近畿地方に大雨の警報や注意報が出されていた8月25日ですが、我が家の周辺はそれほどでもなく、なんとかヨメさんも車に乗れそうだったので出かけることにしました。
行先は奈良県立万葉文化館。ヨメさんがホームページを見て、「展示が変わっているよ」と言うので確認したら、なるほど<ふるさと知事ネットワーク美術館交流展>現代日本画の革新者たち−福井県立美術館コレクションによる−という長ったらしい展覧会名が出ていました。
「ふるさと知事ネットワーク」は正式には「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」というそうで、青森・山形・石川・福井・山梨・長野・三重・奈良・鳥取・島根・高知・熊本・宮崎の13県の知事で構成する組織とのこと。
その活動の一環として、県立美術館同士の相互交流事業が始まり、今回の展覧会もそれによって実現したそうです。それぞれの県が所蔵する美術品を広く県外にも公開していくのはいいことだと思いますね。
今回展示されていたのは、福井県立美術館の所蔵する池田遥邨・横山操・加山又造・広田多津・三上誠・小松均・西山英雄・川端龍子・竹内浩一・中島千波・入江酉一郎・米谷清和・牧進などの作品50点。それに万葉文化館が所蔵する同展展示作家の作品7点も協賛展示。
出発したのは9時過ぎ。やはり雨が心配でしたがそれほどでもなく、途中給油したりしながら明日香へ。
万葉文化館に近づくころに雨脚が激しくなってきましたが、駐車場でしばらく待機したら小雨になったので急いで入館しました。駐車場はガラガラ、私たちが本日最初の入館者になりました。
ホームページを見ただけでもヨサゲな感じでしたが、期待以上の作品ばかり。
入り口の池田遥邨の「濠」や西山英雄の「あける桜島」を見ただけでワクワク感が高まりました。
続く広田多津の「裸婦」など、いずれも伝統的な日本画とはかけはなれた、西洋絵画との近似性のある題材とか描写方法の作品が続きます。
広田多津の「裸婦」↓
加山又造の「人と駱駝」です。↓
展示作品ではまず三上誠の一連の作品が目を引きました。
初期の「作品」(←題名です)と「雪の日の丘」の2作品は、中東あたりを思わせる人物を描いた具象的な作品(でも「作品」が1944年、「雪の日の丘」も1947年と、戦中・戦後すぐに描かれているのにびっくり)ですが、1950年には「F市曼荼羅」で大転換。このF市は画家が幼少期を過ごした福井市でしょうか。敗戦を契機に画風が変わったのか、ダリを思わせるシュールな作品です。
「F市曼荼羅」↓
その後の作品は、抽象化された幾何学的な絵になっていきます。「胸の花」から「触手の大気」、「輪廻の記号A」から「灸点万華鏡」シリーズまで11点の作品は西洋絵画の手法で抽象的な新しい世界を描こうとしていて作品ごとの変化が面白いですね。
横山操の「川」と「網」は会場を圧する大作。黒々と骨太な描き方ですごい迫力でした。でも「金門橋」は一転して明るく明快な構図。この違いにも興味がわきました。
連作では高畑郁子の作品が印象に残りました。「精(夢む)」は装飾画的な美しい作品ですが、そこから「クシャトリアの女」で古代インドのバラモン教社会となり、さらに「ラダック」から仏教を主題とした絵になっていきます。
そして「聖祉青願」で仏画の曼荼羅図を思わせる主題になって、展示の最後の「合掌界」では日本の仏教絵画のような絵になっていました。
この画家は緻密で正確な描写がすごいです。この画家の夫・星野真吾の作品「MIKAMI」では、同じグループのメンバーであった三上誠のポートレートが使われていたのも面白かったです。
今回の展覧会では、会場の一番奥に展示されていた米谷清和の12点の作品が一番気に入りました。その中でも70年代に入ってからの「エレベーター」以降がよかったですね。「雨」を観て、昨年植田正治写真美術館で観た写真を思い出しました。
最初の「エレベーター」では群衆の顔が描かれていますが、「刻々」以降は背後とか遠景になって顔が描かれなくなります。いずれも極度に単純化された画面構成でインパクトがあり、洒落たタッチが現代的で気に入りました。「秋、日のない日」は現代を描きながらもレトロ感があり面白いです。
観終えて感じたことは、日本画と西洋画の境界を云々することの無意味さでした。
今回出展された画家でも、当初は洋画家としてスタートしながら、その後日本画に転向した経歴のある人が何人もいますね。
私の知人で趣味で絵を描いている人は、よく「日本画家は洋画にあこがれ、洋画家は日本画にあこがれる」といっています。実際に浮世絵が19世紀の西洋画に与えた影響はいうまでもありませんね。
万葉文化館でも、これまで何度も気鋭の画家による日本画の枠を出た斬新な作品が多く展示されてきました。つまるところ、両者の違いを突きつめれば、絵の具の違いだけになるかもしれませんね。
そんなことをあれこれ考えながら、これまで観たことがなかった作品の数々を楽しみました。
ところで、観終えてミュージアムショップに行き、気に入った作品の絵葉書を買おうとしたら、なんと1枚もなし。万葉文化館の所蔵作品の分はありましたが、福井からの作品はゼロ。ガッカリでしたね。
昨今ほとんど揮発性メモリ化した私の脳のため(笑)、買う気満々で行ったのですが空振り。残念でした。福井の名前の入った絵葉書でもいいのでなんとかならないものかと思うのですが。
がっかりしながら昼食のために前回同様、館内のカフェへ。
今回も同じ1,000円のメニューでしたが、おいしくて食材もよく、見た目よりボリュームもあって大満足でした。食事中、一時雨が激しくなりましたが、館を出るころには上がってきてラッキーでした。
デザートもGood!
この展覧会、上記の作品以外にも見ごたえのある傑作が多く、おすすめです。ぜひ明日香に来られたらお立ち寄りください。きっと満足されると思います。
期間は8/17(土)〜10/6(日)までです。
行先は奈良県立万葉文化館。ヨメさんがホームページを見て、「展示が変わっているよ」と言うので確認したら、なるほど<ふるさと知事ネットワーク美術館交流展>現代日本画の革新者たち−福井県立美術館コレクションによる−という長ったらしい展覧会名が出ていました。
「ふるさと知事ネットワーク」は正式には「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」というそうで、青森・山形・石川・福井・山梨・長野・三重・奈良・鳥取・島根・高知・熊本・宮崎の13県の知事で構成する組織とのこと。
その活動の一環として、県立美術館同士の相互交流事業が始まり、今回の展覧会もそれによって実現したそうです。それぞれの県が所蔵する美術品を広く県外にも公開していくのはいいことだと思いますね。
今回展示されていたのは、福井県立美術館の所蔵する池田遥邨・横山操・加山又造・広田多津・三上誠・小松均・西山英雄・川端龍子・竹内浩一・中島千波・入江酉一郎・米谷清和・牧進などの作品50点。それに万葉文化館が所蔵する同展展示作家の作品7点も協賛展示。
出発したのは9時過ぎ。やはり雨が心配でしたがそれほどでもなく、途中給油したりしながら明日香へ。
万葉文化館に近づくころに雨脚が激しくなってきましたが、駐車場でしばらく待機したら小雨になったので急いで入館しました。駐車場はガラガラ、私たちが本日最初の入館者になりました。
ホームページを見ただけでもヨサゲな感じでしたが、期待以上の作品ばかり。
入り口の池田遥邨の「濠」や西山英雄の「あける桜島」を見ただけでワクワク感が高まりました。
続く広田多津の「裸婦」など、いずれも伝統的な日本画とはかけはなれた、西洋絵画との近似性のある題材とか描写方法の作品が続きます。
広田多津の「裸婦」↓
加山又造の「人と駱駝」です。↓
展示作品ではまず三上誠の一連の作品が目を引きました。
初期の「作品」(←題名です)と「雪の日の丘」の2作品は、中東あたりを思わせる人物を描いた具象的な作品(でも「作品」が1944年、「雪の日の丘」も1947年と、戦中・戦後すぐに描かれているのにびっくり)ですが、1950年には「F市曼荼羅」で大転換。このF市は画家が幼少期を過ごした福井市でしょうか。敗戦を契機に画風が変わったのか、ダリを思わせるシュールな作品です。
「F市曼荼羅」↓
その後の作品は、抽象化された幾何学的な絵になっていきます。「胸の花」から「触手の大気」、「輪廻の記号A」から「灸点万華鏡」シリーズまで11点の作品は西洋絵画の手法で抽象的な新しい世界を描こうとしていて作品ごとの変化が面白いですね。
横山操の「川」と「網」は会場を圧する大作。黒々と骨太な描き方ですごい迫力でした。でも「金門橋」は一転して明るく明快な構図。この違いにも興味がわきました。
連作では高畑郁子の作品が印象に残りました。「精(夢む)」は装飾画的な美しい作品ですが、そこから「クシャトリアの女」で古代インドのバラモン教社会となり、さらに「ラダック」から仏教を主題とした絵になっていきます。
そして「聖祉青願」で仏画の曼荼羅図を思わせる主題になって、展示の最後の「合掌界」では日本の仏教絵画のような絵になっていました。
この画家は緻密で正確な描写がすごいです。この画家の夫・星野真吾の作品「MIKAMI」では、同じグループのメンバーであった三上誠のポートレートが使われていたのも面白かったです。
今回の展覧会では、会場の一番奥に展示されていた米谷清和の12点の作品が一番気に入りました。その中でも70年代に入ってからの「エレベーター」以降がよかったですね。「雨」を観て、昨年植田正治写真美術館で観た写真を思い出しました。
最初の「エレベーター」では群衆の顔が描かれていますが、「刻々」以降は背後とか遠景になって顔が描かれなくなります。いずれも極度に単純化された画面構成でインパクトがあり、洒落たタッチが現代的で気に入りました。「秋、日のない日」は現代を描きながらもレトロ感があり面白いです。
観終えて感じたことは、日本画と西洋画の境界を云々することの無意味さでした。
今回出展された画家でも、当初は洋画家としてスタートしながら、その後日本画に転向した経歴のある人が何人もいますね。
私の知人で趣味で絵を描いている人は、よく「日本画家は洋画にあこがれ、洋画家は日本画にあこがれる」といっています。実際に浮世絵が19世紀の西洋画に与えた影響はいうまでもありませんね。
万葉文化館でも、これまで何度も気鋭の画家による日本画の枠を出た斬新な作品が多く展示されてきました。つまるところ、両者の違いを突きつめれば、絵の具の違いだけになるかもしれませんね。
そんなことをあれこれ考えながら、これまで観たことがなかった作品の数々を楽しみました。
ところで、観終えてミュージアムショップに行き、気に入った作品の絵葉書を買おうとしたら、なんと1枚もなし。万葉文化館の所蔵作品の分はありましたが、福井からの作品はゼロ。ガッカリでしたね。
昨今ほとんど揮発性メモリ化した私の脳のため(笑)、買う気満々で行ったのですが空振り。残念でした。福井の名前の入った絵葉書でもいいのでなんとかならないものかと思うのですが。
がっかりしながら昼食のために前回同様、館内のカフェへ。
今回も同じ1,000円のメニューでしたが、おいしくて食材もよく、見た目よりボリュームもあって大満足でした。食事中、一時雨が激しくなりましたが、館を出るころには上がってきてラッキーでした。
デザートもGood!
この展覧会、上記の作品以外にも見ごたえのある傑作が多く、おすすめです。ぜひ明日香に来られたらお立ち寄りください。きっと満足されると思います。
期間は8/17(土)〜10/6(日)までです。