兵庫芸文センター中ホールで、『フェードル』を観てきました。
といっても、ひと月前の話ですが。(殴!)
『フェードル』はご存知17世紀フランスの劇作家ラシーヌの傑作戯曲。そのベースは古代ギリシャの詩人エウリピデスの悲劇『ヒッポリュトス』です。
演じるのは大竹しのぶ、平 岳大、門脇 麦、谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里、キムラ緑子、今井清隆と豪華メンバーなので、これは見ない手はないねと、2016年12月に先行予約でチケットを確保しました。
観劇当日は、2017年4月の東京公演から始まった全国ツアーの大千穐楽とあって、満員の盛況でした。ホールには花も飾られ、開場前から活気がありました。
で感想ですが、まあ何とも凄いものを観た、の一言。
とにかく大竹しのぶが圧巻の演技。かねがね只者ではないと思っていましたが(笑)、もうバケモノです。
私たちの席はB列のセンターブロック、そして舞台には三角形の、手を伸ばせば届きそうなところに張り出した箇所があり、その上で彼女をはじめ主要な役者が熱演する姿は超ド迫力でした。
大竹しのぶの演劇は、これまでにも2009年に観た『グレイ・ガーデンズ』(若い時期の大竹しのぶの役を彩乃かなみが演じていたのも良かったです)や、最近のこまつ座『太鼓たたいて‥』でその演技力はわかっていたつもりでしたが、今回の「フェードル」はもう別格の出来。
舞台に登場した姿は貫禄十分で、一目見てジュディ・デンチを連想してしまいました。(笑)
姿だけでなく台詞も終始低い声で、これまで見たことのない大竹しのぶでした。
大竹しのぶの役は、クレタ島の王ミノスの娘で、ギリシャの英雄テゼの妃フェードルです。しかしフェードルは、やがて国王となる継子イッポリットへの道ならぬ恋に悩んで病に陥り、それが発端となってすべての歯車が狂い始めるという話ですが、そのフェードルの懊悩ぶりが超リアル。本当になりきり芝居でした。
ヨメさんは、「台詞をいうときに唾が見えるほどの至近距離に私たちがいるのに、ようまああんな演技ができるもんやね」と観終えて感心しきり。(笑)
イッポリット役の平 岳大もよかったです。
シンプルな舞台セットなので台詞命の舞台ですが、フェードルの不義への悩み、父テゼへの尊敬の念、そしてアリシーへの愛という三つ巴の感情に苦悩する姿がよく表されていました。
濡れ衣を着せられたまま死地に赴く彼の姿が悲愴でした。
しかし彼は、最近ますますお父さんに似てきましたね。(笑)
アテネ王テゼ役は今井清隆。
初めてお目にかかった役者さんですが、これまで「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」、「美女と野獣」など多くのミュージカルで主演されている有名な方です。^^;
その経歴通り、アテネ王としての堂々とした威厳と存在感、そして讒言を信じて息子イッポリットを死地に追いやる人間臭い弱さも持った役どころを見事に演じていました。まだまだ知らない役者さんが多いです。
乳母のエノーヌ役はキムラ緑子です。
フェードルの罪をイッポリットに着せて、テゼの怒りの矛先をそらそうとする悪い女。
でもそれもフェードルを何とか守ろうとする気持ちから出た行動ですが、この芝居では一番黒い役です。
テレビドラマで観るのと違った緊張感がみなぎるシリアスな演技で、見直しました。
今回の舞台では、相手とのキャッチボールではない一方的な長台詞も多かったのですが、あまり滑らず(少しはあったけど^^;)語り続けていたのは大したものでした。
イッポリットの恋人でアテネ王族の娘アリシーは門脇 麦。
この人も初めて見ました。役としてはアイーダみたいな境遇の不幸な娘です。
でも境遇に負けずに誇りと信念をもってイッポリットに接している姿が印象的でした。この人も出番は少ないですが、存在感がありました。
あとの谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里といった俳優さんも、ベテランの面々に伍してしっかりした演技と台詞でわきを固めていて見ごたえがありました。
ストーリーとしては単純なので、脚本的には登場人物それぞれの内面を如何に役者が表現するかが問われる舞台でしたが、全員の好演で、ラシーヌの傑作戯曲にふさわしい重厚で奥行きのある作品になっていました。
終わって感動のカーテンコールとなりましたが、これがまた面白かった。
というのは、カーインコールにこたえて舞台に出てくるたびに、大竹しのぶがフェードルが抜けて、素の彼女に戻っていく様子が見られたこと。(笑)
客席は大熱演に全員スタンディングで万雷の拍手でしたが、最初出てきたときは大竹しのぶも硬い表情のままでした。
二回目も同じように顔はこわばっていて、笑いもなくただ頭を下げて拍手にこたえるだけ。
でも三回目になって顔に笑みが戻ってきて、ぴょんぴょん跳ねたりして、明るく拍手に応えてくれるようになってきました。
そして四回目にはもう満面の笑みで拍手にこたえ、大千穐楽の挨拶もして、最後は出演者全員手をつないでジャンプ!!で終わりました。
この過程を見ていたら、役に入って瞬間的に涙を流せるといわれる彼女でも、逆に憑依状態(笑)から現実に戻るには、それなりの時間がかかるのかなと思ってしまいました。面白かったです。
とにかくこの舞台を観られてよかったです。これは今年一番の収穫かもと二人で話しながら、帰途につきました。
さて次は花組公演の感想です。意外にも(殴!)、藤井大介さんがGood Job!!なのがうれしい番狂わせ。早くアップしたいのですが、いつになりますことやら‥。
といっても、ひと月前の話ですが。(殴!)
『フェードル』はご存知17世紀フランスの劇作家ラシーヌの傑作戯曲。そのベースは古代ギリシャの詩人エウリピデスの悲劇『ヒッポリュトス』です。
演じるのは大竹しのぶ、平 岳大、門脇 麦、谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里、キムラ緑子、今井清隆と豪華メンバーなので、これは見ない手はないねと、2016年12月に先行予約でチケットを確保しました。
観劇当日は、2017年4月の東京公演から始まった全国ツアーの大千穐楽とあって、満員の盛況でした。ホールには花も飾られ、開場前から活気がありました。
で感想ですが、まあ何とも凄いものを観た、の一言。
とにかく大竹しのぶが圧巻の演技。かねがね只者ではないと思っていましたが(笑)、もうバケモノです。
私たちの席はB列のセンターブロック、そして舞台には三角形の、手を伸ばせば届きそうなところに張り出した箇所があり、その上で彼女をはじめ主要な役者が熱演する姿は超ド迫力でした。
大竹しのぶの演劇は、これまでにも2009年に観た『グレイ・ガーデンズ』(若い時期の大竹しのぶの役を彩乃かなみが演じていたのも良かったです)や、最近のこまつ座『太鼓たたいて‥』でその演技力はわかっていたつもりでしたが、今回の「フェードル」はもう別格の出来。
舞台に登場した姿は貫禄十分で、一目見てジュディ・デンチを連想してしまいました。(笑)
姿だけでなく台詞も終始低い声で、これまで見たことのない大竹しのぶでした。
大竹しのぶの役は、クレタ島の王ミノスの娘で、ギリシャの英雄テゼの妃フェードルです。しかしフェードルは、やがて国王となる継子イッポリットへの道ならぬ恋に悩んで病に陥り、それが発端となってすべての歯車が狂い始めるという話ですが、そのフェードルの懊悩ぶりが超リアル。本当になりきり芝居でした。
ヨメさんは、「台詞をいうときに唾が見えるほどの至近距離に私たちがいるのに、ようまああんな演技ができるもんやね」と観終えて感心しきり。(笑)
イッポリット役の平 岳大もよかったです。
シンプルな舞台セットなので台詞命の舞台ですが、フェードルの不義への悩み、父テゼへの尊敬の念、そしてアリシーへの愛という三つ巴の感情に苦悩する姿がよく表されていました。
濡れ衣を着せられたまま死地に赴く彼の姿が悲愴でした。
しかし彼は、最近ますますお父さんに似てきましたね。(笑)
アテネ王テゼ役は今井清隆。
初めてお目にかかった役者さんですが、これまで「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」、「美女と野獣」など多くのミュージカルで主演されている有名な方です。^^;
その経歴通り、アテネ王としての堂々とした威厳と存在感、そして讒言を信じて息子イッポリットを死地に追いやる人間臭い弱さも持った役どころを見事に演じていました。まだまだ知らない役者さんが多いです。
乳母のエノーヌ役はキムラ緑子です。
フェードルの罪をイッポリットに着せて、テゼの怒りの矛先をそらそうとする悪い女。
でもそれもフェードルを何とか守ろうとする気持ちから出た行動ですが、この芝居では一番黒い役です。
テレビドラマで観るのと違った緊張感がみなぎるシリアスな演技で、見直しました。
今回の舞台では、相手とのキャッチボールではない一方的な長台詞も多かったのですが、あまり滑らず(少しはあったけど^^;)語り続けていたのは大したものでした。
イッポリットの恋人でアテネ王族の娘アリシーは門脇 麦。
この人も初めて見ました。役としてはアイーダみたいな境遇の不幸な娘です。
でも境遇に負けずに誇りと信念をもってイッポリットに接している姿が印象的でした。この人も出番は少ないですが、存在感がありました。
あとの谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里といった俳優さんも、ベテランの面々に伍してしっかりした演技と台詞でわきを固めていて見ごたえがありました。
ストーリーとしては単純なので、脚本的には登場人物それぞれの内面を如何に役者が表現するかが問われる舞台でしたが、全員の好演で、ラシーヌの傑作戯曲にふさわしい重厚で奥行きのある作品になっていました。
終わって感動のカーテンコールとなりましたが、これがまた面白かった。
というのは、カーインコールにこたえて舞台に出てくるたびに、大竹しのぶがフェードルが抜けて、素の彼女に戻っていく様子が見られたこと。(笑)
客席は大熱演に全員スタンディングで万雷の拍手でしたが、最初出てきたときは大竹しのぶも硬い表情のままでした。
二回目も同じように顔はこわばっていて、笑いもなくただ頭を下げて拍手にこたえるだけ。
でも三回目になって顔に笑みが戻ってきて、ぴょんぴょん跳ねたりして、明るく拍手に応えてくれるようになってきました。
そして四回目にはもう満面の笑みで拍手にこたえ、大千穐楽の挨拶もして、最後は出演者全員手をつないでジャンプ!!で終わりました。
この過程を見ていたら、役に入って瞬間的に涙を流せるといわれる彼女でも、逆に憑依状態(笑)から現実に戻るには、それなりの時間がかかるのかなと思ってしまいました。面白かったです。
とにかくこの舞台を観られてよかったです。これは今年一番の収穫かもと二人で話しながら、帰途につきました。
さて次は花組公演の感想です。意外にも(殴!)、藤井大介さんがGood Job!!なのがうれしい番狂わせ。早くアップしたいのですが、いつになりますことやら‥。