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朗読劇 「藤沢周平『蝉しぐれ』より−永遠の初恋、ふく−」を観て

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8月の「頭痛肩こり樋口一葉」から約3週間ぶりの兵庫県立芸術文化センターで、岸恵子の朗読劇を観てきました。(聞いてきましたという方が正確かも)
当日買ったパンフレットです↓


この公演、関西では一回きりの公演です。
開演が午後2時なので、昼食は自宅で済ませてから出発。ほぼ1時間で到着、劇場前のホールへ。開演まで時間があるのに、ホールは岸恵子のファンなのか、敬老の日のイベント会場(殴)みたいになっていました。お年寄りは集まるのが早いです。もちろん私たちもその一員(笑)。
前回の「頭痛肩こり樋口一葉」より確実に年齢層は高く、女性の比率も高かったです。

さて朗読劇ですが、演者は岸恵子。そして題材は「蝉しぐれ」。ただ私はあまり気が進まなかったのですが、ヨメさんは演者と題材が気に入ってチケットを買うことにしたようです。
なぜ私があまり気が進まなかったというと、「蝉しぐれ」のような長い話をどう台本にするのかということと、岸恵子の年齢。なにしろ1932年にこの世にデビューですから、滑舌の黒柳徹子化(殴)は避けられないだろうし。

ホームページから↓


でも幕が上がって、すっきりと立った岸恵子の姿を見て、年齢の不安はかき消されました(と思った)。
和服を連想させる衣装で、60歳代でも通るほどの、衰えを見せない(ように見えた?)容姿(ウィッグ提供:アートネーチャーだそうです)と、(マイクがいいので?)思ったより聞きやすい台詞。
舞台のセットは彼女のパリの自宅をイメージしたというカーテンのついた窓枠のセットと、大きな帆立貝のような背もたれのついた籐椅子など。シンプルですが効果的でした。

岸恵子は最近小説を書いたとのことで、始まる前の挨拶でも自著の小説(老いらくの恋な感じ)と今回の朗読劇と結びつけた内容のことを話していました。彼女、結構この小説には自信があるのか、当日買ったパンフレットでも触れていますね。

パンフレットより

 
さて脚本です。
演題通り、ふくと文四郎が絡む場面を中心に、要領よくまとめられていました。ヤマカガシの話、文四郎の父の非業の死と荷車の話、藩内の陰謀に巻き込まれてふくとその子を助け出す話、そして最後の密会へと、まあ常道とはいえよくできた台本になっていました。
ちょっと話はそれますが、私的には、「蝉しぐれ」の劇化ベストはNHKのドラマです。
でも、宝塚の「若き日の‥」もよくできていますね。なんといっても、上記ドラマ化のはるか前に、「蝉しぐれ」に着目してミュージカル化した先見性とまとまりの良さには脱帽です。ワーストは映画。NHKのドラマを手掛けた人物が監督を務めたとは思えない出来の悪さにがっかりしました。

それはさておき、岸恵子の朗読劇ですが、結論としてはガッカリでした。
最初のうちはそうでもなかったのですが、お疲れなのか後半はセリフをカミまくり。台本を前にして、それを読みながらなんで言い間違う?と思うほど頻発。前半はいい感じだっただけに、後半のダメージは大きかったです。

これまでの観劇でも一度や二度はあってまあ許容範囲、ご愛嬌というところですが、今回はとにかく多かった。
それも、単純な単語の言い損ない→すぐ訂正というレベルならまだしも、例えば「ふく」というところを別の名前と間違えたり(そこは間違わないだろう、普通)、何度も訂正しようとして間違ってしまうなど、ちょっと見たことがないミスが続きました。

はじめはこちらもセリフが滑って興が削がれても、なんとか集中しようとしましたが、持ち直しつつあるところで再発するとだんだんシラケてきますね。

一番ダメだったのは、最後の逢瀬の場面。ふくと文四郎のそれぞれの長い想いを確かめ合うクライマックスですね。
そこでかんでしまったらダメでしょう。それも主語+述語で間違って言い直すという(私的には)致命的なレベル。なんとかこちらもいろいろあったけど、まあいい朗読劇だったねと言い聞かせて帰途に就きたいところでダメ出しされてしまったので、最後の拍手もお付き合い気分。

舞台俳優として本格的にトレーニングされていない彼女の限界(年齢的?)を見てしまった観劇でした。こういう舞台としては毬谷友子の「弥々」とか、麻実れいの「停電の夜に」とかを観ましたが、噛んだりすべったりとかの記憶は全くありません。
大体セリフの量としてはもっと多い芝居がたくさんあります。今回の台本は覚えられない量ではないと思いますね。台本を観ながら何度も間違うのが不思議でした(裸眼のように見えましたが、ひょっとして遠近両用コンタクト?)。

よかった点を挙げると(今頃言うか?)、やはり台本の中でセリフになるとちゃんと演技していましたね。情感を込めたセリフは大したものでした。舞台の経験は少ないですが、演技は確かでした。
それだけに余計、残念感が強かったです。

全くネガティブな感想になってしまいましたが、これを書いている時点でまだこの公演は各地で行われますから、なんとか汚名返上してほしいと思いました。みなさん期待して観劇されることと思いますから、それにこたえてほしいですね。

付け足しですが、藤沢周平が全作品を読むほど好んでいた作家がカロッサとシュトルムであったことをパンフレットで知ったのは、うれしかったですね。今回の観劇のせめてもの収穫でした。



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