきました。
去年5月に梅芸で、グルーシンスカヤを安寿ミラが演じるグリーンチームの「グランドホテル」を観ていたので、
タカラヅカではどんな舞台になっているのか興味津々で出かけました。
梅芸版「グランドホテル」です↓




当日は車も少なく、9時40分には車椅子を押して劇場へ。団体客が少なくて、開場前でもホールがまばらだったの
で客足が心配でしたが、立ち見こそなかったものの、1階席はほぼ満席でした。

梅田芸術劇場で「グランドホテル」を観たとき、今回の月組メンバーも観劇に来ていて、一階通路端のヨメさんの
車椅子席の横にもそのうちの一人が座っていました。なので、他の月組生が通路を通るときは挨拶を交わしたり立
話していくので、至近距離で美弥るりかさんとか見られてプチ・ラッキー。(笑)
でもまあみなさん、近くで見ると心配になるほど華奢で細い。(笑)

という余談はこれくらいにして、「グランドホテル」の感想です。例によって敬称略です。

良かったです。正月公演にふさわしい作品でした。
珠城りょうの新生月組、上々のスタートでした。梅芸版とは違ってわかりやすく、すぐに話に浸れました。(笑) 
ただし梅芸版と違って時代背景の描写は希薄で、終盤にホテルの従業員が客の衣服や荷物を暴力的に奪うといった
刺激的な場面もない脚本でしたが、まあそれはそれで宝塚らしくていいかなと思ったり。
舞台装置も梅芸版のような二階建ての重厚なものではなく、回転ドアもいたってシンプルでしたが、その軽さも宝
塚らしさかな。

でもこの話は、まさに元祖群像劇なので、誰が主人公であってもいい設定ですね。初演は退団する涼風真世のオットー
が主役になっていたし、梅芸版はオットーとグルーシンスカヤに焦点が当たっていました。

以下、役ごとの感想です。
珠城りょうはガタイが大きくて(笑)、安心して観ていられるトップさんでした。
プログラムです↓



20世紀になって、もはや時代錯誤な存在の「男爵」フェリックスを、貧乏でも気品とダンディさを失わない人物として好演し、
トップらしい存在感を十分に見せてくれました。大劇場でのトップお披露目公演でも力まずに、自然に演じていて、好感度極大。




ただ、善人に見え過ぎて、金もないのにホテルに居座り続け、コソ泥というか詐欺師まがいのいい加減な人生を送って
いる男のように見えないのは、彼女のキャラクタのせいでしょうか。(笑)
まあ私としては、とにかく恰幅が良くて(笑)、立ち姿がまことに男らしいのがなにより。(笑)
やはり男トップはこうでなくては。(笑)


フェリックスがグルーシンスカヤと鉢合わせして一目惚れする場面は、短いながら息の合った演技で、その後の展開の
いい伏線になっていました。いいコンビになりましたね。

その愛希れいかのグルーシンスカヤですが、安寿ミラの印象が強く刷り込まれていたので、最初は「やはり若過ぎでムリかな」
と思いながら観ていました。
安寿ミラのグルーシンスカヤです↓(プログラムより)


でも、話の進行につれてそんな違和感は消し飛んで、いつのまにか見惚れていました。





最盛期を過ぎたプリマ・バレリーナの、踊りへの自信喪失と、それでも過去の栄光が忘れられない揺れる心情がよく表現
されていて、演技力に改めて感心しました。もちろん歌もダンスも大したものです。

今回私が一番注目したのが美弥るりか。

ようやく二番手確定で本当に良かったです。(笑)
それで自信もついたのか、簿記係・オットー・クリンゲラインを、初演版の涼風真世のオットーと比べても全く見劣り
しない演技(ヨメさん談)で、登場するたびにオペラで追い続けてしまいました。細身で小柄な体型もピッタリでした。





余命数カ月の病弱なしがない簿記係が、一生の思い出にホテルにやってくるが、そのあまりにも場違いな風体に、ホテル
での宿泊を断られて門前払い。でも通りかかったフェリックスのとっさの機転で無事、宿泊できるようになるという場面では
こちらもついホッとしたり。(笑)

ようやく彼女もいい役に巡り合えて、本当によかったです。
でも余談ですが、これからこの人を歌劇団はどう遇するのでしょうか。二番手といっても珠城りょうよりかなり上級生で、
月組でトップは無理かなとか、つい老爺心(笑)ながら心配してしまいますね。

あとはグルーシンスカヤの付き人のラファエラ(朝美絢)が大湖せしるみたいな強さのある美人で嵌りました(殴)。
このまま女役に転向してもいいのではと妄想したり。
億万長者のスケベな実業家プライジング(華形ひかる)や、

表面的にはチャラいけど実際はけっこう苦労しているタイピストのフラムシェン(海乃美月)、老医師
オッテルンシュラーグ(夏美よう)も、それぞれ人物造形が巧みで、やりがいのある役になっています。
夏美ようは、ほぼ出ずっぱりの狂言回し的な役回りですが、まさにいぶし銀のようないい味出していました。
暁千星は、妻がお産で入院しているフロント係のエリック役。メガネの制服姿がよく似合っていてスッキリ
さわやかな好青年です。あと、宇月颯の運転手役が、出番は少なくてもインパクトがありましたが、結構謎な
人物ですね。

結局群像劇といっても、最後はフェリックスとグルーシンスカヤ、クリンゲラインとフラムシェンという4人の話に焦点が絞られ
ていくので、散漫にならず緊張感が持続する作品になっていました。たった一日の出来事とは思えない濃密な舞台で、しかも
サスペンス風なドンデン返しもあって、見ごたえたっぷり。

一方、「モン・パリ誕生90周年レヴューロマン」と銘打ったショー「カルーセル 輪舞曲」もいいできでした。
舞台上に、淡い照明に照らされて4頭の回転木馬が浮かんでいるのを見ただけで、いやおうなしに期待が高まりました。

本当によくできた完成度の高い回転木馬で、大道具さん、いい仕事をしていました。

ショーは、「この星は廻り続ける 命の輪のように 回転木馬は回る 今白馬に命
を預けて廻る世界へ行こう」という歌詞に合わせて、レヴュー発祥の地パリからアメリカ・ニューヨーク、
メキシコ、ブラジル、シルクロードからインドへと旅をして、最後は日本のタカラヅカにたどり着くという設定です。
水先案内人の華形に誘われて、白馬たちの世界一周の旅が始まります。

まず「白馬の王子」珠城りょうが登場して歌い、
















やがて白馬の美女・愛希れいかや白馬の紳士たちが華やかに歌と踊りに加わって、ニューヨーク、メキシコ、ブラジルの場面へと進み、途中でカポエイラも登場して



見せ場が続きました。
カポエイラといえば、以前にも稲葉センセイが星組公演『パッショネイト・宝塚!』のファベーラの場面で、アフロブラジリアン
ダンスを交えて好評でしたが、今回も同じ森陽子を振付に起用して、インパクトのある場面になっていました。

愛希れいかがドッキリな衣装&抜群のスタイルで超セクシー↓










珠城りょうもリフトを頑張っていました↓








私はいまだにショーの出来の良し悪しがよくわかっていないのですが、今回の「カルーセル 輪舞曲」はそんな私でもよくわかる
いい作品でした。やはり稲葉先生、今回もGood Job!です。
場面展開がよく練られているし、衣装の色遣いのセンスが良くてきれいです。音楽も、シルクロードの場面での男女のカゲソロ
が印象的でした。

終わってすぐ、プログラムで誰が歌っていたか確認したほど。それ以外もいい曲ばかりで、月組メンバーとトップコンビの持ち味
がよく生かされていました。
珠城りょうは歌と踊りいずれもトップにふさわしい完成度で、愛希れいかも持ち前の身体能力の高さと、手足の長さを活かした優美
な踊りと、いっそう磨きのかかった歌で魅せてくれました。


まことにバランスのいいコンビで、これまでは敬遠気味だった月組の観劇が楽しみになりました。

おすすめです。

宙組公演「王妃の館」&「VIVA!FESTA!」のささやかな観劇メモ

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2月9日に、宙組公演「王妃の館」&「VIVA!FESTA!」を観てきました。
前日の天気予報では「平地でも10cmの降雪」だったのですが、朝は小雨が降っていたものの、雪はナシで一安心。
宝塚付近も弱い雨で、傘を片手に車椅子を押して大劇場に行きました。前回と違って高校生の団体観劇でホールは賑わっていました。今回の席は18列上手寄りで、ヨメさんは客席降りを期待して通路側の席。
という前置きはこのくらいで、感想です。前もってお断りしておきますが、少々ネタバレありで絶賛モードではなく、これまで以上に内容希薄で、私の好みだけの感想です。(^^; いつもの通り敬称略です。

まず芝居ですが、久しぶりのドタバタ喜劇。(笑) スラプスティック・コメディ。
初めは、格安/豪華2つのツアーのダブルブッキング騒動と、ルイ14世とディアナの悲恋がどう絡むのか、展開に期待して観ていましたが、途中からだんだん話の限界が見えてきたので、単純にドタバタを楽しむことにしました。
でもこれが実咲凜音のサヨナラ公演とは、なんとも微妙な作品。

幕が上がってすぐにお笑いが始まって、一気に筋弛緩状態(殴)。

話は、朝夏まなと扮するスランプ気味の流行作家・北白川右京が参加するデラックス・ツアーと、同じ旅行社の格安ツアーが、パリの高級ホテル「王妃の館」に同時に宿泊するダブルブッキング騒ぎです。


このドタバタ騒動にたまりかねて、元の住人であるルイ14世が肖像画から抜け出して登場、その愛人ディアナとの悲劇の歴史も絡むというストーリーですが、脚本はあまり話のディテールにはこだわっていなくて、むしろ登場人物のギャグで笑わせるという感じ。私としては伶美うららのディアナの場面が少なくて、ちょっと残念でした。でもきれいでしたねー(殴)。見惚れます。

今回一番の儲け役はなんといっても不動産王・金沢貫一(金色夜叉を連想しました(笑))役の愛月ひかる。




まあ今時、ネイティブでもこんな話し方はせんやろ!みたいなコテコテの大阪弁で、その職業とガラの悪さ・品のなさが某大統領のイメージとダブって、可笑しさ倍増でした。
この人、私的には去年のルキーニの好演以来一皮むけた印象が強く、今回もガラッと変わった役どころをのびのびと演じていて好感度大です。

朝夏まなとの北白川右京(クサイペンネームです)は、スランプ状態を脱しようと、新作「ベルサイユの百合」(笑)のネタ集めのためにツアーに参加したという設定でした。




人気に陰りが出ても自信満々の高慢な態度のギャップが面白くて大ウケ、爆笑の連続でした。朝夏まなとはこれまでの真面目な役柄とは違う意外な側面を見せた感じで、新鮮でした。




弱小旅行代理店の女社長兼ツアーコンダクター・桜井玲子役の実咲凜音も同じような印象で、ドタバタ劇でも真面目に丁寧に演じていて、それが逆に面白く楽しめました。



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ただ、朝夏まなととはあまり絡まないのでどうなるのかと思っていましたが、かなり「取って付けた」感ありながらも、最後は二人をなんとかくっ付けていました。(笑)

もう一方の格安ツアーの引率者・戸川光男は桜木みなと。ダブルブッキングがバレるのではといつも小心翼々、びくびくしながらツアーを引率しています。




あとは北白川の担当編集者・早見リツ子の純矢ちとせ、


町工場の社長夫妻に寿つかさと美風舞良、影グループの元夜間高校教師の一樹千尋が、いつもの安定した演技でしたが、いずれも役不足で、もったいない感もありました。

その中で一人やたらに目立っていたのがオカマの青年・クレヨンこと黒岩源太役の蒼羽りく。

宝塚の男役がおかまを演じるというややこしい設定が可笑しいし、でも、というか当然というか、女装がよく似合っていて(殴)、オーバーな演技ながらきれい。出てきただけで客席の笑いを誘うトクな役でした。本人も客席の反応を楽しんでいる様子でしたね。


もう一方の主役級・ルイ14世の亡霊は真風涼帆。





日本人客の傍若無人ぶりに耐えかねて出てきたものの、いつのまにかその怒りは消え、ベルサイユ宮殿のツアーガイドになっているというのが可笑しいです。喜劇とはいえ衣装は宝塚らしく豪華で、真風も真面目にル堂々としたイ14世を演じていて(笑)、これまた目立つ存在でした。




ルイ14世の300年の悲恋の相手のディアナ役の伶美うららは、持ち前の美貌でまさに適役。







でも先に書いたように出番が少ないのが勿体ない。

「VIVA!FESTA!」はよくまとまっていましたが、最近の良作レビュー続きの後ではちょっと新味に欠ける感じ。

祭りが主題なので、オープニングから大迫力のカーニバル、客席おりもたっぷりでヨメさんもハイタッチしてもらって大喜び。


その後場面は一転し、闘牛士の場面では牛と闘牛士の一騎打ちが見ものでした。ただそれに続くYOSAKOIソーランは、客席と一体になって盛り上がったものの、これまたデジャブ感がありました。







でも客席も大きな手拍子で参加して大ノリでしたね。
あとはラインダンスで、伶美うららが美脚のダルマ姿を披露して、





芝居での物足りなさをカバーしてくれて大満足。

澄輝と桜木も頑張ってフィナーレを盛り上げて


トップコンビのデュエットでは、朝夏まなとがこれでもかのトルネード(笑)リフトで頑張っていました。美咲凛音への思いが伝わってきた感じでした。




観終えてヨメさんとの感想で一致したのは、「芝居とショー、一度は観るべきだけど、リピートまではいかないね」という点でした。(あくまで個人の感想です)(笑)

同じ喜劇でも「こうもり」や「ガイズ~」は文句なしにリピート!となりましたが‥。(^^;

最後ですが、今回退団公演となった美咲凛音にとって、いろいろ思うところの多いタカラヅカ生活だったと思いますね。
あくまでスカステのナウオンとかの番組で見ただけの印象ですが、ぎこちない凰稀かなめとのコンビから、朝夏まなとに変わって、持ち味を生かしたいい舞台(今回はちょっと?ですが)も経験出来たと思うので、よかったと思います。

というわけで感想は終わりです。ここまでご覧いただきありがとうございました。

次回のタカラヅカは4月、3月は兵庫芸文センターで2回観劇する予定です。
また機会があればご覧ください。

エプソンBT-300でInspire1を飛ばしてみました

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Inspire1のためにエプソンのBT-300を購入したおバカな出来心のお話です。

ただ、年金暮らしには結構高額なので、小心な私は、事前に商品情報をチェックしたものの、散々迷いました。

まず肝心のDJIGOが使えるかどうかです。BT-200ではアンドロイドのバージョンが古くてインストール不可。
新しいAndroidなら当然使えるだろうというのは間違いで、BT-200同様、エプソンがMOVERIO Apps Marketに登録するまではどんなアプリもインストールできません。
でも発売後しばらくたって、エプソンからDJIGOが使えるとアナウンスがあったので、昨年12月、小遣いと某家電量販店のポイントを使ってポチッとな。
手元に届いた、BT-200より少しスマートになったデザインにちょっとわくわくしながらパッケージを開けました。
充電器はBT-200と同じものが付属していました。


かけ心地はよくなりましたが、やはりかけっぱなしでは飛行準備などの邪魔になるので、BT-200同様、眼鏡の「つる」の部分に穴をあけて、ネックストラップを使えるようにしました。

操作性は相変わらずクセがあり、MOVERIO Apps Marketのアカウント作成ではBluetoothのキーボード&マウスが必要でした。


いい点は、Inspire1の送信機のホルダーにBT-300本体が簡単に装着できること。それと、ヘッドホンもコードの長さが適切でまあまあ実用的。追加加工が必要なのはネックストラップです。ないと飛行前の準備が煩わしいです。他によくなった点は、ケースがコンパクトになったので、携帯性がよくなったこと。なので、ThinkTANKヘリパックの空きスペースにもスッポリ入るのが便利です。




そして某日、飛ばしに出かけました。




結論はOK! タブレットと比べたら視線の移動が少なくなるので便利です。

0.43型のシリコンOLED(有機EL)を採用したので、BT-200と比較したら画面が明るくなり、解像度も上がったので格段に見やすくなっています。
ただ、連続して使用していると今の時期でも本体がかなり温かくなるのが懸念材料です。まあタブレットでも同様なので、BT-300だけの問題ではありませんが。
当初は、自宅でテスト中に映像転送が遅れることが何回かありましたが、現場では全くなく、快適に飛ばせました。

これでタブレットへの背景の映り込み防止のために冬でも麦藁帽をかぶって飛ばす恥ずかしい姿ともおさらばです。(笑)

あと、3月に入って久々にエプソンのサイトをチェックしたらファームウェアの更新のお知らせがあったので、さっそく実行。さらにファームアップと前後してDJI GO4もインストールできたので、Phantom4やInspire2でも使えるようになり一安心。

BT-200と違って今度は長く使えそうです(と思いたい(笑))。

兵庫芸文センター・二兎社公演「ザ・空気」の観劇メモ いい舞台でした 

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先月3月18日に、久しぶりの兵庫芸文セーターで「ザ・空気」を観てきました。
作・演出は永井愛さん。観劇は「鴎外の怪談」「書く女」に次いで3度目となりますが、描かれた作品の深さとシャープな問題意識に毎観劇感心しまくっています。作品のテーマは井上ひさしにも共通するものがありますが、取り上げ方ははるかに生真面目です。(笑)

出演は田中哲司・若村麻由美・江口のりこ・大窪人衛・木場勝己と芸達者ぞろい。

テーマは、「報道の自由度ランキング」世界第72位!と惨憺たる日本のマスコミの現状を、正面からリアルに描いています。
あるテレビ局が、法務大臣の「電波停止」発言を契機に、ドイツと日本の報道の現状を特集番組で取り上げることになり、その作成過程での、番組内容を巡り、現場のスタッフと、経営陣との息詰まるリアルな駆け引きが描かれていました。

放送開始まであと数時間という限られた時間設定のもとで、内容の変更を迫られる現場スタッフ。そのリアルなやりとりがドキュメンタリーを見ているような緊迫感で、観ていてこちらも息苦しくなるほどで、終始客席で固まっていました。(笑)
見終えても重い余韻が胸にたまって金縛り状態、脚本・演出そして出演者の演技どれをとっても良くできたいい舞台でしたが、とてもスタンディングできずにいました。誰もが同じ思いだったようで、拍手で熱演にこたえていたものの、誰も立てず。(笑)

でも観劇して本当に良かったです。
政府自らが憲法違反の悪法を次々と出してきて、それを一部のマスコミがなりふり構わず翼賛報道する、現在の日本に流れるきな臭い「時代の空気」と、名ばかりの「報道の自由」。その現実について改めて考えさせられました。
日本の演劇界のもっとも鋭敏ですぐれた感性が作り上げた作品でした。

「鴎外の怪談」も森鴎外について、これまで取り上げられてこなかった視点からその人物像を描いていて新鮮でした。また「書く女」では、井上ひさしとは違った角度から一葉とその作品を取り上げていて、「頭痛肩こり‥」との対比が面白かったです。

ということで簡単に役者さんごとに感想です。例によって敬称略です。

舞台にはテレビ局内のエレベーターホールと各室への通路を切り取ったようなシンプルなセット。両開きのエレベーターの乗降ドアの開閉がリアルで、よくできていました。

主役は田中哲司演じる編集長・今森俊一。

はじめてお目にかかる役者さんでした。最初はお手並み拝見みたいに距離を置いてみていましたが、すぐ感情移入できるようになった説得力のある演技でした。若村麻由美の演じる人気キャスター・来宮楠子とのせりふの応酬も絶妙。

若村麻由美も役と自身のキャラクターがうまく重なって、こちらも違和感のない人物でした。

「鉈きり丸」の北条雅子や「頭痛肩こり‥」の幽霊とはまた違った、実在感のある演技でした。役的には、最後に会社の「空気」にちゃっかり寄り添って、世渡り上手なキャスターになって現れたのでガッカリしかけたら、最後の最後にまた意味深な行動を見せて、二人のその後についていろいろ含みのあるエンディングでした。観ていてこちらも救われました。(笑)

ただ、彼女、最近かなり体を絞ったのか、お顔が前二作よりシャープになったというかやつれたというか(殴)、ちょっとアレ?なとんがった感じでした。まあバリバリ売り出し中のキャスターらしいといえますが、私的には前のフックラなほうが良かったな。

報道番組のアンカー・大雲要人(まんまな名前(笑)で、かなとと読むそうです)役はおなじみの木場勝己。

この人もピッタリのキャストです。古狸で、海千山千というか百戦錬磨というか、経営者への目配り重視、「空気」をよむ達人という役。円熟した演技で、出てきただけで舞台に重厚さが加わる、宝塚で言えば一樹千尋みたいな存在です。

あとはディレクター・丹下百代役が江口のりこ。

舞台では初めてお目にかかりましたが、映画やテレビで活躍中のベテラン女優さんですね。当然ですが、さすがにこの人もうまい。ディレクターになりきっていて、自然な演技で感心しました。最後は会社に見切りをつけて、バイク便のライダーに転職!していて、その姿がまたリアルでカッコ良かったです。

あと一人、編集マン・花田路也役が大窪人衛。

「焼肉ドラゴン」の一人息子・金時生役で初めて知りましたが、今回もユニークな雰囲気の演技でした。ちょっと性別不明な容姿で、ヨメさんも「はじめは男か女かようわからんかった」と言っていました。この人も演出家の要求に誠実に応えるいい演技でした。前作の金時生はあっけなく死んでしまったのであまり印象に残らなかったのですが、今回はじっくり見ることができました。

というわけで、重くシリアスな主題で、劇中でもいろいろ考えさせられましたが、前二作に劣らず完成度の高いいい舞台で、大満足でした。二兎社の今後の作品に注目です。

国会では、各方面から懸念や反対の声があがっているにもかかわらず、日本社会の「空気」をいっそう悪くする、治安維持法の再来・「共謀罪」の審議が始まりました。「テロ防止」は名ばかりで、実際は日本を監視社会にするこの法案の危険な正体を、もっと多くの人に知ってもらうにはどうしたらいいか、悩ましい日々です。

さて次は、一週間後に観た「炎 アンサンディ」。これも現代社会を抉り出すいい舞台で、内容も前回からさらに良くなっていて、見ごたえたっぷり。3月の兵庫芸文センターは実りの多い月でした。

頑張って書かないと、「スカピン」もあるし、たまる一方です。(^^;

再び兵庫芸文センターで「炎 アンサンディ」を観て さらに磨きのかかった舞台でした

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「ザ・空気」の観劇一週間後の3月25日に、再び兵庫芸文センターへ。
2014年の初演から2度目の「炎 アンサンディ」観劇です。先週同様、道路は渋滞もなく、一時間強で劇場につきました。劇場ホールは男性客も多く、麻実れいファンらしい年恰好の女性グループがあちこちにおられました。
前回と違って花はなし。

初演と同じ俳優とスタッフなので、基本的に前回のとおりですが、今回の公演では最後にナワルの場面が付け加わったのをはじめ、演出も細かく手が加えられていて、より分かりやすい舞台になっていました。それと二回目の観劇なので、ようやく過去と現在が交錯する複雑な場面構成のストーリーが理解できたので、観た甲斐がありました。(以下敬称略。画像は当日購入のプログラムから)
以下、簡単に感想です。

幕が開くと舞台はカナダ・モントリオール。突然の母の死を前にして、双子の姉弟がそれぞれに託された母の遺言の中に込められた願いをかなえるため、母の祖国レバノンを訪れるという展開です。

前回にも書きましたが、母の残した謎の言葉に従って、姉弟それぞれが母の過去をたどるうちに、次第に衝撃的な事実が明らかになっていきます。サスペンス風の話ですが、またギリシャ悲劇な要素も色濃く、最初のほうの若い二人の現代風な会話から受ける印象が、途中からガラっと変わって、内戦のレバノンの深刻な民族抗争をベースに展開される重い悲劇が胸を打ちます。

母親ナワル役の麻実れいはますます演技が深くなっていました。

まさに座長芝居。彼女の渾身の演技がこの舞台の柱になっています。宝塚時代から、長年麻実れいの舞台を観続けてきたヨメさんは、「もう間違いなく代表作!前回よりさらに良くなっている!」と激賞していました。

実際麻実れいは、本場フランス版では3人の女優が演じ分けたという主人公ナワルを、セリフのトーンを変えたり、身のこなしを演じ分けて見事に体現していました。大したものです。

舞台で岡本健一を観るのは蜷川の『タイタス・アンドロニカス』以来3度目ですが、

前回感じた通りしっかり芯のある演技で、ニハッド以外にも医師やガイド、墓地管理人や老人、ナワルの最初の恋人役など何役も兼ねる大奮闘でした。

双子の姉弟のジャンヌは栗田桃子、

シモンを小柳 友で

この二人も複数の役を演じていて、栗田桃子はなんとナワルの祖母ナジーラ役!。
小柳 友も民兵で頑張っていました。最初は母に対する不信と反発が強かった二人が、次第に母と自分たちの出自を知って、次第に変わっていく様子をよく表現していました。

役を兼ねるといえば中村彰男も大奮闘。

元看護士のアントワーヌ、シモンのボクシングコーチ・ラルフ、ナワルの故郷の村の長老、学校の門番、抵抗勢力のリーダー、産婆!、戦争写真家と八面六臂の大活躍。全く同じ役者と思わせない巧みな演じ分けで、またしても騙されました。(笑)
演技に説得力があって大したものです。

今回の観劇は再演ということで、私はヨメさんの付き添い程度の気分で出かけたのですが、やはり麻実れいの全力投球の演技と、それに応える他の役者さんの好演、脚本・演出のブラッシュアップとの相乗効果で、私も大満足の観劇となりました。

もちろん最後は全員総立ちの拍手。心地よい余韻に浸りながら、帰途につきました。

今月観た星組の『スカピン』の感想も書けていないのに、今週また雪組公演『幕末太陽傳』&『Dramatic “S”!』の観劇です。(^^; 
ほかにも、万葉文化館でいい絵を見てきた感想とか、馬見丘陵公園できれいな花たちを見てきた報告とか、お金はたまらないのに、ネタはたまる一方。(殴)
そしてそんなプレッシャーを感じながらも、晴れたらPhantom2とInspire1を連れ出して空撮三昧という自堕落ぶり(笑)。まったくつける薬がありません。

ともあれ、トップ退団公演、どんな出来になっているのでしょうか。


宝塚雪組『幕末太陽傳』&『Dramatic “S”!』の遅すぎる感想

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星組「スカピン」観劇の2週間後の27日に、雪組トップ退団公演「幕末太陽伝」「ダイナミック」を観てきました。
当日はカラッと晴れた好天で、道路も渋滞せず1時間余りで到着。前回は満開の桜だった花の道もすっかり葉桜。代わって山吹がきれいに咲いていました。

かつては、実力に人気が比例せず、チケット販売も苦戦気味の雪組でしたが、現トップ就任から打って変わって毎公演チケ難となる変わりよう。なので最近は先行予約で以前のような前方席は取れなくなり、今回も舞台上手側17列・通路横。でも見やすくていい席でした。

ということで、感想です。以下、いつもの通り敬称略。画像はスカステ・ナウオンとステージドアの画面撮りです。

まず全体の感想。宙組サヨナラ公演と同じく、今回もドタバタ喜劇。でも脚本の完成度は今回のほうがはるかに高く、見ごたえのある作品になっていました。

スカステのステージドアのインタビューで脚本演出担当の小柳奈穂子が、「二人を涙で送り出すのではなく、明るく笑って送ってあげたい」と語っていましたが、そのとおりで、抜群のコメディセンスに恵まれた早霧せいなの退団には打ってつけの作品でした。


舞台には、ちょっと梅芸版グランドホテルのそれを連想させる二階建ての旅篭(実は女郎屋)相模屋の大きなセットが据えられていて、海鼠壁がリアルでした。




今回も宝塚らしく大道具・小道具いずれもスタッフは頑張っていて、旅篭だけでなく墓地のセットをはじめ、

相模屋で出される料理の品々に至るまで、まるで食品サンプルみたいにリアルに作りこまれています。(私は見逃しましたが^^;)

女郎屋が舞台ということでドロドロした話かと予想していましたが、巧みに原作の映画を宝塚化していて、古典落語をベースにした人情味にあふれる喜劇をさわやかなストーリーに作り変えていて、感心しました。巧みな構成で、テンポよく話を進める手際の良さが光っていました。今の宝塚は女性演出家でもっているという感じです。(笑)

早霧せいなはまさに宛書!。

人前では軽薄なまでに明るく陽気にふるまっているが、実は永く結核を患っていて、一人になると死の恐怖に苛まれ続けている陰影のある佐平次を好演していました。見るからに二枚目な早霧が演じるコミカルな演技でますます面白さが増しているという感じですね。
トップに就任するまで私が持っていた彼女のイメージは、見事に覆されました。
軽妙洒脱、力まず自然に佐平次を演じていて、その姿とルパン三世がダブって見えました。





咲妃みゆとも良く似合っていました。


「星逢‥」だけはちょっと私には??な演目でしたが、「ルパン三世」や「るろうに~」は、彼女以外の演者が思いつかないぐらいのハマリ役。
退団後の活躍を期待したいです。

女郎おそめ役の咲妃みゆも、これまでの彼女の舞台イメージの対極にありそうな百戦錬磨(笑)の女郎役をしっかり演じていて、これまで彼女が舞台で獲得してきたものの大きさを感じさせる演技でした。ライバルとの大立ち回りなどのドタバタで笑わせながら、一方ではおそめの内面までよく描かれていて、存在感がありました。


この人、訥々とした話し方につい騙されそうになりますが(笑)、役を演じる上での考え方は深いものがあって、そのギャップが面白いです。それと、娘トップ就任後も痩せすぎていないのも好感度大。(笑)


ラストは、佐平次とおそめの前途に希望を見いだせる結末になっていたのが良かったです。やはり宝塚はハッピーエンドが吉です。(笑)

長州藩士・高杉晋作役は望海風斗。男らしくがっしりとした晋作ですが、力まず自然に演じていて、出てきただけで安心感があります。(笑)





異人館焼き討ちもきっとうまくいくだろうと思わせる説得力のある演技ですが、ストーリー上はあまりしどころのない役の位置なのがちょっと残念。
でも、歌も演技も安心して観ていられるのがなにより。

相模屋の息子・徳三郎を演じるのは、私たちの観劇直前に復帰した彩風咲奈。
家業を顧みず吉原の遊郭に通う道楽息子ですが、真彩希帆演じる幼なじみの女中おひさが借金のかたに遊郭に売り飛ばされるのを見て、店の金を手にとばく場に行き、スッテンテンになってしまうダメさを好演(笑)していました。
↓おひさです


相模屋に入り浸る貸本屋の金造は、この公演で退団する鳳翔大です。
おそめにそそのかされて心中するはずが、自分一人海中へ落されてしまうという道化役を熱演して大うけしていました。この人の舞台をもっと観たかったのですが、残念です。
おそめのライバルこはる役の星乃あんりも退団です。おそめとの庭での大立ち回りや、仏壇屋倉造とその息子清七を手玉に取る「三枚起請」の場などで活躍していました。


女役では相模屋のやり手おくま役の舞咲りんが印象に残るいい演技でした。こういうしっかりしたわき役の存在が、舞台に厚みを加えています。他にも、専科のふたり、汝鳥伶と悠真倫が円熟味のある好演で、安心して観ていられました。

今回の脚本では多くの役が設定されていましたが、まったく破綻なくよくまとめられているのはさすがです。

ショーの「Dramatic“S”!」もよかったです。








こちらは芝居と違ってサヨナラ感満載で、お約束通り早霧・咲妃のコンビだけでなく今回退団するメンバーにも見せ場が多く作られていて、「非破壊検査」のコマーシャル(殴)みたいな演出のロケット

に続く「絆」の場面では、惜別感が最高潮。

個人的には第8場から始まる「サプール(パリ)」で、絵画の女Aの真彩季帆が絵から抜け出して歌い始める場面が一番印象に残りました。

立ち姿も歌も表情も超絶品!ずっとオペラで追い続けてしまいました。
おひさはあまり注目しなかったのですが(殴)、ショーでは別人のインパクトで、一度で脳内の不揮発メモリーに書き込まれてしまいました。(といいながら、すぐ揮発するかも(笑))これから注目していきたいです。

というわけで、サヨナラ公演にふさわしい作品で、大満足で劇場を後にしました。もちろんプログラムも久しぶりに買いました。(笑)

次は兵庫芸文センターで観てきた「ハムレット」と「フェードル」(大竹しのぶが圧巻の演技!!)ですが、日に日に記憶は薄れつつあるので、早く書かないと。(^^;

兵庫芸文センターで『フェードル』を観て 大感動の舞台でした

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兵庫芸文センター中ホールで、『フェードル』を観てきました。
といっても、ひと月前の話ですが。(殴!)

『フェードル』はご存知17世紀フランスの劇作家ラシーヌの傑作戯曲。そのベースは古代ギリシャの詩人エウリピデスの悲劇『ヒッポリュトス』です。

演じるのは大竹しのぶ、平 岳大、門脇 麦、谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里、キムラ緑子、今井清隆と豪華メンバーなので、これは見ない手はないねと、2016年12月に先行予約でチケットを確保しました。

観劇当日は、2017年4月の東京公演から始まった全国ツアーの大千穐楽とあって、満員の盛況でした。ホールには花も飾られ、開場前から活気がありました。

で感想ですが、まあ何とも凄いものを観た、の一言。

とにかく大竹しのぶが圧巻の演技。かねがね只者ではないと思っていましたが(笑)、もうバケモノです。

私たちの席はB列のセンターブロック、そして舞台には三角形の、手を伸ばせば届きそうなところに張り出した箇所があり、その上で彼女をはじめ主要な役者が熱演する姿は超ド迫力でした。

大竹しのぶの演劇は、これまでにも2009年に観た『グレイ・ガーデンズ』(若い時期の大竹しのぶの役を彩乃かなみが演じていたのも良かったです)や、最近のこまつ座『太鼓たたいて‥』でその演技力はわかっていたつもりでしたが、今回の「フェードル」はもう別格の出来。
舞台に登場した姿は貫禄十分で、一目見てジュディ・デンチを連想してしまいました。(笑)
姿だけでなく台詞も終始低い声で、これまで見たことのない大竹しのぶでした。

大竹しのぶの役は、クレタ島の王ミノスの娘で、ギリシャの英雄テゼの妃フェードルです。しかしフェードルは、やがて国王となる継子イッポリットへの道ならぬ恋に悩んで病に陥り、それが発端となってすべての歯車が狂い始めるという話ですが、そのフェードルの懊悩ぶりが超リアル。本当になりきり芝居でした。

ヨメさんは、「台詞をいうときに唾が見えるほどの至近距離に私たちがいるのに、ようまああんな演技ができるもんやね」と観終えて感心しきり。(笑)

イッポリット役の平 岳大もよかったです。

シンプルな舞台セットなので台詞命の舞台ですが、フェードルの不義への悩み、父テゼへの尊敬の念、そしてアリシーへの愛という三つ巴の感情に苦悩する姿がよく表されていました。
濡れ衣を着せられたまま死地に赴く彼の姿が悲愴でした。

しかし彼は、最近ますますお父さんに似てきましたね。(笑)

アテネ王テゼ役は今井清隆。

初めてお目にかかった役者さんですが、これまで「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」、「美女と野獣」など多くのミュージカルで主演されている有名な方です。^^;

その経歴通り、アテネ王としての堂々とした威厳と存在感、そして讒言を信じて息子イッポリットを死地に追いやる人間臭い弱さも持った役どころを見事に演じていました。まだまだ知らない役者さんが多いです。

乳母のエノーヌ役はキムラ緑子です。

フェードルの罪をイッポリットに着せて、テゼの怒りの矛先をそらそうとする悪い女。

でもそれもフェードルを何とか守ろうとする気持ちから出た行動ですが、この芝居では一番黒い役です。

テレビドラマで観るのと違った緊張感がみなぎるシリアスな演技で、見直しました。

今回の舞台では、相手とのキャッチボールではない一方的な長台詞も多かったのですが、あまり滑らず(少しはあったけど^^;)語り続けていたのは大したものでした。

イッポリットの恋人でアテネ王族の娘アリシーは門脇 麦。

この人も初めて見ました。役としてはアイーダみたいな境遇の不幸な娘です。
でも境遇に負けずに誇りと信念をもってイッポリットに接している姿が印象的でした。この人も出番は少ないですが、存在感がありました。

あとの谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里といった俳優さんも、ベテランの面々に伍してしっかりした演技と台詞でわきを固めていて見ごたえがありました。

ストーリーとしては単純なので、脚本的には登場人物それぞれの内面を如何に役者が表現するかが問われる舞台でしたが、全員の好演で、ラシーヌの傑作戯曲にふさわしい重厚で奥行きのある作品になっていました。


終わって感動のカーテンコールとなりましたが、これがまた面白かった。

というのは、カーインコールにこたえて舞台に出てくるたびに、大竹しのぶがフェードルが抜けて、素の彼女に戻っていく様子が見られたこと。(笑)

客席は大熱演に全員スタンディングで万雷の拍手でしたが、最初出てきたときは大竹しのぶも硬い表情のままでした。
二回目も同じように顔はこわばっていて、笑いもなくただ頭を下げて拍手にこたえるだけ。

でも三回目になって顔に笑みが戻ってきて、ぴょんぴょん跳ねたりして、明るく拍手に応えてくれるようになってきました。

そして四回目にはもう満面の笑みで拍手にこたえ、大千穐楽の挨拶もして、最後は出演者全員手をつないでジャンプ!!で終わりました。

この過程を見ていたら、役に入って瞬間的に涙を流せるといわれる彼女でも、逆に憑依状態(笑)から現実に戻るには、それなりの時間がかかるのかなと思ってしまいました。面白かったです。

とにかくこの舞台を観られてよかったです。これは今年一番の収穫かもと二人で話しながら、帰途につきました。

さて次は花組公演の感想です。意外にも(殴!)、藤井大介さんがGood Job!!なのがうれしい番狂わせ。早くアップしたいのですが、いつになりますことやら‥。

宝塚花組公演「邪馬台国の風」&レビュー・ファンタシーク「Sante‼」 観てきました

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花組新トップコンビの大劇場披露目公演「邪馬台国の風」(中村暁作・演出)とレビュー・ファンタシーク「Sante‼」~最高級のワインをあなたに~(藤井大介作・演出)を観てきました。
当日は道路の渋滞もなく、一時間余りで劇場駐車場へ。売店でいつものタカラヅカ・フィナンシェを買ったり、郵便局で切手を買ったりした後、開場となり、客席へ。11列の上手端の席でした。修学旅行生も観劇していて、立ち見とまでは行かなくても、ほぼ満員の盛況でした。

という前置きはこのくらいで、例によって薄い感想です。でもネタバレあり&芝居のほうは絶賛モードには程遠いので、未見の方はここで華麗にスルー!が吉です。いつもの通り敬称略。
 画像はプログラムとNow on Stageの画面撮影です。

「邪馬台国~」は、邪馬台国と狗奴(クナ)国との抗争を軸に、明日海りおのタケヒコと、仙名彩世演じる巫女マナ/女王・卑弥呼との出会いと別れの物語です。まあ史実そのものがわかっていないので、かなり自由に創作されたお話でした。


幕が上がって白装束の邪馬台国の兵士たちが登場、そこに黒い衣装の狗奴国の兵士が乱入、激しい戦闘場面が展開するというところから物語は始まりました。

そのあと狗奴の兵士に追われて、森に逃げ込んだタケヒコ少年(華優希)が、渡来人の老人李淵(高翔みず希)と出会い、生活の知恵を習得し、棒術もマスター。でしばらくして突然タケヒコは成人した姿に変身。まあ「ベルばら」でおなじみの演出で、「あっという間だったな」という李淵の台詞が笑わせてくれました。
でもヨメさんは「やっぱり少年役は要らんと思うけど。」(笑) 

それと李淵が武術の達人のはずがあっさり殺されてしまうのもちょっと残念でした。それと李淵の「自身の宿命は変えることができないが、自分の生きる道は自分で切り開いていける」という言葉も、はじめはなるほどと思ったのですが、よく考えると意味が???。(笑)

それはさておき、話はタケヒコとマナの運命的な恋(といってもあまり絡まない^^;)と別れ、タケヒコに信頼を寄せる邪馬台国の兵士たちとのエピソードなど、破綻なく話は進んでいきますが、なんとなく「ベルばら」と「王家~」をミックスしたみたいな香りが各所に漂っていてややデジャヴ感も。

一番残念だったのは、役も多く、盛り沢山な話なのに、それが最後に大クライマックス!!な場面に収斂していかず、終わってみればやや平板で、あまり気分が高揚しないまま終わってしまったことです。

私は狗奴国の大軍勢が、最短距離の峡谷を通過して邪馬台国に攻め込もうとしたものの、まんまと邪馬台国軍の術中にはまり、カスター将軍と第七騎兵隊みたいな敗北を喫する大スペクタクル殲滅戦(まあ映画ではないのでそこまでは無理かな^^;)を期待していたのですが、見事にスルーされていました。(笑)

狗奴国の首脳部は、何度も峡谷を通るかどうかで議論が分かれていたので、映像表現でもいいから、決戦シーンが欲しかったですね。
そして最後も「え、これで終わり?」みたいな地味な場面で幕となったのもビックリ。

明日海りおのタケヒコは、この人の持ち味のさわやかさと凛々しさ溢れる青年で、安定した歌唱力と演技で好演していました。






カリスタ~」の主人公にも通じる、辛い過去にも挫けず、強い信念を秘めつつひたむきに生きる青年という役どころがぴったりでした。棒術もマスターしていて見ごたえがありました。
しかしこの人、ナウオンでの対談を見ていると本当に民主的な(笑)トップさんです。
よくある、自説を延々と開陳して止まらない、といったトップ(誰とは言いませんが(笑))とは真逆で、組のメンバーに対してもあくまでも控えめで謙虚なので、「もう少しアグレッシブにしてもいいのでは」といつも歯がゆく思ったりします。(笑)
ナウオンです↓


今回がトップ娘役の大劇場お披露目公演の仙名彩世は、やはり定評のある歌で、演技も自然で、明日海りおとのバランスも良くいいコンビでしたが、意外に台詞の声はかわいらしくて(殴)、ちょっと私のイメージとは違っていました。なにしろ私的にはあの「ファントム」の新人公演でのカルロッタのインパクトがあまりにも強烈だったので。(笑)


狗奴国の将クコチヒコの芹香斗亜は、あまり私は見たことがない黒い役ですが、ますます逞しくなっていました。



でも二番手の重圧なのかちょっとやつれ気味に見えるのが心配ですね。しかし前から何度も言いますが、数年前のおとなしめな雰囲気から別人の成長ぶりで、憎々しい敵役を好演していて存在感も十分。歌もよかったです。

邪馬台国の兵士たちも、邪馬台国の兵の長・アシラの鳳月杏をはじめ、フルドリの柚香光とツブラメの水美舞斗がいい役回りで目立っていました。


専科から特出の星条海斗も、いつもと変わらぬ堂々たる偉丈夫ぶり(笑)の狗奴国の王ヒミクコを演じていて、期待どおりの存在感。


美穂圭子の大巫女もさすがの歌で、こちらも圧倒的な存在感でした。


あとは、私が勝手にひいきにしている花野じゅりあのアケヒも頑張っていて、出番も多くて満足でした。(殴) 

でも何度も言いますが、盟神探湯(くがたち)とか日食とか、結構エピソードが多く、ちゃんと伏線も張られていたりして、展開に破綻はないのですが、ここ一番の山場というか見せ場に欠けていて、幕が下りたら淡々とした印象しか残りませんでした。
でも、個性の際立つしっかりした役作りで、登場人物も多いので、一度は観ておくべき作品です。(といってももう手遅れか(殴))

一方「Sante‼」はよかったですねえ。
ショーでこんなに楽しめたのは最近なかったです。
大体、以前に大階段出しっぱなしという横着なショー(笑)を観て大ガッカリだったので、藤井大介作・演出というだけで全く期待していませんでした。m(__)m

でも、今回はそんな先入観は粉砕されました。

オープニングで芹香・瀬戸・鳳月・水美・柚香(5大ワインだそうです)が女装で登場したのにまず意表を突かれ、そのあと明日海りおのバッカスが天使を従えて登場。ワインでこの世界を幸せにすると歌ったあと、今度は一転、バッカスはマントを脱ぎ捨てると最高級ワインに変身(おいしそうなブドウがぶら下がっていて面白い!)、周囲も一気に同じ衣装に変わって群舞となります。
ここでもう完全に舞台に引き込まれてしまいました。







明日海、芹香のしゃれたダンス場面も魅力的で、そのあと「モン・パリ」や「ラビアンローズ、柚香が加わった「カン・カン」をアレンジしたラインダンスなど、まったく飽きさせない構成で見惚れます。




専科の美穂圭子のエディット・ピアフも大したものでした。

芝居でも聴かせてくれましたが、ショーではまさに水を得た魚、これぞシャンソンという美声を披露してくれました。星条海斗もマルセル・セルダンに扮して頑張っていました。(笑)

フィナーレのトップコンビのデュエットダンスも、ANJUの振付と芹香の歌でショーのいい締めくくりになっていました。明日海りおが細い体でリフトを頑張っていて、ついこちらも落としはしないか(笑)と、ハラハラして肩に力が入ってしまったり。(笑)



エトワールは珍しく3人組。人材豊富です。

幕が下りたら、私たちだけでなく周りの皆さんも「良かった!よかった!」と大絶賛!
客席全体がこんなに盛り上がったショーは本当に久しぶりでした。

目新しい場面とか、奇を衒った演出とかがあったわけではなく、まっとうな正統派のショーでしたが、どの場面も魅力的で、歌とダンス、衣装のセンス、豪華な舞台装置のすべてがしっとり美しくて飽きさせない。もともとショーの良さなどわからない私ですが、今回だけはずっと「すごいな、きれいだな」と感動しっぱなしでした。

こんなショーはそうそうお目にかかれませんね。
ヨメさんは「ショーだけ、もういっぺんみたいな」と言っていましたが、まったく同感。

オススメです。



Mavic Proを飛ばしてわかってきたこと

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1年前に、当時大バーゲン価格のInspire1をポチッて、Gopro4とは格違いの高精細画質に満足していました。
当初不満だった飛行高度の自主規制も、その後のファームウェア更新で航空法範囲内の150mに設定変更できるようになって、さらに飛行回数が増えていました。

ただし、唯一の問題はそのデカいこと。

なので空撮はプリウスで行かねばならず、「ドローン飛行はバイクが原則」という私のモットーに反するため(笑)、背負えるバッグを探していました。

そして某日、私でも買える価格のアウトレット品を発見。入手後は、それを使って出かけていましたが、何しろ重い。(^^;) 


なのでバッテリーを別のショルダーバッグ(これもロープロでした)に入れても、立ち上がる際などはのけぞりそうになります。(笑)


そんな中、昨年発売のMavic Proが、今年のゴールデンウィークを前にバーゲンされているのを見つけて、またまたポチッとな。相変わらず物欲に負けています。^_^;

5月5日にMavicが配達されました。
Mavic Pro FlyMore Comboというセットで2つの小さい箱に入っていて、取り出してみたら本当に小さい!!

一瞬「やっちまった!」感がよぎりましたが(笑)、落ち着いてよく見ると各部のつくりはしっかりしていて(と思いたい)、折り畳み式アームの関節精度も高く、簡単にはガタが来そうにないようなのでちょっと安心。(笑)

とはいえ、送信機も小さく見た目もかなりチャチで、まるでトイラジコン。(笑)

これで本当に「最大4kmの距離を実現する新しい伝送システム(海外仕様は7kmとのこと)」なのかと半信半疑。

ただ、小さいといっても、アーム展張時はPhantom2とほぼ同寸です。




でも軽いため、プロペラ径はPhantom2よりも小さく、ブレード幅も狭い。


ブレードは折り畳み式で輸送時も外す必要がないのは便利です。




以下は今まで飛ばしてみた感想です。
良い点は、
1. 小さいこと。手軽に出かけられるのがなにより。


2. 小さい機体と送信機なのに映像が途切れない。

3. IMUが二重化されていること、および障害物回避機能を備えていること。


4. ズームが使える。各種モードが使いやすい。

5. 小さくてもけっこう風にも耐えて画面は安定。

6. ブラブラ動いて頼りなさげなジンバルだが、動作は極めて安定している。

悪い点は、
1. 小さいこと。(笑) 
制限高度以下でも、モニターを見た後など、よく見失いそうになってあわてます。さらに機体が超ロービジ色なので、さらに視認性を低くしています。

2. レンズのオートフォーカスがすぐボケて、賢くないのが不満。なので、絶えずピント合わせをやらないとすぐボケる。パンフォーカスのほうが良かった。

3. 機体を小さくしたため内部の発熱がすごい。でも飛ばせばヒートシンクが効いて発熱は抑えられるが、飛行前のチェック時などはすぐ熱くなる。まあ仕様ですが。


とくに1の、レンズが勝手にボケるのが不便です。
飛行中はセンターフォーカススイッチを絶えず押して確認しないと、あとでガッカリします。

ガッカリといえば画質も、6月のファームウェア更新までは褒められたものではありませんでした。
一見きれいでも、細部にジリジリとしたノイズが出ていて、購入を後悔したりしたものです。

でも更新後は段違いにきれいで、Inspire1と比べてもそれほど遜色ない動画です。
先月も、いつもの場所で衝突防止機能とズームを生かして合歓の花がきれいに撮れて大満足。




最後に操縦性は、通常モードではモッサリしていますが、スポーツモードに切り替えるとさすがに速く、キビキビ。ドローンを飛ばすと必ずやってくるツバメたちも、追いすがるのに苦労しています。

逆に極スローな「トライポッド・モード」も、上記の合歓の花の撮影時などに便利でした。

便利といえば、セットに入っていたバッテリーパワーバンクアダプターが意外に役に立ちました。USBコネクタが2つついているので、現場で送信機やスマホの充電が同時にできるのが超重宝。放電させたいときにも使えます。


<追加購入したバッグなど>
はじめはキットについてきた純正バッグに入れて出かけていましたが、やはり充電器やレンズフィルター、レンズブロワーとかアクセサリなどは収まらないので、ネットでカメラバッグを物色。
結局ロープロのタホBP 150を購入しました。








剛性の高い作りでも極めて軽く、仕切りのレイアウトが自由なので使い勝手も良好。なにより量販店で実質6千円台で購入できたのがうれしい。

追加購入といえばNDフィルターも重宝しています。

今の時期必須のアイテムで、この製品↓が好感の持てる仕上がりで、装着方法も同種の製品では一番Good。


ということで、今のところ2か月で25回飛行して、目下我が家のドローンでは一番出番が多くなっています。

さて、このMavicを買って、私が格安SIMでスマホデビューしたお話は次回で。

Mavic Proのモニターに格安SIMを入れてスマホデビュー

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前回の通り、ほぼ1年ぶりに、ドローン隊に新機種・Mavic Proが加わりました。


通常のセットではなく、バッテリーが3本、カーチャージャー、充電ハブ、バッグ、予備プロペラなどが付いてくるfly more Comboセットでしたが、モニターだけは別でした。

送信機の構造上、そのままでは私の手持ちの7インチタブレットは装着不可。

なので、別途適当なものを物色して、結局ZTEのBlade V580にしました。




ほとんど何の知識もないまま、ただ12,000円以下!の破格の値段と5.5インチ液晶パネルというだけで選びました。

でも実際手にしてみると、よくできていて、なかなかの優れものです。


スペックとしても、超薄型の筐体に64bit オクタコアCPUと5.5インチフルHD液晶、3000mAhバッテリー、背面指紋認証センサーがついていて、真夏晴天の屋外でもきれいにDJI Go4の表示が読み取れるという優れモノ。これがビックリの12,000円以下で買えるのですから、いい時代になりましたね。
ただし、付属品は充電アダプターとSIMトレイの取り出し用ピンだけで、説明書も超簡単。


で、DJI Go4とDJI Goをインストールして快適に使い始めましたが、Mavicだけでなく、BT-300より手軽なのでInspire1でも多用するようになりました。ただ、薄い筐体なので、熱がこもりやすく、画面の輝度を最大にすると熱暴走しがちになります。ということで、ギリギリ野外でも表示が読み取れる50%程度まで下げて使っています。

その後モニターとしては大満足で使っていましたが、気になるのが、起動するたびに出る「SIMが入っていませんよ~」みたいなメッセージ。それを見ながら、せっかくSIMフリースマホだし、これでスマホデビューもいいかもと思い始めました。

でも私は、ガラケーですら最近は全く不携帯。退職前はヨメさんとCメールのやり取りをしていましたが、退職後はそれもしなくなったので、ずっと充電台に置きっぱなし。なので毎月のauの請求も基本料金の1,300円ポッキリ。

しかしスマホを使っている友人たちに聞くと、大体5,000円ぐらいの料金とのことです。ということで、もともと使う必要もあまり感じないスマホにそんな金額を払う気がせず、導入機運も薄れていきました。

そんな中、6月になって、プロバイダーのASAHI-NETから格安SIMの勧誘メールが来ました。

なんでも3ギガプランで月1600円(通話は別途従量制)とのこと。7ギガだと同じく2,600円になりますが、通話は極めてマレだし、アプリのインストールなどは家のWi-Fi経由でやればいいので、3ギガプランに決定。

支払いはこれまでのプロバイダーへの支払いと一緒。なので、購入手続きは本人確認の書類コピーを添付ファイルで送信するだけ。
すぐ認証も済み、まもなくSIMカードが送られてきました。私の携帯番号などヨメさん以外誰も知らないのでMNPも手続きせず。

送られてきたSIMカードはnanoSIMなので本当に小さいです。

これも簡単な説明書が付いているだけで、私はSIMの設定など全く知識がないのでプチ不安でしたが、いつものとおりなんとかなるだろう(殴)と、某日インストール開始しました。

この段階でDOCOMOの回線を使うことがわかりました。

といっても設定項目はそれほど多くなく、説明書と実際のスマホの画面と見比べながら入力して再起動したら、あっけなく繋がりました。

翌日、ボランティアの帰りにヨメさんの携帯にショートメールを送ったら、すぐ返事が来ました。

私   > 「これから帰るけど白菜買わなくてもいいかな?」
ヨメさん> 「まあ買わなくてもいいかな」
私   > 「了解」
というやりとりです。(笑)

別の日には、
私   > 「今果物見ているけど、アンデスメロンは安いけど熟れすぎ。ライデンメロンは大きいけど高いので思案中。サクランボは少し高い品種しかないけど買うことにするよ。」
ヨメさん> 「わかりました。まかせるのでよろしく。」
私   > 「了解」
という話で、通話はゼロ。(笑)
ちなみにメロンは買いませんでした。ヨメさんはガッカリしていましたね。
そして6月分のデータ使用量は、3ギガどころか700MB程度なので、今の料金プランで十分でした。

でも、スマホって使ってみると、結構便利ですね。(殴)

ショートメール(Cメール)の送受信もガラケーより使い勝手がいいし、万博公園や馬見丘陵公園などに出かけた際に、現場で見ごろの花とか、その場所が確認できるのも便利。パソコンメールがいつでもチェックできるのもいいし、何よりテザリングが重宝です。

最初はWi-Fiテザリングを試しましたが、これはWi-Fiがネックで遅すぎで、スマホのバッテリーの負担も大きいので却下。

次にUSBテザリングを試しましたが、これは十分実用的です。

Wi-Fi接続時のようなもたつきもなく、なにより使用中パソコン側から給電できるので、スマホのバッテリーの持ちを気にしなくてもいいのが便利です。

セキュリティでは指紋認証が便利。指をサッとセンサーに当てるだけで、スリープ状態から瞬時に復帰。認証に「めんどくさい」感がなくて実用的です。
↓レンズの下の丸い部分が指紋センサーです

というわけで、2か月たらず使ってみたら、スマホの便利さがよくわかりましたね。(←遅すぎ^^;)

5.5インチフルHD液晶なので、PC版サイトでも鮮明に表示できるし、64ギガのマイクロSDカードも本体内でフォーマットすれば認識されたので、以前大量に自炊した蔵書のPDFファイルを入れて読んだり音楽データを再生して聴けるので、7インチタブレットの出番は激減しました。

私のように、ショートメール中心で通話が少なく、データのダウンロードは自宅のWi-Fi経由でという者には、格安SIMのスマホは打ってつけです。

大体どこのプランでも似たり寄ったりですから、まだガラケーな人はぜひチャレンジしてみてください。

ちなみにBladeV580は今でもたまに量販店で1万円以下で売られたりしています。

今のところ不具合もないので、ドローンのモニターのみならず、格安スマホデビューの候補として検討されてもいいかなと思います。



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