今回はいつもと違い、久々の家族4人での観劇。ですが、チケット難のため二手に分かれて、いずれも座席は1階席後方でした。でも豪華な舞台装置の全体が見られたので、これもアリかなとも思ったり。
劇場までの道は順調で、予定時刻前に到着。工事中だった正門は完成していました。スペイン風というか、アーチがアクセントのなかなかの出来です。
13時公演なのでまずは腹ごしらえ。正月で食べ過ぎ気味だったので、↓の親子丼で済ませました。
でもこの丼、コスパ抜群、おいしかったです。
あと、時間つぶしに見て回ったら、劇場内はいろいろ配置換えがあったりで、いつものフイナンシェの売り場も移動していました。
例によってフィナンシェと天下もちをゲット。(笑)
新たに売り場が設置されたジェラートが高価でも納得の美味でした。
というわけで退屈な前フリはこのぐらいにして、観劇の感想です。いつものとおり敬称は略させていただきます。
でいきなり結論ですが、私は良くできていると思いました。小池修一郎の歴史観にも同意できました。
ナポレオンが文字通りボナパって行く過程がよく描かれていました。革命で打倒したはずの王政を民衆が再び熱狂的に支持する歴史のアイロニーがよくわかります。
ただし、同行のうち二人はそういう感想ではなくて、一人は「ええことないわ」、一人(ヨメさんです)は「まあ及第かな」という辛口の評価。でも詳しいことは聞いていません。
それはさておき、私の全体としての印象では、まず一番感じたのが100周年の年頭にふさわしい超デラックスな舞台であること。
舞台装置も衣装も超豪華。相当手間暇かけて作っているのがよくわかります。ただ、あとで書きますが使い方がもったいない。
それとトップ二人をはじめ、星組全員の頑張りと、専科の四人の演技も好印象です。中でも美穂圭子と北翔海莉の歌が光っていました。もちろん一樹千尋と英真なおきも安定した演技で芝居に厚みを与えていました。
芝居としては、華麗なラブロマンス!・大恋愛劇ではなくて(笑)、「ナポレオン年代記」あるいは「ナポレオン伝」、そして演出家自身が言うように叙事詩といった仕上がりになっています。このため史実にも忠実で、不学な私にはこの芝居を観て初めてわかったこととかたくさんあって、なにやら井上ひさし風な味わいも感じたりしました。初歩的なことですが、ジョセフィーヌがバツイチで、先夫との間に二人の子供がいて、ナポレオンより年上だったとか、初めて知りました。
総じてオリジナルの脚本として、ナポレオンの生涯をよく劇化していると思いました。
ただ、年代記として描くためにタイムスパンが長くなって、よく言えばスピード感のある展開ですが、その分ナポレオンとジョセフィーヌの恋愛感情のディテールや、本当に二人がお互いの関係をどう考えていたのかといった部分の描写は弱かったと思いますね。
ナポレオンはもちろんですが、ジョセフィーヌもかなり上昇志向の強い野心家だったようで、ナポレオンに接近したのも単なる恋愛感情にとどまらない打算や手練手管が見えてきたり。簡単に調べてみても、この二人の関係はなかなか複雑ですね。
で結果的に脚本が長くなって、舞台進行に無理が出たのか、場面のカット割に疑問を感じたところも何箇所かあり。
それと最大のガッカリだったのが劇中の楽曲。
今回の公演でのウリの一つが、「ロミジュリ」のジェラール・プレスギュルヴィックが作曲するということですね。私もそれを期待しての観劇でしたが、観終えて帰宅する途中にメロディを口ずさめるような歌、例えば「ヴェローナ」みたいな曲はなかったです。これはかなり痛かったです。やはりミュージカルはまず歌ですから。
歌劇団も大枚はたいたであろうに、当てが外れてガッカリしているだろうと思います。でもまあもう一度観るので、そこで耳に残る歌が見つけられることを期待したいですが。
これらのことについては、公演プログラムで小池修一郎みずから語っていることがすべてですね。
詳しくはプログラムを読んでいただければいいのですが、要するに「50曲になんなんとする楽曲に台詞を嵌め込みつつ稽古も、舞台の制作も進めねばならな」かったこと、「上演時間オーバーでの度重なるカットや、歌詞の変更に」よって生徒たちに多大の負担をかけたと率直に語っているところが印象的です。
結果的には座付作曲家のみなさんを起用するほうが、すべてにわたって良かったのではと思ってしまいますね。
さて、今回は主な配役限定の感想です。もうすぐ2回目の観劇なので続編を書く予定ですが、時期はあまり期待しないでください。(笑)
オープニングはロミジュリとかエリザみたいな感じです。
まずは柚希礼音。頑張っていました。やはり眼にチカラがあり、地方の貧乏貴族から這い上がろうとするギラギラした野心が全身からあふれ出ています。本人が目標としていたロミオとの違いがはっきり体現出来ていて、いつものことですが演技力のダイナミックレンジの広さではピカイチですね。
個人的にはこの人はショーブラン役が一番のアタリ役で強烈なインパクトがありましたが、今回はそれに次ぐ出来だと感じました。
以下画像はすべてスカイステージの初日映像から
ジョセフィーヌに出会って
そしてパリの役所で婚姻届にサイン
圧巻だったのが戴冠式。これが今回のクライマックスで衣装も舞台装置も圧倒的な豪華さ。
ところが、この場面が拍子抜けするほど短い!えっ、もう終わり?と誰もが思ったと思います。ローマ法王を呼びつけながら、ナポレオンが自らの手で式を行うところなどでもう少し展開があるかと思ったのですが、なにもなし。ちょっともったいない使い方でした。
そうそう、舞台装置といえば最初のクレーンを使った登場が面白いです。ただ、油圧コントロール?がぎこちなく、アームの動きがカクカク気味だったのはご愛嬌。(笑)
しかし柚希礼音の演技と歌は本当に大したものです。100周年という節目を飾るのにふさわしい存在だと思いました。
次はジョセフィーヌの夢咲ねね。
彼女もジュリエットの超ブリブリとは好対照の、海千山千の大人の女になりきっていました。台詞も低い地声が新鮮な印象です。
歌も本人比長足の進歩が見られました。けっこう音域の広い歌を何曲もがんばって歌っていました。
ただ、今回の話はジョセフィーヌのほうがナポレオンより何枚も上手のしたたかさで、なかなか2人の関係を純愛風に描くのは説得力がなく難しいですね。もっと二人の性格などを強調したほうがいいと思いました。
どう見てもジョセフィーヌがたぶらかしているとしか見えない(殴)
夢咲ねねも芸のダイナミックレンジが広いです。ロミジュリや第二章、そして今回のジョセフィーヌ、どれが彼女の地に近いのか私にはわかりませんね。(笑)
マルモンの紅ゆずるは晩年を英真なおきにバトンタッチしていて、この芝居の狂言回しでもありますが、この老若の組み合わせはかなり無理筋です。(笑)
老けたらこうなるといわれても、なかなか同意しがたいですね。
マルモンはナポレオンとは士官学校で同期とかで、ずっと一緒に各地を転戦していきますが、最後は袂を分かちます。
青年将校らしいさわやかさが印象的ですが、老いたらあの変わりようとは‥。(まだ言うか)
紅の歌は今回は歌い込みの時間が足りなかったのか、やや消化不良の感がありました。これは回を重ねることで解消されるでしょう。
次回が楽しみです。
歌で私が注目させられたのがミュラの真風涼帆。ますますよくなっていて、目立つ存在でした。
これは↓フィナーレ。
歌といえばなんといってもナポレオンの母レティツィア役の専科・美穂圭子ですね。今回最も印象に残った歌でした。今回は楽曲があまり耳に残らないといいましたが、彼女は別格。すごい感情表現で客席を鷲掴みにしていました。
今回随一のおいしい役回りだったのが北翔海莉。もちろん歌は定評があるところで、今回も美穂圭子と共に目立っていました。それと私が見直したのは演技の方。腹黒い黒幕で、ナポレオンを利用しつくして、最後には退位を迫るという役を抑えた演技(いつもはやり過ぎ感が強いですが)で好演していました。以前のカサブランカでの演技もよかったですが、私的には今回が一番いい演技だと思いました。
なにしろ稽古に途中参加ですから、よく入り込めたものだと思います。これも人柄でしょうか。それにしても歌劇団の配慮もかなりのものですね。
専科ではあとのお二人、バラス/フランツI世の一樹千尋と老マルモン役の英真なおきも星組公演にはなくてはならない芸達者で、今回も存在感はさすがでした。専科ここにありといった感のある芝居でしたね。
存在感ではメッテルニヒ/シェイエスの美城れんも眼が行きました。
あと、歌で忘れてはいけないのがテレーズの音花ゆりです。この人が歌いだすと場が締まりますね。画像がないのが残念。
ちょっと書ききれないのでその他の出演者の感想は次回観劇の感想にまわしますが、群衆シーンも迫力があってよかったです。
フィナーレは割とあっさり目でした。芝居本編の方で時間がとられて配分できなくなったのでしょうね。
トップのデュエットは黒を基調とした衣装で落ち着いた印象でした。
最後のパレードでは、北翔海莉のエトワールがよかったです。なにせ贔屓なもので(笑)。
以上簡単な感想です。いろいろ書きましたが、リピートの価値は大アリな大作でした。お勧めです。
次回はもう少し前の席になりますので、もっと出演者の表情なども見られると思います。今回の舞台は日々かなり変化し続けているとのことですから、楽しみにしています。
去年同様のつたない感想をここまでお読みいただいき、ありがとうございました。
今年もどうぞよろしくお願いします。