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梅田芸術劇場で『十二夜』を観て

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梅田芸術劇場メインホールで「十二夜」観てきました。


『十二夜』はシェイクスピア喜劇の最高傑作だそうです。

話はご存じの方も多いと思いますが、音月桂が一人二役で演じる、船の難破で離れ離れになった双子の兄妹が主人公。
その二人にからんで、妹が男に扮することで登場人物の間に生じるさまざまな勘違いと片想いが交錯するコメディですが、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのディレクターも務める、『レ・ミゼラブル』などで有名なジョン・ケアードがどう作り上げているのか、興味津々でした。
音月以外でも、小西遼生や、『おそるべき親たち』の中嶋朋子、そして『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』の橋本さとしと、出演メンバーも豪華です。

土曜日の12時公演ということで、朝10時に出発。

この日は車も少なく、予定通りのコースタイム40分程度で駐車場に到着。地下一階のシアタードラマシティ近くで早めの昼食をとってから、車椅子を押して地上へ。
時間があったので劇場前で写真などを撮っていると、近くにいたスタッフの男性が声をかけてくれて、そのまま劇場内に案内されました。この劇場、ロビーにはエレベーターがないので、車椅子だと楽屋のエレベーターで入らなくてはならないのがプチ残念。
私たちの席は中通路から6列ほど上がったところだったので、慣れないヨメさんは一苦労。でも何とかたどり着けました。ただ後ろとはいえ、ほぼセンターで舞台はよく見えました。
見渡せば1階席は埋まっていました。けっこう男性客も多かったです。でもやはりメインホールは大きすぎの感ありで、ドラマシティのほうがいいかなと思ったり。
という前フリは終わりにして、以下いつも同様の薄味感想になります。

プロローグは最近はやりの幕なしのいきなりのスタート。
まず目に入ってくるのは舞台のセット。

デザインしたのは、衣装も担当したヨハン・エンゲルスです。当人は昨年11月、このデザイン完成させた直後に亡くなったそうで、まさに遺作となった作品です。衣装も豪華でしたが、セットも本当によくできていました。

舞台上には円形の、八百屋になった台が置かれていて、それを取り囲むように石の壁を模したセットが置かれています。


余談になりますが(えっ、もう余談?(笑))、このセットと、『十二夜』つながりで思い出したのが、16年前に訪ねた「ミナックシアター」。イギリス・コーンフォール半島の先端部に位置する野外劇場です。


どうですか?似ているでしょう。後ろ向きに立っているのは当日主演していたイギリスの有名女優、ではなくウチのヨメさんです。(笑)

さらに手作りのコンクリート+芝生の客席の下面には『十二夜』(Twelfth Night)と上演年の1933が刻まれていました。
観劇しながら思わずこの写真がよみがえってきました。

大西洋に突き出た断崖の上に作られたこの野外劇場は、ロウィーナ・ケードという女性が生涯の大半を費やして、たった一人の使用人とともに岩を削って舞台を作り、セメントをこねて芝生を植えるなどして客席を設けるなど、50年かけて手作りしたものです。

セメントに混入した砂は、切り立った断崖を90m下って海岸からバケツで運び上げたということです。私たちも海岸まで降りてみましたが、一度でどっと疲れました。(笑)
今回の舞台でも、はじめのうちは背景に海が見える設定になっていたので、観劇しながらさらに懐かしさが募りました。
みなさんもランズエンドなどに行かれた際は、ぜひ足を延ばしてみてください。

余談はこれくらいで(殴)、まず主役の音月桂から。
↓当日買ったプログラムから

雪組サヨナラ公演以来、本当に久しぶりの音月桂でしたが、変わらぬ容姿に安心しました。(笑)もともと宝塚時代から若々しい容貌がそのまま維持されているのにプチびっくり。劣化が少ないです。(殴)


とくに今回の演目が、彼女のキャラクタにぴったりでした。女が男に扮するとかはお手の物だし、しかももともと雪組時代から爽やかなボーイッシュなイメージだったので(あくまで個人の感想です)、演じる人物に自然になじめました。


セバスチャン/ヴァイオラ(シザーリオ)という二役の兄妹を、声のトーンや話法、身のこなしや細かなしぐさを使い分けて巧みに演じていて、当然とはいえ感心しました。いい役を選んだものですね。
立ち回りも決まっています。

劇の終盤に兄妹が同時に現れる場面があって、一瞬アレ、どうやっているんだろう?と思いましたが、そっくりなキャスティングをしてあって面白かったです。
↓オーシーノ公爵の小姓になったシザーリオ


プログラムで自身が言っているように、音月桂は退団後映像の方に関心があったとのことですが、今後はもっと舞台でも活躍してほしいですね。演技も歌も定評がある彼女の今後の活動が楽しみです。

次は、そのヴァイオラに勘違いして言い寄る伯爵家の令嬢オリヴィア役の中嶋朋子。

さすがにベテラン、うまいですね。喜劇とはいえ自然な演技で安心して観ていられました。
はじめのうちは、兄の喪に服するという理由で冷たくオーシーノを拒み続けているオリヴィアです。


私はそんな様子がまるでエリザベートみたいだなと思って見ていましたが、そのオリヴイアがシザーリオに出会ったとたん一目惚れ。
絵にかいたようなツンデレぶりで面白かったですね。シザーリオに身も世もなく夢中!なオリヴィアと、その強引な勘違いぶりに戸惑うシザーリオとの絶妙のやりとりが一番の見所でした。

ただ、お疲れなのか、役年齢(若き令嬢ですから)&実年齢より老けた感じ(殴)なのが気になりました。ただどこか大竹しのぶにも似た台詞の声は若々しくて、すぐ容姿は気にならなくなりましたが。

うまいといえばオーシーノの小西遼生も存在感たっぷりで、スノッブな公爵ぶりが板についていました。




貫録さえあって堂々としています。舞台では初めて見ましたが、セリフも明瞭、いい役者さんですね。

執事マルヴォーリオの橋本さとしは、騙されてイジられて笑いものにされる、かわいそうな役をうまく演じていて、客席から大きな笑いを誘っていました。




しかし、今回の公演でうまさが光っていたのは道化者のフェステを演じた成河。
台詞も歌も道化の仕草もうまい!!
のびのびと自由闊達、余裕さえ感じられました。大活躍でした。





陳腐な言い方ですが、滑稽さと悲哀が巧みに表現されていて、感心しました。
昨年観た『ビッグ・フェラー』でもIRAの若手メンバーの一人・ルエリ・オドリスコル役がピカイチでしたが、今回もそれに劣らぬ活躍ぶりでした。今後の活動に注目したいです。

それ以外の役者さんもそれぞれいい仕事ぶりでしたが、中にはちょっと台詞の不明瞭な方もおられて、ちよっとコックリとな(殴)としそうになったり。
ご存じのように、シェイクスピアの台詞は、一流の美文調で形容詞満載なので、聞き取りにくいと台詞が睡眠術の呪文みたいに聞こえてつい瞼が‥(殴)
でもそんな序盤をなんとか持ちこたえたら(笑)、中盤から一転俄然面白くなってきて、客席も笑いの連続。面白かったです。

最後は客席も大いに乗ってきていました。
カーテンコールの出演者全員の歌は鳥肌モノ。圧巻でした。


というわけで、シェイクスピアかと身構えて観劇に臨みましたが(なにしろ十二夜は初めてなので)、素直に楽しめて面白かったですね。なにより厚みのある俳優陣と、一流の演出に、重厚なセットと衣裳。上質な演劇を堪能できました。

音月桂の大阪演劇デビュー、成功して本当によかったです。




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