北翔海莉さんの退団発表を聞いたときは、本当に残念でした。
誰でもいつかは退団するとわかっていても、実際にそれが現実になると、寂しいものです。
トップ就任時に、いつ退団するか決めていたとのことですが、その潔さもまた彼女らしいと思い
ました。
長い宝塚の歴史でも、彼女のように誰に対しても常に謙虚に接し、どんな逆境にも耐えて、いつ
も圧倒的な歌唱力で私たちを魅了させてくれた存在は、他に名前が浮かんできません。
一時は順調にトップへの道を進んでいたかに見えたのに、なぜかその後失速してしまって、歌劇
団の人事にガッカリ。でも専科入りを聞いたときは、トップへの道は閉ざされても、退団しないので
よかったと一安心していました。
以前は、トップ就任前の通過儀礼みたいに、まず専科に異動し、その後組に復帰してトップになる、
みたいな人事もありましたが、それも今は昔。
いまは専科入りは片道切符で、元の組に戻ることはありません。
ということで北翔海莉の専科入りは残念でしたが、またいろんな組で活躍できるのでいいかと納得
していました。
それがあろうことか、ある日、なんとトップ就任決定のニュース。
うれしい半面、それならなぜもっと早くしなかったのかとか、超遅咲き故に就任期間はどうなるの
かとか、いろいろ複雑な思いもありました。
でも波乱万丈の彼女のたどってきた道自体、タカラヅカの脚本にしてもよさそうな物語ですね。
というどうでもいい前置きはこれくらいにして、まず芝居の感想から。
(以下いつものとおり敬称略です。画像はスカステニュースの画面撮影なので粗いです。)
まず全体の感想です。
二本物で時間に制約があるのに無理に役を増やそうとしたため、どうしても人物の描写が浅くなり、
しかも話があちこちに飛ぶので、ついていくのに一苦労でした。
加えて台詞の大半が、かなりネイティブ(だと思う)な鹿児島弁なので、観劇していても会話がす
ぐに理解できず。
ワンテンポ遅れて、会話中の単語をつなぎ合わせてようやく理解するといった感じで、感情移入が
難しかったですね。
そして終わってみれば、やはり出演者の熱演にもかかわらず、話が深まらないままで、全体に存在
理由がよくわからない中途半端な役も多くて、ストーリーとしてはインパクトがなかった。^^;
でもこれだけではいくらなんでもネガティブすぎるので(笑)、いいところを挙げると、まず場面転
換のテンポがいい。売り物の殺陣はキレがあって(タカラヅカ比(笑))ダイナミック。キャストも
よく考えられていて、とくに美城れんの西郷隆盛など絵に描いたようなハマリ役。
実際の隆盛がどんな風貌だったのかは定かでないそうですが、いかにも私たちの記憶にある「隆盛」
像にピッタリの美城「隆盛」でした。
それと、よくある手法とはいえ、回想シーンから舞台が始まるのも好みでした。
(前にもどこかで書きましたが、私的には回想シーンから始まる映画の傑作がグレゴリー・ペック
の「頭上の敵機」です)
あれ?やっぱりこれぐらいの感想しかないか(殴)。
でも、先に書いたように、今回に限ってはこれでいいんです。(殴)
退団する北翔海莉と妃海風、美城れんが出てきただけでもうOK。(笑)
彼女たちが登場して、歌い踊り始めたら大満足!の「見納めモード」全開(笑)で、観劇中も(鹿児
島弁の壁もあって(笑))話はそっちのけで、北翔海莉の過去の公演とか、ミュージックパレット
で見た春風弥里との共演場面とかを脈絡もなく思い出していました。
でもそんな上の空の観劇でも、最後は演出家の狙い通りついホロリとな。これは私だけでなかった
ようで、客席のあちこちでもハンカチを手にする姿が目につきました。(笑)
というわけで個別の感想となります。
まず桐野利秋(中村半次郎)に扮する北翔海莉ですが、情に厚くよく義にも殉ずる熱血漢という
人物をよく演じていました。歌ももちろんですが、彼女らしい頑張りが殺陣にもよく出ていて迫
力がありました。
トップになってからも変わらず努力し続けている様子がよくうかがえる舞台で、感心しました。
西郷に心酔する心情もよく出ていて、最後まで彼に付き従うところも説得力がありました。
しかし私は、観劇前は桐野利秋(中村半次郎)という人物については、どこかで名前を聞いたかな
程度しか知らなかったし、観劇後も、そもそも西郷がどうして挙兵に至ったのかイマイチ理解でき
なかったので、この人物を取り上げることでで作者が何を言おうとしたのか、分からなかったですね。
それと、半次郎がヒサと吹優をどう思っていたのか、どうするつもりだったのかも、話としてそれ
ほど描かれていないので、二人の女性の扱いがよくわかりませんでしたね。とくに出番の少ないヒ
サが気の毒な役でした。
余談ですが、この時代を題材にした芝居や映画でいつも思うのは、西南戦争が起きる11年前にウィ
ンチェスターM1866が販売開始され、5年前にはコルト・ピースメーカーが米陸軍に採用される
など、近代的な銃器が世界中に普及しつつあったのに、まだ日本刀や薙刀での立ち回りがメインと
いうのがなんともはや。
武士道精神を強調したいのでしょうが、重い日本刀を振り回しての立ち合いを見ていると、なんと
長閑なと思ってしまいますね。昔見た剣道の専門家の対談番組では、重い日本刀での斬りあいでは、
せいぜい二・三人倒せば上出来とか言っていました。鍵屋の辻の決闘で36人斬りなど絶対無理とか。(笑)
それはさておき、親友の「隼太郎」に扮する紅ゆずるですが、初めは、ヒサを取り合う、「星逢~」み
たいな設定かと思っていたら、ヒサとの関係はさっさとケリが付いて、隼太郎はアッサリ半次郎と
一緒に上京して新政府の役職にありつくという肩すかしな展開。(笑)
でも、西南戦争では敵味方として対峙することになりますが、後半、薩摩に帰郷した二人の邂逅場
面の演技がよかったです。
このあたりを見ていると、トップ禅譲がうまく行っているようで安心しました。(笑)
妃海風ふんする「大谷吹優」は会津藩の武家娘で、戊辰戦争の時は薙刀をもって奮戦しています。この
薙刀捌きも健気で頑張っています。
その彼女は、父の仇の半次郎に命を助けられたものの、戦火の衝撃で記憶喪失となり、同時に手傷
を負った半次郎とは戦後、偶然に再会します。
妃海風は戊辰戦争では武家の娘として奮戦し、後半は戦場で傷病兵を看護する対照的な役を好演して
いました。武家の娘でも看護婦でも彼女の持ち味の純粋さとさわやかさがいい感じでした。
でもなんといっても今回は美城れんの「西郷隆盛」が超絶品。
こんな男なら、桐野利秋が地位を投げ捨ててついていったのも分かるというもの。舞台で一番説得
力のあった演技でしたが、この公演を限りに観られなくなるというのは本当に残念。専科で長く活躍
してくれることを期待していた私たちにとって、惜しい退団です。最近専科からの人材流出が続いて
残念感が止まらないのですが、退団後の活躍を期待したいです。
専科ではもう一人、「大久保利通」役で夏美ようも安定感のあるいつもの演技でしたが、肝心の見せ場
となる場面が少なくて勿体なかったですね。
あともう一人、例の色紙の一件以来勝手に贔屓にしている(笑)礼真琴が会津藩士・八木永輝役で唯一黒い
役を頑張っていました。いつものことながら、この人の演技は特に眼のチカラがすごいです。
それと身体能力の高さを活かして、殺陣もひときわ目立つキレがあって素晴らしい。
歌も、この人が歌い出すと、北翔海莉とはまた違った味があって、つい聴き惚れてしまいます。
でもやはり出番が‥。
でも、最後はサヨナラ公演らしく涙・涙のフィナーレとなって、客席は作者の意図にまんまと嵌め
られて、あちこちでハンカチで目を拭うお客さんの姿が見受けられました。
あとは薩摩の村で半次郎を待ち続ける妻ヒサ役を演じたのが綺咲愛里。先に書いたように初めは隼
太郎と一緒になるのかと思っていましたが、簡単に家同士で縁談が進められて半次郎と結婚したの
が意外でした。
でも半次郎の上京後は、ほとんど出番がなく、後半ようやく出てきたものの、そ
の間どうやって暮らしていたのか、二人の関係がどうだったのかが分からずで、存在感の希薄なか
わいそうな役でした。
これも最初に書きましたが、回想シーンから始まるところや、ナレーションを多用して話を進める
ところなど、どこか正塚作品を連想させる構成でしたが、肝心の麻央演じる犬養がほとんど話に絡
まないので、最初と最後の回想場面が取って付けたような唐突感がありました。
でも麻央は、記者と首相時代をうまく演じ分けていたので、初めは同一人物とは思えなかったですね。
ロマンチック・レビュー「ロマンス‼」と銘打ったショーの方は、超ベテラン・岡田敬二の作・演出
らしくかなり古典的な作品でした。
きれいな色の衣装で、曲目もまあ60年代ポップスなど、タカラヅカの定番というか、観客のうちリア
ルタイムで聴いていた人がどれだけいるんだろうかと心配になる選曲。(笑)
場面の構成や転換も正統派というか古いというか(殴)、新鮮味に欠けるところが残念でした。
途中の木の下で寝転んで本を読んでいる北翔海莉ニジンスキーと令嬢との場面も何の展開もなく終
わってしまってガッカリ。
「裸足の伯爵夫人のボレロ」もせっかくの夫人役の七海ひろきと礼真琴
が生かし切れていなくて少々物足りない感じでした。でも礼真琴の女装はもっと見たい!!(殴)
でも後半になって、ロケットのあとの「私の世界 イル・モンド」が、8本の大きな柱の装置と大
コーラスでスケール感のある場面となって盛り上がりました。
パレードでは礼真琴が三番手羽根を背負って大階段を下りてきて、うれしかったです。
ショーの場面です。順不同^^;
続いてサヨナラショーもオマケ。やはり順不同です。
というわけで、よかったのか悪かったのか我ながら意味不明な感想となりましたが、なんといっても
北翔海莉と妃海風と美城れんの見納めなので、ぜひ皆さんご覧ください。といってももう東京でも完
売なのであまり意味がないか。(殴)
そうこうしているうちに大劇場の千秋楽の様子もスカステニュースで流れていましたので、これにつ
いても少し感想です。
まず最後の「入り」から。
北翔海莉と妃海風と美城れんがどんな挨拶をするのか期待しながら見ていましたが、みんなよかった
ですね。とくに妃海風が、心情を正直に素朴に表現していてほほえましかったです。
美城れんの挨拶の場面の映像です。
<挨拶です>
憧れだった宝塚音楽学校に入学してから今日まで21年間、私は宝塚歌劇に、宝塚歌劇を愛する皆様に
育てていただきました。感謝の気持ちでいっぱいでございます。
心から幸せだと思える今、笑顔で卒業させていただきます。
美城れんを応援し、ご指導いただいた皆様、ファンの方々、そして私の大好きな宝塚歌劇団に、心か
らの愛と、心からの感謝を込めまして、本当にありがとうございました。
簡潔ですが、心に残るいいあいさつでした。
妃海風の挨拶とその映像です。
<挨拶です>
今、階段の上から、みなさんの顔がやっぱり、大好きになりすぎていて、今、胸が苦しくなるぐらい、
好きになってしまいました。
はい、あの、私、宝塚が大好きで、今、時々、これは夢かなと思うことがたくさんあります。
ファンの方々が、私のことをキラキラした笑顔で見てくださって、本当に信頼できるみなさま、大好
きなみなさま、その方々が近くでいつも笑ってくださって、そしてファン時代男役さんファンだった
私は、今とても素敵な相手役さん・旦那様、と出会えることができまして、私は言葉にしてもやはり
夢なのではないかと思いますが、これは現実です。(客席・笑いと長い励ましの拍手)
夢のような現実を見させてくださったみなさま、みなさまのおかげで幸せでございます。
本当に本当に心から大好きです。本当にありがとうございました。
ほとんどアドリブ(笑)のいい挨拶でした。良かったです。
北翔海莉の挨拶とその映像です。
<挨拶です>
宝塚音楽学校から21年間を振り返りますと、日々、己の弱さとの闘いだったなと思います。
音楽学校の授業についていけなかったとき、逃げ出したくなるとき、諦めようとするとき、悔しくて泣
いたとき、一番のライバルは楽な方に逃げようとする己自身でした。
宝塚という芸を極める道に入り、清く正しく美しくのモットーを信じて、21年間も修行させていただき
まして、今、己の弱い心に克つ、自分の限界に挑戦する精神を身に付けることができたと胸を張って言
えます。(長い拍手)
わたくしが、これまで邁進することができましたのは、諸先生方、諸先輩方の下で、舞台人としての心
得、芸を学ばせていただいたおかげだと、心より感謝しております。
また、北翔海莉が、舞台人として舞台の上で思いっきりパフォーマンスすることができましたのは、宝
塚の一流のスタッフのみなさまの愛情と支えのおかげでございます。
最後になりましたが、男役・北翔海莉を、全力で本気で応援してくださいましたファンのみなさま、イ
メージキャラクタをさせていただきました加美乃素本舗さま(笑いと拍手)">、みなさまのおかげで、ど
んな逆境にも立ち向かう不撓不屈の精神で私を支え励ましてくださいまして、本当にありがとうござい
ました。
えー、今回ご縁がありました、専科の夏美ようさん、そして同期生の美城れんさん、愛する星組の仲間
とは、まだまだお別れではございません。東京の、11月20日のラストステージまで、出演者一同、義と
真心と勇気をもって、舞台を全うしたいと思います。
約5週間、星組公演を支えて応援してくださいましたみなさま、本当にありがとうございました。
最後に大劇場前の様子も放映されていました。
誰でもいつかは退団するとわかっていても、実際にそれが現実になると、寂しいものです。
トップ就任時に、いつ退団するか決めていたとのことですが、その潔さもまた彼女らしいと思い
ました。
長い宝塚の歴史でも、彼女のように誰に対しても常に謙虚に接し、どんな逆境にも耐えて、いつ
も圧倒的な歌唱力で私たちを魅了させてくれた存在は、他に名前が浮かんできません。
一時は順調にトップへの道を進んでいたかに見えたのに、なぜかその後失速してしまって、歌劇
団の人事にガッカリ。でも専科入りを聞いたときは、トップへの道は閉ざされても、退団しないので
よかったと一安心していました。
以前は、トップ就任前の通過儀礼みたいに、まず専科に異動し、その後組に復帰してトップになる、
みたいな人事もありましたが、それも今は昔。
いまは専科入りは片道切符で、元の組に戻ることはありません。
ということで北翔海莉の専科入りは残念でしたが、またいろんな組で活躍できるのでいいかと納得
していました。
それがあろうことか、ある日、なんとトップ就任決定のニュース。
うれしい半面、それならなぜもっと早くしなかったのかとか、超遅咲き故に就任期間はどうなるの
かとか、いろいろ複雑な思いもありました。
でも波乱万丈の彼女のたどってきた道自体、タカラヅカの脚本にしてもよさそうな物語ですね。
というどうでもいい前置きはこれくらいにして、まず芝居の感想から。
(以下いつものとおり敬称略です。画像はスカステニュースの画面撮影なので粗いです。)
まず全体の感想です。
二本物で時間に制約があるのに無理に役を増やそうとしたため、どうしても人物の描写が浅くなり、
しかも話があちこちに飛ぶので、ついていくのに一苦労でした。
加えて台詞の大半が、かなりネイティブ(だと思う)な鹿児島弁なので、観劇していても会話がす
ぐに理解できず。
ワンテンポ遅れて、会話中の単語をつなぎ合わせてようやく理解するといった感じで、感情移入が
難しかったですね。
そして終わってみれば、やはり出演者の熱演にもかかわらず、話が深まらないままで、全体に存在
理由がよくわからない中途半端な役も多くて、ストーリーとしてはインパクトがなかった。^^;
でもこれだけではいくらなんでもネガティブすぎるので(笑)、いいところを挙げると、まず場面転
換のテンポがいい。売り物の殺陣はキレがあって(タカラヅカ比(笑))ダイナミック。キャストも
よく考えられていて、とくに美城れんの西郷隆盛など絵に描いたようなハマリ役。
実際の隆盛がどんな風貌だったのかは定かでないそうですが、いかにも私たちの記憶にある「隆盛」
像にピッタリの美城「隆盛」でした。
それと、よくある手法とはいえ、回想シーンから舞台が始まるのも好みでした。
(前にもどこかで書きましたが、私的には回想シーンから始まる映画の傑作がグレゴリー・ペック
の「頭上の敵機」です)
あれ?やっぱりこれぐらいの感想しかないか(殴)。
でも、先に書いたように、今回に限ってはこれでいいんです。(殴)
退団する北翔海莉と妃海風、美城れんが出てきただけでもうOK。(笑)
彼女たちが登場して、歌い踊り始めたら大満足!の「見納めモード」全開(笑)で、観劇中も(鹿児
島弁の壁もあって(笑))話はそっちのけで、北翔海莉の過去の公演とか、ミュージックパレット
で見た春風弥里との共演場面とかを脈絡もなく思い出していました。
でもそんな上の空の観劇でも、最後は演出家の狙い通りついホロリとな。これは私だけでなかった
ようで、客席のあちこちでもハンカチを手にする姿が目につきました。(笑)
というわけで個別の感想となります。
まず桐野利秋(中村半次郎)に扮する北翔海莉ですが、情に厚くよく義にも殉ずる熱血漢という
人物をよく演じていました。歌ももちろんですが、彼女らしい頑張りが殺陣にもよく出ていて迫
力がありました。
トップになってからも変わらず努力し続けている様子がよくうかがえる舞台で、感心しました。
西郷に心酔する心情もよく出ていて、最後まで彼に付き従うところも説得力がありました。
しかし私は、観劇前は桐野利秋(中村半次郎)という人物については、どこかで名前を聞いたかな
程度しか知らなかったし、観劇後も、そもそも西郷がどうして挙兵に至ったのかイマイチ理解でき
なかったので、この人物を取り上げることでで作者が何を言おうとしたのか、分からなかったですね。
それと、半次郎がヒサと吹優をどう思っていたのか、どうするつもりだったのかも、話としてそれ
ほど描かれていないので、二人の女性の扱いがよくわかりませんでしたね。とくに出番の少ないヒ
サが気の毒な役でした。
余談ですが、この時代を題材にした芝居や映画でいつも思うのは、西南戦争が起きる11年前にウィ
ンチェスターM1866が販売開始され、5年前にはコルト・ピースメーカーが米陸軍に採用される
など、近代的な銃器が世界中に普及しつつあったのに、まだ日本刀や薙刀での立ち回りがメインと
いうのがなんともはや。
武士道精神を強調したいのでしょうが、重い日本刀を振り回しての立ち合いを見ていると、なんと
長閑なと思ってしまいますね。昔見た剣道の専門家の対談番組では、重い日本刀での斬りあいでは、
せいぜい二・三人倒せば上出来とか言っていました。鍵屋の辻の決闘で36人斬りなど絶対無理とか。(笑)
それはさておき、親友の「隼太郎」に扮する紅ゆずるですが、初めは、ヒサを取り合う、「星逢~」み
たいな設定かと思っていたら、ヒサとの関係はさっさとケリが付いて、隼太郎はアッサリ半次郎と
一緒に上京して新政府の役職にありつくという肩すかしな展開。(笑)
でも、西南戦争では敵味方として対峙することになりますが、後半、薩摩に帰郷した二人の邂逅場
面の演技がよかったです。
このあたりを見ていると、トップ禅譲がうまく行っているようで安心しました。(笑)
妃海風ふんする「大谷吹優」は会津藩の武家娘で、戊辰戦争の時は薙刀をもって奮戦しています。この
薙刀捌きも健気で頑張っています。
その彼女は、父の仇の半次郎に命を助けられたものの、戦火の衝撃で記憶喪失となり、同時に手傷
を負った半次郎とは戦後、偶然に再会します。
妃海風は戊辰戦争では武家の娘として奮戦し、後半は戦場で傷病兵を看護する対照的な役を好演して
いました。武家の娘でも看護婦でも彼女の持ち味の純粋さとさわやかさがいい感じでした。
でもなんといっても今回は美城れんの「西郷隆盛」が超絶品。
こんな男なら、桐野利秋が地位を投げ捨ててついていったのも分かるというもの。舞台で一番説得
力のあった演技でしたが、この公演を限りに観られなくなるというのは本当に残念。専科で長く活躍
してくれることを期待していた私たちにとって、惜しい退団です。最近専科からの人材流出が続いて
残念感が止まらないのですが、退団後の活躍を期待したいです。
専科ではもう一人、「大久保利通」役で夏美ようも安定感のあるいつもの演技でしたが、肝心の見せ場
となる場面が少なくて勿体なかったですね。
あともう一人、例の色紙の一件以来勝手に贔屓にしている(笑)礼真琴が会津藩士・八木永輝役で唯一黒い
役を頑張っていました。いつものことながら、この人の演技は特に眼のチカラがすごいです。
それと身体能力の高さを活かして、殺陣もひときわ目立つキレがあって素晴らしい。
歌も、この人が歌い出すと、北翔海莉とはまた違った味があって、つい聴き惚れてしまいます。
でもやはり出番が‥。
でも、最後はサヨナラ公演らしく涙・涙のフィナーレとなって、客席は作者の意図にまんまと嵌め
られて、あちこちでハンカチで目を拭うお客さんの姿が見受けられました。
あとは薩摩の村で半次郎を待ち続ける妻ヒサ役を演じたのが綺咲愛里。先に書いたように初めは隼
太郎と一緒になるのかと思っていましたが、簡単に家同士で縁談が進められて半次郎と結婚したの
が意外でした。
でも半次郎の上京後は、ほとんど出番がなく、後半ようやく出てきたものの、そ
の間どうやって暮らしていたのか、二人の関係がどうだったのかが分からずで、存在感の希薄なか
わいそうな役でした。
これも最初に書きましたが、回想シーンから始まるところや、ナレーションを多用して話を進める
ところなど、どこか正塚作品を連想させる構成でしたが、肝心の麻央演じる犬養がほとんど話に絡
まないので、最初と最後の回想場面が取って付けたような唐突感がありました。
でも麻央は、記者と首相時代をうまく演じ分けていたので、初めは同一人物とは思えなかったですね。
ロマンチック・レビュー「ロマンス‼」と銘打ったショーの方は、超ベテラン・岡田敬二の作・演出
らしくかなり古典的な作品でした。
きれいな色の衣装で、曲目もまあ60年代ポップスなど、タカラヅカの定番というか、観客のうちリア
ルタイムで聴いていた人がどれだけいるんだろうかと心配になる選曲。(笑)
場面の構成や転換も正統派というか古いというか(殴)、新鮮味に欠けるところが残念でした。
途中の木の下で寝転んで本を読んでいる北翔海莉ニジンスキーと令嬢との場面も何の展開もなく終
わってしまってガッカリ。
「裸足の伯爵夫人のボレロ」もせっかくの夫人役の七海ひろきと礼真琴
が生かし切れていなくて少々物足りない感じでした。でも礼真琴の女装はもっと見たい!!(殴)
でも後半になって、ロケットのあとの「私の世界 イル・モンド」が、8本の大きな柱の装置と大
コーラスでスケール感のある場面となって盛り上がりました。
パレードでは礼真琴が三番手羽根を背負って大階段を下りてきて、うれしかったです。
ショーの場面です。順不同^^;
続いてサヨナラショーもオマケ。やはり順不同です。
というわけで、よかったのか悪かったのか我ながら意味不明な感想となりましたが、なんといっても
北翔海莉と妃海風と美城れんの見納めなので、ぜひ皆さんご覧ください。といってももう東京でも完
売なのであまり意味がないか。(殴)
そうこうしているうちに大劇場の千秋楽の様子もスカステニュースで流れていましたので、これにつ
いても少し感想です。
まず最後の「入り」から。
北翔海莉と妃海風と美城れんがどんな挨拶をするのか期待しながら見ていましたが、みんなよかった
ですね。とくに妃海風が、心情を正直に素朴に表現していてほほえましかったです。
美城れんの挨拶の場面の映像です。
<挨拶です>
憧れだった宝塚音楽学校に入学してから今日まで21年間、私は宝塚歌劇に、宝塚歌劇を愛する皆様に
育てていただきました。感謝の気持ちでいっぱいでございます。
心から幸せだと思える今、笑顔で卒業させていただきます。
美城れんを応援し、ご指導いただいた皆様、ファンの方々、そして私の大好きな宝塚歌劇団に、心か
らの愛と、心からの感謝を込めまして、本当にありがとうございました。
簡潔ですが、心に残るいいあいさつでした。
妃海風の挨拶とその映像です。
<挨拶です>
今、階段の上から、みなさんの顔がやっぱり、大好きになりすぎていて、今、胸が苦しくなるぐらい、
好きになってしまいました。
はい、あの、私、宝塚が大好きで、今、時々、これは夢かなと思うことがたくさんあります。
ファンの方々が、私のことをキラキラした笑顔で見てくださって、本当に信頼できるみなさま、大好
きなみなさま、その方々が近くでいつも笑ってくださって、そしてファン時代男役さんファンだった
私は、今とても素敵な相手役さん・旦那様、と出会えることができまして、私は言葉にしてもやはり
夢なのではないかと思いますが、これは現実です。(客席・笑いと長い励ましの拍手)
夢のような現実を見させてくださったみなさま、みなさまのおかげで幸せでございます。
本当に本当に心から大好きです。本当にありがとうございました。
ほとんどアドリブ(笑)のいい挨拶でした。良かったです。
北翔海莉の挨拶とその映像です。
<挨拶です>
宝塚音楽学校から21年間を振り返りますと、日々、己の弱さとの闘いだったなと思います。
音楽学校の授業についていけなかったとき、逃げ出したくなるとき、諦めようとするとき、悔しくて泣
いたとき、一番のライバルは楽な方に逃げようとする己自身でした。
宝塚という芸を極める道に入り、清く正しく美しくのモットーを信じて、21年間も修行させていただき
まして、今、己の弱い心に克つ、自分の限界に挑戦する精神を身に付けることができたと胸を張って言
えます。(長い拍手)
わたくしが、これまで邁進することができましたのは、諸先生方、諸先輩方の下で、舞台人としての心
得、芸を学ばせていただいたおかげだと、心より感謝しております。
また、北翔海莉が、舞台人として舞台の上で思いっきりパフォーマンスすることができましたのは、宝
塚の一流のスタッフのみなさまの愛情と支えのおかげでございます。
最後になりましたが、男役・北翔海莉を、全力で本気で応援してくださいましたファンのみなさま、イ
メージキャラクタをさせていただきました加美乃素本舗さま(笑いと拍手)">、みなさまのおかげで、ど
んな逆境にも立ち向かう不撓不屈の精神で私を支え励ましてくださいまして、本当にありがとうござい
ました。
えー、今回ご縁がありました、専科の夏美ようさん、そして同期生の美城れんさん、愛する星組の仲間
とは、まだまだお別れではございません。東京の、11月20日のラストステージまで、出演者一同、義と
真心と勇気をもって、舞台を全うしたいと思います。
約5週間、星組公演を支えて応援してくださいましたみなさま、本当にありがとうございました。
最後に大劇場前の様子も放映されていました。