前回の「舞台進行・公演大道具」の紹介からずいぶん時間が経ちました。
相変わらずのスロー更新で申し訳ありません。
順番からいえば今回は「電飾・照明」となりますが、「ベルばら」公演中でもあるし、前回の月組ベルばらの「衣装」について、その制作過程や苦心談、また宝塚の見せ場の一つ「早替わり」についても裏方の話が紹介されているので、今回は「衣装」についてご紹介します。
番組はまず衣装の製作風景から。
2012年 12月6日、宝塚大劇場にある衣装作業場では、月組公演ベルばらオスカルとアンドレ編の衣装が作られています。
衣装制作は、男物・女物・帽子担当の3部門に分かれているそうです。
しかし作業場というより本格的な衣料工場みたいです。こんな広いスペースが大劇場内にあるというのは驚きです。
前々回の大道具の作業場もかなり広かったし、大劇場の建物の空間構成は本当に不思議ですね。
多くのスタッフが黙々と衣装を作っています。
手作業で飾りなどを付けていきます。
宝塚の衣装は、衣裳デザイナーの描いたデザイン画を基に作られます。
そのデザイン画をもとに、布地やボタンなどが選ばれて縫製作業に入ります。
その衣装のデザインはどのようにイメージされて作られるのか、担当者に聞いています。
衣裳デザイン担当の任田幾英さん
「デザインそのものは頭の中から生まれてくるものではなくて、台本とか台本に載っている人物とか、観に来られるお客様の目線とか、そういうものを意識して生み出していきます。
衣装の色とか形とかは登場人物の内面が合って出てくるものだから、人物の内面と外面を結び付けるのが我々の仕事だと思うのですよ。」
<今回の公演の衣装について>
「今回の軍服は宝塚オリジナルなものであって、本当に史実に沿って考証したものではありません。
もちろん本物の軍服は知っているのだけれど、それを再現したのでは単なる博物館の展示場になってしまうので、まして宝塚の場合女性のプレーヤーが着用し、観客もほとんどが女性のお客様ということもあって、そういうお客様の目に優しいというか、また原作の池田先生の世界と融和させたような舞台を展開させる必要があると思うのですね。
ですから実際より華美になっているし、シルエットとかもスマートになっています。実際の上級の士官の軍服というのはもっとがっしりとした、針金を中に組み込んだようなものが原型にあるのですけれど、うちの場合はそんな細工はしておりません。
実際に女性が着用することを意識して作り上げた衣装だとご理解していただければと思います。それが正解だと思います。」
次は靴を担当する作業場です。
(箙かおるさんのナレーション)
「ここではサイズの調整や色塗りなどのメンテナンスが行われています。激しいダンスなどを行うので靴は大変重要なのですよ。」
色塗りをしています↓
再び衣装制作場です。
(箙かおるさんのナレーション)
「衣装を担当するスタッフはどのような点にポイントを置いて衣装を制作しているのでしょうか?」
劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん
「最近の一般の流行も取り入れて、肩幅など細身のデザインにするように心がけています。そういう最近の流行を取り入れることも考えています。
昔はちょっと大きめの、私たちが入った20〜25年前だと肩パットも分厚いのを入れて、肩幅を落として、肩幅は45〜50センチぐらいあったんですけど、今は43〜45センチぐらいで大分コンパクトなシルエットになってきています。」
「一般のズボンでしたら靴がペッタンコですよね。ですので裾がまっすぐのラインになっていると思うんです。直角のラインになっていると思うんです。皆さん一般に履かれているズボンは。でも劇団の靴は7センチヒールといって、結構高さがある舞台に立ってスッと見えるような靴を履いているのですけれど、それに合わせてヒールが見えないようにする工夫もしております、はい。」
「あとは、昔からのベルばらの伝統を崩さずに、そして近頃の流行も取り入れて細身のシルエットを意識して、(着る)本人の好みも取り入れて作っております。」
劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん
「ファッションショーとかも参考に、デザイナーの先生の描かれたデザインにそれらを取り入れていかなければと考えて作っています。」
「身長とか体格が昔と違って近年だんだん大きい人が増えてきていますから、女役の人でも大きい人とか小さい人とか差があるので、そういうのも考えて、ドレスの丈とかどうしょうかとか手探りしています。」
「相手になる男役さんのことを考えて身長とかのバランスも考えて、女役さんはヒールの高さを変えたりとかしますので、そういうのも考えて仕上げたりします。デザイン画を見て作るのは難しいですけれど、その中に自分の考えとか、今まで経験してきた作り方だとかを取り入れて立体に仕上げていってますけど、かなり労力は使いますね。気も使いますし。あと先生と相談したりして作り上げていますね。」
(箙かおるさんのナレーション)
「2012年12月15日、星組公演が終わり、舞台そでにある衣装室から星組の衣装が運び出されていきます。運び出された衣装は東京公演に向けて別の部屋に集められて、点検やクリーニングが行われます。」
「そして27日、月組公演の舞台稽古前日、今度は月組の衣装が衣装室に運び込まれます。通常は前の公演の千秋楽に運び出しと運び入れが同時に行われるのですが、今回は年明けの公演ということで休演期間が長いため、運び入れ作業が期間をあけて行われました。」
(箙かおるさんのナレーション)
「舞台のそでにはもう一つ大切な部屋があります。それが早変わり室です。スピーディな転換がウリの宝塚、私たちにとってある意味ここは戦場です。」
劇場部衣装課「ベルサイユのばら −オスカルとアンドレ編−」公演担当チーフ 松本紀子
「早替えは時間との勝負になるので、舞台はノンストップで動いていくので、限られた時間に決められた手順を守って着替えさせないとダメなので、間に合わないと思った場合はシカケというふうに衣装をくっつけたりだとか、一度に着れるようにするだとか、短い時間で着れるようにはしますね。
あと、そうですね、脱がすことも時間がかかるので、脱がすこともいろいろ皆さん工夫はされていますよ。
たとえば男役さんだったらえーっと、靴を履いたままズボンを脱ぐということはできないので、まず靴を脱がして、それからズボンを脱がす。でもそれをすると2回足を上げることになるので、それを時間短縮のために一度にズボンと靴を脱がすとかで時間短縮をしたりだとかする人もいます。
まえもってお稽古段階で早変わりということが分かっていれば、衣装合わせをした段階で『早変わり仕様』にちょっと工夫をしたりだとかは出来ますけど、それをしないで舞台稽古に突入して、いざ音に合わせてノンストップでやってみると、間に合わないということが多々あります。
そのときに、その時々でみんなで方々から知恵を持ち寄って、どうしようと、ここはこうした方がいいんじゃないのって、こうやってここをくっつけた方が早いんじゃないのっていう風にみんながこう知恵を持ち寄って、シカケをしていったりとかはします。
舞台稽古があった後に、通し稽古がノンストップで本番と同じようにやりますけど、その時やっぱり早変りが間に合わないとかがいっぱいあります。それをお客さんの前で見せることは出来ないので、いかに間に合わすかということをみんな必死でやりますので、生徒同様にみんな緊張しています、初日は。」
(箙かおるさんのナレーション)
「こちらは舞台そでにある床山さん。鬘や髭の製作やメンテナンスが主な仕事。こちらも稽古に向け作業が続けられます。」
番組は最後に、スタッフのみなさんにそれぞれの仕事の魅力を聞いています。
劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん
「そうですね、私は客席から見て私の手掛けた衣装がライトを浴びている時だとか、あと歌劇関連の雑誌に写真が載った時はうれしいなと思いますね。
一人の役者さんを一つの衣装でいろんな年齢や性別や職業や、たまには人間だけでなくて動物になったりすることもあるので、いろんなものを衣装で演じることができるというのもタカラヅカの魅力だと思います。」
劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん
「お客さんに見てもらって、スポットライトが当たったら感動しますね。自分で作ったものなので。演じている役者さんたちだけでなく、観ているお客さんとか、裏方の私たちスタッフでもお姫様とか王子様とかになれるというところが魅力ですかね。」
「ベルサイユのばら −オスカルとアンドレ編−」公演担当チーフ 松本紀子
「自分が手に携わった衣装がお直しとかお飾り一つにしたっても自分の手掛けた衣装というものが板の上に乗るっていうものを見たときに、やはり自分が作ったという楽しさ・嬉しさを感じられるというのが魅力ですかね。」
衣裳デザイン担当の任田幾英さん
「タカラヅカを観に来たお客様が少しでもほっとされるというか、明るい気持ちになっていただけるというか、そういう作業がこの仕事の魅力だと思うんです。そういう仕事に就いている自分たちもこれが幸せなんだなと思えます。それがあるので、他の仕事に就かなくてよかったなと思います。」
そして公演初日の様子です。
宝塚の魅力の一つは衣裳の豪華さにあると思いますが、今回の番組でその一端が分かったような気がします。
多くの同様の歌劇団がいつのまにか消えて行った中で、宝塚歌劇団が常に手を抜かず真摯に舞台を提供し続けてきたことが、今年100周年を迎えられた要因だったのではないでしょうか。
さて次は#3「電飾・照明」ですが、何分更新が遅いので、期待せずにお待ちください。(笑)
今回もご覧いただきありがとうございました。
相変わらずのスロー更新で申し訳ありません。
順番からいえば今回は「電飾・照明」となりますが、「ベルばら」公演中でもあるし、前回の月組ベルばらの「衣装」について、その制作過程や苦心談、また宝塚の見せ場の一つ「早替わり」についても裏方の話が紹介されているので、今回は「衣装」についてご紹介します。
番組はまず衣装の製作風景から。
2012年 12月6日、宝塚大劇場にある衣装作業場では、月組公演ベルばらオスカルとアンドレ編の衣装が作られています。
衣装制作は、男物・女物・帽子担当の3部門に分かれているそうです。
しかし作業場というより本格的な衣料工場みたいです。こんな広いスペースが大劇場内にあるというのは驚きです。
前々回の大道具の作業場もかなり広かったし、大劇場の建物の空間構成は本当に不思議ですね。
多くのスタッフが黙々と衣装を作っています。
手作業で飾りなどを付けていきます。
宝塚の衣装は、衣裳デザイナーの描いたデザイン画を基に作られます。
そのデザイン画をもとに、布地やボタンなどが選ばれて縫製作業に入ります。
その衣装のデザインはどのようにイメージされて作られるのか、担当者に聞いています。
衣裳デザイン担当の任田幾英さん
「デザインそのものは頭の中から生まれてくるものではなくて、台本とか台本に載っている人物とか、観に来られるお客様の目線とか、そういうものを意識して生み出していきます。
衣装の色とか形とかは登場人物の内面が合って出てくるものだから、人物の内面と外面を結び付けるのが我々の仕事だと思うのですよ。」
<今回の公演の衣装について>
「今回の軍服は宝塚オリジナルなものであって、本当に史実に沿って考証したものではありません。
もちろん本物の軍服は知っているのだけれど、それを再現したのでは単なる博物館の展示場になってしまうので、まして宝塚の場合女性のプレーヤーが着用し、観客もほとんどが女性のお客様ということもあって、そういうお客様の目に優しいというか、また原作の池田先生の世界と融和させたような舞台を展開させる必要があると思うのですね。
ですから実際より華美になっているし、シルエットとかもスマートになっています。実際の上級の士官の軍服というのはもっとがっしりとした、針金を中に組み込んだようなものが原型にあるのですけれど、うちの場合はそんな細工はしておりません。
実際に女性が着用することを意識して作り上げた衣装だとご理解していただければと思います。それが正解だと思います。」
次は靴を担当する作業場です。
(箙かおるさんのナレーション)
「ここではサイズの調整や色塗りなどのメンテナンスが行われています。激しいダンスなどを行うので靴は大変重要なのですよ。」
色塗りをしています↓
再び衣装制作場です。
(箙かおるさんのナレーション)
「衣装を担当するスタッフはどのような点にポイントを置いて衣装を制作しているのでしょうか?」
劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん
「最近の一般の流行も取り入れて、肩幅など細身のデザインにするように心がけています。そういう最近の流行を取り入れることも考えています。
昔はちょっと大きめの、私たちが入った20〜25年前だと肩パットも分厚いのを入れて、肩幅を落として、肩幅は45〜50センチぐらいあったんですけど、今は43〜45センチぐらいで大分コンパクトなシルエットになってきています。」
「一般のズボンでしたら靴がペッタンコですよね。ですので裾がまっすぐのラインになっていると思うんです。直角のラインになっていると思うんです。皆さん一般に履かれているズボンは。でも劇団の靴は7センチヒールといって、結構高さがある舞台に立ってスッと見えるような靴を履いているのですけれど、それに合わせてヒールが見えないようにする工夫もしております、はい。」
「あとは、昔からのベルばらの伝統を崩さずに、そして近頃の流行も取り入れて細身のシルエットを意識して、(着る)本人の好みも取り入れて作っております。」
劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん
「ファッションショーとかも参考に、デザイナーの先生の描かれたデザインにそれらを取り入れていかなければと考えて作っています。」
「身長とか体格が昔と違って近年だんだん大きい人が増えてきていますから、女役の人でも大きい人とか小さい人とか差があるので、そういうのも考えて、ドレスの丈とかどうしょうかとか手探りしています。」
「相手になる男役さんのことを考えて身長とかのバランスも考えて、女役さんはヒールの高さを変えたりとかしますので、そういうのも考えて仕上げたりします。デザイン画を見て作るのは難しいですけれど、その中に自分の考えとか、今まで経験してきた作り方だとかを取り入れて立体に仕上げていってますけど、かなり労力は使いますね。気も使いますし。あと先生と相談したりして作り上げていますね。」
(箙かおるさんのナレーション)
「2012年12月15日、星組公演が終わり、舞台そでにある衣装室から星組の衣装が運び出されていきます。運び出された衣装は東京公演に向けて別の部屋に集められて、点検やクリーニングが行われます。」
「そして27日、月組公演の舞台稽古前日、今度は月組の衣装が衣装室に運び込まれます。通常は前の公演の千秋楽に運び出しと運び入れが同時に行われるのですが、今回は年明けの公演ということで休演期間が長いため、運び入れ作業が期間をあけて行われました。」
(箙かおるさんのナレーション)
「舞台のそでにはもう一つ大切な部屋があります。それが早変わり室です。スピーディな転換がウリの宝塚、私たちにとってある意味ここは戦場です。」
劇場部衣装課「ベルサイユのばら −オスカルとアンドレ編−」公演担当チーフ 松本紀子
「早替えは時間との勝負になるので、舞台はノンストップで動いていくので、限られた時間に決められた手順を守って着替えさせないとダメなので、間に合わないと思った場合はシカケというふうに衣装をくっつけたりだとか、一度に着れるようにするだとか、短い時間で着れるようにはしますね。
あと、そうですね、脱がすことも時間がかかるので、脱がすこともいろいろ皆さん工夫はされていますよ。
たとえば男役さんだったらえーっと、靴を履いたままズボンを脱ぐということはできないので、まず靴を脱がして、それからズボンを脱がす。でもそれをすると2回足を上げることになるので、それを時間短縮のために一度にズボンと靴を脱がすとかで時間短縮をしたりだとかする人もいます。
まえもってお稽古段階で早変わりということが分かっていれば、衣装合わせをした段階で『早変わり仕様』にちょっと工夫をしたりだとかは出来ますけど、それをしないで舞台稽古に突入して、いざ音に合わせてノンストップでやってみると、間に合わないということが多々あります。
そのときに、その時々でみんなで方々から知恵を持ち寄って、どうしようと、ここはこうした方がいいんじゃないのって、こうやってここをくっつけた方が早いんじゃないのっていう風にみんながこう知恵を持ち寄って、シカケをしていったりとかはします。
舞台稽古があった後に、通し稽古がノンストップで本番と同じようにやりますけど、その時やっぱり早変りが間に合わないとかがいっぱいあります。それをお客さんの前で見せることは出来ないので、いかに間に合わすかということをみんな必死でやりますので、生徒同様にみんな緊張しています、初日は。」
(箙かおるさんのナレーション)
「こちらは舞台そでにある床山さん。鬘や髭の製作やメンテナンスが主な仕事。こちらも稽古に向け作業が続けられます。」
番組は最後に、スタッフのみなさんにそれぞれの仕事の魅力を聞いています。
劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん
「そうですね、私は客席から見て私の手掛けた衣装がライトを浴びている時だとか、あと歌劇関連の雑誌に写真が載った時はうれしいなと思いますね。
一人の役者さんを一つの衣装でいろんな年齢や性別や職業や、たまには人間だけでなくて動物になったりすることもあるので、いろんなものを衣装で演じることができるというのもタカラヅカの魅力だと思います。」
劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん
「お客さんに見てもらって、スポットライトが当たったら感動しますね。自分で作ったものなので。演じている役者さんたちだけでなく、観ているお客さんとか、裏方の私たちスタッフでもお姫様とか王子様とかになれるというところが魅力ですかね。」
「ベルサイユのばら −オスカルとアンドレ編−」公演担当チーフ 松本紀子
「自分が手に携わった衣装がお直しとかお飾り一つにしたっても自分の手掛けた衣装というものが板の上に乗るっていうものを見たときに、やはり自分が作ったという楽しさ・嬉しさを感じられるというのが魅力ですかね。」
衣裳デザイン担当の任田幾英さん
「タカラヅカを観に来たお客様が少しでもほっとされるというか、明るい気持ちになっていただけるというか、そういう作業がこの仕事の魅力だと思うんです。そういう仕事に就いている自分たちもこれが幸せなんだなと思えます。それがあるので、他の仕事に就かなくてよかったなと思います。」
そして公演初日の様子です。
宝塚の魅力の一つは衣裳の豪華さにあると思いますが、今回の番組でその一端が分かったような気がします。
多くの同様の歌劇団がいつのまにか消えて行った中で、宝塚歌劇団が常に手を抜かず真摯に舞台を提供し続けてきたことが、今年100周年を迎えられた要因だったのではないでしょうか。
さて次は#3「電飾・照明」ですが、何分更新が遅いので、期待せずにお待ちください。(笑)
今回もご覧いただきありがとうございました。