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宝塚花組公演『ラスト・タイクーン ―ハリウッドの帝王、不滅の愛― 』 を観て

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今回の体調不良、風邪or花粉症なのか不明ですが、咳が止まらず目はショボショボ、鼻はグズる悲惨な状態で、食欲もなくなり久しぶりに寝込む始末。なんとか一昨日ぐらいから回復してきたので感想をまとめ始めましたが、肝心の公演が、どちらも少々期待はずれ。さっぱり感想を書こうというテンションが上がらない状態になっていました。
なのでいつにもまして薄い感想ですが、よろしければどうぞご笑覧ください。m(__)m

今回のタカラヅカ観劇、新人脚本/演出家の大劇場デビューとあって、かなり期待していました。
当日も楽しみにしながら劇場に向かったのですが、トップの退団公演なのに劇場内の土産物売り場とかホールとか見てもそれほどのにぎわいもなく、あまり活気が感じられなかったのは意外でした。これが人気の舞台だったらもっと勢いが感じられるのですが、平日ということを考えても少々さびしい感じ。

開場時間となって席に着きました。見渡せば1階席はほぼ満席だったので一安心。

で芝居の感想ですが、私としてはかなり不満な出来。
でもヨメさんの感想は「まあまあやったね」。えっ、よかった?と私が聞き返すと「とりあえず話は破綻してないから」。
まあ「破綻していない」というのは彼女の評価ランクでは「ギリギリ合格点」という意味ですが。

でも私としてはとても合格点は無理でした。
出かける前に見た公式ホームページの[解説]では、「大物プロデューサーの栄光と挫折」とか、「亡き先妻と瓜二つの未亡人とのロマンスを描いた」とか書いてますが、そのどれも描かれていなかったですね。大体始まってすぐにいきなり結婚というのも唐突すぎ。

でもそれよりなにより結末が不満。強引でもワンマンでもいい映画ができたのならそれで納得ですが、完成する前に死んでしまうとは。何のために社長と張り合ったり映画スタッフとすったもんだしたりのか意味ないですね。

原作がどこまで書かれていたのか知りませんが、どうせ未完の原作なんだし、結末は自由に作ったらよかったのにと残念。
例えばモンロー・スターと映画スタッフの組合連中が苦労して機材と資金を集めて、会社の妨害をはねのけて自主上映したら一挙に人気沸騰、映画会社を見返して、その勢いで次の映画製作に奔走するさなかに事故で死ぬとかやったらまだ意味があるけどね。
どんな映画を作ったのか作ろうとしてきたのか、肝心の栄光と挫折が描かれていないのが致命的。
ただの手が早く傲慢で、横暴で身勝手な男でしかなかったのが残念。「不滅の愛」っていわれても、そもそも愛らしい愛がどこにもなかったと思います。

蘭寿とむは頑張っていたけど、脚本の人物描写が弱いから持ち味が出せずかわいそうでした。

スーツ姿はやはりよく似合っていたけど、どんな役にも誠実さが付きまとう彼女のキャラクターなのに、今回は脚本がその味を引き出せないまま、類型的な「やり手」で終わっていたのが気の毒でした。





「真面目キャラ」でもオーシャンズ11ではまた星組とは違った別の味を出していたから、やはり脚本の不出来がすべてでしょうね。

明日海りおのヒゲは意外に違和感なかったですね。(笑)ただきれいな容貌なので老けるのは難しい。

若々しさがどうしても出てしまって、とても大学生の娘がいるとは思えない。(笑)スーツはちゃんと着こなしていましたが、年齢相応の落ち着きとか貫禄というのはなかなか出せないものですね。
そして彼女もどんな人物か、モンロー・スターと目指す映画観の違いなどで対立するとかが描かれていたらまた話に説得力があったと思いますが。ただ会社を守りたいだけに見えました。
歌はよかったです。モンロー・スターが歌いだすと反射的に身構えてしまったりしましたが、それが明日海りおと望海風斗の歌が弛緩させてくれました。

その望海風斗、あまりいい役ではないけど(笑)、骨太の演技で存在感がありました。

リーダーシップがあります。


ただ、今回の配役は、明日海りおと望海風斗の役を入れ替えたほうが良かったと思いますね。
望海風斗はオーシャンズ11でも濃いあくの強い演技ができるから、社長にぴったりだったと思う。逆に明日海りおはモンロー・スターといろいろ衝突するが、最後には意気投合して映画スタッフとして一緒に映画を作って、スターの死後もその映画作りの情熱を受け継いでいくとかにした方がつながったのではないかと妄想したり。

鳳真由は出番が少なくてもやはりうまかった。華形ひかるの小説家で脚本担当もまだ書き込まれていていい役のほうで、他の生徒たちは役名はあってもあまりしどころがなくかわいそうでした。


キャサリン・ムーア/ミナ・デービスの二役・蘭乃はなですが、大体話がラブロマンスというより「カリスマプロデューサー」に色を添えるだけの存在なのでしどころがない役。


でも何度も言いますが、そのカリスマ性が話の中で浮き彫りにならないのが致命的でした。

あと場面転換とかがんばっていましたが、こちらが話に入り込めないままなので、いくら盆を回したり、セリを多用しても効果は感じられなかったですね。このあたりは『アンドレア‥』の場面転換のうまさとは大違い。セットは大道具さんががんばって良くできていたとは思いますが。

ということで、脚本/演出家が大劇場デビューするのはやはり格段のパワーがいるということがよくわかりました。それと歌でつなぐのは限界があるので、しっかりとしたセリフを丁寧に積み重ねて話を深めていってほしかったと思いました。

つぎにショーのほう。
「夢眩」と無限のマークを重ねたカーテンを見てちょっと期待しましたが、騒がしい場面が多くてがっかり。
これも公式ホームページでは「洒落たセンスを織り込んだ」とか、「新たな形式を提示する意欲的なステージ」とか書かれていますが、全体にどこかで見たような場面とか振付で、なにが「夢眩」なんやろと二人で疑問。
私はショーで使われていたVACATIONに拒否反応で、ああいう古いポピュラーソングを使ったら逆に新鮮で面白いだろうみたいな古臭い発想が陳腐すぎてガックリ。

星組の「ジャポニスム序破急」でサクラサクラをボレロで踊らせる発想の底の浅さと似ていて情けなかったです。

ここでも蘭トムは頑張っていました。






蘭乃はな↓


明日海りおです

中盤のスパニッシュになってやっとなんとか観られる感じになってきましたが、やはり全体に古臭いです。



でもスパニッシュももっとしっとり見せられると思いますね。雪組公演の『Shining Rhythm!』のスパニッシュがわすれられないです。

最後はお約束の黒燕尾。
この人はこれでキマリですね。




観終わればトップ退団公演というにはいささかさびしい出来で、『アンドレア‥』がサヨナラ公演だったらとか思ってしまいました。
なかなかうまくいかないものです。

さて、演出家にはこれにめげず、次を期待したいですね。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

余談ですが、お隣の男性はトップのファンなのか爆竹のような拍手を連発されていました。なので今回の公演も観る人が観ればよかったのかもと思ったりしました。

(2014.3.8)

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