このところ、クアッドコプタ・Phantom2にスッポリはまってしまって、暇を見ては飛ばしに行く始末。(殴)
なのでただでさえ遅いブログの更新がさらに滞っていますが、この辺でちょっとPhantom2のほうは休憩して、たまった観劇感想を書いていきます。m(__)m
その第一弾が兵庫芸文センターで観た『炎 アンサンディ』です。
題名がその前に観た『炎立つ』と似ているのでチケットを申し込んだ時点ではややこしかったのですが、当然内容は全く別物。
こちらの舞台はカナダ・モントリオールとレバノン。始まりはモントリオールからで、突然の母の死を前にして、双子の姉弟がそれぞれに託された母の遺言の中に込められた願いをかなえるため、母の祖国レバノンを訪れるという展開です。
姉弟それぞれの話を追っていくうちに、次第に明らかにされていく衝撃的な事実(まるで映画の安っぽい宣伝文句みたいですが^_^;)。
まあなんというか、ギリシャ悲劇のようで、最初のほうの芝居で若い二人がかわす現代風な会話から受ける舞台の印象が、途中からガラっと変わっていきます。内戦のレバノンでの深刻な抗争の中で展開される悲劇が重いです。
ギリシャ悲劇風であり、また謎解きのサスペンス風でもあるこの芝居、観ていくうちに「あれ、これどこかで見たような話だな」と思い始めました。それも最近見たような感じです。心の隅でどこで見たのかなと自問しながら舞台に見入っていました。
で、幕間にヨメさんにそのことをいうと「何言うてんの!この間見た『灼熱の魂』やんか。もう忘れたん?」
そうですね。WOWOWで見ていました。2010年のカナダ映画です。その時も見ながら「これギリシャ悲劇みたいやね」とか言っていたのも思い出しました。ちなみに劇の題名のアンサンディとは映画の原題「Incendies(火災とか火事の意味)」からとっているようですね。
でも映画と芝居ではストーリーは同じでも、また別の味わいがあります。映像に頼らない分、芝居のほうが直に感覚に伝わってきます。
なんといってもよく組み立てられた脚本で、重厚な中にもスリリングな展開がすごいです。
ということで、個別の感想です。いつものとおり敬称略です。
まず母親ナワル役の麻実れい。
今回の舞台では座長芝居という感じでした。この舞台の素晴らしさは彼女の渾身の演技に負うところが大きいです。長年の麻実れいウォッチャーなヨメさんも、今回の舞台が一番よかったというほどの出来。
それぐらい力の入った演技でした。初演のフランス版では3人の女優が演じ分けたというタイムスパンの長い話ですが、それをセリフの声のトーンを巧みに変えたり、微妙に身のこなしを演じ分けたりして年齢の違いを表現していました。
いつまでも衰えを見せない彼女の力量と努力に感心しました。
次に眼を引いたのがニハッドの岡本健一。
初めてお目にかかりましたが、パンフレットの経歴を見たら、芸歴が豊富で、舞台では蜷川の『タイタス・アンドロニカス』にも出ていたようですね。麻実れいともそこで共演していますね。
でも私は当時ヨメさんに誘われてその舞台を観ていますが、全然記憶にありません。^_^;
しかし今回はしっかりと観られました。(笑) 寝なかったし。(殴)
台詞がちょっとジャニーズ事務所らしい風味が感じもしますが、演技はしっかりしていて大した役者ぶりです。しかも劇中で医師やガイドや墓地管理人や老人、ナワルの最初の恋人役など何役も務めていて大奮闘。よく台詞が回るものだと感心しました。
双子の姉弟のジャンヌを栗田桃子、シモンを小柳 友が演じています。
この二人も複数の役を演じていて、栗田桃子はなんとナワルの祖母ナジーラも演じ、小柳 友も民兵を演じるなど頑張っていました。
現代の若者が次第に変わっていく様子がよく演じられていて、好感度大な感想となりました。
まあ兼務といえばなんといっても中村彰男が頑張っていました。
元看護士のアントワーヌに加えてシモンのボクシングコーチ・ラルフ、ナワルの故郷の村の長老、学校の門番、抵抗勢力のリーダー、産婆!、戦争写真家と大活躍。それも同じ役者とは到底思えないほどうまく演じ分けていて、すっかり騙されました。(笑)
演技に説得力があって大したものです。
ナワルの母ナジーラとナワルの友人サウダを演じたのが那須佐代子。
渾身の怒りと悲しみ、魂の叫びをぶつける演技に圧倒されました。
中嶋しゅうの公証人エルミルはちょっと物足りない感想になりました。
この人は、最近観た『おそるべき親たち』でも感じたのですが、割と存在感が薄いユルイ演技が持ち味?でしょうか、ちょっと私としては残念感のある役者さんです。
似たような残念感は、こまつ座の『藪原検校』で狂言回し役を務めた浅野和之にも感じました。
繰り返しになりますが、今回の舞台はなにより麻実れいが久しぶりに全力投球したいい作品になっていて、見ごたえ十分でした。その渾身の演技に呼応して他の役者さんもいい演技で、最後は全員総立ちで拍手。
しかもこの日が大千秋楽とあって、終演後担当プロデューサーが司会して、演出の上村聡史と麻実れい、岡本健一によるアフタートークもあり、大満足。この演出家にも今後注目したいですね。
予想以上の大作で、心地よい余韻を味わいながら、帰途につきました。いい一日でした。
さて次は今回の『炎 アンサンディ』と並ぶ今年の収穫といえそうな『鷗外の怪談』の感想です。頑張らないと。
さらに明日11月13日は久しぶりのタカラヅカ観劇です。どんな出来になっているでしょうか。
なのでただでさえ遅いブログの更新がさらに滞っていますが、この辺でちょっとPhantom2のほうは休憩して、たまった観劇感想を書いていきます。m(__)m
その第一弾が兵庫芸文センターで観た『炎 アンサンディ』です。
題名がその前に観た『炎立つ』と似ているのでチケットを申し込んだ時点ではややこしかったのですが、当然内容は全く別物。
こちらの舞台はカナダ・モントリオールとレバノン。始まりはモントリオールからで、突然の母の死を前にして、双子の姉弟がそれぞれに託された母の遺言の中に込められた願いをかなえるため、母の祖国レバノンを訪れるという展開です。
姉弟それぞれの話を追っていくうちに、次第に明らかにされていく衝撃的な事実(まるで映画の安っぽい宣伝文句みたいですが^_^;)。
まあなんというか、ギリシャ悲劇のようで、最初のほうの芝居で若い二人がかわす現代風な会話から受ける舞台の印象が、途中からガラっと変わっていきます。内戦のレバノンでの深刻な抗争の中で展開される悲劇が重いです。
ギリシャ悲劇風であり、また謎解きのサスペンス風でもあるこの芝居、観ていくうちに「あれ、これどこかで見たような話だな」と思い始めました。それも最近見たような感じです。心の隅でどこで見たのかなと自問しながら舞台に見入っていました。
で、幕間にヨメさんにそのことをいうと「何言うてんの!この間見た『灼熱の魂』やんか。もう忘れたん?」
そうですね。WOWOWで見ていました。2010年のカナダ映画です。その時も見ながら「これギリシャ悲劇みたいやね」とか言っていたのも思い出しました。ちなみに劇の題名のアンサンディとは映画の原題「Incendies(火災とか火事の意味)」からとっているようですね。
でも映画と芝居ではストーリーは同じでも、また別の味わいがあります。映像に頼らない分、芝居のほうが直に感覚に伝わってきます。
なんといってもよく組み立てられた脚本で、重厚な中にもスリリングな展開がすごいです。
ということで、個別の感想です。いつものとおり敬称略です。
まず母親ナワル役の麻実れい。
今回の舞台では座長芝居という感じでした。この舞台の素晴らしさは彼女の渾身の演技に負うところが大きいです。長年の麻実れいウォッチャーなヨメさんも、今回の舞台が一番よかったというほどの出来。
それぐらい力の入った演技でした。初演のフランス版では3人の女優が演じ分けたというタイムスパンの長い話ですが、それをセリフの声のトーンを巧みに変えたり、微妙に身のこなしを演じ分けたりして年齢の違いを表現していました。
いつまでも衰えを見せない彼女の力量と努力に感心しました。
次に眼を引いたのがニハッドの岡本健一。
初めてお目にかかりましたが、パンフレットの経歴を見たら、芸歴が豊富で、舞台では蜷川の『タイタス・アンドロニカス』にも出ていたようですね。麻実れいともそこで共演していますね。
でも私は当時ヨメさんに誘われてその舞台を観ていますが、全然記憶にありません。^_^;
しかし今回はしっかりと観られました。(笑) 寝なかったし。(殴)
台詞がちょっとジャニーズ事務所らしい風味が感じもしますが、演技はしっかりしていて大した役者ぶりです。しかも劇中で医師やガイドや墓地管理人や老人、ナワルの最初の恋人役など何役も務めていて大奮闘。よく台詞が回るものだと感心しました。
双子の姉弟のジャンヌを栗田桃子、シモンを小柳 友が演じています。
この二人も複数の役を演じていて、栗田桃子はなんとナワルの祖母ナジーラも演じ、小柳 友も民兵を演じるなど頑張っていました。
現代の若者が次第に変わっていく様子がよく演じられていて、好感度大な感想となりました。
まあ兼務といえばなんといっても中村彰男が頑張っていました。
元看護士のアントワーヌに加えてシモンのボクシングコーチ・ラルフ、ナワルの故郷の村の長老、学校の門番、抵抗勢力のリーダー、産婆!、戦争写真家と大活躍。それも同じ役者とは到底思えないほどうまく演じ分けていて、すっかり騙されました。(笑)
演技に説得力があって大したものです。
ナワルの母ナジーラとナワルの友人サウダを演じたのが那須佐代子。
渾身の怒りと悲しみ、魂の叫びをぶつける演技に圧倒されました。
中嶋しゅうの公証人エルミルはちょっと物足りない感想になりました。
この人は、最近観た『おそるべき親たち』でも感じたのですが、割と存在感が薄いユルイ演技が持ち味?でしょうか、ちょっと私としては残念感のある役者さんです。
似たような残念感は、こまつ座の『藪原検校』で狂言回し役を務めた浅野和之にも感じました。
繰り返しになりますが、今回の舞台はなにより麻実れいが久しぶりに全力投球したいい作品になっていて、見ごたえ十分でした。その渾身の演技に呼応して他の役者さんもいい演技で、最後は全員総立ちで拍手。
しかもこの日が大千秋楽とあって、終演後担当プロデューサーが司会して、演出の上村聡史と麻実れい、岡本健一によるアフタートークもあり、大満足。この演出家にも今後注目したいですね。
予想以上の大作で、心地よい余韻を味わいながら、帰途につきました。いい一日でした。
さて次は今回の『炎 アンサンディ』と並ぶ今年の収穫といえそうな『鷗外の怪談』の感想です。頑張らないと。
さらに明日11月13日は久しぶりのタカラヅカ観劇です。どんな出来になっているでしょうか。