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兵庫芸文センターで『familia~4月25日誕生の日~』を観て

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11/30(日) 兵庫芸文センターで大空祐飛主演の『familia~4月25日誕生の日~』を観てきました。退団以来久しぶりの大空祐飛さんの舞台で、演出・振付・作詞/謝 珠栄ということもあって大いに期待して出かけました。以下少々ネタバレアリ、そして大絶賛!!モードではないどころか最近にない辛口感想なので、これから観劇予定の方はスルーしたほうが吉です。

日曜日の11時公演とまるで宝塚大劇場みたいな日程ですが、2回公演なのでこうなったのでしょう。なので昼食は公演が終わってから。
この日と前日の土曜日はどういうわけか高速道路はどこもガラすき。ラッキーでした。ちょうど1時間で兵庫芸文センター地下駐車場に到着。しかし、今年はよく通いましたね。今回を入れると7回も。
劇場前のホールに行くと、すでにたくさんの観客でにぎわっていました。退団してかなりたっているのに、大空祐飛ファンらしい多くの女性客のグループがあちこちに集まっていました。最近にない活気です。そして開場10分前にはもう長蛇の列。

大した動員力です。

花もたくさん飾られていました。


さて、まず全体の感想です。

最初に書きましたが、私たちは今回の公演が謝珠栄作品ということで大いに期待していました。

で、感想の結論ですが、大空祐飛をはじめ出演者全員がんばっていました。でもその熱演にもかかわらず、かなり期待はずれなものになりました。その原因はプアーな脚本。芝居が始まって、観劇しながら、あれ、これがホントにあの謝 珠栄?の脚本?という疑問が湧いてきました。
とにかく話が薄い。演劇の脚本としては今年観たなかでは一番の不出来だと思いました。

あらすじは公式サイトに紹介されていますが、こうなっています。↓
TSミュージカルファンデーション familia~4月25日誕生の日~ 公演情報
1973年、ポルトガル。
独裁政権から続く圧政により、アフリカでの植民地戦争は凄惨を極め、人々は自由な思想や言論を奪 われ続けていた。
そんな民衆の姿が、親の顔も知らず孤児として生きてきたエヴァの目にはまるで、悲しみを抱えなが らも黙って耐える子供達の様に映る。
置き去りにしたままの過去から目を背け生きていくことは、自分も反発を忘れた民衆と同じだと思い、不安な気持ちを奮い立たせ、エヴァは自分を捨てた両親を探す為に首都リスボンへと向かう。
そこで出会ったのは陸軍少佐のフェルナンドと、革命派に身を投じた幼馴染、アリソンだった。
やがてラヂオから聞こえるファドの調べにのせて、エヴァと二人の人生は大きく交錯する。
そして1974年4月25日、“リスボンの春”が訪れる。ポルトガルの革命と共に、エヴァは自らの運命に立ち向かうのだった......。
それで、幕間の休憩時間に急いで公演パンフレットを確認したら、なんと脚本/斎藤 栄作とな!
謝 珠栄さんは演出・振付・作詞担当ということでした。^_^;

それでまあ納得、は出来ないけど納得。

芝居は上記の引用のように、ポルトガルで40年以上続いたアントニオ・サラザールとその後継者マルセロ・カエターノによる独裁体制を倒した「カーネーション革命」を背景に、大空祐飛演じる主人公エヴァが、見知らぬ両親を求めてリスボンでその行方を探すというものです。
話としてはあの「炎 アンサンディ」にも通じるものがありますが、出来は大違い。そういえば、両作品とも宝塚出身女優が主演というところも同じですね。

でも「炎‥」のほうは、母の過去の世界を姉弟がたどっていくなかで、それぞれの登場人物との関わりを通して、一人の人間としての母と、母の生きた時代そのもの、そしてその子である姉弟の衝撃のルーツが見事に明らかにされていきました。映画でもすごいと思いましたが、舞台ではまた違ったものに仕上がっていて、見ごたえ十分でした。

それに対して、今回の「ファミリア‥」では、革命前夜のポルトガルの状況が劇を通して描き出されるのではなく、その断片だけで、それもほとんどが説明台詞に頼っていて、それでも足らずに各場面で登場人物に狂言回しをさせたりと、脚本の仕上がりでは雲泥の差がありました。
こんなふうにすべて台詞で説明してしまったら紙芝居になってしまいますね。
そして話としても、孤児が3人も出てくるとか安易なご都合主義で、途中から結末が予測出来てしまうなど、芝居の面白さが感じられなかったのは残念としか言いようがありません。

そもそも長期にわたる独裁政権のもとで、その政治的腐敗や、それに対する民衆の怒り、植民地政策をめぐる軍内部での対立と抗争など、芝居として格好の材料が豊富にあるのに、通り一遍の説明的な描き方になっています。このあたり、よく謝珠栄サンがゴーサイン出したものだとおもったほど。

というわけで全体としては残念な結果でしたが、これは脚本の問題なので、以下主な出演者ごとに感想を書いてみます。
例によって敬称略。画像は公演パンフレットから部分引用しています。

まずは主人公エヴァの大空祐飛。

うまく俗世界に馴染んでちゃんと女優していますね~(殴)。
宝塚を退団すると聞いたとき、そんな姿が想像できなかった(殴)ので、舞台に登場したとき、本当に新鮮な感じでした。
完璧に女優しています!

退団公演以来久しぶりの舞台姿を間近(B列でしたからね)に観て、結構メリハリの効いたナイスなスタイルやな(殴)とか、あらぬことを考えていました。(笑)

台詞も聞きやすくいい声で、演技も在団当時と変わらぬ力量を見せてくれましたが、なにしろ脚本がアレなもので‥^^;。
↓練習風景です。

ただ歌はヅカ時代と変わらぬ縮緬ビブラートなのでちょっと私には合わない感じ。

今回の舞台では女優は大空祐飛だけで、あとはむくつけき男どもばかり(笑)。しかも結構若い人が多くて、初めて見る人がほとんど。そんな中で、知っていた唯一の役者さんがアニーバルの福井貴一。

1989年の「レ・ミゼラブル」のアンジョラス役が印象に残っていますが、あれから幾星霜、今やヒゲの似合う中年男になっています(笑)。
男優陣が全体に若いので、この人が出てくるとさすがの演技で、歌も聞かせてくれて舞台が引き締まります。
でも肝心の話の結末は完璧に予想の範囲。(笑) あと二ひねりぐらいして欲しかったですね。

フェルナンドの岸祐二と、ラモンの坂元健児もともに歌唱力や演技力が際立っていました。
いずれもはじめて観ましたが、精悍ないい役者さんです。

↓フェルナンドの岸祐二


↓ラモンの坂元健児


この芝居での若手男優の代表格になっていたのがアリソン役の柳下大です。

私は知らないですが、ホールには花も飾られていたので、人気があるのでしょうね。
パンフレットではTVドラマや映画、ミュージカルにも多数出演して活躍中とか。ただ今回の舞台では終始台詞のテンポが遅い感じで、他の役者さんとの掛け合いではちょっと違和感がありました。

しかしくどいようですが今回の舞台、全体として芸達者な俳優ばかりだったので、なおさら残念感がありましたね。
それと、ミュージカルなので当然歌が多いのですが、その歌のために話が途切れるので、余計話の展開が深まらなかったように思いました。観劇しながら、宝塚をはじめ他のミュージカルの脚本はよく出来ているものだなと改めて感心したり。

今回は大空祐飛の新たな活躍ぶりと福井貴一の近況がわかっただけでもよしとしましょう。

余談ですが、最初この公演の題名「familia~4月25日誕生の日~」を見て、それがポルトガル革命にちなんだものと分かったたとき、懐かしかったです。そして話の中でもリスボンのサンタアポローニア駅が出てきたり、カモンエスの詩やアズレージョのことが紹介されたりして、ますます懐旧の情がフツフツと湧いてきました(笑)。

2000年の4月下旬にポルトガル一周のパック旅行に参加して、ちょうど4月25日に「4月25日橋」をバスで渡ってリスボンに入りし、翌日の自由行動では私が途中で急に腹が痛くなってサンタアポローニア駅構内で必死になってトイレを探したりしたこととか。(笑)
ちなみにトイレのサインはなんとWC。もう死語かと思っていました。

4月25日橋です↓


そしてカモンエスの有名な「~ここで地果て、ここより海はじまる~」という詩の紹介場面ではロカ岬のその碑を思い出したり。
↓ロカ岬 リスボンから30km西。ユーラシア大陸の西の果てです。ちょっとランズエンドに似ています。




当時は隣国スペインと比べて格段に治安がよく、言葉が通じなくてもリスボンの街歩きが楽しめましたが、今はどうなっているのでしょうか。
というとりとめのない話で(笑)、今回の感想は終わりとします。

今年はこれで観劇予定はすべて終了しました。気まぐれで偏見に満ちた当ブログをご覧いただいたみなさんには心から感謝の意を表させていただきます。どうもありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。




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