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観劇感想・蔵出しシリーズVol.2は「パーマ屋スミレ」と宝塚「NOBUNAGA/Forever LOVE!!」です

思いつくまま観劇感想・蔵出しシリーズVol.2です。遅くなっています。m(__)m

今回は、
①6月18日に観た、新国立劇場2015/2016シーズン 鄭義信三部作のVol.3「パーマ屋スミレ」と、
②6月23日の宝塚月組公演『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』&『Forever LOVE!!』のうっす~い感想です。
でもネタバレありで、宝塚は絶賛モードとはほど遠い感想(殴)なので、御贔屓な方はスルーしてください。

ではまず『パーマ屋スミレ』から。こちらは絶賛しています。(殴)
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劇場は毎度おなじみ西宮芸文センター・阪急中ホール。通し券なので今回もおなじB列のセンターブロック。
まず結論ですが、やはり見ごたえたっぷり。本当によかった。印象としては、こまつ座の舞台と共通した、これまで知らなかった世界が垣間見られるといった、脚本と演出の面白さが心に残りました。

今回の舞台セットは、三池闘争以後、さらに炭鉱経営の合理化政策が激しくなった炭鉱住宅に付属する理髪所。
例によって、店内外は超リアルな作りで、店内には前田美波里のレトロなポスターが貼られていたり、店の前には前二作の水道栓の代わりに、懐かしい手押しポンプが据えられていて、ハンドルを上下すればちゃんと水も出ます。(笑) 
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店の前に置かれた水の張られた金盥には、スイカと瓶ビールが冷やされています。店の前は祭りの提灯が連なっていて、祭りがあることを示しています。そしてなぜか店内の座敷には、老人が布団をかぶって寝ています。(初めはいきなりご臨終かと思ったり(笑))

話は、1963年に発生した、死者458人、一酸化炭素中毒患者839人と戦後最悪の犠牲者を出した三井三池炭鉱の炭塵爆発事故を背景に、理髪所で働くヒロイン高 須美(南果歩)と、その夫で炭鉱夫の張 成勲(千葉哲也)と、須美の父・高 浩吉(青山達三)や、須美の姉・高 初美(根岸季衣)とその息子・大吉(少年時代は森田甘路・長じては酒向芳)、三女の高 春美(星野園美)という一家を巡る話です。
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今回は、三部作中一番重い話でした。
でもそこは鄭義信の脚本。やはり今回も至る所に笑いと悲しみ、怒りと涙の場面が仕込まれていて、役者は大変ですが、観客にとったら笑いが気持ちを快く切り替えさせるので、メリハリのきいた展開になっていたのは前2作と同じ。

ということで主な出演者ごとの感想です。例によって敬称略です。


まず主演の南果歩。
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理髪所を切り盛りしているヒロイン高須美です。
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実は、私は南果歩の舞台を観たのは今回が初めてでした。でも大した演技力で、新鮮でした。完全に役になり切っていて、全身で感情表現していて、さすがの演技。
ほぼ出ずっぱりで舞台を駆け回るハードな役ですが、観ていて華奢な体のどこにこんなエネルギーがあるのかと心配になるほど熱の入った演技でした。
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劇中で「いつかは自分のパーマ屋を持ちたい。名前は私の名前からスミレにするの」と夢を語る姿がいじらしい。でも現実は夢とは程遠く、炭塵事故でCO中毒になって仕事に就けず、いつも家族に八つ当たりする夫の張 成勲(千葉哲也)との諍いが絶えない毎日。
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細い腕で一家を支えて頑張る姿がリアルです。

で、ここからいきなり余談ですが、観劇した日は大千穐楽でした。

12時半の開場時間となってホールに入ったら、まだ客席扉はしまっていて、15分ぐらいホールで待たされました。そのときヨメさんの車椅子の前を長身の男性が横切り、一目で彼の姿を見たヨメさんが、「健さん!」と言いながら手を振りました。相手の男性も軽く会釈してくれましたが、この時点では私は誰か気付かず。

係員の指示した場所に車椅子を停めて開場を待っていると、件の男性が戻ってきて、私たちのすぐ前に立ち止まりました。ほんの2mぐらいの距離なので、ようやく私も誰かわかりました。
渡辺謙さんでした。(ここだけ敬称プラスです(笑))

大千穐楽ということで来られたのでしょうが、客席ドアが開くまでの間、彼ほどのVIPが、私たちと同様に立ったまま、客席ドアの開くのを待つ姿が印象的でした。人柄が垣間見えた気がして、気持ちが和みました。でもあまりに近くに立っているので、こちらが落ち着かずドギマギ。(笑)

それはさておき、夫の張成勲役の千葉哲也もよかったです。
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本当に確かに実在してそうな人物で、今回が初演とは到底思えないカンパニーに溶け込んだ演技。
特に後半、事故でそれまでのように働けなくなって、雑用に従事して不本意ながら「髪結いの亭主」になり、会社や第二組合へのへの怒りも加わって自暴自棄となる姿が身につまされました。
彼は初演の「焼肉ドラゴン」でも哲男役を演じて好評を得たそうですが、さもありなんですね。さらに「鉈切り丸」では弁慶役で出ていましたが、今回の方がはるかに存在感がありました。

よかったといえば、須美の姉・高初美役の根岸季衣もピッタリの役でした。
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世渡り上手で計算高く、けっこう男好きで(笑)、でも家族思いの姉。「焼肉~」や「たとえば野に咲く~」には出てこないキャラクターが新鮮でした。舞台では初めてお目にかかりましたが、4年前にも同役で出ているということで、余裕の演技も納得でした。
あと、須美の父・高浩吉の青山達三や、初美の息子・大吉(少年時代は森田甘路・長じては酒向芳)、三女の高春美役の星野園美も4年前の公演から再演とのことで、安定した好演ふりでした。

↓大大吉と須美
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星野園美の三女春美は、前半の森下能幸演じる夫・大杉昌平とのラブラブな暮らしぶりが事故後一変するところを好演していました。
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そういえば今回も「焼肉~」と同じく三姉妹。
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姉妹ではないですが「たとえば野に咲く~」でも3人の女性が中心と、鄭義信作品はこういう設定がお好きなようです。

初美の内縁の夫・大村茂之役はもうおなじみの久保酎吉。
いろいろこの人の舞台を観てきましたが、今回の役が一番よかった。再演ですが、楽しんで演じているのがよく伝わってきて、こちらも楽しかったです。劇中で客席降りで、組合のビラを撒くシーンがありましたが、もらえなくて残念。(笑)

森田甘路演じる大人の大吉は全く狂言回しで、最初の導入部分で客席に向かって時代背景などを解説するのと、最後に出てくる以外は当然ながら筋に絡みません。
↓「焼肉~」と同じく大吉と大大吉も屋根に上っています(笑)
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酒向芳の子供時代の大吉(初美の息子です)はちょっとオネエが入っていて、将来は服飾デザイナーになりたいとか言っています。鄭義信流のコミカルな演出をうまく演じて笑わせてくれました。
余談ですが最近、WOWOWの放送を録画してあった「イニシエーション・ラブ」を見ていたらこの人の名があってびっくり。同じ人とは思えない演技でした。

結局、炭塵爆発でCO中毒になった張成勲たち炭鉱夫は、やっとCO法が成立してもほとんど補償がもらえず、やがて炭鉱は閉山となり、炭住も閉鎖。理容所も閉めることになって、一家はそれぞれの目指すところに旅立ちます。足に負傷した張成勲の弟・張英勲(村上淳)は社会主義建設に貢献するといって北朝鮮に向かいます。

旅立ちは例によってリヤカーで、と言いたいところですが、今回は軽三輪が使われていました。

この軽三輪、ポスターではダイハツ・ミゼットMP5になっていますが、舞台に登場したのはもっとマイナーな、三菱レオ・ベースの電動三輪車でした。この三輪車、実によくできていて、狭い舞台上をクルクル走り回って大活躍。
子供の時、たまに見かけていた私は面白かった&懐かしかった。(笑)
そのレオの目的地は、なんと大阪万博前の伊丹空港滑走路拡張工事現場。そうです、この話は、「焼肉~」の前段だったんですね。よく出来ています。

最後は「焼肉~」と違って桜ではなく紙吹雪の降りしきるところで終わりました。
今回もドラマチックな展開であっという間の舞台でした。

そして感動のスタンディングとなりましたが、カーテンコールでは主役の南果歩も涙・涙で応えてくれました。それどころか、さっとスマホを取り出して、拍手を続ける私たちを撮影したり、客席も入れて自撮りするなど大喜び。その後、何度も全員そろって拍手に手を振って応えてくれて、こちらも満足でした。

本当に良かったです。未見の方は、再演の折にはぜひご覧ください。おすすめです。

次は、宝塚月組公演『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』&『Forever LOVE!!』の感想です。
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といっても、信長の方はほとんど書くことがない。(殴)
観る前は、良く知った話だし、どんな風に宝塚化しているのかお手並み拝見、というスタンスで観始めました。「前田慶次」の再来になるかという期待もあったし。
最初のうちは、ロックミュージカルとのことで、フレンチミュージカル張りのド迫力な音楽で、ディテールなどお構いなしに話をグイグイ進めていくのかと思っていたら、そうでもなくてどっちつかず。
それどころか、どんどんトンデモな話になっていって、秀吉たちが公然と反旗を翻して信長に刃を突き付けたり、そもそも信長がどんな人物かの描写も少ないし、挙句は義経伝説みたいな本能寺のオチで、よく言えば破天荒、悪く言えばハチャメチャ、突っ込みどころ満載の脚本でした。^^;
まあ、フロイスの日本史のように、ロルテスを使って外からの視点で信長伝を書いてもよかっただろうし、いっそのこと史実にとらわれず、登場人物の名前だけ同じの、全く別のストーリーに仕立てても面白かったと思いますが、そこまでの割り切りがなかった。

話の構成も、いくら「天下統一を目指した英傑」といわれても、肝心の信長の人物像とか、人間としての魅力、歴史的な役割とかは描かれず、足利義昭とのドロドロした関係とか、比叡山焼き討ちとか、重臣たちの反抗とかが無駄に長いのも疑問でした。
かなり無理筋な結末なら、いっそもっと爽快な人物設定にすべきとも思いましたね。あのままだと、とても異国でうまく行くとは思えないので。(殴)

ということでほとんど話に入れないまま観ていましたが(ここまで悪口言う?^^;)、やはり龍真咲は最後までユニークでした。
私は以前から彼女の台詞まわしや息継ぎが苦手でしたが、今回は役に感情移入できないのでよけい気になりました。信長役は彼女のたっての希望だったそうですが、脚本のせいで信長像がよく見えないのが残念でした。
『舞音』とか『1789~』が非常に良かったので、よけいに惜しかったですね。
それと、大道具さんのガンバリがわかる装甲車のような象も、なんとも唐突で勿体なったです。でもよく作ったものですな。

愛希れいかの帰蝶はさすがに存在感があって印象的でしたが、信長との絡みの場面が少ないどころか、最後は斬られてしまうのだから、なんともはや。でも抜群の身体能力で薙刀を振りかざす殺陣は見ごたえあり。ただ如何せん、しどころのない役で気の毒でした。
ロルテス役の珠城りょうは存在感があって異人の衣装もよく似合っていて、私はルッキーニみたいな狂言回しで話をリードするのかと期待しながら観ていましたが、これまた中途半端な存在でした。
あとは家臣団の、凪七瑠海の光秀とか、美弥るりかのどう見てもサルには見えない美形の秀吉とか、
輝月ゆうまの前田利家など、それぞれよく頑張っていたものの、大勢に影響せず徒労。
そんななかで目立っていたのは、足利義昭を演じた沙央くらま。
まあこんな海千山千というか、権謀術数にたけた落魄した将軍をよく演じていましたねぇ。感心しました。でもショーでも出番が多く目立っていて、最後はエトワールも務めるなど、彼女も退団?と思うほどの頻繁な登用がナゾでした。

ということで、芝居のほうは退団公演なのにあまり惜別感がなく、ガッカリでした。
余談ですが、そのせいか今回はチケットの販売が思わしくなかったようで、歌劇団からチケットの販促メールが何度も繰り返し来て、それも退団公演では前代未聞の割引販売のお知らせで、ビックリしました。でも東宝では売り切れとのことでよかったです。

でも芝居の方の不出来と違って、ショー「Forever LOVE‼」は良かったです。(まあショーも不出来だったら暴動必至。(殴) )
幕が開くと、赤とピンクの衣装のラブジェントルマンがずらりと並んでいて客席もどよめき、ラブレディ―ズも加わったダンスのあと、豪華なガウンの龍真咲が登場してサヨナラショーの雰囲気たっぷりになりました。全体の構成も衣装の色もいい感じで、とてもこれが『HOT EYES!!』と同じ作者とは思えない。
ラテンの場面では龍と愛希のデュエットのあと、凪七・美弥・沙央の連続女装ダンスとなって面白かったです。ロケットの衣装も最近では一番きれいでした。ショー全体に選曲が好みのものばかりで、メリハリの効いた構成が気が利いていて、久しぶりに楽しめました。

ということで、このズボラな蔵出しシリーズはお終いです。次回からの観劇感想はあまりタイムラグのないように頑張りますので(やや自信なさげ(殴))、またよければお越しいただければ幸いです。


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