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万葉文化館 「絵画で綴る大和古道」を観て

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ここ数年、正月の美術館詣では西宮市立大谷記念美術館と決めていたのですが、あいにく昨年9月からの改装工事で現在閉館中。
しかたなく(殴)、今年は万葉文化館の「絵画で綴る大和古道」展を観に行くことにしました。


ただ、これまで何度か万葉文化館について書いてきたとおり、この施設もご多聞に漏れず、予算削減で以前のような気鋭の画家による企画展が大幅に減って、代わりに館蔵品による展覧会が開催される状況になっています。今回の展覧会もその流れで、館蔵品展なので、私たちもあまり期待せずに出かけました。第一、展覧会のテーマが道。道がテーマの展覧会となるとどうなるか、あまりいいイメージがわいてきませんでした。

自宅から飛鳥までの道は正月明けでいつもより車も少なく、50分程度で到着。駐車場も通常よりさらに車が少なく閑散としていました。


人気がないのは館蔵品だけの展示なのでみなさんも二の足を踏んでいるのだろうと思いながら入り口に向かいました。
館前の庭園も冬枯れで、わずかにウメモドキだけが色を添えていました。


冷え込みも強かったので早々に館内へ。会場入り口でいつものようにアリバイ写真を撮ってから(笑)観覧開始です。
ところが、展覧会場に入ってチラ見しただけでよさげな作品が目に入り、期待が一挙に高まりました。うれしい誤算みたいです。
展示会場の床には大和古道を描いた古地図「大和國細見圖」の拡大コピーが貼られているなど、いろいろ工夫されていました。

今回の展覧会では上記の「絵画で綴る大和古道」をテーマに、これまで館が蒐集した「万葉日本画」と、別に寄贈を受けた絵画や展示資料も公開されていました。また、会期中の前期と後期で展示を入れ替え、合わせて計100点余りの館蔵品を陳列展示する予定とのことです。


入り口に最も近いところに展示されていたのは平山郁夫の「額田王」。この絵の制作過程は館内のミニシアターで見ることができます。
ただ、この絵は余り好みではありません。(笑)

以下の画像は館内のショップで買った絵葉書をスキャンしたもので色調も正確ではありません。掲載も実際の展示順ではありません。
良かったのはまず「夢想」です。作者は市原義之。以前にも観ていますが、いい絵は何度見ても飽きませんね。


「明日香川夕照」(作・奥田元宋)も何度か観たことがありますが、印象に残る絵です。


それ以外では、「早蕨」(作・平岩洋彦)とか


似たテーマですが、「山川の瀬音」(作・岡 信孝)もわかりやすい絵(笑)でした。


この絵も好みです。「秋風」(作・林 潤一)です。


でも、今回の展覧会で一番良かったのは、「曽爾冬静」(作・久保嶺爾)です。遠目でも真っ先に目に入ってきました。で、帰宅する際に館内ショップで絵葉書を探したのですが、残念なことに絵葉書化されていませんでした。

描かれている曽爾(そに)高原は、私のホームグラウンドみたいなもので、学生時代は四季折々に十数回通っていました。
ただ近年、観光開発の影響か、現地は私が行っていたころとはかなり違う雰囲気になっていて足が遠のいています。
でも今回のこの絵では、私の記憶している曽爾高原がそのまま描かれていて、懐かしくて足を止めて見入ってしまいました。
ただ絵に描かれているような馬の放牧はなかったですが、これはあくまで画家の心象風景ですからね。でもよく似合っていました。

この画家の絵はもう一点、「神の池」が展示されていて、深みのある色彩のいい絵です。


もう一つ、今回の展覧会での収穫は「多武峯遠望」(作・上田勝也)でした。こんな作品があったのかとびっくりのいい絵でした。ですが、これも絵葉書は作られていないので、ぜひ並んで展示されている「曽爾冬静」とともに直接会場でご覧ください。万葉文化館さん、ぜひ絵葉書作成をお願いします。m(__)m
後でわかったのですが、この作者の回顧展が2006年にここで開催されていますね。このころから明日香に通い始めたはずなので、私たちも観ていると思うのですが記憶がありません。本当に物忘れがひどいです。

最初に書きましたが、今回の展覧会、上記以外も館蔵品選りすぐりのいい絵ばかりで、観終わって結構時間がたっていたのに気づくほど堪能できました。
でも何しろ観客が少ない!車椅子を押しての鑑賞には見やすくてありがたいのですが、少なすぎるのもいささかさびしいですね。
現在(2月3日)前期展示分から20点入れ替えられていますので、わたしたちもまた観に行くつもりです。

3月2日まで開催されていますので、みなさんも飛鳥に来られた際はぜひお立ち寄りください。
周辺にも名所旧跡が点在しているし、ゆったりいい絵が鑑賞できるのでお勧めです。



神戸市立博物館「ターナー展」を観て

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今年2回目の展覧会として、2月1日に、神戸市立博物館で「ターナー」展に行ってきました。

ターナー展開催のニュースなどを聞いても当初余り気乗りしなかったのですが、それは画家だけでなく、神戸周辺は道路の渋滞とか、前回の「マウリッツハイス美術館展」みたいな入館待ちの長蛇の列だったらとか、周辺の駐車場探しも難儀しそうとか、行きたくない理由も多々ありました。

でもヨメさんは観たそうにしていたし、当日朝、途中の高速道路や博物館周辺道路の状況をチェックしたらそれほど大した渋滞もなかったので、思い切って行くことにしました。

ところが道路は渋滞ゼロ、あっけないほどよく流れていて、50分程度で神戸に到着。10時の開館時間を少し過ぎたぐらいに博物館につきました。駐車場も最短距離のタイムズに停められたうえ、博物館前にも誰も並んでいません。去年とはえらい違いでした。ちょうど今頃が中だるみなのでしょうか。

駐車場から車椅子を押して博物館前に行き、看板の前で写真を交代で撮っていたら、近くで荷物を車から下ろしていた若い女性がニコニコしながら近づいてこられて、「一緒にお撮りしましょうか」とありがたいお申し出。自然な親切が身に染みました。お言葉に甘えて撮ってもらってから館内へ。


この博物館はまだ2度目ですが、館内の施設のレイアウトがわかりやすく、サインも各所に表示されているので迷うことはありません。その上親切なスタッフが大勢配置されているので快適に移動できます。エレベーターの配置もわかりやすいです。
この辺は、兵庫県立美術館の迷路のような不便さとは対極にあります。

チケット売り場に行って障害者手帳を提示したら、本人と付添1名は無料とのことでちょっとびっくり。
公共施設の場合ではこれは普通のことですが、上記の兵庫県立美術館では割引はあっても無料ではなかったので、神戸の施設はどこも同じだろうと思い込んでいたのです。温かい印象がさらに強くなってホッコリ気分で会場へ。
入口で音声ガイド@500円を借りて、鑑賞開始です。

↓博物館内で配布されていた子供用の鑑賞ガイドですが、よくできています。


展示作品はロンドンのテート美術館所蔵のジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775−1851年)の油彩画・水彩画・スケッチなど計113点。
展示会場は「初期」「「崇高」の追及」「戦時下の牧歌的風景」「イタリア」「英国における新たな平和」「ヨーロッパ大陸への旅行」「ヴェネツィア」「色彩と雰囲気を巡る実験」「後期の海景画」「晩年の作品」の9つのセクションに分けられていました。

今回は観客はそれほど多くなく、車椅子でもよく観ることが出来ました。

以下の絵は私たちの印象深かった作品です。
当日購入した絵葉書からスキャンしました。
「セント・ジョン村からハモウズの入江を望む、コーンウォール」(油彩)

(セント・ジョン村はコーンウォールのプリマスの近くに位置しています。)

「河畔の家、木立と羊の群れ」(油彩)↓


「田舎の鍛冶屋」(油彩)↓風景画の多いターナーですが、こんな民衆の生活を描いた絵も描いていたのですね


「スピツトヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」↓
これは上の「子供のための鑑賞ガイド」からの画像なので小さいです^^;


「スカボロー」(水彩)

(このスカボローは行ってないですが、近くのウィットビーはたまたまバンクホリデーの時に行ってえらい目にあったことがあります。(^^;)

こうやってみると「戦時下の牧歌的風景」に気に入った絵が多かったですね。

「イタリア」コーナーでは、「ヴァティカンから望むローマ」(油彩)に人気が集中していました。ラファエロが描かれていたりします↓



「ヴェネツィア」コーナーでは「ヴェネツィア、嘆きの橋」がよかったです。ただ、今回観た限りでは、ターナーは余り人物のデッサンが上手くない感じでした。


観て回って感じたことですが、やはりターナーの絵は予期した通りでした。
一目見た印象は、デジカメ画像で例えればコントラスト・彩度・ガンマ値が低くてくすんで眠い感じが強い(笑)のと、絵そのものもあまり魅力的な題材でないのが多いと思いました。
でもすべてがそうではなくて、例えば「レグルス」は画面からあふれ出てくる光が眼を引いてインパクトがありますね。
「レグルス」↓


ただ、今回の感想としては、油彩の大作よりも画集のために描かれた水彩の原画群などのほうが魅力的な作品が多かったです。でも小品のせいか絵葉書がなかったのが本当に残念。

油彩では風景画より帆船や海を描いたもののほうが好みでした。
でもその帆船、上記の拿捕されたデンマーク船の絵は船の形が正確ですが、「トラファルガー海戦のための第二スケッチ」の戦艦は当時も批判された通り子供の絵みたいな出来。この落差には驚きでした。

風景を描いてきたターナーも、晩年の絵になると何が描かれているかわからないほど形が朦朧としてきています。
これは晩年に属する「平和−水葬」という絵です。帆ははっきり描かれていますが、他はかなり輪郭がぼやけてきて代わりに光の表現が強くなってきています。


そして最晩年のこれ↓などは、一応「湖に沈む夕陽」とされていますが、実際のところターナー本人が何を描いたのかははさだかではないとか。

まるでルノワールみたいで、ほとんど別人の絵になっていますね。
こういう変化をたどってみるのもまた面白いかもしれません。
もうひとつ興味深かったのが、ターナーの人間臭いところ。パトロンの意向に沿うべく苦心して絵を描いていたのがわかって親しみを感じました。早い話、彼の絵画制作動機にはかなり打算的で俗っぽいところがあります。

今回の展覧会、油彩画が少ないのが物足りない感じでしたが、これでもかなり大規模な回顧展だそうです。
まあ昔観たレンブラントとかドラクロア、モディリアーニクラスの展覧会になると観終えてかなり疲れたりしますが、今回は幸か不幸かそれほど疲れなくて(殴)よかったです。
まあ会場が空いていて、観やすかったことも多分に影響していますが。

会場の出口のショップで絵葉書@150円を6枚買ってからトイレへ。そして前回同様また昼食のために館内のカフェ「エトワール」に行きました。
前回の超混雑の展覧会でも空いていた所なので、安心して店内へ。

期待した通りの落ち着いたレトロな雰囲気の店内で、ゆったりくつろげました。


私はミックスサンドとウィンナコーヒー(久しぶりでした)を注文しましたが、どちらもおいしかったです。


駐車場に戻って道路に出るときも相変わらず周辺道路は空いていました。
阪神高速も全く渋滞はなく、往路と同じ所要時間で帰宅できました。いつもこうあってほしいのですが。

出発前のプリウスの燃費表示は24.9km/lでしたが、帰ってガレージに入れた時点では26.2km/l。冬では望外の好燃費でちょっと満足。




バイク用バッテリーのナゾ なぜ5年で寿命?

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何度かブログで取り上げているスパーダですが、1月になってコンディション維持のためにエンジンをかけようとセルモーターを回したら、スターターリレーがジィーッいうだけで回りません。普通ならここで、ああバッテリーが寿命かと判断しますが、私はリレーが故障と思い込んで、分解するわ中古部品をオークションで手に入れようとするわの騒ぎでした。
なぜそんな間違いをしたかというと、バッテリーはまだ5年程度しか使用していないからです。

「普通5年だととっくに交換していても当然だろ」と思われるかもしれませんが、我が家のバイクバッテリーでは「短命」です。

というのは、AF34・Dio50ccのバッテリーは6年使い続けてまだまだ絶好調。

アドレス110に至っては、新車時に搭載されていた2005年3月製造刻印のあるバッテリーがまだ現役です。
たなみにこのバッテリーは、最終生産型のみに装着されていた型番が少し特殊なものです。でも要はちょっと容量が増えただけ。もちろん従来型とも互換性あり。
なので、スパーダに搭載の2008年5月製造のバッテリーが使えなくなるわけがないと思い込んでいたのです。

ところで以前にも書きましたが、我が家の車両用補機バッテリーはすべてサルフェーション対策でバッテリーパルサーを装着しています。もちろんプリウスにも。
Dioはこんなふうに




アドレス110はこんなふうに








スパーダはこんな形です


バイク用パルサーはこの商品を使っています。選んだ理由は近くの代理店で購入できるから。


これでバッテリー劣化の原因である極板への硫酸鉛結晶の付着を防止しているので、寿命が延びるというわけですね。
ただし、パルス発生のための電気が必要なので、フロート充電機能付き充電器と並列に常時接続して消費分を補っています。
これで万全のはずでした。

というわけで、5年で寿命はあり得ない!と頭から思い込んで、スターターリレーの不良と即断。
その結果、悪くもないスターターリレーの分解とか、某オクでゲットした中古品と交換という愚行の数々。(泣)
元のリレーの方がきれいです。^^;


それとバッテリーの見かけの電圧が高かったというのも判断ミスの一因ですね。

バッテリーの状態は高価なバッテリーテスターを使えばすぐ診断できますが、何せ高いです。診断できても治療はできないのでコスパ悪いし。
もっと簡便で、かつ正確な方法としては、電解液の比重を図ることですね。一目瞭然です。
でも昔の開放型のバッテリーならいざ知らず、今はほとんどがメンテ不要のシールドタイプ。このタイプは開放型バッテリーと構造が大きく違い、流動可能な電解液が少ないです。
電解液はゲル状にセパレータに含浸されていて、また外部の大気と遮断するためにゴムの制御弁がついていたりする密閉構造なので、私のような低スキルな者では電解液の比重測定などまず無理。

結局、リレーを交換しても同じジジジという症状だったのでようやくバッテリー不良を疑うようになりました。早速同型式のバッテリー(TX7L-BS)を手配することにしました。
↓旧バッテリー


でも、普通に店頭で買えばこのバッテリーだと12K円程度しますね。で、いろいろネットで探していたら、輸入品では4K円程度で入手できることがわかりました。メーカーは同じユアサでした。

1月9日に発注し、翌日には届きました。上記のとおり一応メーカーはユアサになっていますが、真偽は不明。でもバッテリーの外観上は印刷されたロゴなどがピンクから白になっている程度で形状などは同じでした。

そして後日、暇を見つけて補充電してから新バッテリーを装着しました。もちろんパルサーも。そして少しドキドキで、やっぱりリレー不良だったらどうしようとか考えながらセルボタンを押すと、びっくりするほどの勢いでセルモーターが回り、間髪を入れずエンジンがかかりました。
ほっとすると同時に、無用なスターターリレーの分解(リレーケースは分解などは想定外の固定方法でした)とか交換を心底後悔しましたね。フロート充電状態でのバッテリー端子電圧は14Vと大幅にアップしていました。

現在、中古リレーのままですが、元のリレーも置いてあるので、当分はこのままにしておきます。リレーを分解してわかったのですが、単純明快な構造なので、まず壊れることはない構造でした。外車ではソレノイドが引っかかったりするという例があるようですが、国産車の場合はまあ考えにくいです。

で、問題は、アドレス110のバッテリーがもうすぐ製造後満9年経過となるのに、なぜスパーダは5年程度しか持たなかったのかということ。
もう1台のDioのほうも、製造後満6年が過ぎても元気で、今朝も前日乗った後充電器の接続忘れのまま放置していたのですが、いつもと同様にエンジンがかかりました。

同じ充電器で同じパルサーなのにこの差は何か?

考えられることは、乗車頻度の違いですね。スパーダは年間で春から秋にかけて数回程度しか乗りません。それに比べるとアドレスとDioは日常使用です。晴れたときはアドレス、天気が悪そうなときはDioと使い分けて(笑)週2〜3回は乗っています。
これがバッテリーにどう影響するのかまだわかりませんが、常時微弱なフロート充電で放置状態を続けるだけではバッテリーの劣化防止には不十分で、定期的に乗って発電機から13.5〜14.5V程度の電圧をかけてやることが必要なのかもしれません。

というわけで、今後はもっと頻繁にスパーダも連れ出してやろうという、あまり意味のない結論になりました。^^;
それと、ときどきシールドバッテリー対応充電器で数時間14V程度のカツ入れ充電をするのもいいかもしれません。

それで早速1月31日に近くの周回コースを走ってみました。



コースの大阪と奈良との府県境の里山では、早くもオオイヌノフグリが可愛らしい花を咲かせていました。


その傍らにはホトケノザのつぼみも色づいていました。


その後は降雪があったりしてまだまだ寒いですが、我が家の紅梅もやっと咲き出して、春の気配も確実に感じられます。



宝塚宙組公演「翼ある人びと−ブラームスとクララ・シューマン−」を観て

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大阪では観劇前日に近年にはない降雪があり、一日たった土曜日でも溶けず、車に乗り込むために雪かきが必要なほど。劇場への経路も途中通行止め等があって、いつもと違うコースで向かいました。でも逆に都心部はいつもより車が少なくて快調に走り、予定時間に劇場地下の駐車場へ。
障害者の指定場所に停車してエレベーターを待ったていたら、二人の女性がやってきました。一人はかなりの長身でファッショナブルです。まもなくエレベーター(かなり狭いです)が来たので乗り込み、ふとその女性たちを見たら何と仰天のハプニング!
ええ、驚きましたよ。誰あろう、みーちゃん、春風弥里さんでした!

車椅子のヨメさんもすぐわかって、「がんばってください、応援しています」とか「辞められたのですね」とか、不躾なのも顧みず話しかけていました。ても春風さんは全く気取らずに「ありがとうございます。そうなんです」と微笑みながら答えてくれました。

「これから観られるのですか」とヨメさんの立て続けの質問に私はハラハラでしたが、春風さんは「ええ、観たあとはトークショーにも出ます」と答えてくれました。やさしいですねぇ。普通春風さんのような立場になると、こういう対応をしない方も数多いですが、全く自然に応じてくれました。そうこうしている間にエレベーターのドアが開きました。
でもほんの短時間でも温かい春風さんの人柄に接することができ、本当にラッキーでした。
彼女は「キャパ」や(これはスカステで観たのですが)



アンドレア・シェニェ」でもいい歌と演技を見せてくれましたが、



私たちにとってはミュージックパレットでゲスト出演した際の見事な歌声が強く印象に残っています。あとになってそのことも言えばよかったねとか話しながら、つかの間の至福のときにひたりました。彼女の退団は本当に残念でした。

というハプニングのご報告はこのくらいで、いつもの塩分控えめ・超薄味の観劇感想です。以下敬称をすべて省略しています。

でいきなり結論ですが、とにかく脚本が良すぎる!
こんな脚本を書かれてしまったら、並み居るベテラン座付センセーたち顔色なしですね。まったく何をやっているんだといいたくなります。
脚本・演出の担当は、なんと2006年入団の新人・上田久美子。若いです。でもいい仕事しています。
↓スカイステージ「演出家プリズム」より

今年の宝塚新人脚本・演出家賞はこれで決まりですね。何の賞かって?もちろん「思いつくまま演劇大賞」(殴)。

大筋の話としては、2008年の映画「クララ・シューマン 愛の協奏曲」などとダブるところもなくはないですが、大体史実を踏まえたら同じような話になるのは当然で、そう考えてもはるかに今回の舞台の方がいいですね。

とにかく当時の音楽界とそれぞれの音楽家に対する演出家の深い造詣が投影された脚本になっていました。
19世紀のドイツロマン派の作曲家ロベルト・シューマンが、場末の酒場のピアノ弾きだったブラームスの才能を見込んで、自宅に住み込ませて才能を育てていく過程、そしてロベルトが精神疾患で入院し、困窮したシューマン家を、ブラームスが献身的に支えるという話です。
それをロベルトとブラームスの固い師弟の絆と、ブラームスとクララの許されない恋という二つの話を軸に、複雑に絡み合った当時の音楽界の人間関係を鮮やかに描き出しています。

生き生きとした人物描写、話の展開に全く無理がなく、極めて自然に話に引き込まれていきました。台詞がいいですね。宝塚らしくない(笑)自然な台詞のやり取りがリアル。殆どストレートプレイといっていい。

この芝居のモチーフは冒頭に流れる交響曲第3番 第3楽章でしょうね。この曲があってこの脚本になったのだろうと思わせるぐらい、よくマッチしていました。そしてその旋律を通奏低音として、ブラームスも、クララも、ロベルトも、リストも、ヴェラも、ルイーゼも、伯爵夫人も、ヘルマン博士も、ワーグナーも、そして書ききれないそれ以外の役みんな(笑)も、それぞれの人生を生きていました。それらすべてに、華やかでもどこか悲しい印象が終始付きまといます。うまいです。

あっという間の観劇タイムで、観終わったあとは文豪の名作小説を読み切ったような余韻のある充実感。本当に大したものです。この人の作品をもっと観たいと思いました。今後が楽しみです。

当日の場内放送ではリピーターチケットがあるとかのアナウンスがありましたが、日程的にリピートできなかったのが本当に残念でした。もっと前に観劇していればと悔やまれました。

〜配役です〜
ヨハネス・ブラームス‥‥‥‥‥‥‥‥朝夏まなと
ロベルト・シューマン‥‥‥‥‥‥‥‥緒月遠麻
クララ・シューマン‥‥‥‥‥‥‥‥‥伶美うらら
イーダ・フォン・ホーエンタール‥‥‥‥純矢ちとせ【音楽界の御意見番。通称「伯爵夫人」】
ヴェラ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥花音舞【ハンブルクの酒場の女将】
ヘルマン博士‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥風羽玲亜【ロベルトの主治医】
カタリーナ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 花里まな【晩年のブラームスの家政婦】
ヨーゼフ・ヨアヒム‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 澄輝さやと【名ヴァイオリニスト。シューマン家の友人】
ルイーゼ・ヤーファ‥‥‥‥‥‥‥‥‥すみれ乃麗【実在の女性に名を借りた架空の人物。クララのピアノの生徒】
ベートーヴェン?‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥凛城きら【ベートーヴェン?】
オットー・ヴェーゼンドンク‥‥‥‥‥‥ 松風輝【ジュネーブの銀行家。音楽の有力なパトロン】
フランツ・リスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥愛月ひかる【ロマン派のピアニスト、作曲家。「ピアノの魔術師」の異名をもつ】
レオノーラ・ゼンフ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥結乃かなり 【ライプツィヒの音楽出版社の社長夫人】
マティルデ・ヴェーゼンドンク‥‥‥‥‥夢涼りあん 【ジュネーブの銀行家夫人】
ユリウス・グリム‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 美月悠【作曲家志望の青年。シューマン家の友人】
リヒャルト・ワーグナ‥‥‥‥‥‥‥‥ 春瀬央季【ロマン派オペラの頂点に立つ作曲家。「楽劇王」と呼ばれる】
カロリーネ・フォン・ヴィトゲンシュタイン‥真みや涼子【ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人。リストの愛人】
エミール・シューマン‥‥‥‥‥‥‥‥ 秋音光【シューマン家の長男】
フェリックス・シューマン‥‥‥‥‥‥‥ 花菱りず 【シューマン家の次男】
ユリー・シューマン‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 遥羽らら【シューマン家の長女】

で、それぞれの配役ごとに。

まずブラームスの朝夏まなと。もういうことなしの演技と歌でしたね。

最近観た「銀河宇宙伝説」とか「モンテクリスト」とか、あの恐怖の脚本/演出(笑)の「風と共に‥」で受けた印象とはまったく別人のような今回の演技、脱帽でした。
演技の隅々に細やかな心理描写が込められていて、抑制のきいた演技でしたが、光っていました。もうしょっぱなから感情移入しまくりです。







クララと本当はどうだったんだとかの下司の勘繰り(笑)が入る余地のないほど、芸術にひたむきな朝夏ブラームスです。
この人については、これまでの舞台印象は完全にリセット。ブラームスが夫妻の子供たちと遊ぶ姿など、本当に子供好きだろうなと思うほど。繊細で多感で芸術に賭ける純粋な魂を持った青年ぶりが見事でした。
説得力のある演技と歌、そして容貌、それらすべてが完璧にブラームスしていました。

対するクララ役の伶美 うらら。

この人もぴったりの役どころ。もう「肖像画にあるクララのイメージそのもの」(プログラム・上田久美子「翼ある人々」より)でした。クラシックな髪型に細面がよくマッチしていて、しかも豪華だが上品で趣味のいい色合いの衣装。しっとりとした中に情熱を秘めた演技。ハマリ役でした。キャパで見た演技よりもこちらのほうが数段よかったです。




ロベルトを支え、自らも芸術に対して期するところがありながら、一家の中心として生活のやりくりに追われる気丈な人妻を演じて見事でした。今のタカラヅカでクララ役はこの人以外には考えられないと思いました。台詞も立ち居振る舞いも言うことなし。
ただ惜しむらくは歌。ちょっと残念でした。さらに精進してほしいですね。

そしてロベルト・シューマンの緒月遠麻です。

人格者で、懐の深い、誠実そのものなロベルト。ぴったりでした。
ただ彼の内面はというと、創造力の衰えを自覚し始めていて、新たな才能の台頭に焦りながら、自身どう進むべきかを模索しつつ、音楽界のさまざまな抗争や葛藤に巻き込まれて苦悩しています。さらに妻に言えない持病にも苦しめられています。その姿には、こちらのほうも辛くなりますね。
彼女は最近こういう陰影のある役が多い感じですが、今回も複雑な人間像を味のある演技でこなしていてさすがでした。
Good Job!です。




儲け役といえるのがヨーゼフ・ヨアヒムの澄輝さやと。おいしい役ですね。いち早くブラームスの才能を見抜き、シューマン家に紹介する役です。晩年にも登場するなど、出番も多かったです。
名ヴァイオリニストとのことですが、なかなか演奏ぶりも板についています。(笑)



遊び人でもクララに師事している令嬢ルイーゼ(すみれ乃麗)にはぞっこんなのが面白いですね。

力まず自然な演技でブラームスやシューマン一家に気を配るところなど、良かったですね。

もう一人シューマン家にからむ役がルイーゼ・ヤーファ役のすみれ乃麗。実在の女性に名を借りた架空の人物だそうですが、芝居ではクララのピアノの生徒でブラームスに恋心を抱く令嬢です。この人もヨーゼフと一緒に最後にも登場します。ブラームスを慕う乙女心をよく演じていました。衣装も令嬢らしく豪華で典雅。




何度も言いますが、今回の舞台衣装は演出家の趣味でしょうが、色あいが素晴らしい。「風と共に‥」などとくらべたら月とスッポンの出来です。ただ、子供たちの服だけは最後まで着たきり雀でかわいそうですが。^^;

ブラームスとは対極に位置しているのが愛月ひかるのフランツ・リスト。
キザで奇を衒ったアクロバティックな演奏ぶり、自信満々で鼻持ちならないスノッブ。そんな嫌なヤツですが、話が進むにつれて結構影があったり、やさしいところも垣間見られたりで、存在感のある演技が光っていました。濃い役が似合っていました。
画像がなくてすみません。m(__)m

今回の舞台で一番のツボだったのが、リヒャルト・ワーグナーの春瀬央季。(余談ですが、今のタカラヅカの芸名、「央」とか「愛」とか「舞」とか「羽」などの漢字や、「ラ」行の平仮名が多いですねぇ。)
さておき、ワーグナーが登場したとき、長身と目立つ容貌にびっくり。おおっという感じで目立っていました。
口数が少なく(セリフが少ないからですが^^;)出番もあまりありませんが、舞台に出てきただけでそのインパクトはすごいです。黙って立っているだけでも雄弁。今後の舞台、要チェックですね。


笑いを誘っていたのは「ベートーヴェン?」の凛城きら。「偽作曲家」が話題になっている時だけに、なかなか微妙なタイミングですね。今回の狂言回しともいえる役ですが、なかなかの楽聖ぶり(笑)で、楽しませてくれました。
当時の音楽家たちが直面していたポスト・ベートーヴェンという課題を体現していていい演出だと思いました。

あと、さすがの歌と演技だったのが音楽界の御意見番で通称「伯爵夫人」のイーダ・フォン・ホーエンタール役の純矢ちとせ。
貫禄ありまくりの存在で、さもありなんというところです。歌も言うまでもない出来ですが、もっと歌ってほしかったですね。
そういえば今回の舞台は歌が少なかったですが、その分セリフで話が掘り下げられていたのでよしとしましょう。

これ↓はスカイステージの突撃インタビュー司会の画像です


その他の役もみんな頑張っていましたが、中でもヨメさんは晩年の家政婦カタリーナ役の花里まなを誉めていましたね。若いのによくやっていると感心しきり。この人も要チェックだそうです。

フィナーレのダンスシーンも落ち着いたいい雰囲気で、この舞台の締めくくりにふさわしいものでした。


本当に今回は、登場人物の造型が的確で見事です。それぞれの人となりがリアルによく伝わってきました。加えてセリフがよく練り上げられていて無駄がなく、幕が上がってすぐに話に引き込まれていきました。こういう舞台はなかなかありませんね。

とても新人演出家のデビュー作と思えないほどの完成度で、素晴らしい出来でした。私たちの予想をはるかに超えるいい舞台で、満足の一日となりました。絶対お勧めです!





今年のこまつ座初観劇は『太鼓たたいて笛ふいて』です

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自慢にならないことですが、私は林芙美子の作品は全く読んでいません。
なので彼女の作品がどんなものか、そもそもどんな作家なのか全く知りませんでした。林芙美子と聞いて想い浮かべるのは森光子がでんぐり返る「放浪記」ぐらい。(笑)

でも、「太鼓たたいて笛ふいて」はなんといっても井上ひさしだし、主演は大竹しのぶだし、脇を固めるのも芸達者ぞろいと来ては、観ないわけにはいかないと、かな〜り以前(最近は各劇場とも青田刈りというか、チケットの売り出しが本当に早いですね)にチケット確保。それから二人で心待ちにしていた舞台です。

劇場はシアターブラバ。
大阪城ホールの対岸にあるかなり安普請な施設です。駐車場はもちろんなし。
隣接するタイムズに停めるしかないので、当日は対岸にある大阪城ホールのイベント情報をチェック。
というのは以前、ウィルヴィルの三姉妹を観たとき大阪城ホールでのイベントの影響で駐車場が満車になり入庫がかなり待たされて焦ったことがあったので。
しかしこの日も某グループのコンサートがあるとの情報でしたが、午後6時開演とのことでまあ大丈夫かなと。
でも、正午過ぎに駐車場に到着したらすでに車の列。対岸を見ると同じくビックリの長蛇の列でした。焦りまくりましたが、なんとか開場前に劇場に入れました。なんでこんなに重なるのでしょうかね。

開演のかなり前には劇場内は満席。こまつ座公演ということで男性客も多く全般的に年齢層も高め。

1時を少し過ぎてから、ピアノ演奏の朴勝哲が客席から登場して幕が上がりました。
やはり電鉄会社ならではの時間厳守なタカラヅカを観なれていると、開始が少しでも遅れると気になります。(笑)

芝居の始まりはお約束の出演者紹介タイムから。6人の顔ぶれがすごいです。


舞台装置はいたってシンプルで、舞台の背景として原稿用紙のマス目が描かれているだけ。家を表すものはこれまた原稿用紙に似た格子の障子+欄間みたいセットが一対。あとは畳とか卓袱台などの小道具。はじめはちょっと寂しいなと思ったりしましたが、話の面白さでそんなことは霧消。音楽はさきほどのピアノ演奏のみ。でもそれで充分でした。何しろ出演者の歌が素晴らしい!聴きごたえ大有りの耳福でした。
ちなみに最後の場面で使われる絵は芙美子の描いた自画像で、その絵の顔の部分だけ大竹しのぶに替えたものが上掲のパンフ表紙の絵だそうです。夫の影響で芙美子は絵もよく描いていたようですね。

話は『放浪記』で一躍有名になった女流作家・林芙美子が、創作活動に行き詰まり、やり手のプロデューサー・三木孝の「戦争はもうかる」という説得に応じて、従軍記者としての体験を活かして作家活動の巻き返しを図ろうとします。

ちなみに、劇中でこの「戦争がもうかる」という話の例で挙げられている日清戦争で得た賠償金がすごいです。日清戦争前の国家予算の4年分を上回る金を得たのですから。これに味を占めて、以後日本は戦争に明け暮れるようになります。
そして今、政府・自民党が現在の憲法を「押しつけ憲法」として否定し、過去の軍国主義憲法を「取り戻す」ために、治安維持法顔負けの悪法「特定秘密保護法」を強行制定し、「集団的自衛権容認」で昔のように戦争に明け暮れる国にしようというのはとんでもない話です。

・開戦前の1893年(明治26年)度国家予算 8,458万円(軍事費27.0%、国債費23.1%)
・清の賠償金と還付報奨金による収入総額が3億6,451万円(イギリス金貨(ポンド)で受領する)

三木孝の勧めで芙美子は内閣情報部と陸軍の肝煎りの『ペン部隊』の紅一点として、南京攻略戦から始まってシンガポールやジャワ、ボルネオと各地を従軍。
初めは国威発揚・戦意高揚の国策に沿った提灯記事を書いていたものの、やがて「聖戦」・「大東亜戦争」の実態が日本軍による東アジア侵略であり、戦場が悲惨極まりない状態にあることを現地で目のあたりにします。6年間の従軍体験の後は夫の実家のある信州に疎開。芙美子は敗戦が不可避なのを知って「こうなったらきれいに負けるしかない」と発言して、逆に当局の監視下に置かれたりします。
戦後林芙美子は、騙されたとはいえ「太鼓たたいて笛吹いて」軍国主義をあおってしまった自身の贖罪のように、『浮雲』や『めし』など、庶民の生活に密着した作品を書きつづけます。舞台はそんな作家・林芙美子を音楽評伝劇として描いています。

観ていてわかってきたのは、林芙美子の大らかさと好奇心の強さ、そしてフットワークの軽さ。
公表されている彼女の年譜などを見ても、本当にあちこち飛び回っています。奔放で大らかな性格は、母親キク譲りのものであることがこの芝居でもよくわかります。母性の系譜ですね。
軍国主義の片棒を担いだかと思うと、その前には共産党に寄付したとかの行為で特高警察に調べられたりという林芙美子。しかし別に一貫した信念とか信条があるわけではなくて、その時々の世相に庶民的な興味からかかわってしまうという感じでしょうか。
今回の観劇を契機に実像を少し調べてみたりしましたが、本当に自分に正直な愛すべき人物みたいですね。
そういった芙美子の人となりについては、劇場で買ったこまつ座のパンフレット「the座 No.77」に掲載された太田治子の「心やさしき女親分」によく描かれていました。

予想通り、大竹しのぶはお化けでした。最近見たテレビの大竹しのぶのインタビュー番組などではフワーっとした雰囲気で、ちょっと舌足らずな喋り方でつかみどころのない印象ですが、舞台に立つとそんな印象は一変、完全に林芙美子になりきっています。もう演じているというより、舞台の魔物が彼女に憑依して、その体を勝手に動かしているという感じです。

初めて彼女の舞台を観たのは「グレイ・ガーデンズ」でした。所詮タレントの余芸だろうとタカをくくっていた私が浅はかでした。(笑) 観終わってもう茫然自失、完全にギブアップでした。
しかも演技のみならず歌もびっくりのド迫力の歌唱力。余談の余談ですが、この「グレイ・ガーデンズ」で大竹しのぶの役の若い時を演じたのが彩乃かなみ。初めはこの歌ウマ誰かな?と思っていましたが、すぐわかりました。久しぶりに彼女の元気な姿と歌が聞けてうれしかったですね。

さて「太鼓たたいて‥」に戻ると、大竹しのぶは満身で怒って・笑って・泣いて林芙美子の半生を演じきって、終わってみれば2人とも感動のスタンディングオベーション。
陳腐な表現ですが、顔の表情の変化はまるで万華鏡。感情表現がすごいです。素のときと違って(笑)セリフも明瞭で、よく伝わってきます。パンフレットではいろんな思いを込めて演じていることがよくわかります。
−以下画像はこまつ座「the座 N0.77」の舞台写真の部分です−




そんな大竹しのぶとガップリ組んでいたのが、商売上手で機を見るに敏なプロデューサー・「三木孝」役の木場勝己。彼も大竹しのぶ同様初演から演じています。彼の歌を初めて聞きましたが、これがまた絶品でした。聴きホレました。うまいですね。
ヨメさんも終了後しばらく絶賛モードでした。パンフレットで本人が書いていますが、役の上での「とても積極的でエネルギッシュで、ちょっと調子のいい人」の裏に潜むさまざまな隠れた部分の存在まで想像させる深い演技でした。


この二人に続くのが母・「林キク」役の梅沢昌代と「島崎こま子」役の神野三鈴。
梅沢昌代は井上ひさしが役を宛書したとのことで、もう天衣無縫・軽妙洒脱・緩急自在、余裕の名演技です。「余人をもって代え難い」とはこのことですね。「the座」によればこの人も今の社会状況に対して強い危機感を抱いていて、そんな思いを持ってこの作品と向かい合っていることがよくわかりました。


こま子の神野三鈴も負けず劣らず良かったです。

彼女は「組曲虐殺」でもいい演技を見せてくれましたが、今回のこま子もハマリ役。
純粋で、人を疑うことを知らず、一途にやさしくて、人の心の中の良いところだけを一身に凝縮したような役ですが、本当にこんなだっただろうなと思わせる演技。説得力があります。感情移入しやすい役でした。
井上ひさしの作品にはこういう女性がよく登場しますね。どこか『頭痛肩こり‥』の妹「樋口邦子」(深谷美歩)に通じるところも感じました。

「加賀四郎」役の山崎一も『組曲虐殺』で観ていますが、この人だけ今回の出演が2回目だそうです。
『組曲虐殺』での特高刑事と通じる役ですが、時流に乗っているようで、実は流されている当時の庶民の一典型のような姿を演じていて、いろいろ考えさせられます。誰しも持っている愚かしさとたくましさをよく演じていました。

「土沢時男」役の阿南健治も初演時から出ているとのことです。時流に乗るというよりは、一生懸命に生きようとしているのに流されっぱなしの不器用でまっすぐなどこにでもいる庶民。そんな姿をよく表していましたが、後半の東北弁はリアルすぎてかなり聞き取りにくいのでネイティブでない観客は苦労します。


そういえば今回は全般的に音響に難アリで、聞こえない場面が結構ありました。私だけかと思ったらヨメさんも「聞こえにくかった」とのこと。ちょっと残念でした。

観終わってまず感じたのは、作者がこの作品を今の時代に宛書していたのではということ。
10数年前に書いていながら、今のキナ臭い世相が鋭く描かれています。何度同じ間違いを繰り返すのかという作者の声が伝わってきます。
同時に、林芙美子に対する井上ひさしの温かいまなざしも感じられました。実際に愛すべき人物だったようで、未読な私も読んでみようという気になりました。

今回も浮かんできたのは「面白うて やがて悲しき 鵜舟かな」でした。
未見の方は、機会があればぜひご覧ください。私のつたない感想などよりはるかに多くのものが得られると思います。おすすめです。

今月は、明日27日も大劇場での観劇。物忘れが激しいので更新が大変です(笑)。忘れないうちになんとかアップしたいと思いますが、その折にはまたご覧いただければと思います。


宝塚花組公演『ラスト・タイクーン ―ハリウッドの帝王、不滅の愛― 』 を観て

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今回の体調不良、風邪or花粉症なのか不明ですが、咳が止まらず目はショボショボ、鼻はグズる悲惨な状態で、食欲もなくなり久しぶりに寝込む始末。なんとか一昨日ぐらいから回復してきたので感想をまとめ始めましたが、肝心の公演が、どちらも少々期待はずれ。さっぱり感想を書こうというテンションが上がらない状態になっていました。
なのでいつにもまして薄い感想ですが、よろしければどうぞご笑覧ください。m(__)m

今回のタカラヅカ観劇、新人脚本/演出家の大劇場デビューとあって、かなり期待していました。
当日も楽しみにしながら劇場に向かったのですが、トップの退団公演なのに劇場内の土産物売り場とかホールとか見てもそれほどのにぎわいもなく、あまり活気が感じられなかったのは意外でした。これが人気の舞台だったらもっと勢いが感じられるのですが、平日ということを考えても少々さびしい感じ。

開場時間となって席に着きました。見渡せば1階席はほぼ満席だったので一安心。

で芝居の感想ですが、私としてはかなり不満な出来。
でもヨメさんの感想は「まあまあやったね」。えっ、よかった?と私が聞き返すと「とりあえず話は破綻してないから」。
まあ「破綻していない」というのは彼女の評価ランクでは「ギリギリ合格点」という意味ですが。

でも私としてはとても合格点は無理でした。
出かける前に見た公式ホームページの[解説]では、「大物プロデューサーの栄光と挫折」とか、「亡き先妻と瓜二つの未亡人とのロマンスを描いた」とか書いてますが、そのどれも描かれていなかったですね。大体始まってすぐにいきなり結婚というのも唐突すぎ。

でもそれよりなにより結末が不満。強引でもワンマンでもいい映画ができたのならそれで納得ですが、完成する前に死んでしまうとは。何のために社長と張り合ったり映画スタッフとすったもんだしたりのか意味ないですね。

原作がどこまで書かれていたのか知りませんが、どうせ未完の原作なんだし、結末は自由に作ったらよかったのにと残念。
例えばモンロー・スターと映画スタッフの組合連中が苦労して機材と資金を集めて、会社の妨害をはねのけて自主上映したら一挙に人気沸騰、映画会社を見返して、その勢いで次の映画製作に奔走するさなかに事故で死ぬとかやったらまだ意味があるけどね。
どんな映画を作ったのか作ろうとしてきたのか、肝心の栄光と挫折が描かれていないのが致命的。
ただの手が早く傲慢で、横暴で身勝手な男でしかなかったのが残念。「不滅の愛」っていわれても、そもそも愛らしい愛がどこにもなかったと思います。

蘭寿とむは頑張っていたけど、脚本の人物描写が弱いから持ち味が出せずかわいそうでした。

スーツ姿はやはりよく似合っていたけど、どんな役にも誠実さが付きまとう彼女のキャラクターなのに、今回は脚本がその味を引き出せないまま、類型的な「やり手」で終わっていたのが気の毒でした。





「真面目キャラ」でもオーシャンズ11ではまた星組とは違った別の味を出していたから、やはり脚本の不出来がすべてでしょうね。

明日海りおのヒゲは意外に違和感なかったですね。(笑)ただきれいな容貌なので老けるのは難しい。

若々しさがどうしても出てしまって、とても大学生の娘がいるとは思えない。(笑)スーツはちゃんと着こなしていましたが、年齢相応の落ち着きとか貫禄というのはなかなか出せないものですね。
そして彼女もどんな人物か、モンロー・スターと目指す映画観の違いなどで対立するとかが描かれていたらまた話に説得力があったと思いますが。ただ会社を守りたいだけに見えました。
歌はよかったです。モンロー・スターが歌いだすと反射的に身構えてしまったりしましたが、それが明日海りおと望海風斗の歌が弛緩させてくれました。

その望海風斗、あまりいい役ではないけど(笑)、骨太の演技で存在感がありました。

リーダーシップがあります。


ただ、今回の配役は、明日海りおと望海風斗の役を入れ替えたほうが良かったと思いますね。
望海風斗はオーシャンズ11でも濃いあくの強い演技ができるから、社長にぴったりだったと思う。逆に明日海りおはモンロー・スターといろいろ衝突するが、最後には意気投合して映画スタッフとして一緒に映画を作って、スターの死後もその映画作りの情熱を受け継いでいくとかにした方がつながったのではないかと妄想したり。

鳳真由は出番が少なくてもやはりうまかった。華形ひかるの小説家で脚本担当もまだ書き込まれていていい役のほうで、他の生徒たちは役名はあってもあまりしどころがなくかわいそうでした。


キャサリン・ムーア/ミナ・デービスの二役・蘭乃はなですが、大体話がラブロマンスというより「カリスマプロデューサー」に色を添えるだけの存在なのでしどころがない役。


でも何度も言いますが、そのカリスマ性が話の中で浮き彫りにならないのが致命的でした。

あと場面転換とかがんばっていましたが、こちらが話に入り込めないままなので、いくら盆を回したり、セリを多用しても効果は感じられなかったですね。このあたりは『アンドレア‥』の場面転換のうまさとは大違い。セットは大道具さんががんばって良くできていたとは思いますが。

ということで、脚本/演出家が大劇場デビューするのはやはり格段のパワーがいるということがよくわかりました。それと歌でつなぐのは限界があるので、しっかりとしたセリフを丁寧に積み重ねて話を深めていってほしかったと思いました。

つぎにショーのほう。
「夢眩」と無限のマークを重ねたカーテンを見てちょっと期待しましたが、騒がしい場面が多くてがっかり。
これも公式ホームページでは「洒落たセンスを織り込んだ」とか、「新たな形式を提示する意欲的なステージ」とか書かれていますが、全体にどこかで見たような場面とか振付で、なにが「夢眩」なんやろと二人で疑問。
私はショーで使われていたVACATIONに拒否反応で、ああいう古いポピュラーソングを使ったら逆に新鮮で面白いだろうみたいな古臭い発想が陳腐すぎてガックリ。

星組の「ジャポニスム序破急」でサクラサクラをボレロで踊らせる発想の底の浅さと似ていて情けなかったです。

ここでも蘭トムは頑張っていました。






蘭乃はな↓


明日海りおです

中盤のスパニッシュになってやっとなんとか観られる感じになってきましたが、やはり全体に古臭いです。



でもスパニッシュももっとしっとり見せられると思いますね。雪組公演の『Shining Rhythm!』のスパニッシュがわすれられないです。

最後はお約束の黒燕尾。
この人はこれでキマリですね。




観終わればトップ退団公演というにはいささかさびしい出来で、『アンドレア‥』がサヨナラ公演だったらとか思ってしまいました。
なかなかうまくいかないものです。

さて、演出家にはこれにめげず、次を期待したいですね。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

余談ですが、お隣の男性はトップのファンなのか爆竹のような拍手を連発されていました。なので今回の公演も観る人が観ればよかったのかもと思ったりしました。

(2014.3.8)

大阪駅のフォルクローレ

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以前チラッと見た時はこの路上ライブ、数人のグループでやっていました。その演奏は、とても路上ライブとは思えないほど質の高いもので、逆になんか法外な料金を請求されそうで(殴)、立ち止まって聞くことはありませんでした。
その後いつのまにか演奏場所がヨドバシ梅田に近い大阪駅横の歩道に変わっていて、ヨドバシに買い物に行った際などよく聞こえてきました。やはりなかなかの演奏です。

それで某日、特にこれといって買う予定もなかったので、その演奏を聴いてみることにしました。演奏しているのは一人、ペルーの民族衣装をまとった彼が、MD?に録音したベース音楽を再生しながら、それに合わせてサンポーニャやケーナ、チャランゴを演奏しながら歌うというなかなか忙しいスタイルです。マイクとアンプ、スピーカーを利用しているのでホンダの発電機を使用したりで結構重装備。

で、これがまあ絶妙の演奏でした。よくある「コンドルは飛んでいく」といったポピュラーなものではなく(別の日に演奏しているのを聞いたことはありますが)、初めて聞く曲が多かったのですが、これが聞きやすくてメロディラインのきれいなものばかり。
アレンジも垢抜けていて素晴らしいです。

しばらく聞いていましたが、その日はそのままヨメさんのリハビリ会場まで戻って、帰宅しました。帰途の車中でそのことを言ったら、「それでいくらカンパしたん?」と聞かれたので、「いや、してない」と答えると「信じられんわ!、最低」と叱られました。
ヨメさんのいうとおりで、いい演奏だと思ったら少しでも渡すべきだったのですが、なにか施しをするみたいで気が引けてしまって、体が前に出なかったのです。
でも確かに彼はそのカンパも生活費の一部にしているでしょうから、演奏の対価として支払うべきでした。かな〜り後悔しました。

それから一か月後、また土曜日のリハビリで出かけたとき、もう一度その演奏を聴きに行きました。今回ははっきり目的をもって。(笑)

前回同様、午後1時半ごろでしたが、同じ場所で演奏していました。遠巻きに聴いているのは20人ぐらいでしょうか。今回は一番前で聴くことにしました。やはりいい演奏ですが、何曲か目に聞きなれた曲が演奏されました。「コーヒールンバ」(「MOLIENDO CAFE」)です。これも楽器の演奏とボーカルが素晴らしく、アレンジも絶妙のリズム感が新鮮でした。

で、演奏の合間をみて、前回渡せなかったカンパを彼の前に置かれた小さなかごに入れてから、CDを買うことにしました。これでトラウマ解消。小さなトラウマです。(笑)
そのあと注意してみていたら、演奏を聴いてお金を入れているのはすべて私と同世代の男性ばかり。若い人たちは遠巻きのまま誰も近づこうとしませんね(笑)。

CDは2種類売られていました。私の買ったのはもちろん「コーヒールンバ」の入ったほう(笑)。「コーヒールンバの入っている方はどれ?」と聞くと彼は「アリガトウゴザイマス」と言いながら2種類のうちの片方を指さしました。価格は2,500円。

CDのタイトルは「KERUMANTU BEST」でした。ケルマントゥと読むそうです。

買ってから、ヨメさんのいる場所に帰る地下鉄の中で手にとってしげしげ見ると、意外なことに(殴)、パッケージはしっかりしたものです。よくある、パソコンでCD-Rに焼いたものと違って、ちゃんとプレスされたものです。


で、早速、帰途の車中で2人で聴いてみました。そしたらこれが何とも素晴らしい曲ばかり。まさにベストでした。
ケース中の解説パンフレットに
「このCD『ケルマントゥ 〜ベスト〜』には、新しい曲にあわせて今までの作品の中でもより良いものを選りすぐって収録しています」と書かれていますが、本当にそのとおりでした。大体普通はベストといっても中には抱き合わせで何曲か好みでないものが入っていたりしますが、これはハズレなしで本当にお買い得でした。2004年に日本でプレスされたそうです。

帰宅後インターネットでパッケージにあったURLを入力したら、素朴ながらホームページもありました。
簡単な経歴なども書かれていて、活動ぶりもよくわかりました。そして大阪駅だけでなく、あちこちで路上ライブもやって、各地でライブ演奏をやっていたりで活躍しています。4月には九州でも演奏予定とか。
彼の名前はCésarTicona(セサル ティコナ)というそうです。
代筆ですがブログもあったりします。→ココ

現在彼が販売しているのは2種類だそうですが、また出かけた際にもうひとつの「VivAndes〜ビバンデス〜」も買おうと思います。

フォルクローレのきれいな演奏を聴こうと思われる方、ぜひ一度彼のライブを聴いてみてください。おすすめです。

万葉文化館 三瀬夏之介 「風土の記 −かぜつちのき−」の鮮烈な衝撃

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ようやく春が実感できるようになってきた3月16日の日曜日。私はこの時期が一番好きです。
そこかしこに春の予兆があふれていて、たとえ一時的に寒い風が吹くことがあっても、もう間違いなく春が来ている!と確信できるのがうれしいですね。
そんなわくわくした春の風に誘われて、今年2回目の万葉文化館に出かけることにしました。
公式HPで開催案内を見ていた三瀬夏之介の個展「風土の記 −かぜつちのき−」を観るためです。

画家・三瀬夏之介という名前は初めて聞きます。まるで藤沢周平の時代小説に出てくる剣豪みたいな名前ですが(笑)、資料では1973年奈良生まれとありますからかなり若い画家ですね。
京都市立芸大大学院を終了後、1999年から奈良の高校で教鞭をとりながら個展やグループ展の開催を重ね、2012年には「東山魁夷記念日経日本画大賞」の選考委員特別賞を受賞するなど、近年注目を集めている気鋭の画家と紹介されています。

で、上記HPの「本展の見どころ」では↓
和紙に墨という日本古来の素材を使用し、意欲的に制作をつづける三瀬夏之介。
そんな三瀬氏の個展である本展のみどころは、本展開催のために制作された、旗のような形状をした新作「日本の絵〜小盆地宇宙〜」と、全長約17mにもなる巨大なスケールで三瀬の故郷である「奈良」が表現される、本展注目の新作「風土の記」が、今回初公開の作品となります。
また、今までの三瀬の代表作の中からは、2009年VOCA賞受賞作品である「J」(第一生命保険株式会社所蔵)や、巨大な和紙に墨といったデリケートな素材や、表面に施されたコラージュの数々を見ることのできる「君主論- Il Principe-」、「ぼくの神さま」(大原美術館所蔵)の他にも、当館の展示室を縦横いっぱいに埋め尽くす大型の三瀬作品も、迫力満点のみどころです!
と紹介されています。ただ、私は「和紙に墨」とはまた若いのに渋いというか地味というか、まあ現代風水墨画みたいだろうなと勝手に思って、正直あまりピンとこない印象でしたね。

でもなかなか力が入った展覧会のようなので、二人で出かけることにしました。

ただこの日はスペシャルミッションが課せられていて(笑)、午前10時までに万葉文化館前に着くことが必須条件でした。
なので早めに出かけましたが、なぜかこの日はどの高速道路も一般道もガラガラの特異日。9時40分には文化館前の石ベンチでノートパソコンを開いてスタンバっていました。
いい天気で、何人か先客がすでに開館を待っていました。


何をするのかというと、この日の10時開始の宝塚歌劇オンラインチケットでチケットを確保するのです!(殴)
公演は宙組の『ベルサイユのばら―オスカル編―』。もう見飽きたも通り越した、シーラカンス芝居そのものですが、やはり宙組とあってはパスもできないだろうと、万葉文化館前で、春風に吹かれながらキーボード連打と相成ったわけです。
事前に調べたauの受信エリアマップで明日香村はOKだったので、Wifi Walkerを持参してチケットを確保しようということになりました。

でも知らない人が見たら、もう開館時間が過ぎているのに、なんで入らずにパソコン画面を覗いているのだろうと思ったでしょうね。でも私たちは必死でした。(笑)
で結果ですが、10時受付開始から10分間ぐらいはアクセス殺到でサイトに入れず焦りまくりましたが、第二希望日でなんとか席をゲットできました。

気をよくして、パソコンを片付けて展覧会場へ(笑)。

この日は館内でいろいろイベントも用意されていて、結構賑わっていましたが、まずは目当ての個展会場へ。
入り口で展示作品をチラッと見ただけで、すごいと思いました。とにかく作品がドでかい!それで度肝を抜かれ、次に驚いたのがディテールの緻密なこと。広大な画面の隅々まで覆い尽くされている細密描写に圧倒されます。
作品から放射される画力はちょっと比較するものが思い浮かばないほどの強さがあります。その執念というか、画家の創作力のタフなことは全体としてちょっと淡白な傾向のある日本の画家にはない異質さを感じるほどです。肉食系の画家です(笑)。

↓パンフレット裏面

↓万葉文化館HPから。制作風景です。

入り口にある「J」という作品でも250×400cmもあって大きいなと思いますが、その次の「君主論-?Principe-」では245×737cm、6番目の作品「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」は272×1,456cm、最後の展示でこの展覧会の主題となっている「風土の記」では272×1,710cmもあって、圧倒的なスケールです。
↓これも万葉文化館HPから。作品「J」です。

普通の展覧会では、大きな作品は3mぐらい下がって鑑賞することにしていますが、今回の作品ではその程度では全体の構図はわかりませんね。それでもっと下がって作品を眺めましたが、実は今回の作品はそんな鑑賞方法だけでは価値がわからないと思いました。

というのは、至近距離でないと見えない、びっしりと画面に描きこまれた細密描写も重要な要素になっているからです。描かれているのは旅客機であったり仏頭であったり、風景や動物、古今東西・新旧織り交ぜた建築物など。
それにさまざまなコラージュも加わって、まさに現代版「風土記」です。混沌としながら、それ自体が一つのダイナミックなうねりとして私たちの前に提示されていて、ただただ茫然として見上げるばかりです。画面から離れて見えてくるものと、接近しないと見えてこないもの。画面全体から受ける印象と、細密描写されたモチーフの対比が面白いです。思わず神は細部に宿るという言葉が浮かびました。

こういうパワフルな作品群に出会うのは久しぶりでした。

展示会場の片隅には、作家のアトリエを模した展示があって、そこだけは撮影フリーでした。



そこに展示されたものも面白いものばかり。そこにも絵が何点か展示されていて、それもなかなかのものばかりでした。このくらいだと家に飾れそうなので欲しいと思いました。(笑)

展示会場は、いままでの展示と違って仕切りを使わず、すべて壁に展示されていますが、2連の「日本の絵〜小盆地宇宙〜」だけは天井から吊り下げられています。この絵が一部透かしになっていて、それにあてられた照明で作られた木洩れ日のような影が面白かったです。

作品は16点ですが、どれも超大作ばかりなので見ごたえ十分。そのすべてに表現された巨大曼荼羅のような世界に浸るには、到底1日では足りないほど。本当にインパクトのある展覧会でした。ただ、この日も観客は少なく残念でした。

もっと観ていたかったのですが、ヨメさんの体調不良もあって正午前に会場を出ました。それから最初に見ていた庭園めぐりのクイズなどを楽しんで、ちょっとうれしい景品などをもらってから帰途に。出足の遅かったお客さんも増えてきて、駐車場も埋まって来ていました。よかったです。

すっかり気温も上がって、周辺の明日香の里の満開の梅などを楽しみながら帰宅しました。

久しぶりに以前のような万葉文化館らしい新鮮で意欲的な企画を満喫できて良かったです。

まだ観ておられない方には絶対おすすめの展覧会です。
平成26年3月9日(日)〜平成26年5月11日(日)まで開かれています。ぜひお出かけください。






シアタードラマシティ公演「おそるべき親たち」の完成度

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一週間以上も前の観劇でしたが、某日脚立に上っていてバランスを崩して(ドジ)、股関節あたりの筋肉を痛めてしばらく歩行も困難になるなどのゴタゴタで、感想をまとめるのに時間がかかってしまいました。なので鮮度がかなり落ちた感想になりますが、ご了承ください。m(__)m

3月30日、夜来の春の嵐もようやく峠を過ぎた11時20分ごろ、家を出ました。
途中少し渋滞があったものの、およそ1時間で劇場駐車場へ。今回は前のようなエレベーターでの驚きの邂逅もなく(笑)、そのまま開場前の劇場入り口に行きました。

今回は結構男性客が多く、全体に年齢層が高めなのは原作故のことでしょうか。

この芝居の初演は2010年秋で、脚本は木内宏昌、演出は熊林弘高です。上演時間は途中15分の休憩を挟んで2時間25分。

出演は、前回と同じ佐藤オリエ/中嶋しゅう/麻実れい/満島真之介/中島朋子の5人です。豪華です。


でもプログラム↓は500円。(笑)まあ本当に小冊子(B6サイズです)なので価格は妥当なところ。ただし、中身は濃くて読み応えがありました。


今回のジャン・コクトーの戯曲をベースとした『おそるべき親たち』は、戦前にフランスで初演され、1948年には映画化されたとか。上記プログラムによればコクトーは初演の2年前の1936年に来日しているそうで、そのとき彼は、天皇のために一命を擲つことも辞さない国民性に日本の国運を感じたとのことです。洞察力が鋭いですね。実際日本はその5年後に絶望的な戦争に突入していきます。

さて舞台の感想など。

照明を落としたうす暗い舞台上に一段上がった丸い舞台があり、その上にはただいくつかクッションと布切れが置かれただけ。あとは2か所にろうそくなどが置かれています。他は椅子程度で超シンプルです。カーテンや幕も一切なくて、始まる前から舞台が丸見えでした。この丸い小舞台は劇中時折ゆっくり回転します。
開演時間になって、舞台上に母親イヴォンヌ(麻実れい)が出てきて、けだるそうにクッションに身を横たえたりしていますが、客席の照明はついたままです。その間音楽も台詞も一切なし。明るい客席には遅れて次々に入ってくる観客の姿がはっきり見えているので、「あれ、進行はどうなっているのかな」と思いながら舞台を見ていました。
すると、上手側客席前方に女性の劇場スタッフが出てきて、いきなり事務的ないつもの注意アナウンスを始めたので一気に緊張がほぐれました。その説明の間にイヴォンヌは姿を消しました。アナウンスが終わってやっと客席の照明は消え、ようやく芝居が始まりました。意表を突く幕開きです。

今回の芝居、公演のテーマに即しているのか、全体に暗い照明設定になっています。それは公演パンフレットやプログラムの写真にも共通で、すべてが暗いです。衣装も同様で、全員が黒っぽい服を着ていました。

話は、イヴォンヌ(麻実れい)が溺愛する一人息子のミシェル(満島真之介)に恋人ができたところから始まります。
で、子離れのできていないイヴォンヌは当然その交際に錯乱状態になり、反対します。途方に暮れたミシェルは、同居する母親の姉レオ(佐藤オリエ)のすすめで、父ジョルジュ(中嶋しゅう)に相談します。しかし息子から恋人の名をきいたジョルジュは絶句。なんとミシェルの恋人マドレーヌ(中嶋朋子)は彼の愛人でした。

これだけでも十分にややこしいですが、さらに叔母のレオは、昔ジョルジュと婚約していたのを妹イヴォンヌに取られ、それでも密かに彼を愛しながら同居していて、隙あらば彼を我が物にしようと考えています。とりあえず純真なのはミシェルだけですね。(笑)
佐藤オリエのレオは、よくある堅実で控えめで貞淑な役かと思っていたら、

そんな一家が、それぞれ下心をもってマドレーヌの家を訪問することになります。ここまでが一幕。全体が後半の展開に向けた伏線になっています。
舞台が始まってすぐにわかりますが、5人の役者のアンサンブルは大したもので、それぞれの役柄が際立っていて、持ち味を生かした見事な台詞バトルが展開されていました。
そして15分の休憩となります。ここまで観てきてずっと緊張しっぱなしだったので、この休憩の「弛緩タイム」はありがたかったですね。(笑)

ここから出演者に沿っての感想です。
まず、ミシェルの恋に動揺するイヴォンヌ役の麻実れい。もう喜怒哀楽・緩急自在の感情表現で余裕シャクシャクの演技ですね。前回の公演で読売演劇大賞最優秀女優賞受賞をしたのも当然ですね。全体に地味な色合いの衣装ですが、二幕目の殴り込み時の勝負衣装(笑)は王侯貴族なみの豪華さで、それを完全に着こなしていたのはさすがでした。
麻実れいは今回も華やかで艶っぽいです。息子との危険な関係を露骨に見せつけるアブない演出(本人の発案とのことです)を嫌らしさを感じさせずに演じていました。

麻実れいといえば、最近スカステの100周年記念に関連したインタビュー番組が放映されていました。番組では彼女も珍しく多弁でしたが(笑)、やはり宝塚時代の思い出ではモックとのコンビについてが一番らしく、いろいろ語っていました。
彼女はふだんはおっとりとした話し方で、退団後の一時期、神田明神の境内で遊んでいた子供時代の話を耳タコ(笑)で聞かされたりしたので、あまり器用そうに見えなかったのですが、いったん舞台に立つと豹変、『サラ』みたいな膨大なセリフの難しい舞台でも難なくこなしていたのを観て、役者としての実力に驚かされてきました。
何をしても麻実れいそのものなのに(笑)、それが邪魔になるどころか逆に役の魅力を大きく引き立てているのですからすごいです。

息子の恋人が自分の愛人だと知って焦りまくるジョルジュ役の中嶋しゅう。父であり・夫であり・昔の彼女に想われていて・息子の彼女を愛人にしている・ややこしいがあまり生活力のない中年男の狼狽ぶりが面白いです。
ただ、全篇を通して、女性陣のド迫力に押されっぱなしで、その存在は薄いですね。この芝居、コメディには程遠いドロドロした人間関係のもつれあう深刻な劇ですが、それでもところどころでコミカルな演出が散りばめられていて、ひんぱんに客席から笑いが起こるのは井上ひさしの作品に一脈通じるものがありますね。

イヴォンヌの姉レオは佐藤オリエです。このレオという役、最初のうちは他の芝居でもよくありがちな、主役を陰日向なく支える、堅実で貞淑でどんなシチュエーションでも沈着冷静で賢明な脇役のように見えました。実際レオは、23年もの間、生活力のない妹夫婦を支える家政婦役を務めてきました。しかし実は深謀遠慮、その生涯をかけた復讐計画を実行に移すという役です。

プログラム掲載の稽古風景から 暗いですね↓


舞台の進行とともに、地味なのは見かけだけで、実際は今回の芝居を主導する仕掛け役的な存在であることが次第に分かってきます。ちょっとセリフがかすれ気味のようでしたが、演技は細かな感情表現が読み取れて説得力がありました。さすがに大したものです。「恐るべきレオ」でした。

息子ミシェル役の満島真之介は前回の公演が初舞台だったそうですが、2度目とあって全く危なげなく、セリフもしっかりしていました。ただ、上記の通りで今回の話は女たち3人のほうがアグレッシブなので損をしていますね。まあただのマザコンともいえなくもないですが。(殴)
観劇しながらどこかで見たなと思っていたら、以前に「祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹〜」 蜷川バージョンでお目にかかっていたのを思い出しました。そういえばこの時も三姉妹のインパクトが大きくてあまり印象に残らなかったですね。(笑)

感想が最後になりましたが、マドレーヌを演じる中嶋朋子もよかったですね。今回最初に舞台上に出てきた彼女を見たときは、その役とはやや年齢的なズレを感じましたが(殴)、そのギャップは演技力で補正して、次第に役年齢に似合ったように見せていた(笑)のはさすがでした。
今回の公演はどの役も感情移入しにくい(笑)のですが、それでもマドレーヌはまだノーマルな部分が残っているキャラクタでしたね。

この芝居、導入部からしばらくは痴話喧嘩を濃縮したような筋書(笑)で、これでずっと引っ張られるのかと思っていたら、二幕目から話は大きく流れが変わり、最後は衝撃の大逆転。

プログラム掲載の稽古風景から これも暗いです↓


その途中で繰り広げられるイヴォンヌとミシェルの尋常ではないスキンシップや、やたらに多いミシェルとマドレーヌのじゃれあいながらのキスシーンがけっこう生々しいです。役者さんも大変です。(笑)

そして最後はスパッと切れのいい結末。
これが逆に余韻たっぷりで、満足の観劇となりました。

題名から連想した観る前の気の重さがいい意味で裏切られた内容の濃い舞台でした。未見の方は、機会があればぜひご覧ください。
おすすめです。

大谷記念美術館「コレクションにみる 洋画の時代」展を観て

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大谷記念美術館は、2013年9月から今年の2月まで空調熱源改修工事のため長期休館していました。なので例年なら正月に出かけるところでしたが出来なかったので、館蔵品の展覧会とはいえちょっと期待して出かけました。

途中の道は車も少なく順調に西宮へ。着いたのは開館10分前でした。開館まで周囲の庭園で写真を撮ったりして時間調整してから館内に入りました。通路を通って展示会場に向かう途中で衝撃の発見!いつも利用していたカフェが無くなって、休憩室になっていました。
上記のように長い休館期間があったので心配していたのですが、やはりキツかったのでしょうね。コーヒーとかサンドイッチ、カレーとかおいしかったので残念でした。この日もそこで昼食の予定だったので当てが外れてプチパニック(笑)。

というわけで展覧会の感想です。

展示は大きく4つに分かれていて、テーマとしては、館のコレクションの形成史をたどりながら、日本における洋画の展開の歴史を紹介するというものです。


第1章は「大谷コレクションの時代」。西宮市大谷記念美術館の基となった実業家・大谷竹次郎氏のコレクションには多くの日本画がありますが、洋画のコレクションもなかなかの傑作ぞろいです。それら大谷氏の個人コレクションの洋画を紹介しているのが第1章です。
代表的な展示作品として、ピエール・ラプラード《カルーゼル広場とパヴィヨン・ド・マルサン》や児島善三郎《南仏カーニュの小橋》・《レースを着る女》がありますが、私は三番目の作品が気に入りました。
児島善三郎《ダリア》↓も良かったです。
(以下の画像はすべて絵葉書から)

ちょっと黒田清輝のような画風ですが、石川寅治《窓のそば》も明治期の洋画の典型ですね。↓


第2章は「エコール・ド・パリと日本の近代」。ここでは1972年に開館した西宮市大谷記念美術館が、大谷コレクションを軸としながら新たに作品を収集してきた20世紀前半のフランスのエコール・ド・パリの作品と、同時期の日本近代洋画が展示されています。
私たちは今回の展覧会を観るまでは館蔵品の大部分は寄贈された大谷コレクションだろうと思っていたのですが、開館後公費で購入したものもかなりあることがわかってちょっと驚きました。ここでは美術館が独自に購入した作品も多く展示されています。
ここでマリー・ローランサン《青衣の美少女》とか小出楢重《裸婦》(ルノワールそっくり)、佐伯祐三《帽子のある静物》などの作品が展示されていました。
前にも観た絵ですが、今回も小磯良平《ギターを弾く男》がパッと眼に入ってきました。↓


ビュッフェの《ヴェネツィアのカドーロ》もこのコーナーだったかな↓


第3章は「阪神間の洋画家たち」。この美術館は、大谷氏からコレクションと共に寄贈を受けた宅地に立地しています。この場所は関西では「阪神間」と呼ばれていますが、戦前から多くの画家がアトリエを構え、活動してきたところでもあります。当初の大谷コレクションにも含まれるこうした地元作家の作品が、このコーナーで展示されています。このコーナーを観て、戦前は関西でも活発な美術活動が取り組まれていたことを知って驚きでした。まだ大阪を中心として関西が日本経済の中で大きな位置を占めていた時代ですね。
展示されていた伊東慶之助とか渡辺一郎、辻愛造など、これまで知らなかった画家の絵が展示されていました。どれもいい絵でした。

最後の第4章は「洋画を超えて」。
戦後の阪神間で見られた、絵画における実験的な試みとして創造された各グループや個人が生み出した様々な抽象絵画が展示されています。さまざまな新しい技法で描かれた作品が掲げられていましたが、やはり現代アートとなると私たちにはイマイチピンとこないので、このコーナーの滞在時間は短かったですね。どうも現代抽象絵画はその価値がよくわかりませんです。
そんな中で、渡辺一郎《ロードローラー》↓が不思議な魅力で印象に残りました。


この展覧会は展示されていたのが館所蔵品ばかりで、展示数も多くないのであまり話題になっていないのか来館者は極めて少なく、少々寂しい感じでした。その分ゆっくり鑑賞できたのはよかったのですが(あるフロアではスタッフ以外は私たちだけしかいなかったり)、法人化したこともあり経営が心配になったり。(笑)
でも展示品は小品が多かったもののいい絵ばかりなので、ゆっくり絵画鑑賞したい人にはお勧めです。

観終わってから、障害者+付添い1名は入館者無料にしてくれているので、せめてものお返しにと入口受付で絵葉書を6枚購入しました。でもこれも税込@50円と格安、あまり売り上げに貢献できませんでしたね。

いつもならこの段階で館内のカフェで軽く昼食となるのですが、先述の通りカフェは撤退。殺風景な休憩室になってしまいました。
前回訪問時に食べたコレ↓とか


このサンドイッチ↓も楽しみにしていたのですが‥。(泣)


加えて店内から庭園が眺められて、スタッフの年配の女性お二人もいい雰囲気だったので本当に残念でした。
どの美術館内のカフェでも、程度の差はあれ経営は本当に難しそうです。これは劇場などでもいえることですが、カフェの経営努力も、基本的に集客については美術館側の企画如何にかかっているので限界があります。
とくに今回のケースは、美術館が設備改修工事で長期にわたって閉館していたのが致命的だったと思います。

野坂昭如が以前「主人持ちになってはいけない」と言っているのを読んだことがありますが、いろんな意味で考えさせられますね。

帰宅前に美術館の庭園を見ることにしました。ちょうど今、庭園はハナズオウがあちこちで咲いていました。


珍しい白のハナズオウも植えられています。




それにボケもまだ咲いていてびっくり。


ミツバツツジの仲間も↓。


珍しいといえば金色に輝く葉のオウゴンガシワもひときわ目立つ存在でした。


展覧会はこじんまりとしていて派手さはありませんが、じっくりと絵画鑑賞したい方には好適な名品ぞろいです。
機会があればぜひご覧ください。


主 催:西宮市大谷記念美術館
後 援:西宮市、西宮市教育委員会
会 期:2014年4月5日(土)〜5月25日(日) 午前10時〜午後5時
休館日:水曜日
入館料:一般500円/高大生300円/小中生200円

*西宮市在住65歳以上は無料(要証明書呈示)
*ココロンカード・のびのびパスポートを呈示の小中生は無料
*身体障害者・療育・精神保健福祉手帳などの呈示があれば無料
*ちらし割引券持参の場合は一般500円を400円に割引(複製不可)
*20 名以上の団体は各料金から100 円割引

インテルのNUCはいかが? −極小ベアボーンのすすめ−

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私の現在のデスクトップPCの用途は、ワード・エクセルにパワーポイントと、写真アルバム用の古〜いMicrosoft PhotoDraw2000ぐらい。あとはインターネット程度です。新たに欲しい機能とすればブルーレイディスクの再生ですね。
この程度の用途なら、現在使用しているMicroATXは不要で、もっと小さい規格で十分です。ということで、ネットで小さめのベアボーンを物色していました。そして見つけたのがIntel・NUCのベアボーンキットD54250WYKH。
サイズの割にはUSB3.0×4と多く、デザインも質感も良さげなので、ついついポチッとな!

この製品の詳細スペックはここでチェックしていただくことにして、簡単に内容を紹介すると、
CPUはマザーボードに直付けのCore i5-4250U。できればCPUも選択して装着できるようにして欲しかったのですが、まあCore i3搭載のバリエーションも用意されているのでよしとするか。
マザーの規格は、インテルの提唱するNUCという極小サイズのもので、単品でも売っています。なのでそれを使って、他のメーカーからベアボーンキットが販売されています。でも本家・元祖インテルの製品ならサポートなど問題ないだろうと、54250WYKHを選びました。
あと、選択する際に注意が必要なのはストレージ。フルサイズの6Gbpsの SATA の2.5インチHD/SSDが装着できるものと、miniPCIにSSDをつけるものの2種類が各CPU別にありますから要注意です。型番の末尾にHがついているのがSATA対応版です。(私は知らずに間違って注文しそうになって焦りました)
結局私が選んだのは2.5インチのS-ATAのHD/SSDに加えてminiPCIにもSSDが搭載可能な54250WYKHです。

このベアボーン、約12cm×約12cm・高さが4cmというコンパクトなサイズですが、CPUは最新の省電力版Haswell。TDP15W!とエコなのがいいですね。
先に書いたようにこのサイズでUSB 3.0ポートが前後計4つ、前面にはイヤホンジャック、ディスプレイ用のminiHDMIとMini DisplayPortもついています。
さらに8chサウンド、1000Base-T LANと十分です。ただしWiFiカードは別なので、Mini PCI Express 用にBluetooth内蔵のインテルのCentrino Advanced-N6235を選択。
あと、メモリは4GB×2、ストレージとしてSUMSUNGの2.5インチ・250GBのSSDと、プレクスターのmSATAの128GB・SSDも発注。ちなみにメモリは1.35V駆動のDDR3-1600/1333 SO-DIMM対応スロットが×2で最大16GBまで増設できます。
でも後から考えたら、2.5インチはシステム用に128GBにして、mSATAのSSDをデータ用に250GBとしたほうがよかったですね。

そして某日午前中に配達され、早速組立開始しました。


まずベアボーンの本体を見ようと化粧箱を開けたら、ここでビックリのギミック!

なんと箱を開けると同時に、WindowsOSでおなじみのジングルが鳴り響いたのです。文字通り鳴り物入りの登場です。(笑) 一瞬何事かと思いましたね。
よくよく箱を見ると、段ボールの箱の隙間にそのシカケが見えました。

光センサーで音が出るこのギミック、捨てるのも勿体ないので何かに使いたいですね。たとえば引き出しなどにつけておくとか、部屋の照明をつけるとなるようにするとか。
気を取り直して(笑)箱に鎮座した本体を取り出したら、本当にバカバカしいほど小さいです。

組立てといっても、セットするのはメモリと無線LANカード、二種類のSSDだけ。

↓メインのストレージはサムスンのSSD・250GBです。昔に比べたら本当に安くなりましたね〜♪ 数年前まで32GBで5,6万円していたのが夢みたいです。

この製品、購入したリテール版だと引っ越し用のソフトとSSD用USB接続コード、超便利なSSD機能設定ユーティリティやベンチマークソフトがついてくるので、結局バルク品よりお得です。

底のカバーを固定している4本のビスを緩めたら内部にアクセスできるので、それぞれのパーツをセット。あっけなく作業は完了しました。
もちろんケース内には無線LANカード用のアンテナ線が設置済みでした。さらに気が利いているのは無線LANカードとmini-PCI・SSDの固定用ビスが本体内にちゃんと用意されているところ。こういう些細なところがうれしいです。




データ用のプレクスターの128GBのSSDもminiPCIスロットに取り付けます。

同じ階層にあるメモリスロットに計8GBのメモリも取り付け。




最後にメインのSSDを取り付けて作業完了。10分かかりません。(笑)


組立完了↓ 


組立後OSのインストールです。今回はMicrosoft PhotoDraw2000など旧来のソフトが動作することを最優先してWindows7(Windows8では動作せず)を購入してありました。それを外付けCD/DVDドライブからインストールしました。当然ながら何事もなくOSのインストールは完了しました。


しかしこのあとの段階で、プチ問題が!
私はこのベアボーンの各デバイスも、Windows7に収められたドライバで大半動くものと思い込んでいました。でもこれが間違いでした。
OSのドライバよりこのベアボーンのほうが新しいので、別途自分でドライバを拾ってこないとだめでした。
それでも、インテルのサイトでこのベアボーン用にバンドルされたドライバ類が簡単にダウンロードできたので、結果的にはさほど時間はかからなかったのですが、やはり手間を考えたら、先のギミックなどはカットして、その代わりにドライバCDを添付してほしかったですね。
まあベアボーンなどを組み立てる者は当然別にインターネットが使えるパソコンなどを持っているのは当然だろうということでしょうか。

そして使用しての感想です。
やはりいまどきのSSDの威力で、OS自体の立ち上がりも各アプリもキビキビと早いです。
さらに静かなこと。一応CPUにはファン付のヒートシンクが付いていますが、低TDPのおかげで今の時期は低回転でほぼ無音です。

小さい本体は、ディスプレイの壁掛け用ボルト穴に合う金具が付属しているので、ディスプレイ背面にも装着できますが、それでは電源スイッチが押しにくい。なので、私はパソコンラックに付属の棚に乗せて使用することにしました。設置金具を両面テープで固定したので、USBの抜き差しも片手でできるので便利です。




Xpからのデータやメールアカウントの移行は、ヨメさん用に買ったアウトレット・ノートPC(これにまつわるバタバタ話はまたご報告します(笑))についてきた「かんたん引越しケーブル」を使用してみました。半信半疑で使ったのですが、これ、意外に重宝しました!
ケーブル接続の手順さえ正しく行えば、画面に従って操作するだけで簡単にデータやメールのアカウント、お気に入りなどがコピーできてしまいます。デスクトップのアイコンなども再現できるのが便利です。といってもこの機能、Windows7に標準でついている機能をXpにもインストールできるようにしただけですが、とにかく楽です。

その後、いろいろユーティリティなども移植して、ほぼ作業環境は整いました。

今回のパソコン更新で気がついたのですが、Windows7と8とでは、古いソフトとの互換性が大きく全く異なりますね。
先のMicrosoft PhotoDraw2000だけでなく、その他の古いソフトでも、Windows7では32・64bitいずれもほとんど全く問題なく動くのに、8では動作しないケースが多々あります。両者のカーネルのバージョンには大きな差がないと思っていたので、この違いは意外でした。Xpで使ってきた古いソフトを継続して使いたいと考える人は要注意です。

ともあれ、インテルのNUC、最近の機器の進歩が実感できる快適さに満足です。
次期PCの候補を検討中のあなた、NUCもぜひ検討対象にしてみてください。きっと気に入ると思いますよ。

宝塚宙組公演『ベルサイユのばら―オスカル編―』を観て

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「ラストタイクーン」以来二か月ぶりの宝塚です。
でも出し物は宙組『ベルサイユのばら−オスカル編−』。
実をいうと余り観たくなかったのですが、「100周年だし宙組だからやはり観ておかないと」というヨメさんの希望で観劇決定。がんばってパソコンで先行予約に応募、14列下手ブロックとまあまあの席をゲットしていました。

観劇当日の5月8日はさわやかな好天。一部渋滞があったものの、概ね快調に走って、10時前に駐車場に滑り込みました。そこから劇場までの花の道はすっかり葉桜になっていて、2月の寒々とした様子とは一転していました。
劇場周辺はもう多くの観客が次々に来ていて活気がありました。劇場内の土産物売り場やロビーも賑わっています。
いつものとおり「天下もち」と「宝塚フィナンシェ(売り場が変わっていました)」を確保してから、昼食用のサンドイッチと寿司を買うべく売り場に行ったら、長い列ができていました。初めて見る光景にびっくり。土日ならまだしも(でも土日でもみたことがありませんね)、平日の木曜日にこんなことになるとは、やはり100周年と「ベルばら」人気なのでしょうか。しかも私たちの番になって「すみません、サンドイッチ売り切れました」。
でもすぐ作ってきてくれたのでよかったですが。
そして開場前に劇場入り口に行くと長蛇の立ち見の列。木曜、平日の観劇でこんなに立ち見が出るとはこれまた驚きでした。
↓立ち見のお客さんが案内されて行きました。


というどうでもいい前置きはこのくらいにして、本題の感想です。(以下、いつものとおり敬称略です)
今回の座席は、ネット先行予約で頑張って何とか確保した14列の下手側の席。久し振りの前寄りの席で、やはり見やすかったです。


私たちが観たのはこの配役でした。↓
オスカル………………凰稀かなめ
ロザリー………………実咲凜音
アンドレ………………朝夏まなと
ジェローデル…………七海ひろき
アラン…………………緒月遠麻
ジャルジェ将軍………汝鳥伶
マロングラッセ………一原けい
ブイエ将軍……………寿つかさ
ジャルジェ夫人………鈴奈沙也
カトリーヌ……………美風舞良
ジョアンナ……………大海亜呼
ベルナール……………蓮水ゆうや
オルタンス……………純矢ちとせ
イザベル………………愛花ちさき
マリーズ………………花音舞
画家……………………風羽玲亜
平民議員………………天風いぶき
シモーヌ………………花里まな
平民議員………………天玲美音
ロベスピエール………澄輝さやと
スザンヌ………………綾瀬あきな
ルルー…………………すみれ乃麗
ダグー大佐……………凛城きら
フィリップ………………松風輝
アルマン………………愛月ひかる
オスカル(幼少時代)…星吹 彩翔
三女……………………瀬音リサ
四女……………………愛白もあ
ヴェール………………蒼羽りく
イレーヌ………………結乃かなり
ジルベルト……………夢涼りあん
シャロン………………風馬翔
ロセロワ………………美月悠
ジャン…………………桜木みなと
ロード…………………実羚淳
五女……………………彩花まり
次女……………………伶美うらら
小公女…………………真みや涼子
小公子ランロス………和希そら
小公女…………………瀬戸花まり
セルジェ………………留依蒔世

で、いきなり結論ですが、この公演、一度観たら十分、まずリピートはありえないです。
でも観て後悔はしていませんね。(笑)

やはり、同じフランス革命をとりあげた秀作「アンドレア・シェニェ」とかを観てしまったあとなのでどうしても比べてしまいますが、この「ベルばら」、一本物なのに劇としての密度は本当に低いですね。
やはり良くも悪くも、「ベルばら」は古い宝塚そのものです。
全編ベタなセリフで、それらが大仰でやたらに説明調なのは某理事の十八番ですね。でも上記作品や「翼ある人々…」などの出来のいい芝居を観たあとでは、それが終始気になりました。

収穫の第一はやはり凰稀かなめのオスカルのきれいなこと。演技も説得力がありました。
昨年の雪組の「ベルばら」でみせた麗しい凰稀かなめのオスカル(といってもニュースで見ただけですが(殴))を再び直に観られただけでも価値があります。容姿は(だけは?(殴))思った通りで(でも往年の涼風オスカル並みとまではいきませんが)、いい眼の保養になりました。

それと、実咲凜音の歌もよかった。ヨメさんも「今の娘トップの中では一番うまいね」としきりに感心していました。我が家で再評価の声が高まっています。(笑)
それと、なんといってもあの「翼ある人々…」以来の朝夏まなとや緒月遠麻、伶美うらら(きれいでした!でも出番もしどころもない!)に再会できたのがうれしかったです。まだ間がないのにすでに懐かしささえ感じるほど。(笑)

今回のオスカル編ではかなり変更点がありました。

オープニングも変わっていますが、その後にオスカル誕生と、男として育てられることになった経緯を説明する場面が入っています。父親ジャルジェ将軍に扮する汝鳥伶が説明するのですが、長台詞をがんばっているものの、中途半端な狂言回しで、冗漫・蛇足な感じでした。

純矢ちとせなど姉妹たちも元気に舞い踊っていますが、もっと別の出し方もあるだろうと思ってしまいました。もったいないです。





それと、三部会が閉鎖になる場面も付け加えられていました。

ここでオスカルが民衆の側に立つ契機を説明したかったのでしょうが、革命の大義として「自由・平等・友愛」を繰り返していたのは違うと思いますね。革命の原動力は、やはり腐敗した絶対王制のもとで困窮した民衆の怒りでないと。
その点では、以前のように、オスカルがベルナールに案内されて民衆の窮状を間近に見て目覚めるという設定のほうが自然です。
まあ目先を変えようとしたのでしょうが、そんな小手先の改変ではだめですね。
せっかくの題材なので、「風と共に…」同様、100周年を機に、制約を一切付けずに若手の演出家に思う存分ブラッシュアップさせたら面白いと思うのですが。
「アンドレア・シェニェ」の植田景子の手になったらどうなるかとつい妄想してしまいますね。

まあ愚痴はそのくらいで、良かった点を配役ごとに。

まずは主役オスカルの凰稀かなめ。文句なしに綺麗です。
オープニングの「ごらんなさい」のあと、舞台中央の巨大なオスカルの絵の前で朝夏アンドレと男役たちが歌い踊り、


それが終わると、真っ赤な軍服に白いマントのオスカル登場です。

ちょっと老けたオスカルな感じがしないでもないですが(殴)、さすがのマントさばきでこれもまた絵になっています。




衛兵隊の場面です↓「そんなに女・女というな」といいながら笑うところ




毒入りワインの場面↓




ただただ残念なのが歌…。(^_^;) 容姿と演技の素晴らしさで余計そう思ってしまいました。最近彼女の歌はあまり気にならなくなっていたのですが、今回はどこか麻路さきを連想してしまって(殴)、ちょっとひっかかりました。
「わが名はオスカル」という歌の音域が弱点を増幅しているように感じました。

今回の公演で客席(タカラヅカ初見の人も多かったようです)をどよめかせたのが一幕終わりのペガサスに乗って登場する場面。
本人がNow on Stageで語っていたところでは5階ぐらいの高さがあるとか。確かに高かったです。

今回のペガサスはバージョンアップされていて、形もリアルで翼も頭も動き、クレーンの動きもギクシャクせず滑らかでした。ただし、話題作り優先でいささか唐突に登場させるところが某理事らしいですね。(笑)

勘弁してくださいよと思ったのはフィナーレのこれ↓



なんかニューハーフのショー(殴)みたいな性別不明感があって、いいとは思えなかったですね。


実咲凜音のロザリーですが、役としてはなんともかわいそうです。

出番も少なく、あまりしがいもない今回の芝居ですが、せめてもの演出家の配慮なのか、プロローグとフィナーレの二度のエトワール!で、さすがの美声を存分に聞かせてくれました。


歌は本当にうまいです。安心して聞き惚れるという点では朝夏まなとと双璧。





その朝夏まなとのアンドレですが、久しぶりに見る朝夏まなと、「翼ある人々」で印象一新した私たちの期待に違わず、アンドレを好演していました。





そして歌!

彼女が歌いだすと本当にほっとしますね。最後の凰稀・朝夏・実咲のトリコロールダンスでも実咲凜音とともに美声を聞かせてくれています。


ただ、橋の上でしつこく狙撃される例の場面の演出はもう食傷です。10数発で絶命って、防弾チョッキでも着ているのか?と突っ込みたくなります。普通、最初の一発で欄干に隠れてその後の被弾は避けるだろっ!といいたいですが、いつ観てもクドイ演出です。弾数もますます増え続けている気がします。(笑)
アンドレの死といえば、アンドレが天国からオスカルを迎えにこないのもいいとは思えなかったです。「花のいのち」という新曲を歌ってオスカルが一人で昇天するのはかわいそうです。

緒月遠麻のアランは、これまでの歴代のアランとちがって、かなり老けた役作りです。(笑)

たたき上げの剛腕の下士官というより、影のある老練な隊士という面が強く出ているのが新しくユニークなところです。

オスカルに敗れたところ↓

これもNow on Stageで語っていたところですが、意識的に緒月遠麻はその線を出したとのことです。このあたり、役代わりの七海ひろきがどう演じるのか、興味あるところですね。
↓フィナーレで新曲を歌っていました


そしてそのジェローデルの七海ひろき。これまであまり私は彼女について注目してこなかったのですが、今回のジェローデルを観てよさを再発見しました。
なによりマントを着て登場しただけで、爽やかなたたずまいの良さに感心しました。





役に合ったキャラクタ作りに苦心の跡を感じました。今回観て好感度アップでした。この人ももっと歌に精進してほしいです。

今回で退団してしまうベルナール役の蓮水ゆうや。演出の変更で出番が少なくなっていますが、そんな中でも好演していました。革命への熱意がよく伝わってきていい演技でした。

退団が惜しいです。組のメンバーの彼女に対する惜別の思いがNow on Stageでも本当によく出ていました。それを見るだけでも価値があります。

気になったのは今回挿入されたオスカルの少年時代(星吹彩翔)の場面。いらないですね、これ。あまり似てないし。まあ少しでも出番を増やそうとしたのでしょうが。


衛兵隊で目を引いたのが蒼羽りく(ですよね)のヴェール。強烈な存在感があって、はじめはこちらをアランと思ってしまったり。


娘役はオルタンス役の純矢ちとせをはじめ、伶美うらら(きれいです!)やすみれ乃麗など、期待していたのにほとんど見せ場がなくがっくりでした。本当にもったいない。




フィナーレのショーはこれまでになく長く、バラのタンゴがウリのようですが、私は上に書いたように「ご勘弁を」な場面でした。(笑)
新味を出そうといろいろ見せ場を作っていましたが、やはり最後の実咲凜音が堂々のエトワールで満足しました。

ということで、いろいろ感じることの多かった観劇でしたが、一度は見ておくべき公演だと思いますよ。(手遅れかな(笑))
それと、スカステに加入している方はぜひ事前にNow on Stageをご覧ください。生徒たちの真剣な役作りがよくわかります。それと先に書いた蓮水ゆうやの退団にまつわる話も心温まります。

今回も偏見と妄想だらけになった拙い感想になりましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました。

(2014-05-12)

タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #6 ~衣装~」 の華麗なる意匠

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前回の「舞台進行・公演大道具」の紹介からずいぶん時間が経ちました。
相変わらずのスロー更新で申し訳ありません。
順番からいえば今回は「電飾・照明」となりますが、「ベルばら」公演中でもあるし、前回の月組ベルばらの「衣装」について、その制作過程や苦心談、また宝塚の見せ場の一つ「早替わり」についても裏方の話が紹介されているので、今回は「衣装」についてご紹介します。

番組はまず衣装の製作風景から。

2012年 12月6日、宝塚大劇場にある衣装作業場では、月組公演ベルばらオスカルとアンドレ編の衣装が作られています。


衣装制作は、男物・女物・帽子担当の3部門に分かれているそうです。
しかし作業場というより本格的な衣料工場みたいです。こんな広いスペースが大劇場内にあるというのは驚きです。
前々回の大道具の作業場もかなり広かったし、大劇場の建物の空間構成は本当に不思議ですね。

多くのスタッフが黙々と衣装を作っています。












手作業で飾りなどを付けていきます。


宝塚の衣装は、衣裳デザイナーの描いたデザイン画を基に作られます。
そのデザイン画をもとに、布地やボタンなどが選ばれて縫製作業に入ります。
その衣装のデザインはどのようにイメージされて作られるのか、担当者に聞いています。

衣裳デザイン担当の任田幾英さん

「デザインそのものは頭の中から生まれてくるものではなくて、台本とか台本に載っている人物とか、観に来られるお客様の目線とか、そういうものを意識して生み出していきます。
衣装の色とか形とかは登場人物の内面が合って出てくるものだから、人物の内面と外面を結び付けるのが我々の仕事だと思うのですよ。」
<今回の公演の衣装について>
「今回の軍服は宝塚オリジナルなものであって、本当に史実に沿って考証したものではありません。
もちろん本物の軍服は知っているのだけれど、それを再現したのでは単なる博物館の展示場になってしまうので、まして宝塚の場合女性のプレーヤーが着用し、観客もほとんどが女性のお客様ということもあって、そういうお客様の目に優しいというか、また原作の池田先生の世界と融和させたような舞台を展開させる必要があると思うのですね。
ですから実際より華美になっているし、シルエットとかもスマートになっています。実際の上級の士官の軍服というのはもっとがっしりとした、針金を中に組み込んだようなものが原型にあるのですけれど、うちの場合はそんな細工はしておりません。
実際に女性が着用することを意識して作り上げた衣装だとご理解していただければと思います。それが正解だと思います。」






次は靴を担当する作業場です。

(箙かおるさんのナレーション)
「ここではサイズの調整や色塗りなどのメンテナンスが行われています。激しいダンスなどを行うので靴は大変重要なのですよ。」




色塗りをしています↓


再び衣装制作場です。

(箙かおるさんのナレーション)
「衣装を担当するスタッフはどのような点にポイントを置いて衣装を制作しているのでしょうか?」

劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん

「最近の一般の流行も取り入れて、肩幅など細身のデザインにするように心がけています。そういう最近の流行を取り入れることも考えています。
昔はちょっと大きめの、私たちが入った20〜25年前だと肩パットも分厚いのを入れて、肩幅を落として、肩幅は45〜50センチぐらいあったんですけど、今は43〜45センチぐらいで大分コンパクトなシルエットになってきています。」
「一般のズボンでしたら靴がペッタンコですよね。ですので裾がまっすぐのラインになっていると思うんです。直角のラインになっていると思うんです。皆さん一般に履かれているズボンは。でも劇団の靴は7センチヒールといって、結構高さがある舞台に立ってスッと見えるような靴を履いているのですけれど、それに合わせてヒールが見えないようにする工夫もしております、はい。」

「あとは、昔からのベルばらの伝統を崩さずに、そして近頃の流行も取り入れて細身のシルエットを意識して、(着る)本人の好みも取り入れて作っております。」








劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん

「ファッションショーとかも参考に、デザイナーの先生の描かれたデザインにそれらを取り入れていかなければと考えて作っています。」

「身長とか体格が昔と違って近年だんだん大きい人が増えてきていますから、女役の人でも大きい人とか小さい人とか差があるので、そういうのも考えて、ドレスの丈とかどうしょうかとか手探りしています。」

「相手になる男役さんのことを考えて身長とかのバランスも考えて、女役さんはヒールの高さを変えたりとかしますので、そういうのも考えて仕上げたりします。デザイン画を見て作るのは難しいですけれど、その中に自分の考えとか、今まで経験してきた作り方だとかを取り入れて立体に仕上げていってますけど、かなり労力は使いますね。気も使いますし。あと先生と相談したりして作り上げていますね。」





 
(箙かおるさんのナレーション)
「2012年12月15日、星組公演が終わり、舞台そでにある衣装室から星組の衣装が運び出されていきます。運び出された衣装は東京公演に向けて別の部屋に集められて、点検やクリーニングが行われます。」







「そして27日、月組公演の舞台稽古前日、今度は月組の衣装が衣装室に運び込まれます。通常は前の公演の千秋楽に運び出しと運び入れが同時に行われるのですが、今回は年明けの公演ということで休演期間が長いため、運び入れ作業が期間をあけて行われました。」









(箙かおるさんのナレーション)
「舞台のそでにはもう一つ大切な部屋があります。それが早変わり室です。スピーディな転換がウリの宝塚、私たちにとってある意味ここは戦場です。」





劇場部衣装課「ベルサイユのばら −オスカルとアンドレ編−」公演担当チーフ 松本紀子

「早替えは時間との勝負になるので、舞台はノンストップで動いていくので、限られた時間に決められた手順を守って着替えさせないとダメなので、間に合わないと思った場合はシカケというふうに衣装をくっつけたりだとか、一度に着れるようにするだとか、短い時間で着れるようにはしますね。

あと、そうですね、脱がすことも時間がかかるので、脱がすこともいろいろ皆さん工夫はされていますよ。
たとえば男役さんだったらえーっと、靴を履いたままズボンを脱ぐということはできないので、まず靴を脱がして、それからズボンを脱がす。でもそれをすると2回足を上げることになるので、それを時間短縮のために一度にズボンと靴を脱がすとかで時間短縮をしたりだとかする人もいます。

まえもってお稽古段階で早変わりということが分かっていれば、衣装合わせをした段階で『早変わり仕様』にちょっと工夫をしたりだとかは出来ますけど、それをしないで舞台稽古に突入して、いざ音に合わせてノンストップでやってみると、間に合わないということが多々あります。
そのときに、その時々でみんなで方々から知恵を持ち寄って、どうしようと、ここはこうした方がいいんじゃないのって、こうやってここをくっつけた方が早いんじゃないのっていう風にみんながこう知恵を持ち寄って、シカケをしていったりとかはします。
舞台稽古があった後に、通し稽古がノンストップで本番と同じようにやりますけど、その時やっぱり早変りが間に合わないとかがいっぱいあります。それをお客さんの前で見せることは出来ないので、いかに間に合わすかということをみんな必死でやりますので、生徒同様にみんな緊張しています、初日は。」

(箙かおるさんのナレーション)
「こちらは舞台そでにある床山さん。鬘や髭の製作やメンテナンスが主な仕事。こちらも稽古に向け作業が続けられます。」











番組は最後に、スタッフのみなさんにそれぞれの仕事の魅力を聞いています。

劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん
「そうですね、私は客席から見て私の手掛けた衣装がライトを浴びている時だとか、あと歌劇関連の雑誌に写真が載った時はうれしいなと思いますね。
一人の役者さんを一つの衣装でいろんな年齢や性別や職業や、たまには人間だけでなくて動物になったりすることもあるので、いろんなものを衣装で演じることができるというのもタカラヅカの魅力だと思います。」

劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん
「お客さんに見てもらって、スポットライトが当たったら感動しますね。自分で作ったものなので。演じている役者さんたちだけでなく、観ているお客さんとか、裏方の私たちスタッフでもお姫様とか王子様とかになれるというところが魅力ですかね。」

「ベルサイユのばら −オスカルとアンドレ編−」公演担当チーフ 松本紀子
「自分が手に携わった衣装がお直しとかお飾り一つにしたっても自分の手掛けた衣装というものが板の上に乗るっていうものを見たときに、やはり自分が作ったという楽しさ・嬉しさを感じられるというのが魅力ですかね。」

衣裳デザイン担当の任田幾英さん
「タカラヅカを観に来たお客様が少しでもほっとされるというか、明るい気持ちになっていただけるというか、そういう作業がこの仕事の魅力だと思うんです。そういう仕事に就いている自分たちもこれが幸せなんだなと思えます。それがあるので、他の仕事に就かなくてよかったなと思います。」

そして公演初日の様子です。










宝塚の魅力の一つは衣裳の豪華さにあると思いますが、今回の番組でその一端が分かったような気がします。
多くの同様の歌劇団がいつのまにか消えて行った中で、宝塚歌劇団が常に手を抜かず真摯に舞台を提供し続けてきたことが、今年100周年を迎えられた要因だったのではないでしょうか。

さて次は#3「電飾・照明」ですが、何分更新が遅いので、期待せずにお待ちください。(笑)

今回もご覧いただきありがとうございました。

万博公園で思ったこと その2

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手入れの行き届いた万博公園は何度行っても癒されます。ただ、もと万博会場だけあってものすごく広いし、傾斜は緩いものの長いアップダウンが結構あるので、車椅子を押す身にはちょっと決意が必要です。(笑)

当日朝9時に出発。平日なので近畿道の車の量は多かったのですが、渋滞はなく開園時間ぴったりに日本庭園前駐車場に到着しました。
今回の目当ての花は、ルピナスと花菖蒲です。

今回のルートです。↓


でまずルピナスを見に行きました。見るのは今年で2回目になります。
といっても正確な場所は覚えていませんでしたが、おぼろげな記憶(日々記憶力は低下しています(笑))では大体太陽の塔の東南東方向のはずなので、駐車場からお祭り広場(よくイベントに使われます)を横切って、万博当時のパビリオン・旧鉄鋼館を目指しました。

お祭り広場です。今日は平日なのでイベントはなし。


途中の案内図で確認したらやはりルピナスガーデンは鉄鋼館の南側でした。ただ、道路からルピナスに行く通路は舗装していなくて、地面に木片チップを散布しただけなので、結構車椅子を押す力が要ります。

ガタガタの通路をたどって着いてみたら、ルピナスはちょうど満開でした。壮観です。








実を言うと、何を隠そう私は少し前までルピナスとフォックスグローブの区別もできなかった(笑)のですが、最近ようやく区別できるようになりました。前回同様、周辺にはポピーやバラも植えられていてきれいです。




ここのルピナスは2種類が植えられています。
普通のルピナス↓。これは多年草です。




小さい方↓。これは一年草です。




背丈の大きい多年生のルピナスの方が圧倒的に多く植えられていました。
花を見ればマメ科の植物とわかりますが、葉っぱはクリスマスローズみたいで、どう見てもマメ科には見えないですね。

それほど広くはないので、しばらく眺めて写真などを撮った後、つぎに日本庭園の「花しょうぶ田」に向かいました。
場所は真北方向です。もう一度日本庭園前駐車場のゲートまで戻ってから、バラ園経由で「花しょうぶ田」に。

途中のバラ園ではまだ結構咲いていました。






万博公園の日本庭園は各時代ごとにゾーンが分けられています。「花しょうぶ田」は現代の日本庭園を形どった「はす池」エリアにあります。まだはす池は花蓮が成長している時期で、スイレンだけが咲き始めていました。




池を横断する通路を通って「花しょうぶ田」へ。少し満開には早かったのですが、それでもきれいに咲き始めていました。






ところが、ゆっくり花を楽しんでいたら、不愉快な連中がその邪魔をしてくれました。
大きな三脚とでかいレンズの一眼レフを抱えた写真家が、通路に定められたウッドデッキから降りて、花しょうぶの生えている地面を踏み荒らしながら撮影にふけっているのです。









ガイドツアーの参加者が間近に見ていても全く気にしていません。確信犯です。


もう傍若無人、やりたい放題でした。
万博公園に出没するアマチュアカメラマンマナーの悪さについては、以前の「万博公園で思ったこと」でも書きましたが、今回は通路を三脚でふさぐどころではありません。

大きな三脚を、花しょうぶが植えられた地表に突き立てて撮影に没頭。




もう唖然としました。それも一人や二人ではなくて、みんなで渡れば怖くないとばかりに、居合わせたカメラマンみんなが同様の行動をしていました。情けないです。

せっかくの観賞気分も吹き飛んで、後味の悪い嫌な気分でそこを離れ、今度はアジサイを見に行くことにしました。

途中水生植物園のコウホネの花を見たり、


咲き始めたタイサンボク(この花、爽やかないい香りがします)やザクロの花を眺めたりしながら、




ザクロの花です↓


再び駐車場方面へ戻りました。

万博公園のあじさいの多くは「あじさいの森」と「桜の流れ」に集中して植えられています。そこまでかなり距離があるので、ヨメさんがあじさいを見たいと言ったときは内心怯みましたが(笑)、頑張って行くことにしました。

でもまだ開花には早く、「桜の流れ」に行ってみたらまったく咲いていませんでした。まあガッカリとホッとしたのが半々。というのは「あじさいの森」に行くには、さらに長い坂道を押さないといけないので。(笑)

ということで少し休憩の後、道端のニワゼキショウの可憐な花を見たりしながら、駐車場に戻り、公園を後にしました。


万博公園は規模といい、手入れがよく行き届いていることといい、本当にいい公園です。これでカメラマンのマナーが良くなればさらにいいところになるのですが・・・。彼らが撮影技術の前にまず学ぶべきことは多々ありますね。
撮影機材は金さえ出せば手に入りますが、公共マナーはそうはいきません。


マスコミなどではよく某国の社会的マナーが悪いとか報道していますが、まだまだ日本も大きなことは言えないです。









Sony Fit11aの欠陥バッテリー騒動とその後日談

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この4月に、ヨメさんの誕生祝(ゆうに2ケ月以上遅れていますがなにか? ^^;)に、小遣いをはたいてSONYのFit11aをプレゼントしようと思い立ちました。彼女が使用中のXpなノート・DynabookSS1610が余りにもヨレヨレなので、その代りにしようというわけです。
でも人間、慣れないことをするものではありませんね。プレゼントしたVAIO Fit11aには、トンデモな地雷が埋められていました。この製品、不振のパソコン事業を売却、撤退を決めたソニーVAIOの最後の製品でしたが、使い続けるとバッテリー火災が発生する恐れがある!というのです。今回はそれに伴うドタバタのお話です。

ちなみにSS1610は、5年間ヨメさんが酷使したきて最後は電源が入らなくなったIBMのX40の後釜としてアウトレット品をゲット、これまた5年間ヨメさんが使い続けてきたものです。でもこれも今やキーボード・トップの文字があちこち摩耗して表示が消えつつあります。


(ただこのSS1610はキッチンでネット検索などで使うため、新品キーボードを入手、古いSUMSUNGの32GBのSSDを入れて処理速度を上げるなどして余生を送らせています:2014-06-02追記)


さてSONYのVAIO製品としては最後となった今回のFit11a。
その詳細はココとかココ、トラブルについてはココでご覧いただくとして、まず選りによってなんでそんなものをヨメさんの誕生日プレゼントのために買おうとしたのかという言い訳から。(笑)

気に入ったのはディスプレイ。
11.6型ワイドの小画面でも、解像度はFullハイビジョンの1920 × 1080。視野角の広いIPSパネルで、もちろんタッチ対応。店頭市販モデルなのでCPUはセレロンとちょっと物足りませんが、DynabookSS1610の古いペンティアムMに比べたら問題にならないほど早いです。

しかもワンタッチで普通のノートパソコンからタブレットモードに切り替えられるのもソニーらしいギミックです。OSは今時のパソコンなので当然Windows8.1です。Officeもホームアンドビジネスがついてくるので問題ないし。

ただ、11.6インチの小サイズで1920 × 1080といっても解像度の違いが見分けられず、スペックオタク向けの無駄な解像度と言えなくもないですが(笑)。

でも自分が一番欲しいと思うものを贈るのがプレゼントの鉄則でしょ(笑)というわけで、ネットでポチッとな。数日後配達されました。
取り出してみると、厚みのあるヘアーライン仕上げのアルミ製天板にはVAIOの文字が彫りこまれていて、キラキラと下品な豪華さがありました。(笑)

でも、すぐそんな浮かれ気分はすぐに吹き飛びました。まずWindows8.1が最初のトラップでした。

ヨメさんは、定番のWord・Excel以外では、デジカメ画像の編集用にMicrosoftのPhotoDraw2000 V2を愛用しています。
このソフト、ドロー系の画像処理ソフトでどの出力サイズで編集しても画像の劣化がなく、素人が使うには必要十分な機能が備わっていて、しかもロースペックなパソコンでも軽くサクサク動いて使い勝手は良好。私も写真アルバム作成などに重宝しています。

でも、もともとWindows98時代に開発された古〜いソフトなので、新しいOSで動くか心配でした。
ただ、Windows7では32・64ビットのいずれでも動いています。参考:ココ
なので、それほどカーネルに違いがない(はずの)Windows8でも当然動くだろうと勝手に予測していたのが大間違いでした。いそいそとインストールしてみたら、一応起動はするものの、エラー表示が出て一切作業ができません。
いろいろいじってもダメ。
一時はWindows7のインストールも考えましたが、わざわざそのために新たに7のライセンスを買うのも馬鹿らしいなとか思っている間に、本命のトラップ、バッテリー不具合による火災の危険性があるとのお知らせ。(笑)

普通のバッテリー取り外し可能なノートだと、不良バッテリーだけ交換したらいいわけですが、いわゆる見かけ優先のUltrabookなFit11aではバッテリーが内部に組み込まれているので普通のやり方では取り外せません。無理に分解したら保証がきかなくなります。ちなみにバッテリーはパナソニック製。なので回収・修理または払い戻し費用の一切はパナソニック負担でしょうね。
ちなみに先週、やはりというか当然というか、本家本元のパナソニック製のレッツノートでもバッテリー不良という発表がありましたね。


さて4月24日、私のところにSONYから↓のようなメールが来ました。


─────────────────────────
本メールは、ソニーのパーソナルコンピューターVAIO(R) Fit 11Aの製品登録
および、ソニーストアで購入されたすべてのお客様にお送りしています。
重要なお知らせですので、メールの受信を希望されなかったお客様へもお送り
しておりますことをご了承ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
パーソナルコンピューターVAIO Fit 11A無償修理受付開始のお知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2014年4月24日発信
ソニー株式会社
ソニーマーケティング株式会社
ソニーカスタマーサービス株式会社

日頃より、ソニー製品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。

 2014年4月11日(金)に「パーソナルコンピューターVAIO Fit 11A使用中止の
お願いとお詫び」を弊社ウェブサイトにてご案内いたしましたとおり、
2014年2月に発売しましたパーソナルコンピューターVAIO Fit 11A において、
設計生産委託先から供給を受けているバッテリーパックの一部に不具合がある
ことが判明しております。当該のバッテリーパックが過熱してPC本体の一部が
焼損に至る可能性があり、2014年4月23日(水)時点で、国内・海外を合わせて
4件のPC本体焼損の報告を受けております。

2014年4月11日(金)のお知らせでは、該当製品の対象製造番号(シリアル番号)を
ご案内の上で、無償点検・修理などの対応を検討させていただく旨、
お伝えしておりましたが、解析の結果、現在出荷されている該当製品全数に
対して、無償修理を実施させていただくことにいたしました。

無償修理は、2014年4月24日(木)より受付を開始し、委託先メーカーの協力を得て
バッテリーを交換することで実施いたします。
弊社指定の宅配業者が引き取りに伺いますので、大変お手数ですが下記
【問い合わせ先】までご連絡いただきますようお願い申し上げます。
 なお、無償修理開始の準備に一定の時間を要するため、誠に恐縮ですが、
実際の無償修理作業は2014年5月19日(月)より順次開始させていただく予定です。
また、上記の無償修理を希望されないお客様は、ご返品・ご返金等の対応を
ご相談させていただきますので、2014年7月31日(木)までに下記
【問い合わせ先】までご連絡いただきますようお願い申し上げます。

お客様には、多大なるご不便・ご迷惑をお掛けしますことを深くお詫び申し
上げます。


▼パーソナルコンピューターVAIO Fit 11A無償修理受付開始のお知らせ
  http://sony.co.jp/SonyInfo/News/ServiceArea/140424/


【対象製品】
パーソナルコンピューターVAIO Fit 11A
 VAIO標準仕様(店頭販売)モデル:SVF11N19EJS
 VAIOオーナーメードモデル/法人向けカスタマイズモデル:SVF11N1A1J
 法人向け標準仕様モデル:SVF11N1BAJ

ということですが、修理開始時期が遅く、また長く使い続けるにもUltrabookは後々のメンテ等も不可能なので、いくら器量良しでもここはキッパリあきらめて(笑)、返金希望にしました。やはり衝動買いはいけませんね。(笑)

サイトに表示された窓口に電話して、製品回収の時期を打ち合わせて、5月1日に日通航空が引き取りに来ました。金額の根拠書類としてショップ発行の納品明細書(領収書省略のネット購入だったので)のコピーでもいいとのことだったので、所定の返金請求書類とともにSONYに送りました。
あと、付属品の添付もれがあるとのことで、再度5月16日に同じ業者が引き取りに来たりしましたが、それも19日にはSONYに送付完了を確認。

ところがそれ以後、SONYからは何の連絡もありませんでした。今か今かと連絡を待ちましたがナシのつぶて。

いくらなんでももう返金手続きは終わっているだろうと、10日たった5月29日に、SONYの専用窓口に電話しました。
例によってロボット応答の後、かなり待たされてから担当の女性スタッフが出てきました。いつになったら返金してもらえるか聞いたところ、「原則製品の返送確認後2週間をめどに返金することになっています」とのこと。

そんな話はまったく聞いていなかったですね。

なので、なんでそんなに時間がかかるのかと質問したら何も答えず、とにかく上のものに代わるといって、一方的に保留にされました。それからまた長く待たされて、ようやく男の社員が出てきました。
私が、PC本体と付属品を返送してから何の連絡もなく、今回こちらから連絡して初めて2週間後に返金することにしているなどというのは勝手すぎる、なんで振込みにそんな時間がかかるのかと問いただしたら、なんと「こちらでは返金手続きの詳細がわからないので、担当部署に聞いて返事する」とのこと。
何のための専用窓口でしょうか。まるで一昔前のお役所仕事(笑)ですね。不採算で売却したパソコン事業などに手間がかけられるかといったところでしょうか。

そして数時間後電話があり、「お待たせして申し訳ありません。明日振り込みます。」とのこと。
まあなんとも返す言葉がありませんでした。うるさいから早く手を切ろうというわけでしょうか。(笑)

そして今日6月2日、銀行で入金を確認しました。
冷静に考えてみたら、たかがパソコンに10数万円も支払うとは、完全に金銭感覚がマヒしていますね。こんな金があったら、もはやエコとは言えない古い冷蔵庫の更新などに投資する方がよっぽどマシですね。

これに懲りて、ヨメさんのプレゼントにはひと世代前のCPUなものの質実剛健なhpの2170pをプレゼントすることにしました。(何しろ安かったし(殴)、Windows7は64ビットだったし、筺体底のネジ2本を緩めるだけですべてのデバイスが露出するなど抜群のメンテしやすさだったので)


でも、一世代前とはいえ低TDPなCore i5だし、標準のハードディスクをすっかり安くなった高速なSSD(250GBとFit11aの2倍の容量です)に換え、メモリもOSに合わせて8GBに倍増するなど今風の快適な環境に変えても、Fit11aの価格と比べるとタップリお釣りが来ました。本当にリーズナブル。
もちろんPhotoDraw2000 V2もバッチリ動作OK。その他のアプリの起動やネット閲覧も劇的に速くなってヨメさんも喜んでくれています。


やはり長く使うパソコンは、ギミックや無用なスペックではなく、メンテのしやすさや使いやすさで選ばないといけませんね。
今回はいい教訓になりました。
(って、アンタ、いつも衝動買いして失敗しては同じことを言っているんじゃなかったっけ?)


『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』  いい舞台でした!

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しばらく更新できていませんでした。
ですが、何も書くことがなかったのではなくその逆で、中旬になって俄かにお出かけラッシュ。ただでさえ乏しい脳内システムリソースがさらに足りなくなり、何から手をつけていいのかわからない状態になっていました。(笑)

まず6月12日に、兵庫県立芸術文化センター・中ホールで『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』 を観て感激の観劇でスタート、16日には舞洲のゆり園で予想外のスケールに驚き、21日にはまたまた兵庫県立芸術文化センター・中ホールで紺野美紗子・草刈正雄の珠玉の舞台『日本の面影』に身も世もなく感動し、翌日は一転してドラマシティで『昔の日々』で睡魔と闘う(殴)という、私にとってはかってない目まぐるしいスケジュール。

でもとにかく順に書いていかないと始まらないので(すぐ忘れてしまうので^^;)、まずは12日の『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』から書いてみます。いつものとおりの薄味の感想ですが、よろしければご覧ください。

この芝居、題材が北アイルランドのIRAとその支援者を描いたものなので、相当重苦しく深刻な舞台だろうなと覚悟していました。

でも結果は脚本・演出・役者・舞台セットのすべてが素晴らしく、ストーリーもよくできていて、観終わってみたら感動のスタンディング、芝居の魅力満載の舞台となりました。

当日は13時開演でしたが、余裕を見て10時15分に出発。珍しく阪神高速の全線にわたって渋滞ゼロというラッキーな日で、1時間ちょうどで劇場地下に滑りこめました。まずは腹ごしらえと、劇場近くで昼食してから劇場ホールへ。
今回もネット予約でB列のセンターよりという良席をゲットできていました。おかげで、念のためオペラも持参していたものの、劇中で出てきたウィスキーボトルのラベルを確認したぐらい(笑)で、全く不要でした。

ただ、今回はテーマが響いたのか最上部あたりの客席に少し空席があったりで満員御礼とはいかなかったのが惜しかったですね。

さて、舞台の感想です。いつものとおり敬称略です。

この芝居、イギリスの支配に激しく抵抗していた北アイルランド・IRAの闘争と、それを財政的に支え続けたアメリカ・ニューヨーク支部のメンバーたちの30年に及ぶ生きざまを描いたものです。
原作者のリチャード・ビーン(イギリス人の人気劇作家とのことです)は極めてシリアスなこのテーマを、その時々の歴史的な事件を織り交ぜて、時には笑いを誘いながら、テンションの高い膨大なセリフで綴っています。観ているこちらの方もぐいぐいと舞台に引き入れられていき、そして最後に待っていたのはよもやの大どんでん返し。芝居の面白さたっぷりでした。

企画制作は世田谷パブリックシアター
出演者は 内野聖陽 / 浦井健治 / 明星真由美 / 町田マリー / 黒田大輔 / 小林勝也 / 成河。


翻訳は小田島恒志、演出は森新太郎です。

ちなみに兵庫公演は6月12日〜15日でした。

幕が上がると、真っ暗な背景に内野聖陽扮するコステロが一人立っていて、伝統的なキルトの衣装で(でもどう見てもスコットランドの伝統的な衣装だと思いますが)、支部の会合であいさつするところから始まります。
↓プログラムより稽古場風景です


これはプログラム掲載の衣装デザイン画です↓


私にとっては内野聖陽といえば何といってもNHK金曜時代劇シリーズ「蝉しぐれ」での絶妙な演技が印象に残っていますが、今回の芝居での彼は、その当時とは違って円熟味を感じる堂々の演技でした。
このコステロという人物、純粋なアイリッシュ民族主義の信奉者というより、巧みな弁舌で支部のドンとして君臨し続けていることに生きがいを感じているかなり俗っぽいキャラクタです。舞台で観る限り、イデオロギーとか政治などに一家言を持っている風には見えず、芝居っけたっぷり(当たり前ですが(笑))の気のきいたスピーチで支部のメンバーに支持されて、多額のカンパを集めるのに長けた人物という感じです。

この人物像が劇のコアな伏線になっていることは観終わってから分かりました。

そんなコステロを内野聖陽は説得力ある演技でリアルに演じていました。観ながら、仲代達矢とか平幹二朗のような演技の風格が感じられて、本当に「蝉しぐれ」からの年月を実感しました。
彼については一路真輝とのことが少々残念ですが、一家に二人のスターは共存できないということでしょうか。

今回の観劇で目立っていたのがIRAの若手メンバーの一人・ルエリ・オドリスコル役の成河(ソンファ)でした。

けっこう舞台歴も積んでいるようですが、私たちは全く知りませんでした。でも、今回の舞台では場合によったら内野以上にインパクトのある存在になっていましたね。
非常に饒舌多弁なセリフをよくこなしていて、大したものでした。彼もIRAの支持者になった経過とかがよくわからなかったのですが、1972年のブラディサンデーを発端に闘争を激化させていったIRAの活動の過程で、さまざまな事態に直面して次第に変わっていくところがよく演じられていました。

NY在住の消防夫マイケル・ドイルに扮する浦井健治も寡黙な役柄なのに存在感のあるいい演技で好印象でした。

彼の演じる長身で無口で少し猫背気味なマイケル・ドイルを観ていたら、何故か『ショーシャンクの空に』のティム・ロビンスを思い浮かべてしまいました。
饒舌なエリ・オドリスコルといい対比ですが、寡黙な人ほど内に秘めた信念が強固だといった役どころが面白かったです。はじめて見た役者さんですが、劇場でもらった演劇関係のパンフレットでも目白押しの出演予定があるなど、今人気急上昇中みたいですね。

女優さんはIRAメンバーのエリザベス・ライアン役の明星真由美と、プエルトリコ系のカレルマに扮する町田マリーの二人でしたが、どちらもドッキリ演出があったりでがんばっていました。ヨメさんは明星真由美の声がいいと絶賛モード。(麻実れいに似ているとか(笑))



(ちなみに明星真由美はあの『ボクの四谷怪談』にも出演していたとのことですが、全然わかりませんでした)

同じくNY市警の巡査トム・ビリー・リコルは黒田大輔です。

まあハリウッド映画に出てくる警官そのものといったピッタリの役。見るからに強そうですが単細胞なアメリカの警官がはまっていて、宛書のようです。
こんなどこにでも居そうな人物がIRAの信奉者というのもある意味でリアルです。

IRA本部から調査に来た幹部のフランク・マカードルは小林勝也。

ベテランらしい存在感がありましたが、無理やりウィスキーを飲まされるなど査察に来たはずなのに逆襲されるなど気の毒な役でした。
この場面、アイリッシュウィスキー?がおいしそうでしたね。(笑)

観ていて印象に残ったのは、IRAが次第にそのあまりにも過激なテロゆえに大衆的な支持を失っていって、それとともに組織内部には相互不信や疑心暗鬼の傾向が強まっていくところでした。逆に言えば闘争路線が正しいうちは組織も健全性が保たれるということでしょうね。この劇に潜む悲劇性はIRAの闘争方針の是非・動向と不可分に考えられないということでしょうか。

ところで、舞台のセットも見ごたえがありました。
とにかくリアルです。もう映画の一場面のような作りこみが見事。しかも同じ部屋でも30年に及ぶ年月の経過に即して細部の小物類が変えられていくので、芝居を見ながらそういった変化を確かめる楽しみも味わえました。

劇の最後のほうでイェイツの有名な詩「湖の島イニシュフリー(The Lake Isle of Innisfree 1890)」が紹介されました。この詩と、コステロが語っていた「私はアメリカ人ではない、アイルランド人でもない、一人の人間なんだ」といった意味の言葉が、原作者のモチーフになったのだろうと思いました。

ちなみにこの湖、アイルランド・スライゴ近郊のギル湖ですね。でも私の撮った写真↓には残念ながら肝心のその島が写っていません。でも雰囲気ぐらいは分かっていただけるかも。(笑)




さて、細かいストーリーはまだ各地で公演が予定されているので観られてのお楽しみということで、省略させていただきますが、私たちももう一度観られたらさらにこの劇の良さがわかっただろうと心残りでした。予想以上のできばえで、最後は客席全体が感激のスタンディングで応えていました。

公演予定の劇場近くの方はぜひご覧ください。おすすめです!


今回も覧頂き、ありがとうございました。m(__)m

舞洲ゆり園に行ってみました

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最近よくテレビなどで宣伝を見かける舞洲ゆり園ですが、某日、梅雨の合間の好天に背中を押されて、出かけてみました。

↓公共交通機関利用の場合 (図は舞洲ゆり園のサイトから)


↓車利用の場合


出るのが遅かったので、駐車場に着いた時は9時の開園から1時間経過していて、もうけっこうな人出。
途中から同方向に走る車も多くなって、「停められるかな」と心配になりましたが、着いてみれば駐車場は広く、車椅子用のスペースも確保されていたので一安心でした。
まあ駐車場といってもアスファルト舗装は一部だけの、ゆり園周辺に有り余るほどある空き地に車を停めさせているだけです。(笑)
でも入口へ誘導するスタッフが多く道路に配置されているので迷うことなく駐車できました。

障害者スペースを利用する際は、現場の係員にその旨を告げれば場所を指示されるので、それに従えばスムースに駐車できます。場所もゆり園入り口に近いところなので助かりました。

入口でチケットを買って園内へ。障害者手帳を提示すれば本人+介助者1名の料金は半額になります。

さてゆり園ですが、さすがに見事なものでした。
大阪湾に面する斜面一面に植えられたユリが絨毯状に広がっていました。日射しは強いものの、カラッとした海風が吹いていて気持ちがいいです。


とくに今年は例のエルニーニョの影響で梅雨前線が南に下がって大陸の高気圧の範囲内になることが多いため、晴れても乾燥していて過ごしやすいですね。

ただ、このゆり園、売店↓以外は日射しを避ける施設は皆無。なので帽子や日傘は必須アイテムです。


通路は今年になって新しく舗装されたとのことで、車椅子が押しやすくなっていました。


私達が行ったとき咲いていたユリはスカシユリ系の園芸種がメインでした。なので香りはほとんどありません。




スカシユリ系は花が上を向いているのも特徴ですね。


カラフルです。


でもむせかえる芳香に包まれての観賞(笑)を覚悟していたので、少々拍子抜け。

でも今日(6月25日)、ゆり園の公式サイトを覗いてみたら、スカシユリ系は終わって、遅咲きの香りの強いオリエンタル系のユリが開花し始めたとのこと。
ユリの香りがお好きな方は今からがいい時期かもしれません。ただし日射しはさらに強くなっていると思いますが。

初めに書いたように舞洲ゆり園は海の方に傾斜した斜面に長〜く伸びた形状になっていて、その外周を通路がとり囲む形になっています。入口は高い所にあるので、そこから見ると一面に絨毯状にユリが咲いているのは壮観です。






↓花の種類が表示されていました


ただし、地形が単純で、ベルト状の花壇を周囲の通路から一方通行で眺めるだけなので、かなり単調です。
最初はオオッと驚いてもすぐ慣れてきて、見廻っているうちにだんだん物足りなくなってきますね。

もっと花の種類ごとにエリアを区切るとか、通路の配置に変化をつけて見る角度を変える工夫するとか、現状のような踏み台を使った椅子ではなくて、日差しが避けられる東屋を各所に設けるとかして、観客がゆったりくつろげるスペースも作ってほしいです。

まあ期間中、大勢の観客が押し寄せているようなので(私の周囲でも見たよという人が多いですね)、出来るだけ客の回転率を高めようということでしょうが、今のままだとリピートは難しいと思います。実際、私達が帰途につく頃はプチ繁華街の雑踏みたいな状態になってきていました。

アクセス面では他の同様施設よりは近くて便利だし、車椅子でも花が近くに見られるし、規模も大きいので、京阪神在住の方は一度は見て損はありません。でも、私達としては、上記のような改修や工夫がなければ再訪はないと思いますね。

でも、繰り返しますが、一度は見る価値があります。(ちょっと説得力無いかな?(笑))
今年は7月6日まで開園しています。ユリがお好きな方はぜひ行ってみてください。



さあ『日本の面影』を仕上げなくては。^^;


兵庫芸術文化センターで「日本の面影」を観て

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6月21日に兵庫芸術文化センターで「日本の面影」を観てきました。

まあ何とも予想外の(殴)、観応えのある素晴らしい作品でした。
もう言うことなし!パーフェクト!これを観ない人は大損してる!と言いたくなるほど。

山田太一・脚本の『日本の面影』については、1984年のNHKテレビドラマを見ていいのはわかっていたつもりでしたが、改めて舞台で観てその脚本の素晴らしさを再認識。さすがの完成度で、それに加えて主役二人はもちろん、脇を固めるすべての役者がみんな完璧でした!
ベテランの持ち味を生かしたぜいたくな配役で、主役二人の熱演を盛り上げていました。

前夜の睡眠不足→ひよっとして爆睡(殴)という観劇前の懸念は軽く吹き飛びました。(笑) 
劇場での2時間は、本当に忘我の至福タイムでした。

これはもう今年の演劇大賞・一般演劇部門のベストスリー入りは間違いなしですね。
何の演劇賞かって?言わずと知れた(知れてないない(笑))、『2014 思いつくまま演劇大賞』!(殴)

ということで、ひさしぶりの絶賛モード(笑)ですが、その割には中身の薄い、いつもの感想です。よろしければご覧ください。
(ネタバレも少々ありますので未見の方はご注意です。そして敬称略です。)

といいつつ、まずはいつもの劇場までのメモです。
6月21日(土) 午後1時開演でしたが、前回12日と違って自宅で早目の昼食を済ませてから出発しました。
1時間で劇場に着き、時間があったので、劇場前のチケットカウンターで、前日ネット予約した10月の2公演のチケットの受け取りを済ませました。送料・手数料が節約できて助かりました。

開場前のホールに居合わせた他のお客さんを見ていると、けっこう男率(笑)が高いのがわかりました。そして年齢も高め。まあ今では若き日の紺野美沙子や草刈正雄の活躍をリアルタイムで見た世代となると中年以上になってしまうのでしょうね。

今回の席も、例のごとく先行予約を頑張ったおかげで最前列のど真ん中。これで5,000円!とはね〜♪

でも今回も満員御礼とはいかなかったような。もったいない話です。

まず紺野美沙子について。
実をいうと私は昔テレビドラマで見かけたぐらいで、最近の活動にさいては殆ど何も知りませんでした(無知を自慢してどうする!)。
それで今回の舞台も、誠に失礼な話ですが、まあせいぜいテレビタレントの余芸程度だろうと高をくくって観劇に臨みました。

で開演時間になって、舞台は薄い紗のようなカーテン越しに、ほの暗い照明のもとで紺野美沙子がハーンの母親役になって子供のベッドの横で童話を読み聞かせる場面になりました。ところが、そのセリフがよく聞き取れない!のです。

ハーンの父役の石橋徹郎の声は役柄上大きい声なのでそうでもなかったのですが、この場面での紺野美沙子は、まるであのこまつ座の「頭痛肩こり樋口一葉」の悪夢を再現したようです。それで「これはハズレだったかな」と思い始めました。

でもそれは全くの杞憂でした。
カーテン越しで、しかも演出的にはハーンの生い立ちを説明する補足のようなものなので、セリフの声量を低く落としていたので聞こえにくかったのですね。
いざ幕が上がって、本題に入り「小泉セツ」になったら、クッキリハッキリの明瞭なセリフ。まあ心底ホッとしました。後で聞いたらヨメさんも全く同じ思いだったとのこと。

セリフが明瞭なのは当然で、あとで当日買ったプログラム(A5版のかわいらしいものです)を読んだり公式サイトを見たら、彼女は2010年秋より地域文化の向上、舞台芸術の発展を目的に音楽や影絵や映像など、様々なジャンルのアートと朗読を組み合わせたパフォーマンスや、ドラマリーディングのために「朗読座」を旗上げして全国で上演しているそうです。
さらにセリフだけでなく、立ち居振る舞いや身のこなし、感情表現などすべてにわたって素晴らしい演技。本当にセツが乗り移ったようでした。劇中、セツがハーンに古い怪談を聞かせる場面がありますが、説得力のある語りと演技で私達もハーンになったような感じで聞き入りました。

初めに書いたように、山田太一の『日本の面影』といえばジョージ・チャキリス主演のNHKの名作ドラマ、そこでセツを演じていた檀ふみが絶品な私だったので、紺野美沙子がどこまでそれに近づけるか、お手並み拝見といった感じでした。
でも劇が進むにつれ、檀ふみとはまた別の、新しい「セツ」像が創り出されていて、本当に感心しました。

役年齢的にはやや無理な感じもしないではなかったのですが(首筋とか(笑))、もともと童顔だし、所作もキレがよくしかも丁寧で品があり文句なしにピッタリの役どころ。ハーンに寄り添って、芯の強さと才気を優しさにくるんで一緒に生きる姿が印象的でした。
紺野美沙子再発見!が今回の最大の収穫でした。あわせて当時の女性の立ち居振る舞いが本当にきれいなのもよくわかりました。たおやかで優雅で繊細。見惚れますね。

それとネイティブな方の耳にどう聞こえているのかわかりませんが、私にとってはいわゆる雲伯方言も聞いていてリズミカルで気持ちがよかったです。
このあたり、去年の「イーハトーボの劇列車」の東北弁と同じような心地よさを感じました。

今回の公演に関連した兵庫芸術文化センターのパンフのインタビューでは、今回の公演にあたって彼女なりにいろいろ考えるところがあって取り組んだというところが紹介されていましたが、今の日本の状況をよく考えていますね。


それと彼女はあくまでも謙虚。その点でも好感が持てます。

次はラフカディオ・ハーン/小泉八雲役の草刈正雄です。この人も昔のNHKの時代劇の「真田幸村」が大ヒット@我が家(笑)して以来、好感度を維持したまま現在に至っています。
でもそれから幾星霜(笑)。今ではいい意味で枯れてきて(殴)、それがプラスとなって容貌にもピッタリの適役。感心しました。チャキリスよりもよかったです。
隻眼だったハーンを演じるので左目にテープ?でもしているのか閉じたままで、観ながら大変だなと同情してみたり。(笑)
劇中周囲が気遣って無理やりステーキを食べさせるところとかコミカルな演技もあってよかったですね。この人も再評価の声が高まっています。(@我が家)

まあ主役二人がいいと、一安心。(笑) 以下の画像は当日買ったプログラムから


でも今回の舞台の魅力は豪華な脇の布陣でした。冒頭で、セツがハーンの身の回りの世話のため住み込みの女中になったと聞いて、親戚が乗り込んで来たところなど、圧巻の顔ぶれ。養祖父と養父母に実母の4人が豪華です。


養祖父・稲垣万右衛門役は金内喜久夫です。この人は1992年の初演以来同じ役を務めているとのことですが、存在感があります。稼ぎもないのに気位ばかり高くて役立たずな没落貧乏士族そのままでした。初めはセツの女中奉公に反対しながら、結局は八雲とセツの扶養家族になるのですが、そのあたりの微妙な立場がユーモアを交えた演技で演じていてうまかったです。

そしてセツの養父の稲垣金十郎役の田代隆秀と同じく養母の稲垣トミ役の大西多摩恵も過不足ないうまい演技でした。

芸達者な脇役陣でも一番存在感があったのがセツの母・小泉チエ役の長谷川稀世でした。こんな母親がいてくれたらセツも安心です。どんな事態になってもあわてず動ぜず。舞台に出てきただけでも絵になっていました。
とくにセツ同様にハーンに怪談を聞かせる場面での『耳なし芳一』の語りが絶品でした。これを聞けただけでも観に行った甲斐がありました。(笑)

そのほか、出番は少ないものの、あの三菱のキザなお兄さんでおなじみになった(笑)石橋徹郎がチャールズだけでなく佐伯信孝役でも出てきて遺憾なくイヤなヤツぶりを発揮していました。(笑)



松江時代のハーン思いの同僚・西田千太郎兼武士の亡霊役の川野太郎もさすがにベテランらしい堂に入った演技でした。なんでも彼も平家の末裔とか。甲冑が板についていました。

あと、同じく出番が少ないですが、安部愛子・渡辺吾郎・前田聖太の三人も役どころにふさわしい自然な演技でした。本当にこの芝居はぜいたくな配役で、脇の層が厚いです。

最後はハーンがセツに自分の死後について指示する有名なセリフがあって、感動のうちに幕となりました。
そして客席は満場のスタンディング! 本当に観てよかったです。

こういう完成度の高いいい芝居を観ると、私もいい人にならなくてはと思いますね。(笑)(でもすぐまた埒もない物欲に支配されてしまったりしますが)(殴)

各地での公演もまもなく終わろうとしていますが、近くにお住まいの方などで機会があればぜひご覧ください。心が洗われます。絶対おすすめです。



さて、やっとアップしたと思ったらまだ「昔の日々」の感想が残っていて、さらに今週は久しぶりのタカラヅカ観劇も。しばらくプレッシャーかかりっぱなしの日々です。^^;


シアター・ドラマシティで『昔の日々』を観て

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6月はタカラヅカはパスで、兵庫芸文センターでの『ビッグフェラー』『日本の面影』とドラマシティでの『昔の日々』の10日間に3本観るという怒濤の観劇ラッシュでした。

その3本中でヨメさんが一番期待していたのはもちろん最後の『昔の日々』。演出がデヴィッド・ルヴォーで、主演女優が麻実れいとなればいやがうえにも観たくなるというところでしょうね。

この女優二人が共演した舞台を観るのは去年の『鉈切り丸』以来で、そのときはどちらもGood Job!!な出来でしたから、私も同様に楽しみにしていました。

そして『日本の面影』の感動も覚めやらぬ(笑)6月22日に、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでの観劇となりました。

で、結果を先に言いますが、なんとも評価のしようのない、いや正確にいえばよくわからない作品でした。しいて言えば不条理劇かな(←何の説明にもなっていませんが、何かわかったようで安心してしまう言葉ですね(笑))。

というところで、まずはいつものマクラから↓。読みたくない方はどうぞ飛ばしてください。

昼食の時間を考えて、早めに地下駐車場に到着。エレベーターで劇場のあるフロアにあがり、誰もいない劇場入り口のホールから食堂街に向かおうとしたとき、黒っぽい服装の長身の女性と、そのお付きの人?らしい女性との二人連れが右方向からやってきました。

顔を見ると見覚えがあるような‥。
車椅子のヨメさんも同時に気づいて、すぐ名前を呼びかけていました。こういうときの彼女の反応はいつもほぼ延髄反射といっていいほど。(笑)
呼びかけられた件の女性、エスカレーターに乗りながら一瞬怪訝そうにあたりを見渡していました。こんなところで誰だろうという感じでした。ヨメさんがもう一度、今度は手を振りながら、「ワタルさ〜ん!、応援しています!」と(ミーハー全開で)呼びかけたら、ようやくただの無害なファン(笑)と理解したのか、その女性はそれまでの怪訝そうな顔から、なじみのある笑顔に変わって、軽く会釈を返してくれました。
そうです、湖月わたるさんでした。私もヨメさんにつられて手を振ってしまっていたり。(笑)

思わぬところで、あの最多リピートした『王家に捧ぐ歌』以来、贔屓@我が家な一人になっていた彼女に出会えて、ちょっと得した気分になりました。春風弥里さんといい、偶然とはいえよく出会えたものです。
たぶん↓の関係で打ち合わせでもあったのでしょうか。




食事を終えて、また劇場前に戻りました。あのブラームスの例があったので、きっと今回の観劇もいい結果になるだろうと根拠もなく期待して(笑)開場を待ちました。

時間になって、劇場スタッフに案内されて客席へ。
席番は7列上手側と前回ほどではないですが、舞台配置の関係で上手・下手側は前から5列まで塞がれていたので、実質前から2列目の良席。横から見るとはいえ、まずオペラ不要でした。

舞台配置はこんな感じでした。↓


赤いじゅうたんの敷かれた正方形の能舞台のような形です。舞台奥には金属製のようなクモの巣の張ったグランドピアノや火のついた暖炉、椅子などが置かれています。ただし劇とは関係がなく、ただ置いているだけ。

さて、いつにも増して中身のない感想になります。(殴) いつものとおり敬称略です。
登場人物はこの3人。堀部圭亮/若村麻由美/麻実れいです。男優だけは知りませんでした。


原作はハロルド・ピンター。ノーベル文学賞受賞の劇作家だそうですが、近年亡くなられたとか。
そして演出はご存じデヴィッド・ルヴォー。

でも、事前に上掲のパンフレットで、「美しくて不穏な世界をただ『感じて』ほしい」とか「必要なのは直観的な感性だけ」とか書かれているのを読んで、一抹の不吉な予感もありました。
そして開演前に買ったプログラムには、わざわざ別刷りの劇の要約↓みたいなものが挟んであったりしたのも、なにやら難解さの予防線みたいだし。(笑)


でもここはエイヤッと、そんな雑念を振り払って、女優二人の魅力に期待して観劇を開始しました。(笑)
85分ノンストップの劇です。

3人の衣装はこんな感じでした。↓ アンナ役の麻実れいだけが赤い衣装。


話は堀部圭亮の扮するディーリィと、若村麻由美のケイトが住むマンション?に麻実れいのアンナが訪ねてくるところから始まります。
この3人の台詞は、いずれも饒舌でかなりテンションも高いです。初めのうちは、私もその膨大でとりとめのない台詞を追いかけて、なんとか話の流れをつかもうとしたり、本当にコーヒー飲んでるなとか感心したり(殴)していましたが、肝心の話の流れがいつまでたっても掴めないのです。
いろいろ3人が台詞のキャッチボールをしているけれど、どこか噛み合っていない。話の内容・脈絡・因果関係が分からない。その上、30年間というタイムスパンで現在から過去に突然行き来するので、だんだん疲れてきました。

先に紹介した、事前配布のあらすじの要約に書かれた3人の関係も、いつまでたっても見えてくる気配なし。大体会話だけ聞いていると、どちらがアンナでどちらがケイトかもわからなくなるほど。まあこの二人、本当は同一人物という設定なので、それでいいのかも知れませんが。

で私も途中で悟りました。というか諦めた。これは世にいう不条理劇。ハッキリした起承転結など関係なし。なので俗っぽい私の頭脳では理解不能なんだと。(笑)
それで、こちらもハラを括りました。台詞一つ一つの意味や繋がりを負うのは無駄、いわば即興で吐き出された散文詩みたいなもの。だから3人の役者の振る舞いや表情、姿態を見ながら、その詩を聞き流すことにしました。(そうはいってもどうしても意味を追いたくなりますが)

さて、3人の役者について。
まず若村麻由美のケイトです。
久しぶりに見る彼女は、私の脳内記憶イメージと違い、かなりポッチャリしてきているように見えました。でもヨメさんはそんなことはないと否定していましたが。ただ私はポッチャリ体型なほうが好きなので(だからタカラヅカの生徒がトップ就任後ガリガリになったりするとガッカリしますね)、好感度アップ!!(殴)。




だけど、話が見えないので、感情移入できないまま終わってしまったのが致命的に残念。

その分身であるアンナの麻実れい。




よく演技力のなさを批判する時に、「どの役でも役者が透けて見える」とか、「何をやっても同じキャラ」とかいいますが、麻実れいには当てはまりませんね。別格。
何もせず、ただ舞台に立っているだけで演技が成立している感じです。どんな役でも(さすがにトラックの運転手は無理な感じでしたが)自分のものにしてしまう。初めから宛て書きされていたような自然さで、いろんな役を演じ切っているのが彼女です。演出家は、麻実れいが地のままで演技してくれるからこそ起用するのだと思うのです。そしてそれが彼女のすごいところだと思います。とくにシェイクスピアものなど、余人をもって代えがたい存在ですね。

今回も極めて自然に舞台に登場して、この難解な劇をこなしていました。こんな筋書きがあってないような芝居で、膨大な台詞をよくまあ憶えられるものだと改めて感心しました。

そして両手に花(持て余しそうな花ですが)の堀部圭亮。初めて見ましたが、両女優に伍して、頑張っていましたね。ちょっと唐沢寿明みたいな感じで、台詞バトルに臆せず加わっていました。ただ、話はあくまでケイトとアンナのからみがメインなので、ちょっとしどころ無さ感がありました。



別の舞台で観られたら彼の持ち味もよく分かっただろうと思いますが。

で最後まで盛り上がりのないまま、フランス映画によくあるまことにあっけない終わり方でした。客席はとてもスタンディングとはいかず、「でも3人さん、よく頑張ったね〜」的な拍手。入りも悪かった今回の公演でしたが、私たちもしばし無言のまま駐車場に向かいました。

という無駄に長いだけの申し訳ない感想になりましたが、ここまでご覧いただいた方には感謝の気持ちでいっぱいです。m(__)m


さて、次は雪組の感想です。久しぶり〜に観た宝塚、かなり新鮮で、しかも芝居もショーも出来がよく、面白かったです!!

宝塚雪組公演 『一夢庵風流記 前田慶次』&『My Dream TAKARAZUKA』 いい舞台でした !!

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7月3日(木)に宝塚大劇場で、雪組公演『一夢庵風流記 前田慶次』&『My Dream TAKARAZUKA』を観てきました。

大劇場は5月3日以来ちょうど2カ月ぶり。5月も同じくらいの間隔での観劇だったので、今年は100周年なのに観劇の回数が少ないです。

しかし、2か月もブランクがあると、大劇場も新鮮な感じで、ちょっと懐かしささえ感じたほど。(笑)
ヨメさんも同感だったようで、あいにくの雨にもかかわらず、大劇場の前で記念写真を撮ろうと言い出したり。(笑)

とくに先月から兵庫芸文センターやドラマシティでの観劇が続いていたので、久しぶりに劇場の売店でフィナンシェを買ったり、公演関連のパンフレットやスカステの番組紹介誌をもらったりしながら、どことなく暖かなこの宝塚の雰囲気もいいもんだなと思いました。

そして、とくに贔屓の組でもないので、余り期待せずに観たこの舞台でしたが、これが望外の出来でした!
チケットさえあればまた観たいと思った宝塚は本当に久しぶり。
さらに、芝居はよくてもショーになるとよく寝てしまったりする私ですが(殴)、今回はなんと一睡もせずに観てしまいました。それどころか、禁断の歌の連続で、不覚にも涙腺が緩みそうになることもたびたび。(笑)

舞台でも宝塚の良さを再認識の観劇となりました。

ネタバレありの感想です。相も変わらず長いだけで中身の無い感想ですが(笑)、御用とお急ぎが無ければどうぞご覧ください。(笑)
いつものとおり敬称略です。座席は残念ながら19列。でもドセンターなので舞台全体がよく見えました。

で、まず芝居のほうの感想です。
いい舞台でした! かなり込み入った話で役も多いのに破綻せず(笑)、テンポがよくグイグイ進んでいきます。
人物像も簡潔で分かりやすい。強いて難を言えば、かなり詰め込んでいるので、個々の話のディテールが若干はしょられている感じもしないではないですが、一本物ではないので仕方がないか。逆に一本物ではないのに、よくここまで話が展開できるものだと感心しながら観劇していました。密度の濃い脚本です。
劇中の歌『散らば花のごとく』と『薄墨の花片』もよかった。特に前者は耳によくなじむメロディで、聞きながら、あれ、ひょっとして寺田瀧雄?と思ったり。
あとでプログラムを見たら両曲とも作曲/高橋 城とありました。この人の曲、最近あまり聞いた覚えがなかったのですが(私が知らないだけかな)、さすがにいい曲でした。もっとこの歌の場面があればよかったのですが。

加えて舞台装置も凝っていて、とっかえひっかえの衣装も豪華。信長の衣装など、たったワンシーンだけなのにもったいなかったです。(笑)
劇の背景に描かれた洛中洛外図屏風みたいな絵も丁寧に描かれていて見ごたえありでした。またオープニングのプロジェクタの使い方と開演の挨拶の組み合わせなども洒落ていて、劇への期待を高めていました。

そして異例の特別客演の松風も目立っていましたね。愛馬ぶりが素晴らしく、登場するたびに客席の注目を集めていました。

↓当日買ったプログラムから




私たちは原作を読んでいないままの観劇でしたが、問題なかったです。後日、本屋でチラッと立ち読みしましたが、舞台化にあたって大幅に役や筋書きが変えられて原作とはかけ離れたものになっているので、事前に読んでも余り意味がなさそうです。大体原作を読まないと理解できない脚本ではダメだし。

まあとにかく、緩急自在の話の展開と、宝塚ならではの大所帯を生かした演出の大野拓史得意の多彩な配役が今回は効果的で、最後のドンデン返しまで飽きさせないのはたいしたものでした。
楽市楽座に代表されるあの時代特有の、活気のある世相や庶民の自由な暮らしぶりが、たびたび挿入された群舞でよく表現されていました。
観終わって、何とも言えない爽快な余韻に浸れました。100周年にふさわしいいい芝居でした。


さて主な出演者についての感想です。

まず前田慶次の壮一帆。





まさに宛書といっていいほどのハマリ役。
飄々として人生を達観していて自由闊達・豪放磊落・奔放不羈(←四文字熟語連発(笑))、しかも鎧の上から袈裟掛けで相手を切って捨てる剣の達人。そんな前田慶次を壮一帆は極めて自然に演じていました。


利家を水風呂に入れる策略などでも場内を湧かせていました。利家役の奏乃はると、うまかったですね。初めは専科の誰かかと思ったほど。


乗馬も様になっていました。馬の松風もさすがにプロの仕事で、思わず見とれてしまいました。

いい役に巡り合えたものですね。退団にふさわしい良作ですが、出来たらトップ就任公演でやってもらいたかったですね。

以前ときどき感じられた「ドヤ歌」(殴)風な力みもなく、余裕の歌唱力で耳に心地よかったです。
彼女の芝居はあまり観ていなくて、記憶にあるのは10年前に観た『送られなかった手紙』での好演ぐらいですが、今回の芝居はそれと並ぶ印象に残るいい舞台でした。

壮一帆は、歌も演技も定評のある実力を持ちながら、トップ就任が遅れて、その間思うところも多々あったでしょうが、めげずに続けてきた姿には、こちらもいろいろ感じとることが多かったですね。そしてトップ就任を自分のことのように喜んでいた蘭寿とむの姿も印象的でした。

長い宝塚生活を締めくくるいい作品に巡り合えて、本当によかったと思います。

(ただこの人、演技とは無関係ですが、スカステのインタビューやNow on Stageなどで話すとき、中小企業の社長さんが従業員や部下に訓示しているような演説口調になるのがいつも気になります。(笑))



次は利家の正妻・まつの愛加あゆ。




原作では正妻の立場など全く意に介さず、自由奔放に生きる女性とか書いていましたが、この人の顔を見ているとどうしても良妻賢母とか、健康・健全・健気の3Kイメージ(またか!(殴))がつきまとって、ちょっと劇中のキャラクタと設定との違和感アリでした。でも歌も演技も全く危なげなく、娘トップの貫禄さえ感じさせる存在になっていました。
最後のほうの場面で慶次と助右衛門があっていると聞いて駆けつけるところが見せ場で、そのただならぬ様子がその後の展開を盛り上げていました。
しかし、10数年前のNHKの大河ドラマ『利家とまつ』のイメージがあったので、原作を読んの貞操観念ゼロ(笑)という「まつ」像はびっくりでした。

↓いいコンビになっていました。


つぎは奥村助右衛門役の早霧せいなです。
この人、ひとり寂しく横笛を吹いている場面が多く、影のような存在かと思ったら、実は「腹に一物・背中に二物」な複雑な人物でしたね。「親友」であることとと「忠臣」たることが背反する苦悩を笛で紛らわせていたのか。そんな影のある演技がよかったですが、最初の慶次との会話の場面、壮一帆と違ってちょっと台詞が聞き取りにくかったです。ヨメさんも幕間で同じ感想でした。








さすがの演技と歌だったのが、謎の人物・二郎三郎役の一樹千尋。
狂言回しでもあるこの二郎三郎という人物、でも存在感たっぷりなので、タダモノではないことがすぐわかります。
一樹千尋が出てくるだけで安心してしまう私たちですが、今回も貫禄充分な演技でした。


そして同じく専科から秀吉役で出演の夏美ようもよかった。


このふたり↓でどれだけ舞台に厚みが出たことか。でも夏美よう、少し枯れすぎみたいな。(笑)


あと、深草重太夫役の夢乃聖夏がいつもの得意の笑いで高得点。





ただ、もうそろそろ黒い役とか敵役での彼女の演技が見てみたいです。眼の力も強くて演技もパワーがあるので、シリアスな役で舞台に上がってほしいと思います。

黒い役といえば、雪丸役の未涼亜希と、慶次を狙う捨丸の咲妃みゆです。

未涼亜希もこの公演で退団ですが、もったいないですね。他の組でも同じような中堅クラスがどんどん退団していっていますが、本当に惜しいです。
で、雪丸ですが、不気味な存在でさすがの迫力。見るからに手ごわそうです。でもちょっとかわいそうな面も。


直江兼続役の鳳翔大と。この人、余り出番がなく惜しいです。まあ最後で出られたが。


加奈(助右衛門の妹でまつの侍女・加奈の大湖せしるとの絡みも見どころでした。


そして刺客の捨丸の咲妃みゆ。美味しい役です。でも見ているとかわいらしさのほうが先に立って、よくやっているねという感じで見てしまいました。(笑)
ただ、Now on Stageなどで、慣れないせいかたどたどしく話している様子↓から受ける印象よりはよく演じていましたね。


身のこなしにもキレがあり、表情も引き締まっていて十分役になりきっていました。期待の星です。




慶次には軽くあしらわれていましたが。(笑)


しかし、まあとにかく役が多くて、とても紹介できません。だいたい一回観ただけでは到底無理。
なので、東京で観劇予定の方、ぜひリピートされることをお勧めします。

次はショーの方です。


最初に書きましたが、このショー、まるまるサヨナラショーです。(笑)
挿入された『My Dream TAKARAZUKA』と『伝説誕生』(阿木耀子作詞)の歌詞などまんま壮一帆への送辞です。
「たとえライバルだって最高の友達」なんて歌われたら、贔屓でもない私でもついホロリとしてしまったり。^^;
加えて退団者の踊る場面も多く、これでは東京公演の千秋楽が思いやられますね。(笑)

ショーも大人数での群舞の連続で(ヨメさんは多過ぎ!と不満気味(笑))、迫力がありました。
今回とくに感じたのは衣装の色が素晴らしいこと。大人っぽい粋な色彩が冴えていました。
それと、先の2曲以外でも、たとえば黒燕尾の場面で『風のささやき』が流れたり、



別の場面でもおなじみの『ケ・サラ』が歌われたりで、年寄りを泣かせるサヨナラショー全開です。ヅカ観劇が初めてらしい団体客が多いこの日の客席でしたが、これをどう感じたのか感想が気になったりしました。

以下、個人別にショーのご紹介です。

まず壮一帆から。













そして愛加あゆ。











早霧せいな。1枚だけですみません。m(__)m



未涼亜希です。渋いです。惜しいです。




エトワールも


最後はオマケで(殴)咲妃みゆ。


これもオマケで、この公演のNow on Stage収録後に退団する3人に花束贈呈の様子です。
なにかホノボノとしていて、いい光景でした。







というわけで、雪組公演、本当にいい舞台でした。

今回も忍耐強くご覧頂いて(笑)、どうもありがとうございました。




次の宝塚は今月下旬の星組ですが、理事さんのご降臨な公演なので果たしてどうなることやら。^^;


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