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宝塚月組公演 月組公演 『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』 満足の舞台でした

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11月26日に、月組公演『舞音』―MANON―(植田景子脚本、演出)&『GOLDEN JAZZ』(稲葉大地作、演出)を観てきました。
芝居もショーもいい出来で、見ごたえ十分でした。今回の観劇で一番の目玉はショーでの愛希れいか以下選抜メンバーの超ダイナミックなダンスと、珠城りょうの二番手確定の大きな羽根(笑)。とくに珠城りょうが、フィナーレで大きなピンクの二番手羽根を背負って階段を下りてきた姿にはビックリ。

ではまず『舞音』の感想から。といってもいつもの独断と偏見に満ちた感想なのでご了解ください。男トップ大絶賛ではないので、贔屓にされている方はスルーが吉です。例によって敬称略です。

脚本ですが、やはり宝塚で今一番安定した力量のある植田景子だけあって、よくできたストーリーでした。登場人物のキャラクタにも生徒の持ち味が十二分に生かされていました。
ところで最初、『舞音』と聞いて「マノン・レスコー」を思い出しましたが、今回の作品もそれをベースにしているものの、舞台は1929年の仏領インドシナのベトナムに移し、さらにオリジナルな話としてベトナムの民族独立運動を絡ませた作品になっています。

ただし、貴族のエリート青年将校が、奔放な女性の魅力に振り回されて進むべき道を誤るという話は『マノン・レスコー』だけでなく『激情』にも通じる感じで、初めはけっこうデジャブ感がありました。中盤には「もう結末が読めてきたな」と思っていたら、後半、民族独立運動が主題になってくるとそんな予測は大外れ。(笑)
そして最後の舟の場面ではついホロリとな。演出家の術中にハマってしまいました。(笑)

植田景子は作品のために装置の松井るみとともに取材で現地に出向いたとのことですが、ベトナムの歴史にも十分気を配っていていい脚本でした。

話の冒頭、1929年夏のサイゴンの港で、白の軍装の青年がせり上がってきて、当然龍真咲かと思ったら、実はシャルル2(笑)の美弥るりか。その後、同じ格好の龍真咲扮するシャルルが登場するあたりはけっこう凝った導入でした。
でも凝ったプロローグの割にはその後の美弥・シャルル2の意味がよく伝わらず(プログラムでは愛と官能の象徴だとか)、もったいない存在でした。台詞も最後の場面だけという設定のはかわいそう。「風‥」のスカーレットみたいに対話させたらとか、モノローグを被せて登場させたらとか思いましたが、それではベタ過ぎか。(笑)

パッション』で超ドッキリさせられたベッドの場面がこの「マノン」でも出てきましたが、前者の衝撃度と比較したら今回はかわいいものです。まあ宝塚の限度でしょうね。(笑)
そんな熱愛の二人ですが、すぐマノンの兄クオン(珠城りょう)に見つけられて引き離され、さらにマノンが娼婦で、パトロンの元に戻ったことが分かってシャルルはあきらめるが、偶然サイゴンで再会して二人の愛は再燃し、マノンの歓心を買うためシャルルは悪に手を染めて転落の一途に‥。というところまではよくある話ですが、後半、インドシナ独立運動が発展して、フランス政府の弾圧も激化、その嵐に2人が巻き込まれていくところから新たな展開となります。ここで運動を取り締まる警察長官のギョーム(星条海斗)がカッコいい。颯爽とした悪役で(殴)、スーツ姿がバッチリ決まっていました。

という雑感はこのくらいでまずシャルルの龍真咲から。


やはりこの人は我が道を行く演技。(笑) 
マノンに誑かされて(殴)身を持ち崩し、退廃と苦悩の日々でも表情はあまり苦悩していなくて、いつものカッコよさを意識したゴーイングマイウェイな演技。宝塚のトップともなればそれは当たり前なのでしょうが、あまり相手の演技とキャッチボールをしないような感じですね。そんなブレないところがファンには魅力なのでしょうが。
でも、私には苦悩や喜び、怒り、嘆きといった表情の変化がよくわからなかったので、ちょっと感情移入しにくい主人公でした。



マノン役の愛希れいかは良かった。

飛び切りの美貌というわけではないのに(殴)、魅力的なヒロインになり切っていて、シャルルが一目で虜になるのも無理ないというマノンでした。舞音じゃなくて「魔音」のほうがいいと思ったくらいです。(笑) この人は『1789』を観てから私の印象が一変しました。
でもマノンが、シャルルに大金を浪費させていく場面では、ただの悪女で嫌な感じでしたが(笑)、スパイ容疑で捕まって有罪決定で流刑地に向かうあたりから一変して、悲愴な囚人姿が胸を打ちました。でもマノンが、シャルルを単なる金づる扱いしていたところからいつ真の愛の対象とするようになったのか、その心理の変化の描写がちょっと少ない感じがしました。プログラムではシャルルの手紙が決め手となっていますが、それではちょっと遅すぎな感じです。(笑)
まあこのあたりの心理描写の少なさは、一本物ではない時間的な制約があるでしょうね。
それでもなお、流刑地への船着き場から始まって、シャルルが負傷したマノンとともに霧のハロン湾に船出する最後のシーンにかけては、涙・涙の名場面となっていました。まんまとしてやられました。(笑)

マノンの兄クオン役の珠城りょうは、妹のヒモ的存在です。でも、存在感があるのに役的にはあまり話に絡まないのが残念。私はクオンはただのヤクザな男ではなく実は革命運動の重鎮だったりとか期待していましたが、やっぱりただのヤクザな男で(笑)最後もあっけなくて、ちょっと残念。でも華奢な男役が多い月組ではこの人の存在感は新鮮です。(笑)




親友クリストフ役の凪七瑠海は、『舞音』への手紙の橋渡し役など果たしてくれて、シャルルのいい友人です。でも話に大きく絡むわけではない印象の薄い役です。最近の彼女はこういう役が多くて、ちょっと気の毒ですね。


もっと残念なのがシャルル2の美弥るりか。

『1789』では悪役シャルル・アルトワ役でインパクトのあるいい演技を見せてくれたのに、今回は最初から最後までずっと無言で踊るだけ。セリフはラストの一言のみとあんまりな仕打ち(殴)。シャルル2効果もあまり感じられなかったです。
余談ですが、今後この二人の処遇が気になりますね。

専科から古巣への出演となった警察長官ギョームの星条海斗ですが、一目でわかるスーツの粋な着こなしで鈍い私でもすぐ分かりました。目深にかぶった帽子もカッコいい。これからも専科で活躍してほしいですね。秘かに応援しています。こんなところに書いていたら秘かでもないか(殴)。

民族独立運動のメンバーはマダム・チャンの憧花ゆりのをはじめ、みんな後半に活躍しますが、中でもホマの海乃美月が宝石泥棒とか冤罪証言とかインパクトのある役で印象に残りました。

この作品は演出家の好みを反映した外部の女性スタッフが活躍しています。
作曲のジョイ・ソン、装置の松井るみ、衣装の前田文子、振り付けの大石裕香と多彩・多才な顔ぶれです。音楽と衣装はよかったですが、松井るみの舞台装置は前作の『アンドレア・シェニエ』とは打って変わった抽象的で象徴的なデザインでした。
私としてはバウホールの舞台みたいな感じで、ちょっと寂しかったですが、ヨメさんは激賞していました。(笑) ただラストのハロン湾の舟の場面はよかったです。観ていて「王家‥」のボートの場面を思い出しました。
振付は特徴があまり感じられなくて、印象が薄かった。^^;

しかしベトナムが最終的に民族解放を成し遂げるのは、舞台の時代設定から実に40年も後のことになりますね。

ショーの『GOLDEN JAZZ』は、最近大活躍の稲葉大地のジャズをテーマとした華やかな作品でした。
出だしから手拍子が起きて、好評販売中のミニタンバリンも加わって観客もノリノリ。曲も馴染みやすい選曲でいい構成でした。客席降りでは通路側のヨメさんが3度もハイタッチしてもらって大喜び。
ショーでは「rhythm」が今回の最大の見どころでした。昨年の星組のショーで「カポネイラ」が大好評だった森陽子がまた振付を担当し、今回も圧巻のダンスシーンを展開していました。
とくに愛希を中心にしたアフリカンテイストのダンス場面では、こちらが心配するほど体を酷使する激しいダンスが続き、圧倒されました。珠城りょうなど男役陣を従えてメーンで踊る愛希の切れのいいダンスが素晴らしかったです。身体能力の高さは現娘トップの中では群を抜いています。

すごかったです。

フィナーレのエトワールは星条海斗でした。そして美弥・凪七に続いて、珠城りょうが二番手の大きな羽根を背負ってパレード。びっくりしましたが、これまでぼかされてきた月組二番が確定したわけで、歌劇団の方針がようやく明確となってよかったです。

というわけで、芝居もショーも観て悔いのない良作で満足でした。ここまでご覧いただきありがとうございました。
これで私たちの今年のタカラヅカ観劇はおしまいです。本当に1年が早いです。(笑)

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