5月から観劇が続いていました。
まず5月5日に森ノ宮ピロティホールで「アルカディア」を観て、続く7日は梅芸で「グランドホテル」。そして26日には宝塚大劇場で花組の「ミーマイ」。月が変わって6月4日は再びピロティホールで「8月の家族たち」。老体にはけっこう応えました。(笑)
で、感想ですが、一つずつ書くのは手に余るので、ここはまとめ書きでご勘弁を。(殴)
ということで、超簡単な感想をまず「アルカディア」から。
「英国演劇界を代表する劇作家トム・ストッパードの最高傑作」だそうで、その演出は栗山民也、そして主なキャストが堤真一に寺島しのぶ、井上芳雄、浦井健治、神野美鈴と豪華メンバー。これで面白くないわけはなかろうと、大いに期待しつつ出かけました。
でも。
よく分からない舞台でした。^_^;
もう私などの貧しい想像力では何が言いたいのかサッパリ理解不能。(殴)
話の時間軸は2つあって、時代設定の異なる二つの物語が交互に展開されていました。
共通するキーはバイロン。イギリス・浪漫主義時代の代表的な詩人で、超勝手気ままに生きた詩人です。私も若いときはけっこう好きでした。
でもそのバイロンを巡る謎というのがわからない。
「わからないから謎だろう」という突っ込みは置いといて(殴)、膨大な台詞を聞いていても、なにが問題なのかよくわからない。そんな舞台を観続けるのはかなりしんどかったです。
それで、何かヒントが得られるかもと、休憩中に読んだプログラムで寺島しのぶが、
「何回読んでも分からない本って久しぶりでしたね(笑)」と書いていたのでホッと一安心。(殴)
ただ、話の芯は分からなくても(笑)、寺島しのぶの演技は自然で、人物の実在感は際立っていました。
もう一人、神野美鈴も舞台に現れただけでわかるたたずまいのリアルさ。この二人がよかったです。
でも、期待の堤真一はちょっとがっかりでした。
こもったような台詞で聞き取りにくく、せっかくの力演も空振り感があって、ヨメさんも「こんなはずでは」としきりに残念がっていました。
もうひとり期待していた井上芳雄も、今回はいつもと違って彼らしくない精彩を欠く演技。
浦井健治も「トロイラス~」では好演していたのに、今回はあまり印象に残らず役不足な感じでした。
結局寺島しのぶの言う通り、脚本の問題ですね。役者も観客もどうにも乗り切れない脚本で、俳優たちの奮闘が報われず気の毒でした。
次は「グランドホテル」。
こちらは定評のある脚本+豪華キャストなので、観応えたっぷり。
ナチスが台頭する前夜の1928年のドイツ・ベルリン。
その不安な時代背景のもとで、超一流ホテル「グランドホテル」で複雑に交錯する人々の姿を描いた、濃厚な舞台でした。音楽も、斬新で重厚な舞台装置も素晴らしく、やはり名作いわれるだけありました。
私たちが観たのはグリーンチームで、エリザベータは安寿ミラです。
久しぶりに見た彼女ですが、よかったです。人気下降中の大女優の悲哀(役の話です、念のため(殴))がよく表現されていました。
ラファエラは春野寿美礼の代打で樹里咲穂でしたが、当然とはいえこれまたいい演技。久し振りに彼女の舞台を観ることができてよかったです。土居裕子版も観たかったですが。
元会計士オットー・クリンゲラインは「CHESS THE MUSICAL」以来の中川晃教でしたが、余命いくばくもないユダヤ人の元会計士を好演していました。「CHESS~」よりもこちらの方が私たちにとっては印象的な演技でよかったです。
成河バージョンだと少しキャラクタなども変わっているそうでどうなるか、これも観てみたかったです。
湖月わたるはエリザの死みたいな役のダンサーでした。寡黙なダンサーですが、複雑で凝った振付のダンスを完ぺきにこなしていました。
脚本は話の組み立て方が本当によくできていますね。
それぞれの人物像と人生が巧みに絡み合いながら描かれていて、場面転換も小気味よく、とくに話の締めくくり方が絶妙。
私はこれまで観たことがなく、初めての話でしたが、こういう展開だと最後はこうなるだろうなと、タカをくくって予測していたら、全く違う結末でビックリ&感心しました。
その結末ですが、2チームで全く異なるものになっているそうで、私たちが観たグリーンチーム版では、最後にホテルの従業員が客の身ぐるみ剥いで荷物を奪い、ヒットラーの演説が流れてそれに心酔する従業員たち‥というものでした。
この結末、現代世界を覆う狭隘なナショナリズムの台頭とか、日本で漂い始めた憲法改悪などの暗い影にも警鐘を鳴らしているようで、
演出家トム・サザーランドの危機感の表れが反映した味わい深いものでした。
余談ですがこの日、月組の主要なメンバーも観劇していて、たまたま私たちの席の近くでも一人の月組メンバーが観劇していました。開演前、その席に美弥るりかが月組生とともに通りかかりましたが、まあ彼女の細いこと。よくあれで長い公演の舞台が務められるなあと感心しました。
次は5月26日のミーマイの感想です。極めて簡単です。m(__)m
初演以来何度も観てきたのでかなり食傷気味で、どうせ陳腐なストーリーだし(殴)と、あまり期待せずに出かけましたが、実際に観たら、やはりよ~くできた話といい歌でしたね。話の展開も面白いし、大体、覚えていたはずの話が結構忘れていて意外に新鮮でした。(殴)
明日海りおのビルは、誰かの二番煎じみたいな印象はなくオリジナリティがあって、歌もいいし、ハマリ役でした。ただ最近とみに痩せてきているのが気になります。
街灯の下で歌う場面が、結構後の方だったのも意外。本当に覚えているつもりが忘れてしまっていたということを痛感。歳です。(笑)
花乃まりあも下町の娘らしい容貌で頑張っていました。キャラクタがよく合っていますね。スカステの練習風景でも涙を流して力演していたのには感心しました。
ただ、歌の場面なると少々物足りない感じも。
いつもの、ついホロリとなるはずの場面の歌がそうならず、「結構歌の場面が多いな」とか冷めて観てしまいました。いえ、あくまで私の個人的な感想です、ハイ。
私たちが観たのはBパターン。なのでマリア夫人は仙名彩世でした。ちょっと若い感じのマリア夫人ですが、頑張っていました。この役の出来不出来が劇全体の仕上がりにも影響したりしますが、今回はよく頑張っていて、ヨメさんは「よくやってる」と褒めていました。
逆にジョン卿は瀬戸かずやで老けた印象で落ち着いた人物なのでちょっとマリア夫人とは釣り合いにくいかな。パーチェスターは柚香光。彼女も頑張って笑わせていましたが、ここは歌も含めて鳳真由のほうが適役だったかも。
話が変わりますが、この公演で鳳真由が退団するのは本当に残念ですね。「ファントム」の新人公演の衝撃が忘れられないです。俗世間に出てからの活躍に期待したいです。
そして6月4日は本名の『8月の家族たち』。
いい舞台でした! あまりの感動で、最後は迷わずスタンディング!(なぜか私たちだけでしたが(笑))
鄭義信三部作もよかったですか、この作品もそれに負けず劣らずの傑作。
以下、感想です。
最初のうちはちょっとテンポが遅いかなと思って観ていましたが、麻実れいの母・バイオレットが登場したぐらいから俄然引き込まれていきました。
この芝居、まずなんといってもキャストが豪華です。私はこれだけで観劇決定しました。(殴)
主な顔ぶれだけでも麻実れい、音月桂、秋山菜津子、常盤貴子、生瀬勝久、村井國夫、木場勝己、橋本さとしと錚々たるメンバー。
セットは「1789-バスティーユ~」の松井るみ。これまでの彼女の作品とはガラッと違った、アメリカの田舎の大きな家がカットモデルのようになった手の込んだセットでした。
ベースになったのは同名の映画で、こちらは母役にメリル・ストリープ、長女役にジュリア・ロバーツ、次女役にジュリアン・ニコルソン、三女役にジュリエット・ルイス、そしてユアン・マクレガー、ベネディクト・カンバーバッチなどこちらも芸達者ぞろいのキャスト。
今回の舞台の原作はトレイシー・レッツ。上演台本と演出はケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)です。この人の脚本になる舞台作品を最初に観たのは『祈りと怪物~』でした。三姉妹ものがお好きです。
粗筋です。
物語の舞台は8月の酷暑のオクラホマ州オーセージの片田舎の古い大きな家。
詩人でアルコール中毒の父ベバリー(村井國夫)が突如失踪。その知らせを聞いて、実家に長女バーバラ(秋山菜津子)とその夫ビル(生瀬勝久)と娘のジーン(小野花梨)、次女アイビー(常盤貴子)が帰ってくる。
やがて三女のカレン(音月桂)が婚約者スティーブ(橋本さとし)を連れてやってくる。そして5年ぶりに母方の叔母マティ・フェイ(犬山イヌコ)と夫のチャーリー(木場勝己)も戻り、遅れて彼らの息子リトル・チャールズ(中村靖日)も到着。
そして久しぶりに集まった家族が目の当たりにしたのは、夫の失踪と薬物の過剰摂取で半錯乱状態となった母バイオレット(麻実れい)の姿。
最初は書斎?でのベバリーと家政婦ジョナ(羽鳥名美子)との場面から始まります。落ち着いた会話から始まるので、その後の衝撃的な展開は全く予想できず。(映画は見ていなかったので)
もともとこの作品は、2007年にシカゴの小さな地下劇場でスタートし、すぐに注目を浴びて、その年にはブロードウェイに進出。2013年に映画化されたトレイシー・レッツの幼少期の実体験を元にした、三姉妹とその家族たちの物語です。
まあなんといってもすごかったのは、薬物中毒の毒舌の母親バイオレット役を怪演した麻実れい。芸のダイナミックレンジの広さを改めて感じさせる演技に脱帽です。
劇中で、三姉妹とその家族の偽善をズケズケと暴く麻実れいの演技はド迫力でした。
母とは絶えず言い争う長女バーバラ役の秋山菜津子もいい演技。
私たちも以前のこまつ座の『キネマの天地』や『藪原検校』でお馴染みの役者さんですが、最近の『きらめく星座』での気丈な後妻ふじ役が印象に残っています。今回もいろいろ悩みの多い複雑な役を気丈に、かつ適度な生活感を見せながら(殴)演じていました。
いつみてもいい役者さんです。
常盤貴子の次女アイビーはバーバラと違って物静かで両親想い。長女や三女とは対照的な役柄です。初めて見る舞台でしたが、しっとりとした演技で好感度大。
音月桂の三女カレンは姉たちと違って絵に描いたようなアメリカンギャル。スラリとした肢体で弾けまくっていました。(笑) そんな彼女を見ていると、つくづく、宝塚の男役というのは在団中ずっと男を演じていたんだなと思いましたね。(笑)
母と三姉妹以外でも、叔母マティ・フェイの犬山イヌコ、家政婦ジョナ役の羽鳥名美子、バーバラの娘ジーン役の小野花梨がそれぞれの役に徹したいい演技でした。男優陣も生瀬勝久、橋本さとし、中村靖日、村井國夫、木場勝己などいずれも実力派揃いで、贅沢な舞台でした。
一見よくあるホームドラマのような始まり方でしたが、話が進むにつれて家族というものの本質というか、深層心理を抉り出すようなリアルな展開になっていき、そして最後は衝撃の事実が‥。
本当に見ごたえのある舞台でした。再演の機会があればぜひ皆さんもご覧ください。おすすめです。
ということで、次は鄭義信三部作の最後「パーマ屋スミレ」と月組の「信長」の感想ですが、まだ書けてない。^_^;
早く書かなくては‥。
まず5月5日に森ノ宮ピロティホールで「アルカディア」を観て、続く7日は梅芸で「グランドホテル」。そして26日には宝塚大劇場で花組の「ミーマイ」。月が変わって6月4日は再びピロティホールで「8月の家族たち」。老体にはけっこう応えました。(笑)
で、感想ですが、一つずつ書くのは手に余るので、ここはまとめ書きでご勘弁を。(殴)
ということで、超簡単な感想をまず「アルカディア」から。
「英国演劇界を代表する劇作家トム・ストッパードの最高傑作」だそうで、その演出は栗山民也、そして主なキャストが堤真一に寺島しのぶ、井上芳雄、浦井健治、神野美鈴と豪華メンバー。これで面白くないわけはなかろうと、大いに期待しつつ出かけました。
でも。
よく分からない舞台でした。^_^;
もう私などの貧しい想像力では何が言いたいのかサッパリ理解不能。(殴)
話の時間軸は2つあって、時代設定の異なる二つの物語が交互に展開されていました。
共通するキーはバイロン。イギリス・浪漫主義時代の代表的な詩人で、超勝手気ままに生きた詩人です。私も若いときはけっこう好きでした。
でもそのバイロンを巡る謎というのがわからない。
「わからないから謎だろう」という突っ込みは置いといて(殴)、膨大な台詞を聞いていても、なにが問題なのかよくわからない。そんな舞台を観続けるのはかなりしんどかったです。
それで、何かヒントが得られるかもと、休憩中に読んだプログラムで寺島しのぶが、
「何回読んでも分からない本って久しぶりでしたね(笑)」と書いていたのでホッと一安心。(殴)
ただ、話の芯は分からなくても(笑)、寺島しのぶの演技は自然で、人物の実在感は際立っていました。
もう一人、神野美鈴も舞台に現れただけでわかるたたずまいのリアルさ。この二人がよかったです。
でも、期待の堤真一はちょっとがっかりでした。
こもったような台詞で聞き取りにくく、せっかくの力演も空振り感があって、ヨメさんも「こんなはずでは」としきりに残念がっていました。
もうひとり期待していた井上芳雄も、今回はいつもと違って彼らしくない精彩を欠く演技。
浦井健治も「トロイラス~」では好演していたのに、今回はあまり印象に残らず役不足な感じでした。
結局寺島しのぶの言う通り、脚本の問題ですね。役者も観客もどうにも乗り切れない脚本で、俳優たちの奮闘が報われず気の毒でした。
次は「グランドホテル」。
こちらは定評のある脚本+豪華キャストなので、観応えたっぷり。
ナチスが台頭する前夜の1928年のドイツ・ベルリン。
その不安な時代背景のもとで、超一流ホテル「グランドホテル」で複雑に交錯する人々の姿を描いた、濃厚な舞台でした。音楽も、斬新で重厚な舞台装置も素晴らしく、やはり名作いわれるだけありました。
私たちが観たのはグリーンチームで、エリザベータは安寿ミラです。
久しぶりに見た彼女ですが、よかったです。人気下降中の大女優の悲哀(役の話です、念のため(殴))がよく表現されていました。
ラファエラは春野寿美礼の代打で樹里咲穂でしたが、当然とはいえこれまたいい演技。久し振りに彼女の舞台を観ることができてよかったです。土居裕子版も観たかったですが。
元会計士オットー・クリンゲラインは「CHESS THE MUSICAL」以来の中川晃教でしたが、余命いくばくもないユダヤ人の元会計士を好演していました。「CHESS~」よりもこちらの方が私たちにとっては印象的な演技でよかったです。
成河バージョンだと少しキャラクタなども変わっているそうでどうなるか、これも観てみたかったです。
湖月わたるはエリザの死みたいな役のダンサーでした。寡黙なダンサーですが、複雑で凝った振付のダンスを完ぺきにこなしていました。
脚本は話の組み立て方が本当によくできていますね。
それぞれの人物像と人生が巧みに絡み合いながら描かれていて、場面転換も小気味よく、とくに話の締めくくり方が絶妙。
私はこれまで観たことがなく、初めての話でしたが、こういう展開だと最後はこうなるだろうなと、タカをくくって予測していたら、全く違う結末でビックリ&感心しました。
その結末ですが、2チームで全く異なるものになっているそうで、私たちが観たグリーンチーム版では、最後にホテルの従業員が客の身ぐるみ剥いで荷物を奪い、ヒットラーの演説が流れてそれに心酔する従業員たち‥というものでした。
この結末、現代世界を覆う狭隘なナショナリズムの台頭とか、日本で漂い始めた憲法改悪などの暗い影にも警鐘を鳴らしているようで、
演出家トム・サザーランドの危機感の表れが反映した味わい深いものでした。
余談ですがこの日、月組の主要なメンバーも観劇していて、たまたま私たちの席の近くでも一人の月組メンバーが観劇していました。開演前、その席に美弥るりかが月組生とともに通りかかりましたが、まあ彼女の細いこと。よくあれで長い公演の舞台が務められるなあと感心しました。
次は5月26日のミーマイの感想です。極めて簡単です。m(__)m
初演以来何度も観てきたのでかなり食傷気味で、どうせ陳腐なストーリーだし(殴)と、あまり期待せずに出かけましたが、実際に観たら、やはりよ~くできた話といい歌でしたね。話の展開も面白いし、大体、覚えていたはずの話が結構忘れていて意外に新鮮でした。(殴)
明日海りおのビルは、誰かの二番煎じみたいな印象はなくオリジナリティがあって、歌もいいし、ハマリ役でした。ただ最近とみに痩せてきているのが気になります。
街灯の下で歌う場面が、結構後の方だったのも意外。本当に覚えているつもりが忘れてしまっていたということを痛感。歳です。(笑)
花乃まりあも下町の娘らしい容貌で頑張っていました。キャラクタがよく合っていますね。スカステの練習風景でも涙を流して力演していたのには感心しました。
ただ、歌の場面なると少々物足りない感じも。
いつもの、ついホロリとなるはずの場面の歌がそうならず、「結構歌の場面が多いな」とか冷めて観てしまいました。いえ、あくまで私の個人的な感想です、ハイ。
私たちが観たのはBパターン。なのでマリア夫人は仙名彩世でした。ちょっと若い感じのマリア夫人ですが、頑張っていました。この役の出来不出来が劇全体の仕上がりにも影響したりしますが、今回はよく頑張っていて、ヨメさんは「よくやってる」と褒めていました。
逆にジョン卿は瀬戸かずやで老けた印象で落ち着いた人物なのでちょっとマリア夫人とは釣り合いにくいかな。パーチェスターは柚香光。彼女も頑張って笑わせていましたが、ここは歌も含めて鳳真由のほうが適役だったかも。
話が変わりますが、この公演で鳳真由が退団するのは本当に残念ですね。「ファントム」の新人公演の衝撃が忘れられないです。俗世間に出てからの活躍に期待したいです。
そして6月4日は本名の『8月の家族たち』。
いい舞台でした! あまりの感動で、最後は迷わずスタンディング!(なぜか私たちだけでしたが(笑))
鄭義信三部作もよかったですか、この作品もそれに負けず劣らずの傑作。
以下、感想です。
最初のうちはちょっとテンポが遅いかなと思って観ていましたが、麻実れいの母・バイオレットが登場したぐらいから俄然引き込まれていきました。
この芝居、まずなんといってもキャストが豪華です。私はこれだけで観劇決定しました。(殴)
主な顔ぶれだけでも麻実れい、音月桂、秋山菜津子、常盤貴子、生瀬勝久、村井國夫、木場勝己、橋本さとしと錚々たるメンバー。
セットは「1789-バスティーユ~」の松井るみ。これまでの彼女の作品とはガラッと違った、アメリカの田舎の大きな家がカットモデルのようになった手の込んだセットでした。
ベースになったのは同名の映画で、こちらは母役にメリル・ストリープ、長女役にジュリア・ロバーツ、次女役にジュリアン・ニコルソン、三女役にジュリエット・ルイス、そしてユアン・マクレガー、ベネディクト・カンバーバッチなどこちらも芸達者ぞろいのキャスト。
今回の舞台の原作はトレイシー・レッツ。上演台本と演出はケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)です。この人の脚本になる舞台作品を最初に観たのは『祈りと怪物~』でした。三姉妹ものがお好きです。
粗筋です。
物語の舞台は8月の酷暑のオクラホマ州オーセージの片田舎の古い大きな家。
詩人でアルコール中毒の父ベバリー(村井國夫)が突如失踪。その知らせを聞いて、実家に長女バーバラ(秋山菜津子)とその夫ビル(生瀬勝久)と娘のジーン(小野花梨)、次女アイビー(常盤貴子)が帰ってくる。
やがて三女のカレン(音月桂)が婚約者スティーブ(橋本さとし)を連れてやってくる。そして5年ぶりに母方の叔母マティ・フェイ(犬山イヌコ)と夫のチャーリー(木場勝己)も戻り、遅れて彼らの息子リトル・チャールズ(中村靖日)も到着。
そして久しぶりに集まった家族が目の当たりにしたのは、夫の失踪と薬物の過剰摂取で半錯乱状態となった母バイオレット(麻実れい)の姿。
最初は書斎?でのベバリーと家政婦ジョナ(羽鳥名美子)との場面から始まります。落ち着いた会話から始まるので、その後の衝撃的な展開は全く予想できず。(映画は見ていなかったので)
もともとこの作品は、2007年にシカゴの小さな地下劇場でスタートし、すぐに注目を浴びて、その年にはブロードウェイに進出。2013年に映画化されたトレイシー・レッツの幼少期の実体験を元にした、三姉妹とその家族たちの物語です。
まあなんといってもすごかったのは、薬物中毒の毒舌の母親バイオレット役を怪演した麻実れい。芸のダイナミックレンジの広さを改めて感じさせる演技に脱帽です。
劇中で、三姉妹とその家族の偽善をズケズケと暴く麻実れいの演技はド迫力でした。
母とは絶えず言い争う長女バーバラ役の秋山菜津子もいい演技。
私たちも以前のこまつ座の『キネマの天地』や『藪原検校』でお馴染みの役者さんですが、最近の『きらめく星座』での気丈な後妻ふじ役が印象に残っています。今回もいろいろ悩みの多い複雑な役を気丈に、かつ適度な生活感を見せながら(殴)演じていました。
いつみてもいい役者さんです。
常盤貴子の次女アイビーはバーバラと違って物静かで両親想い。長女や三女とは対照的な役柄です。初めて見る舞台でしたが、しっとりとした演技で好感度大。
音月桂の三女カレンは姉たちと違って絵に描いたようなアメリカンギャル。スラリとした肢体で弾けまくっていました。(笑) そんな彼女を見ていると、つくづく、宝塚の男役というのは在団中ずっと男を演じていたんだなと思いましたね。(笑)
母と三姉妹以外でも、叔母マティ・フェイの犬山イヌコ、家政婦ジョナ役の羽鳥名美子、バーバラの娘ジーン役の小野花梨がそれぞれの役に徹したいい演技でした。男優陣も生瀬勝久、橋本さとし、中村靖日、村井國夫、木場勝己などいずれも実力派揃いで、贅沢な舞台でした。
一見よくあるホームドラマのような始まり方でしたが、話が進むにつれて家族というものの本質というか、深層心理を抉り出すようなリアルな展開になっていき、そして最後は衝撃の事実が‥。
本当に見ごたえのある舞台でした。再演の機会があればぜひ皆さんもご覧ください。おすすめです。
ということで、次は鄭義信三部作の最後「パーマ屋スミレ」と月組の「信長」の感想ですが、まだ書けてない。^_^;
早く書かなくては‥。